犬が涙を流している【獣医師監修】

犬が涙をいっぱい溜めていたり、涙を流していたりしたら、「悲しいの?」と心配になってしまいますね。でも、犬に「悲しい」ことで涙を流すという反応はなく、目の異常や病気が原因である場合が多いようです。いったい、どんな原因で涙が多くなり、涙を流すのでしょうか。

先生にお聞きしました
藤田 桂一先生
藤田 桂一先生
フジタ動物病院院長、獣医師

日本獣医畜産大学大学院獣医学研究科修士課程修了。1988年に埼玉県上尾市でフジタ動物病院を開院する。同病院の院長として、獣医師15名、AHT・トリマー・受付31名、総勢46名のスタッフとともに活躍している。

日本小動物歯科研究会会長、(社)日本獣医学会評議員、(財)動物臨床医学会理事、(公財)動物臨床医学研究所評議員、日本獣医療倫理研究会理事、 (NPO法人)高齢者のペット飼育支援獣医師ネットワーク理事、日本獣医臨床病理学会評議員、(社)日本動物病院福祉協会、世界動物病院協会、日本動物病院会、小動物臨床研究会さくら会、PCM 研究会、その他の会に所属し、研究活動を精力的に行っている。また、岩手大学農学部獣医学科非常勤講師(2008~2012年)、帝京科学大学生命環境学部アニマルサイエンス学科非常勤講師(2012年~)日本大学生物資源科学部獣医学科高度臨床獣医学非常勤講師(2013年~)もつとめている。
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考えられる原因

犬の目に涙が多くなったり、涙を流したりする原因には、大きく分けて3つが考えられます。
一つは目にゴミなどの異物混入が入った場合、二つは目やその周辺に何か異常がある場合、そして三つ目が鼻に病気がある場合です。具体的な例を見ていきましょう。

異物の混入

春先や風が強い日に、ホコリや花粉などが目に入ると、それを外に出そうとして涙が多く産出されます。

つまり、涙で異物を洗い流そうとするわけです。目の中に異物が入った状態が長く続くと、前肢で目の辺りを引っ掻いて、角膜を傷つけることにもなりかねません。

続けて涙を流していたり、前肢で何度も目を掻くようなら、コットンかウェットティッシュで優しく取り除いてあげましょう。とめどなく涙が流れる、何日も涙が出続ける、目を触られるのを嫌がる、または異物があるのに取り除けない場合は、すぐに獣医師に診てもらいましょう。

細菌感染や外傷

細菌や寄生虫に感染した場合や、目の表面に外からの刺激で傷がついた場合も、涙が多くなります。目の周りや耳にかゆみを伴う皮膚炎があると、足で掻いた時に誤って目の表面を傷つけることもあります。

とくに気をつけたいのは、短頭種。目が飛び出ているので、草むらなどに顔を突っ込んだ時に、枝などで傷つけたり、また目の乾燥によって傷ついて細菌感染もしやすいからです。散歩やドッグランに遊びに行った後は、目が拭けるコットン(犬用でも人間用でもOK)で、優しく目の周りを拭いてあげるようにしましょう。

角膜の傷が悪化すると、「角膜潰瘍」といって角膜に穴が開いてしまうこともあります。

睫毛(まつげ)の異常

人間でいう「逆さまつげ」は犬にもあり、睫毛が目に触れることによって涙が多くなります。
「逆さまつげ」には、以下の3タイプがあります。

◇異所性睫毛(いしょせいしょうもう):まつげが結膜から角膜に向かって生えている
◇睫毛乱生(しょうもうらんせい):もともとあるまつげが角膜に向かって生えている
◇睫毛重生(しょうもうじゅうせい):まつげが二列で生えている

いずれもまつげが常に目に触れることになるので、結膜や角膜に傷をつけたり、細菌に感染しやすくなったりする危険性があります。
また、シーズーやコッカスパニエルなど一部の犬種は、長く伸びたまつげ(過長睫毛)が目に入ることで涙が多くなる場合もあります。
まつげの長さやカットのデザインは飼い主さんの好みによるのですが、犬の目を健康に保つためには、あまり目に毛がかからないようにしたいですね。

涙の異常

涙そのもののクオリティが悪いことが原因で、角膜に傷がついたり、細菌に感染したりして、涙が多くなる場合があります。涙は単なる水ではありません。

粘液と水が混じった液層と油層との2層構造※になっていて、角膜にシールド状に張り付くことによって、角膜を保護しているのです。何らかの原因で2層の割合が変わったり、成分の品質が悪くなったりすることで、シールド効果が薄れ、外傷や細菌感染を起こしやすくなるのです。

※以前は「水分」「粘液」「脂成分」の3層構造と言われていましたが、最近の研究で2層構造であることがわかりました。

結膜炎の悪化

結膜炎が悪化することでも、涙が多くなります。

鼻涙管の異常

涙は目から鼻につながっている鼻涙管という管を通って、鼻に流れています。その管が何らかの原因で詰まってしまうと、生成された涙が鼻のほうに流れず、目から溢れ出すことになります。
目の周りに乾燥してこびりついた目やにを無理やり取ろうとすると、嫌がって、普段おとなしい犬でも噛みつくことがあります。そんな時は、無理に引き剥がしたりせず、濡らしたコットンなどでふやかすようにしてから取ってあげましょう。

これも原因?

犬が涙を流している原因として「カラダのどこかに痛みがある」という情報がWEBなどに掲載されていますが、現在、「犬が涙を流している」状態との直接的な因果関係がわかっていません。

こんな場合は要注意!

以下の症状が見られる場合は、病気の恐れがあるので病院で診てもらいましょう。

目に入ったゴミ(異物)が取れない

取りにくい場所の場合は自分で取ろうとせずに、獣医師の診察を受けましょう。

白目がいつもよりも赤く充血している

黒目が白っぽくなっている

黒目にクレーター状の凹みがある

目が開かない。または、目をショボショボさせている。目を細めている

この症状で考えられる病気

犬の結膜炎

目の結膜に炎症が起きる病気です。目の周りの毛による刺激、細菌やウイルスによる感染症、アレルギー、外傷などが原因となります。まぶたが赤くなり、涙や目やにが出るほか、悪化すると角膜炎になることもあります。

犬の角膜炎

黒目の表面を覆う角膜が炎症を起こす病気です。外傷や異物、細菌やウイルスの感染症、緑内障や結膜炎などの疾患によって起こります。痛みや目やに・涙の増加が現れ、重症の場合は、角膜が白濁し、潰瘍が生じます。

犬の角膜潰瘍

目の角膜に潰瘍ができる病気です。ドライアイや外傷、異物などで角膜が傷つき、目をショボショボさせたり、痛がったり、涙や目やにが出るようになります。細菌感染により角膜に穴が開いて失明することがあります。

眼瞼内反症

まぶたが内側に反り、まつげが眼球にあたる状態です。目の痛みや痒みのほかに、目やにや涙が増え、まぶたのけいれんや発赤が起こります。結膜炎や角膜炎になる恐れもあります。

異所性睫毛

まつげが結膜から角膜に向かって生えている。まつげが常に目に触れることになるので、結膜や角膜に傷をつけたり、細菌に感染しやすくなったりする。傷が悪化すると「角膜潰瘍」といって角膜に穴が開いてしまうこともあります。

睫毛重生

目のマイボーム腺という皮脂を出す部位からまつげが生える状態です。まつげが柔らかく、量が少なければ無症状ですが、多い場合は、目を刺激し、涙や目やにが増えます。また、角膜炎や結膜炎にも注意が必要です。

犬の流涙症

涙の量が増える、もしくは、涙が流れる管が詰まり、涙と目やにが溢れる病気です。目や鼻の周りの毛が汚れ、ただれることがあります。また、痒みから目の周りを引っ掻き、結膜炎になる恐れもあります。

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