【この病気は、先天的? 後天的?】うちのコの弱いところを知ろう

【KNOW YOUR DOGS! 君をもっと知りたい!】愛犬の性質や性格と同時に、犬種によってなりやすい病気や弱いところも知っておきたいですね。そこで今回は獣医師でもあり、東京大学で犬ゲノムの研究も行っている渡邊学先生に、遺伝学の見地から教えてもらいます。(MY♡DOG Spring 2020 Vol.2より)

【この病気は、先天的? 後天的?】うちのコの弱いところを知ろう
先生にお聞きしました
渡邊 学(わたなべまなぶ)先生
東京大学大学院新領域創成科学研究科特任教授。
犬や猫のゲノムを解析・診断することによる、さまざまな病気の解明や治療方法の研究。
また、“盲導犬ゲノムプロジェクト”を展開する盲導犬歩行学研究室を主宰し、盲導犬や視覚障害者のための研究も進めている
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テーマは“単因子病”と“多因子病” 。違いを知れば、愛犬へのかかわり方を見直すきっかけに。

遺伝学の見地から教えてもらいました

遺伝による犬の病気について研究している渡邊先生。犬種によって、生まれつき発症しやすい病気があるのかを尋ねると「先天的な要因と、後天的な要因で病気になるパターンが違います」と、回答が。

先天的な病気の多くは“単因子病”と言って、その犬が遺伝的に持っているゲノム(遺伝子)の性質によって引き起こされるものが多くなっています。それに対する“多因子病”は、遺伝的な性質に加え、その後の生活スタイルによって、病気になりやすくなるパターンです。渡邊先生は「人でたとえると、肺がんになりやすい家系の人がタバコを吸い続けて暮らすと、さらにリスクが高まる、という話に似ていますね」と説明。遺伝的には病気になりにくい性質を持っている犬種でも、運動をしなかったり、ごはんをしっかり食べなかったりと、病気になりやすい生活をしていれば、発症に対するリスクが高まってしまうそう。

「遺伝病は、発症した場合には、その多くが対症療法になります」と、渡邊先生。「愛犬の生まれつき持っている性質を把握し、健康的な生活を心がけることで、異変に対してもすぐに気づくことができるはずです」と、続けます。

単因子病とは?

「たとえば、パピヨンには脳神経に関するゲノムに異常があると、生後数カ月で死亡してしまう遺伝病があります」と、渡邊先生。単因子病は遺伝的な要因が大きく、症状によっては早期に死亡することもあるそうです。また、「親が病気の原因となるゲノムを持つか検査し、交配の組み合わせを考えることで、子が病気になるリスクを下げることが可能になります」とも

単因子病とは?

多因子病とは?

遺伝的に持っている特徴に加えて、その後の生活によって発症した病気のこと。例えば、ミニチュア・ダックスフンドは軟骨異栄養性犬種(なんこついえいようせいけんしゅ)と呼ばれ、遺伝的に椎間板(ついかんばん)ヘルニアになりやすい犬種です。「それに加えて、肥満体質になったり、滑りやすいフローリングで生活をしたりすることで、股関節に負担がかかり、発症のリスクが高まります」と、渡邊先生は語ります

多因子病とは?

犬種ごとになりやすい病気って違うの?

遺伝病について理解を深めたところで、うちのコはどのような病気になりやすいのか知りたいところ。そもそも、病気に「なりやすい」「なりにくい」ってどうやって判断すれば良いのでしょうか?

犬種ごとの疾患分類の数を目安にするとわかりやすい

渡邊先生によると、「私が参考にしている文献には、『疾患分類』という、犬種ごとに罹患(りかん)しやすい病気の総数をまとめた研究結果がありました」とのこと。この「疾患分類の総数」を集計すると、数が多い犬種と、少ない犬種で大きく差がある様子。「絶対とは言い切れませんが、疾患分類の数を見ると、愛犬が病気にかかりやすい犬種なのかがわかり、対策も立てやすくなるかもしれませんね」と渡邊先生は話します。

疾患分類とは?

犬が罹患した原因を、行動疾患や循環器系疾患、がん・新生物など、病気の種類ごとに分類をしたもの。今回は、渡邊先生が参考文献として挙げた書籍『Breed Predispositions to Disease in Dogs and Cats(犬および猫の病気に対する品種の傾向、第3版): 著 アレックス・ゴフ 他』の内容を参考に、グラフにしてみました。

疾患分類が多いのは、どの犬種?

疾患分類が多いのは、どの犬種?

※グラフの数字は『Breed Predispositions to Disease in Dogs and Cats(犬および猫の病気に対する品種の傾向、第3版): 著 アレックス・ゴフ 他』を参照したものであり、絶対的な結果というわけではありません。

疾患分類の多い犬種

ジャーマン・シェパード・ドッグやラブラドール・レトリーバー、ゴールデン・レトリーバー、アメリカン・コッカー・スパニエルは、疾患分類の数が多く見られます。次いでミニチュア・シュナウザー、ヨークシャー・テリア、ダックスフンドが多いほか、パグのような短頭種も症例が多いよう

疾患分類の多い犬種

疾患分類の少ない犬種

疾患分類の多かった犬種と比べ、目に見えるほど数が少ないのは、柴やボルゾイ、イタリアン・グレーハウンド、ノーフォーク・テリアなど。次いで、ブリタニー・スパニエルやミニチュア・ピンシャーなども比較的疾患分類の数は少ないようです

疾患分類の少ない犬種

遺伝病のリスクは、下げる方法もある?

病気になりにくい親同士で交配する

「遺伝には“優性遺伝”と“劣性遺伝”がありますが、後者の遺伝子を持つ親犬を交配することで、病気に弱い子犬が誕生するリスクが高まるといわれています」と、渡邊先生。ゲノム検査で遺伝子の構造を把握し、劣性遺伝同士の交配をしないようにすれば、遺伝病になる子犬が生まれるリスクを下げられる可能性も。「今、日本ではゲノム検査をできる場所が数カ所しかないのですが、将来的にはもっと身近に検査ができるようになるかもしれませんね」と、渡邊先生は語ります。

病気になりにくい親同士で交配する

一般的に優性遺伝と劣性遺伝の関係性は、「メンデルの法則」。ゲノム検査は、成犬になりたてくらいが安定した結果が出やすいそう

これは病気かな? と思ったら

愛犬の写真や動画を撮影して、記録しよう

愛犬の具合が悪そうなとき、その症状を獣医師に伝えるのは難しいもの。また動物病院に連れていっても、そこで症状が出ないこともあります。渡邊先生は、「私の私見ではあるのですが、ワンちゃんの様子を写真や動画で記録して、獣医師に見てもらうと伝わりやすいのではないかと思います」と、提案。口頭で説明するよりも伝わりやすく、二次診療でも役立ち、よりよい治療を受けられる可能性が高くなるそうです。

愛犬の写真や動画を撮影して、記録しよう

愛犬が急に具合が悪くなると、飼い主さんも焦りがち。落ち着いて、愛犬の様子を獣医師に伝えて!

企画&構成/ SOULWORK 撮影/秋馬ユタカ 取材&文/高橋健太 イラスト/田代耕一
写真提供/獣医神経病クリニック院長 奥野征一先生
監修協力/東京大学大学院農学生命科学研究科 坪井誠也特任助教

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