【獣医師監修】犬にとって安全な「穀類(グレイン)」の原材料とは?栄養学のプロが飼い主の不安を解消!

ドッグフードに含まれている「穀類」には、グレイン、グルテン、コーングルテンミールほか、さまざまなものがあります。「穀類は消化しにくい」「アレルギーを起こしやすい」という情報も流れていますが、実際はどうなのでしょう? ペット栄養学の第一線で活躍されている獣医師・徳本 一徳先生にお話を伺いました。

【獣医師監修】犬にとって安全な「穀類(グレイン)」の原材料とは?栄養学のプロが飼い主の不安を解消!
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先生にお聞きしました
徳本 一義 先生
ペット栄養学会理事。小動物の臨床栄養学に関するスペシャリスト。
獣医師 MBA(経営学修士)

ヘリックス株式会社 代表取締役社長

【資格】
獣医師

【所属】
ペット栄養学会 理事
一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
日本獣医生命科学大学 非常勤講師
帝京科学大学 非常勤講師
など

大学卒業後、小動物臨床に従事。

その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。

現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。

自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
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「ヒューマングレード」の考え方とドッグフード関連の法律

「ヒューマングレード」の考え方とドッグフード関連の法律

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ドッグフードの原材料として「穀類(グレイン)」が果たす役割や安全性を解説する前に、以下の2点を理解しましょう。

【1】「ヒューマングレード」という考え方

ドッグフードの品質について語る際に、「ヒューマングレード」という言葉が使われることがあります。

「人間が安心して食べられる食材のレベル」という意味で使う人もいれば、飼い主の愛情の証として考える飼い主も増えているようです。

しかし、「ヒューマングレード」とは、ペットフードの品質を担保するための法規制や組織がなく、粗悪な原料で作られたり、栄養が不十分なフードが出回っていた時代に生まれた言葉です。

「ペットに安心して食べさせられるフードを」という意味から唱えるようになったと考えられています。

「ヒューマングレード」という考え方

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現在では、ドッグフードを含むペットフードの安全については、2009年に制定された「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(通称:ペットフード安全法)によって厳しく決められ、メーカーは遵守して製造してます。

ですから、「ヒューマングレード」という考え方は必要ないでしょう。


日本独自の「ペットフードの安全を守る法律」

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【2】日本独自の「ペットフードの安全を守る法律」

日本では、農林水産省や環境省が定めた「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」により、ドッグフードの原材料や製造方法の基準が定められています。

第1章 第1条 この法律は、愛がん動物用飼料の製造等に関する規制を行うことにより、愛がん動物用飼料の安全性の確保を図り、もって愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与することを目的とする。

第2章 第5条 農林水産大臣及び環境大臣は、愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止する見地から、農林水産省令・環境省令で、愛がん動物用飼料の製造の方法若しくは表示につき基準を定め、又は愛がん動物用飼料の成分につき規格を定めることができる。

出典 【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(平成二十年法律第八十三号)

ペットフード安全法」は、愛がん動物の健康保護を目的とした法律です。

製造メーカーはこの法律を遵守しながら、ドッグフードを製造・輸入・販売して、記録を帳簿に記載することが義務付けられています。

つまり、国産のドッグフードは、犬に有害な原材料を使うことはあり得ないのです。

日本には、世界でも特異な「ペットの安全を守る法律」がある

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ペット先進国であるヨーロッパやアメリカでは、ドッグフードの安全基準はあっても、ペットフード専用の法律はなく、飼料と同じように考えられていることが大半です。

よって、日本の「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」は、世界から見ても、とても先進的な法律と言えるでしょう。

そして、この「ペットフード安全法」により、

✔ドッグフードに使用できる原材料や製造方法についてとても厳しい基準があること

✔法律が守られているかを厳格にチェックする仕組みがあること

も日本産ドッグフードの安全性を高めています。

ドッグフードになぜ穀類(グレイン)が必要なの?

穀類(グレイン)は犬のエネルギー源

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穀類(グレイン)は犬のエネルギー源

ドッグフードの原料になる穀類を「ペットフード公正取引協議会」では以下のように定義しています。

穀類のおもな成分はデンプンなどの可溶無窒素物(ほぼ消化される糖質)で、栄養学的にはエネルギー源として位置づけられます。

すべての穀類(トウモロコシ、小麦、玄米、小麦粉、パン粉、米粉、米ぬか、小麦ふすま、コーングルテンフィード、コーングルテンミールなど)の穀粒、挽き割り、穀粉とその加工物である。

出典 【ペットフード公正取引協議会・製造について】「ペットフードの原材料一覧表」

【参照元】ペットフード公正取引協議会「製造について」ペットフードの原材料一覧表

穀類(グレイン)は原料を「つなぐ」役割も

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穀類(グレイン)は原料を「つなぐ」役割も

ドライタイプのドッグフードは、粉砕した原料を混ぜ合わせて、加水・加湿した後に「エクストルーダ」という製造機械に入れられます。

そして、機械の中で加熱・加圧して成型されるのですが、穀類(グレイン)のデンプン質が「つなぎ」の役割を果たしてくれます。

穀類(グレイン)が入っていないと、さまざまな原料がひとつにまとまりにくくなってしまいます。

ドッグフードに含まれる「小麦」や「小麦粉」は国産?

日本では、人間用と同じくペットフードに使う「小麦」は、カナダやアメリカ、オーストラリアから輸入しています。

多くの場合、粒の状態で輸入され、国内で「小麦粉」に製粉されてから市場に出回ります。

ペットフードには、この「小麦粉」と製粉する際に取り除かれる「小麦ふすま」が利用されています。

犬は穀類(グレイン)を消化しにくい?

犬は穀類(グレイン)を消化しにくい?

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穀類は加水加熱することでアルファ化(糊化)され、人間も犬も消化できるようになります。

ドッグフードに含まれている穀類は、犬が消化できるように全て加熱処理されています。

アルファ化された穀類中のデンプンであれば、犬の小腸でも100%消化できるという学術的な報告もあるため、安心してドッグフードを食べさせてあげましょう。

ドッグフードは「グレイン(穀物)フリー」が望ましい?

「グレインフリー」は、「穀物が入っていない」と言う意味

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「グレインフリー」は、「穀物が入っていない」と言う意味

「〇〇フリー」は「〇〇が入っていない」という意味。

「〇〇フリー」という言葉からヘルシーな食べ物や食生活をイメージする人も多いようですが、「グレインフリー」とは「穀物が一切入っていない」ということです。

犬に穀物アレルギーがある場合は「グレインフリー」

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犬に穀物アレルギーがある場合は「グレインフリー」

愛犬にグレインフリーのドッグフードが必要なのは、愛犬に穀類に対するアレルギーがある場合です。

穀類には麦類も含まれるので、小麦など麦類にアレルギーを起こすことがわかっている愛犬には、グレインフリーのフードを選んでおけば、食物アレルギーを避けられるでしょう。

犬に「グレインフリー」のドッグフードを食べさせる時の注意点

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犬に「グレインフリー」のドッグフードを食べさせる時の注意点

気をつけたいのは、グレインフリーのフードは、肉類を主体とした高タンパク・高脂肪になりやすいということです。

栄養バランスの悪いグレインフリーフードは、犬の心臓病のリスクになるという報告があるだけではなく、犬の腎臓や肝臓に負担をかけます。

愛犬の腎臓や肝臓に少しでも障害がある場合は、注意が必要です。

獣医師に相談のうえ、愛犬に最適なフードを選んでください。

ドッグフードは「グルテンフリー」が望ましい?

グルテンを入れる目的は「食感」「整便」

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ドッグフードに「グルテン」を入れる目的

小麦や小麦粉には、「グルテン」というタンパク質が含まれています。

「グルテン」は小麦だけでなく、大麦、ライ麦、からす麦など麦類全般に含まれているもので、粘りや膨らみ、ふわっとした食感を生み出します。

また、小麦の表皮と胚芽部分が残った「小麦ふすま」は、豊富な食物繊維や鉄分、マグネシウム、亜鉛などの栄養素を含み、犬の便通を整えたり、糞便の形を安定させるのに役立つと考えられています。

「グルテンフリー」とは?

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「グルテンフリー」とは?

「グルテンフリー」とは、グルテンが原料に使われていないことを表しています。

もともとは、「セリアック病」と言うグルテン過敏症の人のために作られたグルテン除去食でしたが、犬にも同様のアレルギーが見られるようになったために、グルテンフリーのドッグフードが作られるようになりました。

グルテンフリーは、数年前、あるプロテニスプレイヤーが食生活に導入したことで、世界的に大きな注目を集めるようになりました。

以来、アレルギーがなくてもヘルシーなライフスタイルを志向してグルテンフリーを取り入れたり、愛犬の健康のためにグルテンフリーのフードを選ぶ飼い主もいるようです。

ただし、小麦アレルギーがない犬であれば、グルテンフリーにする必要はありません。

ドッグフードの穀類は犬が消化しやすい状態になっているため、安心して食べさせましょう。

小麦アレルギーがある犬には「グルテンフリー」

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小麦アレルギーがある犬には「グルテンフリー」

小麦アレルギーがある犬の場合は、小麦を含む麦類が原料に使用されているフードは食べさせないように注意が必要です。

グルテン過敏症が多く見られる犬種としては、アイリッシュ・セターがあります。

なお、小麦アレルギー反応を起こす犬でも、グルテンを含まない米やとうもろこしは食べても大丈夫です。

「グレインフリー」と「グルテンフリー」を混同していない?

「グレイン」と「グルテン」は、言葉が似ているので、その意味を取り違えている飼い主も多いようです。

「グレイン」は、穀物全般を指すので、その中には麦類も含まれます。

一方、「グルテン」は、麦類に含まれるタンパク質の一種を指す言葉です。

動物病院で検査をしてもらい、麦類にアレルゲンが特定されているなら、「グルテンフリー」を選べばよいのですが、複数の穀類にアレルギーが認められる場合は、「グレインフリー」を選んでください。

いずれにしても、アレルギーかどうか、アレルゲンは何か、獣医師に診断してもらうことが大切です。

とうもろこしは犬にとって消化がよくない?

とうもろこしは優れたタンパク源

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とうもろこしは優れたタンパク源

「とうもろこしは犬にとって消化がよくない」「とうもろこしが含まれているドッグフードは好ましくない」という話を耳にすることがあるかもしれませんが、これは間違った情報です。

人間の食料としても、世界的に主要かつ最大の穀類であるとうもろこしですが、食用や工業用に使われているのは全体の約3割で、残りの約7割はペットフードを含む家畜用の飼料として活用されています。

たしかに、とうもろこしの皮やヒゲ、芯の部分は消化されにくいのですが、粒の部分は消化もよく、タンパク質を豊富に含んでいるので、ドッグフードの原料として使われています。

「コーングルテンミール」とは?

「コーングルテンミール」とは?

とうもろこしから作られる精製品の一例

とうもろこしからコーンスターチ(デンプン)を作る際に、高タンパクを含む部分を切り離したものを、「コーングルテンミール」と言います。

粉末状や顆粒状のものがあり、ドライフードの貴重な原材料となっています。

「コーングルテンミール」のタンパク質の含有量は、大豆を乾燥させて粉にした大豆ミールの約1.5倍ありますが、「リンジ」「トリプトファン」というアミノ酸が少ないので、他の原料で補う必要があります。

「コーングルテンフィード」とは?

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「コーングルテンフィード」とは?

「コーングルテンフィード」は、とうもろこしから食用のコーンスターチを作る際に分離された繊維質が主成分です。

ただし、これは主に家畜飼料用の原料となるもので、ドッグフードにはあまり使われません。

「コーングルテン」は犬がアレルギーになりやすい?

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「コーングルテン」は犬がアレルギーになりやすい?

「コーングルテンミール」と「コーングルテンフィード」を「コーングルテン」とくくり、犬がアレルギーになりやすいと言う情報を見かけることがあります。

しかし、「コーングルテンミール」の主成分はタンパク質で、「コーングルテンフィード」の主成分は繊維質。

食物アレルギーはタンパク質に対して起こるため、2つを「コーングルテン」として語るのは、そもそも間違っています。

とうもろこしのタンパク質にアレルギー反応を示す犬もいますが、「コーングルテンミール」はアレルゲンになりやすい食材ではありません。

ただし、とうもろこしアレルギーがある犬の場合は、「コーングルテンミール」が含まれていないドッグフードを食べさせましょう。


「コーングルテンフィード」は消化しにくい?

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「コーングルテンフィード」は消化しにくい?

犬を含めた肉食動物は、草食動物のように長い腸で微生物による発酵のチカラを利用して食物繊維を消化しません。

ただし、適量な食物繊維は便秘の予防や解消、腸内細菌のバランスを整えるなどの働きをします。

ドッグフードに含まれる「コーングルテンフィード」も同様です。

また、「ペットフードの原料になる穀類は農薬の残留濃度が高く、人間の食品安全基準に満たないものや腐敗したものが使われている」という飼い主を不安にさせる情報を耳にすることがあります。

しかし、「ペットフード安全法」には、残留農薬に対する規制もあるので、問題はありません。

愛犬の健康を守ってあげられるのは飼い主だけです。

ドッグフードに関する正しい知識を身に着け、愛犬との健康な生活を送りましょう。

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