ProfessionalインタビューVol.2 村山信雄先生「犬と猫の皮膚科クリニック」代表
hottoの記事を監修していただいている動物のプロフェッショナルに専門領域でのご経験や方針、また今後の展望などを伺うシリーズProfessional インタビュー。第2回は皮膚科専門の2次診療を行う「犬と猫の皮膚科クリニック」代表でアジア皮膚科専門医の村山信雄先生にお話を伺いました。
- 更新日:
【学歴・経歴】
◇1968年10月:東京生まれ
◇1994年3月:帯広畜産大学畜産学部獣医学科卒業
◇1994年4月:根室地区農業共済組合勤務
◇1996年8月:寺田動物病院(大阪)勤務
◇1997年8月:めむろ動物病院(北海道)勤務
◇2010年8月:アジア獣医皮膚科専門医取得
◇2012年9月:岐阜大学連合大学院にて博士(獣医学)取得
◇2012年10月:犬と猫の皮膚科設立
◇2016年3月:犬と猫の皮膚科クリニック開設
【資格】
◇獣医師
【所属学会】
◆日本獣医皮膚科学会
◆アジア獣医皮膚科学会
アジア獣医皮膚科専門医協会
【役職】
◆東京薬科大学客員研究員
【hotto Professionalインタビュー】
ProfessionalインタビューVol.2 村山信雄先生「犬と猫の皮膚科クリニック」代表
「聞くこと」を徹底し、飼い主さんが納得できる治療を
―「犬と猫の皮膚科クリニック」の特徴を教えてください。
村山:犬と猫の皮膚科は、私を含む3名の「アジア獣医皮膚科専門医」およびその「レジデント(専門医になるための研修生。現在、研修期間はすでに終了し、来年の試験待ち)」が、皆様のかかりつけの動物病院の先生からご紹介を受けた犬と猫の皮膚疾患の治療を専門に行う2次診療のクリニックです。
診療後は当クリニックの担当獣医師から、かかりつけの先生へ「診療報告」を行っており、先生と相談した上で治療方針を決定、必要に応じて当院で継続治療をさせていただく場合もあります。
―皮膚科専門の動物病院は珍しいですね。
村山:確かに日本ではまだ動物の専門医療自体が広く普及しているわけではないので、皮膚科専門のクリニックも数は多くないですね。
―「アジア獣医皮膚科専門医」とはどのような資格なのですか?
村山:動物の専門医制度は、動物医療の臨床・研究の推進、優れた人材育成のためにアメリカで始まった制度で、国単位ではなく北米、ヨーロッパ、アジアといった地域単位で認定される仕組みになっています。
アジア獣医皮膚科専門医が正式に認定されたのは2010年からですが、認定を受けるには一定の診療件数、学会発表や英文論文はもちろん、かなり厳しい学科試験に合格することも求められるため、日本人はまだ私を含めて「6人」しか認定されていません。
一般社団法人日本獣医皮膚科学会 アジア獣医皮膚科専門医についてアジア獣医皮膚科専門医について
一般社団法人日本獣医皮膚科学会 アジア獣医皮膚科専門医リストアジア獣医皮膚科専門医リスト
―2次診療にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
村山:皮膚科に限らず、専門医による経験に裏打ちされたより精度の高い治療を受けられる可能性が高いのが、「2次診療」を受診するメリットですね。
皮膚科専門医の場合は皮膚科の症例を広く深く経験している分、個体ごとに最適な治療法やタイミングを見極める能力に長けています。
たとえば、かゆみ止め1つとっても、かゆみを訴える個体すべてに同じ薬を処方すれば良いわけではなく、個々の症状を見て最適な薬を見極めてやる必要がありますし、タイミングを見計らって薬の種類を変えることで症状が改善することも珍しくありません。
シャンプーも洗い方や頻度を変えるだけで、皮膚の状態がより効果的によくなることがあります。
また、「専門的な検査」ができるのも2次診療クリニックの強みの1つです。
当院では皮膚の一部を切り取って皮膚の下で何が起こっているのかを調べる「病理検査」を行っています。
表面上は同じ皮膚炎のように見えても、病理検査で調べてみると皮膚が厚くなっているケースもあれば、皮脂腺(毛穴に付属する脂の線)が集まっているケースもあり、症状は様々です。
「病理検査」をすることによって症状を見極めることができれば、より適切な治療を施すことができます。
もちろん、皮膚の一部を直径6mmの円形の刃で切り取る訳ですが、多くの症例では、局所麻酔で実施してますので、その日に帰宅しています。
―動物たちの診療にあたって、どのようなことを心がけていますか?
村山:とにかく飼い主さんのお話をしっかり聞くことです。
そのため、当クリニックでは診療は「完全予約制」とし、初診は60分、再診は30分を確保しています。
じっくり時間をかけて飼い主さんのお話を伺って疑問や不安を理解し、それらを解消するために、Simplicity(わかりやすい診療)、Satisfaction(満足できる治療)、Smile(ご家族の笑顔)の「3S」を実現する治療を提供することを目指しています。
皮膚疾患は治療に時間がかかることも多く、全快には至らないケースも珍しくありません。
一生病気と付き合いながら生活していくことになったとしても、飼い主さんに「できる限りのことはやった」と納得していただけるよう、治療を通じてサポートしていきたいと思っています。
また、専門医だからこそ特に気を付けているのは、先入観を持たないこと。
長く皮膚科専門でやっているので皮膚の状態を見ただけで病名がわかることも多いのですが、必ずしもそれが正しいとは限りませんし、思い込みが誤った治療に繋がってしまうおそれもあります。
それを防ぐために、初診ではどの飼い主さんにも敢えて同じ質問をして、普段の食事管理やスキンケア、最近の愛犬・猫の様子などの情報を聞き取り、その情報に基づいて思い込みにとらわれることなく、客観的に治療方針を決めるように心がけています。
―今後の目標を教えてください。
村山:「目標は、飼い主さんやスタッフはもちろん、私自身や家族も含めてクリニックに関わるすべての人が幸せに暮らせるようにすること」です。
そのためにも常に前向きな気持ちで自信をもって治療に取り組めるよう、これからも立ち止まることなく学び続けたいと思っています。
同時に、獣医師を対象にしたセミナーなどの教育活動や専門医育成のためのレジデント研修を通じて、日本の動物医療の向上にも貢献していきます。
特にまだ日本ではあまり知られていない「アジア獣医皮膚科専門医制度」の認知度向上に努め、専門医の育成にも力を入れていきたいと考えています。
一般社団法人日本獣医皮膚科学会 アジア獣医皮膚科専門医についてアジア獣医皮膚科専門医について
<病院DATA>
【病院名】犬と猫の皮膚科
【住所】東京都江東区平野2丁目11-14 TANDEM平野ビル1F
【電話】03-6458-5546
【HP】https://animal-skin.jp/
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