【獣医師監修】犬に草を食べさせても大丈夫?草を欲しがる理由や草の代わりは?注意点や危険な植物!
愛犬が散歩中などに草を食べることもあるでしょう。犬はなぜ草を食べたがるのでしょうか?その理由や、「草を与えても大丈夫か?」「草の代わりになるものはあるのか?」。また、食べたがる草に関する注意点、口にしてはいけない草の種類などの種類について詳しく解説します。
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◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬に草を食べさせても大丈夫?必要?
iStock.com/K_Thalhofer
愛犬が散歩中に草を食べることはなるべく控えさせたほうがよいでしょう。
犬が口にして大丈夫な草もありますが、中毒症状を引き起こす植物もあります。
また、除草剤(農薬)が草についている危険性もあります。
内部寄生虫などの感染症にかかった犬の排泄物が、草に付着している可能性もあるでしょう。
ダニなどが草に潜んでいることも考えられます。
iStock.com/zoranm
通常は食べた草は糞便(ふんべん)に出てくるか、犬が吐き出したりしますが、丈の長い草をたくさん食べて腸に詰まる(腸閉塞)ケースもまれにあります。
腸閉塞を起こすと、胃腸での通過障害により、下痢、嘔吐、食欲不振、便秘などが症状として現れ、早急に治療を行わないと命に関わるので軽視できません。
そもそも、犬が草を食べる必要はありません。
草を食べることは健康な犬に普通に起こりますが、一般的には病気や栄養的なニーズとは関係ないという報告が、アメリカのカリフォルニア大学からなされています。
なぜ、犬は草を食べたがる?草の代わりは?
iStock.com/TatianaNurieva
犬が草を食べたがる理由は、以下が考えられます。
草を食べる理由①【ストレス解消】
lalalululala- stock.adobe.com
愛犬が草を食べる理由のひとつは、ストレス解消のためだと考えられます。
せっかく散歩に出ているのに、飼い主さんと楽しめない時や、ドッグランでほかの犬や飼い主さんと仲良く遊べない時など、愛犬が草を食べ始めることも多いのではないでしょうか?
自宅の庭に出た愛犬が刺激不足で退屈してくると、手近な芝生を食べるケースが増えるようです。
農薬も散布していない芝生ならば愛犬が食べても問題ありませんが、散歩中の草の代わりとして、飼い主さんは愛犬とコミュニケーションを取りながらストレスフリーで楽しいお散歩タイムを提供してあげたいものです。
豊富な運動量が必要な犬種には、十分な散歩時間を確保するのもストレス解消に重要です。
草を食べる理由②【消化不良】
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犬は胃腸の不調(胸焼けなど)を吐くことで解消するために、草を食べるという説があります。
実際に、草を食べた直後に吐く犬は少なくありません。
気になるようであれば、屋外の草の代わりに、ごはんにキャベツなどの葉野菜をトッピングしてみてください。
それでも吐き気が残る場合や、吐しゃ物に血液が混じっている場合などは、獣医師に相談を。
ドッグフードが体に合っていなくて、お腹がキュルキュルするなどの違和感を感じて、本能的に消化を促す食物繊維を摂取しようとして草を食べている可能性もあります。
その疑いがある場合は、ドッグフードの種類を変えてみるのをおすすめします。
草を食べる理由③【栄養バランスの乱れ】
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おやつの与えすぎや総合栄養食ではないドッグフードを常食していたり、栄養素やカロリーが足りない手作り食で栄養バランスが崩れていると、犬は本能的に不足しているミネラルなどを補おうとして、草や土を食べることがあります。
お腹に寄生虫がいて、寄生虫に栄養を取られてしまっている場合も同様です。
栄養バランスが壊れていると、犬は痩せてきたり下痢をしたりするでしょう。
こうした症状も見られたら、なるべく早く動物病院の診察を受けてください。
内部寄生虫であれば駆虫(くちゅう)、食事による栄養バランスの乱れであれば総合栄養食を中心にした食生活や、手作り食のレシピを見直すことで健康を取り戻せるでしょう。
草を食べる理由④【遊び】
Deer_Hunter / PIXTA(ピクスタ)
犬はそもそも草むらが好きなので、外出先の草むらで遊んでいる時に草を食べて遊ぶこともあるでしょう。
野菜を食べているような感覚なのかもしれません。
そのような行動が多い愛犬に安全な草を食べてもらいたい場合、家庭菜園で犬が食べても大丈夫な野菜を育てて、時々自由にかじらせるのもよいでしょう。
犬が食べてはいけない草の種類は?
iStock.com/Fischer S.
自らの身を守るために毒を持つ植物は多数あり、人や犬に安全な植物は実際には多くありません。
犬が食べてはいけない草の種類を事前に頭に入れ、それらを愛犬が口にしないようにしましょう。
なお、口に入れなくても、触れるだけで皮膚がかぶれたり(キク科の植物に多い)、アレルギー症状を招く草もあるので注意が必要です。
犬に危険な植物の代表例は以下のとおりです。
【犬に危険な植物の代表例】
【バラ科の植物】 | |
---|---|
危険な植物① | ・朝顔 |
危険な植物② | ・パンジー |
危険な植物③ | ・モロヘイヤ |
危険な植物④ | ・ユリ科の植物の球根(ヒガンバナ、玉ねぎ、ノビル、にんにくなど) |
危険な植物⑤ | ・すずらん |
危険な植物⑥ | ・キョウチクトウ |
危険な植物⑦ | ・きつねのてぶくろ(ジギタリス) |
危険な植物⑧ | ・コンフリー |
危険な植物⑨ | ・桔梗 |
危険な植物⑩ | ・水仙 |
危険な植物⑪ | ・マリーゴールド |
危険な植物⑫ | ・ハイビスカス |
危険な植物⑬ | ・ポインセチア |
危険な植物⑭ | ・ベゴニア |
危険な植物⑮ | ・キク科の植物(かぶれる) |
危険な植物⑯ | ・ショウメイギク(かぶれる) |
危険な植物⑰ | ・漆科の植物(漆、ヌルデ、ハゼノキなど)--枝からしたたり落ちる水でかぶれるため、草むらや藪にいる犬も注意が必要。 |
危険な植物⑱ | ・よもぎ(花粉がアレルゲンになる犬もいる) |
危険な植物⑲ | ・稲(花粉がアレルゲンになる犬もいる) |
危険な植物⑳ | ・セイダカアワダチソウ(花粉がアレルゲンになる犬もいる) |
【参考元】国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構「写真で見る家畜の有毒植物と中毒」
犬が危険な草を食べてしまった場合の対処方法は?(嘔吐・下痢・血便など)
Nicole Lienemann- stock.adobe.com
愛犬が有毒な草を食べてしまった場合、一般的には下痢、嘔吐、大量のよだれ、血便、神経症状が現れます。
食べた植物の種類によって症状がやや異なりますが、愛犬の様子を注意してみておいてください。
このような状態に愛犬がなったら、すぐに動物病院へ。
獣医師の判断により催吐剤(さいとざい)を投与して吐かせたり、中毒症状に対する薬物の投与を行う必要があります。
犬が草を食べる際の注意点!
iStock.com/vchal
犬が草を食べる際は、草の種類だけを気をつければよいわけではありません。
昆虫や寄生虫、農薬などにも注意が必要です。
草を食べる際の注意点①【寄生虫】
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草むらには寄生虫も多く生息しています。
マダニは、草木の葉先などに潜んでいて、接触した動物に移ってきます。
森林や里山だけでなく、公園や河川敷の草むらなど生活の身近なところにもマダニやノミは潜んでいます。
マダニに大量に寄生されて吸血されると貧血になったり、マダニやノミの唾液がアレルゲンとなり強い痒みや皮膚炎を引き起こしたりするので要注意。
さらに近年、西日本を中心に広がっているマダニ媒介性感染症である「重症熱性血小板減少症候群(Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: SFTS)」があり、2020年5月までに70名の死亡例が出ているので、飼い主さんも寄生されないようにしなければなりません。
マダニは貧血を起こすバベシア症、ライム病、日本紅斑熱、Q熱などの病気の原因になることも知られています。
愛犬には定期的にマダニとノミの寄生を予防するために、滴下剤(スポットタイプの予防薬・駆虫薬)を投与するのが重要です。
コクシジウムやジアルジアなど、内部寄生虫に感染した犬が草むらに糞便(ふんべん)を残し、それを違う犬が草を食べる際に口にして寄生虫に感染することもあります。
多くの犬が糞便をしている可能性のある草むらには、立ち入らないようにしましょう。
草を食べる際の注意点②【昆虫】
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藪(やぶ)にはミツバチ、スズメバチ、アシナガバチなどが隠れていることもあります。
藪や草むらで遊んでいる愛犬のそばにハチが飛んでいたら、近くに巣がないか注意をして観察してください。
もしハチの巣を見つけたら遠ざかり、刺されないようにしましょう。
ムカデやヘビなど、刺されたり咬まれたりすると毒性が強い生物にも要注意。
草を食べる際の注意点③【除草剤(農薬)・駆虫剤】
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春から秋にかけては、遊歩道だけではなく、公園や川沿いの歩道、駐車場などに除草剤(農薬)が散布されている可能性があります。
除草剤によっては犬に強い中毒性を示すものもあるので気をつけましょう。
除草剤の付いた植物を食べるだけでなく、愛犬の足裏や体に付いたものをなめることで体に入る危険性もあります。
住宅のまわりには、ナメクジやアリなどの害を防ぐための駆虫剤(くちゅうざい)が使用されていることもあります。
除草剤や駆虫剤の成分によって毒性の強弱はありますが、犬が中毒症状を起こすと、下痢、嘔吐、よだれ、血便、興奮、運動失調、虚脱、ショック、昏睡、呼吸困難などの症状が起こることが知られています。
除草剤や駆虫剤の中毒が疑われた場合は、緊急で動物病院に向かってください。
まとめ
iStock.com/Obradovic
犬はよく草を食べる習性があります。
その理由に関しては諸説あり、さまざまな理由で草を食べるようです。
ただし、毒性のない植物であっても、除草剤や寄生虫などの問題があるため、自宅の庭の安全な野菜以外は、なるべく愛犬に草を食べさせないようにしたほうがよいでしょう。
愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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