【獣医師監修】犬にとって安全な「肉」の原材料とは?栄養学のプロが飼い主の不安を解消!

ドッグフードには、「〇〇ミール」「〇〇ミートボーン」「〇〇エキス」など肉類に関するさまざまな表示があります。「4Dミートや得体の知れない部位が使われている」という情報も流れていますが、実際はどうなのでしょう?ペット栄養学の第一線で活躍されている獣医師・徳本 一徳先生にお話を伺いました。

【獣医師監修】犬にとって安全な「肉」の原材料とは?栄養学のプロが飼い主の不安を解消!
出典 : iStock.com/K_Thalhofer
先生にお聞きしました
徳本 一義 先生
ペット栄養学会理事。小動物の臨床栄養学に関するスペシャリスト。
獣医師 MBA(経営学修士)

ヘリックス株式会社 代表取締役社長

【所属】
ペット栄養学会 理事
一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
日本獣医生命科学大学 非常勤講師
帝京科学大学 非常勤講師
など

大学卒業後、小動物臨床に従事。

その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。

現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。

自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
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ドッグフードに使用できる原材料や製造方法についてとても厳しい基準があること

「ヒューマングレード」の考え方とドッグフード関連の法律

「ヒューマングレード」の考え方とドッグフード関連の法律

Mary Swift/ Shutterstock.com

ドッグフードの原材料として「動物性油脂」や「植物性油脂」が果たす役割や安全性を解説する前に、以下の2点を理解しましょう。

【1】「ヒューマングレード」という考え方

ドッグフードの品質について語る際に、「ヒューマングレード」という言葉が使われることがあります。

「人間が安心して食べられる食材のレベル」という意味で使う人もいれば、飼い主の愛情の証として考える飼い主も増えているようです。

しかし、「ヒューマングレード」とは、ペットフードの品質を担保するための法規制や組織がなく、粗悪な原料で作られたり、栄養が不十分なフードが出回っていた時代に生まれた言葉です。

「ペットに安心して食べさせられるフードを」という意味から唱えるようになったと考えられています。

「ヒューマングレード」という考え方

SeDmi / PIXTA(ピクスタ)

現在では、ドッグフードを含むペットフードの安全については、2009年に制定された「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(通称:ペットフード安全法)によって厳しく決められ、メーカーは遵守して製造してます。

ですから、「ヒューマングレード」という考え方は必要ないでしょう。

【獣医師監修】栄養学のプロが飼い主の不安を解消!「ヒューマングレード」という考え方は正解?

日本独自の「ペットフードの安全を守る法律」

Javier Brosch/ Shutterstock.com

【2】日本独自の「ペットフードの安全を守る法律」

さらに、日本では、農林水産省や環境省が定めた「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」により、ドッグフードの原材料や製造方法の基準が定められています。

第1章 第1条 この法律は、愛がん動物用飼料の製造等に関する規制を行うことにより、愛がん動物用飼料の安全性の確保を図り、もって愛がん動物の健康を保護し、動物の愛護に寄与することを目的とする。

第2章 第5条 農林水産大臣及び環境大臣は、愛がん動物用飼料の使用が原因となって、愛がん動物の健康が害されることを防止する見地から、農林水産省令・環境省令で、愛がん動物用飼料の製造の方法若しくは表示につき基準を定め、又は愛がん動物用飼料の成分につき規格を定めることができる。

出典 【電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ】「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律」(平成二十年法律第八十三号)

ペットフード安全法」は、愛がん動物の健康保護を目的とした法律です。

製造メーカーはこの法律を遵守しながら、ドッグフードを製造・輸入・販売して、記録を帳簿に記載することが義務付けられています。

つまり、国産のドッグフードは、犬に有害な原材料を使うことはあり得ないのです。

国産の安全なドッグフードを食べる犬

Africa Studio/ Shutterstock.com

ペット先進国であるヨーロッパやアメリカでは、ドッグフードの安全基準はあっても、ペットフード専用の法律はなく、飼料と同じように考えられていることが大半です。

よって、日本の「愛がん動物用飼料の安全性の確保に関する法律(通称:ペットフード安全法)」は、世界から見ても、とても先進的な法律と言えるでしょう。

そして、この「ペットフード安全法」により、

✔ドッグフードに使用できる原材料や製造方法についてとても厳しい基準があること

✔法律が守られているかを厳格にチェックする仕組みがあること

も、日本産ドッグフードの安全性を高めています。

【獣医師監修】「ペットフードの基礎知識②」ドッグフードの安全性を守る法律や基準

ドッグフードの原料になる肉類とは?

ドッグフードの原料になる肉類とは?

KucherAV/ Shutterstock.com

ドッグフードの原料になる肉類を「ペットフード公正取引協議会」では以下のように定義しています。

『肉類とは、新鮮又は適正な方法で保存されてある哺乳動物・家禽類(肉・卵・羽などを利用するために飼育される鳥類)などの生肉・肉体部分、ならびにそれら動物のカラダ又はカラダの一部から生じるすべての副産物及びその加工物である』

出典 【ペットフード公正取引協議会・製造について】「ペットフードの原材料一覧表」

【参照元】ペットフード公正取引協議会「製造について」ペットフードの原材料一覧表

ドッグフードの原料「肉類」に使用される動物

ドッグフードの原料「肉類」に使用される動物

iStock.com/adamkaz

牛(ビーフ)
豚(ポーク)
・羊(マトンまたはラム)
・ウサギ
・ニワトリ(チキン)
・七面鳥(ターキー)
・ウズラ など

ドッグフードの原料「肉類」に使用できる動物の部位

ドッグフードの原料「肉類」に使用できる動物の部位

iStock.com/milanfoto

ペットフード安全法」「ペットフードの表示に関する公正競争規約」ともに、部位についての規制はありませんが、「ペットフード安全法」にて「有害な物質を含む愛がん動物用飼料の製造等の禁止」を謳っているので、各製造メーカーは、その観点で使用できる部位を選定しています。

「肉副産物」は犬にとって安全?

「肉副産物」は犬にとって安全?

iStock.com/chris-mueller

「肉副産物」とは、人間が食べるための食用の家禽(かきん)や家畜(牛や豚など)の肉以外の部分で、体幹部の筋肉以外の肉や頭、足、内臓などのことを指します。
※家禽(かきん):鳥類

そもそも犬の祖先であると考えられているオオカミは、野生で狩りをして、肉や内臓、血液など食べられるところは全て食べていました。

また、日本では「ペットフード安全法」によって、犬の健康を害さない原材料を使うことが定められているため、ドッグフードに含まれる「肉副産物」は犬にとって安全です。

「肉副産物」の部位

内臓や血液

内臓や血液

ArtCookStudio / PIXTA(ピクスタ)

動物の内臓や血液には、タンパク質のほかにもビタミンやミネラルが含まれていて、肉の部分とは異なる栄養があります。

人間もの内臓を食べますが、人間が好んで食べない部位や食べきれない肉副産物をドッグフードの原料として活かしています。

羽、フェザーミール

羽、フェザーミール

iStock.com/cinoby

食用の鳥を加工する際に出る羽毛を高圧・高温で蒸して乾燥させた粉状の「フェザーミール」。

鳥の羽毛を加水分解してアミノ酸にまで分解したもので、動物用の飼料に使われています。犬や猫のアレルゲンになりにくいことから、食物アレルギー用のペットフードの原料として使われることがあります。

鶏のトサカ

鶏のトサカ

ibuki / PIXTA(ピクスタ)

「ペットフードには鶏のトサカが含まれている」という話を聞いたことがあるかもしれません。

天然のヒアルロン酸が多く含まれている希少部位として食べられている鶏のトサカは、犬が食べても問題ありません。

「ミール」「ミート」「パウダー」「エキス」は犬にとって安全?

「4Dミート」とペットフード

「4Dミート」とペットフード

iStock.com/NightAndDayImages

ネットなどで噂されている「4Dミート」とは、食肉ランクで、以下を使用した肉を指すようです。

英語日本語
Dead死んだ動物の肉
Dying死にかけの動物の肉
Diseased病気の動物の肉
Disabled障がいのある動物の肉

飼い主が心配するのは、このような「4Dミート」がペットフードとして使われているのではないか、ということでしょう。

しかし、「ペットフード安全法」の製造基準では、そのような原材料を用いることを禁止しています。

ペットフードの製造メーカーとしても、法律を犯してまで、安定的に確保しにくい腐っている肉や感染性の病気にかかって死んだ動物の肉を回収し、ペットフードに使用するメリットはありません。

ペットフード安全法」がある現在の日本では、ペットフードの「ミール」「ミート」「パウダー」は安全な原材料から作られています。

「ミール」の安全性

ドライフードの製造工程

ドライフードの製造工程

279photo Studio/ Shutterstock.com

ドライフードやソフイトドライフードは、どんな原料でも、素材を一旦乾燥させてミール(粉状)にする必要があります。

粉状にした原料を混ぜ合わせ、加湿加温をして練り、押し固めて粒状にするので、「ミール」にしないと、ドライフードやソフイトドライフードは製造できないのです。

「パウダー」も「粉」という意味なので、「ミール(粉状)」と同様に考えてください。

なお、「ペットフードの表示に関する公正競争規約」では、原料を調達する時点で粉(ミール)状態になっているものは「〇〇ミール」と表示することを規定しています。

さらに、調達した粉(ミール)についても、すべての成分を明示して環境省および農林水産省へ提出しないといけないので、犬のカラダに害がある成分が入っているドッグフードが世の中に流通することはまずありえません。

「ペットフード安全法」により、犬のカラダに害を及ぼす部位は使用できない

「ペットフード安全法」により、犬のカラダに害を及ぼす部位は使用できない

iStock.com/RawPhoto1

「ミートボーンミール」は肉と骨を粉状にした「肉骨粉(にくこっぷん)」のことで、「ミートミール」は肉を粉状にした「肉粉」、肉や肉副産物を加熱処理し、油を搾り取って乾燥させて粉末状にしたものです。

農林水産省では、2001年に世界規模で発生したBSEにより、肉骨粉の使用を禁じていましたが、2007年1月以降、牛由来の原料が入っていない肉骨粉の使用を一部解除しました。

現在、「ミートボーンミール」と表示されているのは、おもに豚や羊、馬などから作られたものです。

「『〇〇ミール』と表示するのは、得体の知れない原材料を使っているから」という情報も耳にしますが、ドッグフードに使用できる動物・部位が「ペットフード安全法」で定められているので、犬に害のある部位は一切含まれていません。

「肉骨粉」への不安を煽ったBSE(牛海綿状脳症)とは

BSE(牛海綿状脳症)は、牛の病気の一つ。牛が「プリオン」と言う病原体に感染することで発症し、脳の組織がスポンジ状にスカスカになって、攻撃的または沈鬱状態になったり、運動失調になったりして、やがて死に至る病気です。

世界で初めて発生が確認されたのはイギリス(1986年)で、その後、各国に感染が拡大しました。

日本でも2001年9月から2009年1月までに36頭の感染が確認されました。

BSE感染がそこまで拡大した原因として考えられているのが、牛の餌に使われていた肉骨粉です。

そもそも牛は、草食動物なので肉は食べないのですが、欧米では牛乳の生産量を増やしたり、体重を増加させるための方法として、動物性タンパク質の肉骨粉を牛に与えていました。

「プリオン」は、加熱処理をする時の温度が低いと死滅しないため、牛の飼料となっても感染力が落ちなかったようです。

BSEの影響で、今でも「肉骨粉」と聞くだけで敬遠する人もいるかと思います。

しかし、「牛の脳や脊髄などの組織を家畜の餌に混ぜない」という規制が世界的に行われたので、1992年に約3万7千頭発生したBSEも2013年には7頭に、日本では、2003年以降に出生した牛からはBSEは発見されていません。

さらに、日本では2001年からBSE発生国からの牛肉の輸入禁止、すべての動物由来タンパク質の動物飼料への使用禁止、全国一斉のESE検査を行ってきましたが、最新の知見に基づいて、段階的に規制を緩和しています。

2011年には、BSE検査対象の月齢引き上げや、食用を禁じていた一部の部位の解禁、従来輸入が可能だったアメリカ合衆国、カナダに加え、フランスとオランダからの輸入を再開。2017年には、畜場での健康な牛のBSE検査を廃止しました。

「チキンミール」「家禽ミール」の安全性

「チキンミール」「家禽ミール」の安全性

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「家禽(かきん)」とは、肉・卵・羽毛などを利用するために飼育している鳥の総称です。よって、鶏も「家禽」です。

「チキンミール」「家禽ミール」とは、食用の鳥を屠殺する際に発生する副産物を乾燥させて細かく砕いたものです。

アメリカでは七面鳥も用いられています。

日本では、「ペットフード安全法」で「有害な物質を含む愛がん動物用飼料の製造等の禁止」を謳っているので、「チキンミール」「家禽ミール」も犬が食べても安全です。

「チキンミール」「家禽ミール」と酸化防止剤

「チキンミール」「家禽ミール」と酸化防止剤

iStock.com/sukrita

チキンミールを含め、すべての肉粉・肉骨粉がBSEの影響を受けて、一時使用禁止となりましたが、厚生労働省の最新の科学的知見に基づいて規制が緩和された今では、牛の肉骨粉や肉粉に替わる原料として多く使用されています。

ただし、鶏の脂は酸化を受けやすい性質があるため、ペットフードに活用する際には、規定された量以内の酸化防止剤を用いて酸化を防ぐなど、品質管理には十分な注意がなされています。

【獣医師監修】ドッグフードへの不安を解消! 犬にとって安全な「肉」の原材料とは?

「家禽ミール」は、犬の体調不良の原因になる?

「ドッグフードに、微生物に感染した鶏肉が使われないか?」という声も聞かれますが、鳥インフルエンザに感染した鳥は、「家畜伝染病予防法」によって正しく処分され、ドッグフードの原料になることはありません。

さたに、ドライフードは100度以上の高温での加熱処理、缶詰は120度以上のレトルト殺菌処理を行って製造されるので、ウイルスは死滅します。

「家禽ミール」は犬に安全なので、体調不良の原因にはなりません。

「エキス」の安全性

「エキス」の安全性

Labrador Photo Video/ Shutterstock.com

「エキス」は、さまざまな肉類の煮汁や抽出液を濃縮させたもので、ドッグフードには「チキンエキス」などと表示されています。

おもに、嗜好性の向上や改善のために加えられることが多いようです。

これも「ミール」「パウダー」と同様に、「危険な部位を使用しているから『〇〇パウダー』とごまかしている」という情報を見かけますが、正しい見解は「ミール」「パウダー」などと同じく、日本では「ペッフード安全法」により、犬にとって害のある部位は使用できません。

犬にとって安全な「肉」まとめ

犬にとって安全な「肉」まとめ

iStock.com/Mladen Sladojevic

ドッグフードに含まれる「肉」に関して正しい知識を身につけるのは、愛犬の健やかな成長と健康を守るために大切なことです。

愛犬を守ってあげられるのは飼い主だけです。

愛犬と長く楽しい生活を送るためにも、しっかり愛犬の健康管理をおこないましょう。

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