【獣医師監修】犬が血便(下痢・ゼリー状)をした。ストレスが原因?症状や注意点、対処、予防方法!
犬が急に血便を出すと慌ててしまいますよね。一口に血便と言っても、一筋血が混じっている程度のうんちから、ゼリー状、トマトジュース状、黒っぽいダール状のものまで様々です。原因も腸内寄生虫や感染症、胃腸炎、腫瘍、ストレス…といろいろ。今回は、犬の血便について詳しく解説します。
投稿日: 更新日:
同大学付属動物医療センター 消化器科担当 獣医師
1993年に北海道大学獣医学部獣医学科を卒業し、獣医師免許を取得。
神奈川の動物病院で数年の勤務の後、北海道大学大学院獣医学研究科に入学、イヌの肥満の分子生物学をテーマに博士号を取得。その後、博士研究員を経て2005年より現職。
動物看護師の教育に携わりながら付属動物医療センターでは消化器科を受け持ち、内視鏡検査などを担当。
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆日本動物看護学会誌 編集委員長
◆全国動物保健看護系大学協会カリキュラム委員長
◆動物看護師統一認定機構カリキュラム検討委員長および問題策定委員長
【著書】
・「犬と猫の臨床検査マスターブック 検査の意義とテクニックのポイント」(AS BOOKS)
など
目次
犬の血便【原因や理由、病気は?】
Javier Brosch/ Shutterstock.com
犬の血便の色は大きく2つ:赤と黒
犬の血便には大きく分けて「真っ赤な鮮血が混じったうんち」と「黒っぽいタール状のうんち」とがあります。
この色によって出血部位がおおまかに判断できるのです。
犬の血便の種類①【真っ赤な鮮血が混じった血便】
愛犬のうんちに真っ赤な鮮血が見られる場合は、消化管の下部である大腸(結腸・直腸)や肛門周辺の出血である可能性が高くなります。
出血してから体外に排出されるまでの時間が短いために、新鮮なままの赤い色をしていると考えられるからです。
この場合、下痢、およびトイレの回数が増えることがある他、腸内にうんちが形成されていないと血液のみが排出されることもあります。
sommart sombutwanitkul/ Shutterstock.com
犬の血便の種類②【黒っぽいタール状の血便】
愛犬のうんちが黒っぽくタール状の場合は、消化管の上部にある胃や小腸からの出血と考えられます。
出血してから肛門に至るまでの間に消化管内で血液中のヘモグロビンが酸化を受け、その化学反応によって色が黒っぽく見えるためです。
ここからは血便の原因について考えてみましょう。
犬の血便の原因①【赤い色が付く食べ物や物を口にした】
犬の血便と勘違いしやすいものとして、分解されないような赤い色素を含む物を口にして、その色がうんちに出てくるということもあり得ます。
この場合、血便ではありません。
rotkit / PIXTA(ピクスタ)
犬の血便の原因②【急な食事の変更、食べ慣れない物、アレルギー】
普段食べ慣れない物やアレルゲンとなる物を口にしたことで、胃腸粘膜に炎症が起こり、血便が見られることもあります。
犬の血便の原因③【異物の誤飲】
プラスチックや金属の破片、おもちゃなど、犬が異物を誤飲することで胃腸粘膜が傷つき、出血する可能性も考えられます。
犬の血便の原因④【中毒】
食品(腐った食べ物を含む)や薬品、生活用品など中毒を起こす可能性のある物を犬が口にして胃腸に炎症が起こり、出血することがあります。
Jaromir Chalabala / PIXTA(ピクスタ)
犬の血便の原因⑤【ウイルス感染症】
ウイルスの感染によって消化管に障害が生じることがありますが、特にパルボウイルスでは突然の嘔吐とともにトマトジュースのような血便が見られ、重度の脱水状態に陥ります。
この場合、うんちの中にウイルスが存在するため、他の犬への感染を防ぐ必要もあります。
犬の血便の原因⑥【細菌感染】
サルモネラやカンピロバクター、クロストリジウム、大腸菌などの細菌に感染することによって、腸に炎症が生じることがあり(細菌性腸炎)、血便の他、食欲不振や嘔吐、下痢、脱水症状などが見られます。
犬の血便の原因⑦【腸内(消化管内)寄生虫】
犬の消化管の中に回虫や鞭虫(べんちゅう)、鉤虫(こうちゅう)、条虫などが寄生することによって腸粘膜が傷つけられ、出血することがあります。
下痢や嘔吐が見られる他、うんちの中に虫が混じっていることも。
FamVeld / PIXTA(ピクスタ)
犬の血便の原因⑧【ストレス】
犬が何らかの強いストレスを受けると腸内細菌のバランスに影響し、お腹が緩くなることがありますが、その他、ストレスによって腸の収縮運動が増し、痛みを感じやすくなって突発的に激しい下痢や血便が見られる病気もあります(過敏性腸症候群/IBS)。
この過敏性腸症候群では、治ってはまた繰り返すというのが特徴的で、ストレスの原因を探し出し、それに対処することが何より大事となります。
犬の血便の原因⑨【腸疾患】
炎症性腸疾患/IBD(またの疾患名を免疫抑制薬反応性腸症/IRE)や、出血性腸炎など、腸のトラブルによって血便が見られることは珍しくありません。
プレドニゾロンなどの免疫抑制薬が有効となるため、昨今では免疫抑制薬反応性腸症とも呼ばれるようになっている炎症性腸疾患では、白血球が腸に集まり、炎症が生じることで慢性的な下痢や嘔吐が見られます。
残念ながら原因は不明です。
一方、出血性腸炎では急激に胃腸粘膜が炎症を起こして出血し、嘔吐や下痢、真っ赤な血便が見られます。
Burdun / PIXTA(ピクスタ)
犬の血便の原因⑩【癌(がん)・腫瘍、ポリープ】
消化管内、もしくはその周囲に腸腺癌(ちょうせんがん)や消化器型リンパ腫、肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)などの癌・腫瘍、ポリープなどができることによって消化管に障害が生じ、血便が見られることもあります。
犬の炎症性結直腸ポリープでは、大腸(結腸・直腸)に炎症性のポリープができ、排便障害や血便が見られますが、場合によっては直腸腺癌に発展することも…。
この病気は原因不明なものの、ミニチュア・ダックスフンドで好発することが知られています。
犬の血便の原因⑪【肛門嚢炎(こうもんのうえん)】
血便のように見えて、肛門嚢が破裂したり、肛門付近が切れたりして出血することも考えられます。
犬の血便の原因⑫【その他の病気】
その他、状況によっては肝臓病や腎臓病、免疫系疾患、ホルモン分泌に関連する疾患などによって血便が見られる可能性もあります。
犬の血便【緊急を要する症状、注意点は?】
Soloviova Liudmyla/ Shutterstock.com
血便の他に以下のような症状が見られた場合は、すぐに動物病院へ行くことをおすすめします。
食欲がない
元気がない、ぐったりしている
血便の回数が多い、血便が続く
嘔吐
下痢
舌や歯茎が白っぽく見える
中毒を起こしそうな物を口にした気配がある
何かを誤飲した気配がある
脱水を起こしている、出血が多くて貧血を起こしているなど、命に関わる場合もあるので、「様子を見よう」は禁物です。
犬の血便【応急処置や対処法、予防方法は?】
Khakimullin Aleksandr/ Shutterstock.com
犬の血便【応急処置・対処法】
愛犬に血便が見られた時には、何かいつもと違う物を口にしなかったか、肛門周辺に傷などないか確認するとともに、できれば現物のうんちを持参して(なければ写真に撮って)、動物病院で診てらもいましょう。
血便の原因を探るためには便検査をはじめ、尿検査、血液検査、場合によってはレントゲン検査や超音波検査なども必要になることがあります。
食べ物が原因であるなら、食事の変更だけで改善する場合もあれば、寄生虫なら駆虫薬、癌であるならその治療や手術、ストレスでは環境改善など、原因に沿った対処が必要になり、その原因によっては治療が長引く場合もあります。
使用する薬にしても整腸剤や抗生物質から、脱水があるなら輸液など状況によって様々なので、血便を自己判断するのは危険です。
TercoPics/ Shutterstock.com
犬の血便【予防方法】
特に病気による犬の血便は予防するのがなかなか難しいでしょうが、中には予防が可能なものもあるので、できることは予防を心がけましょう。
食事を変える時には一週間程度かけてゆっくり切り替える
中毒を起こしそうな物や危険な物は犬の周りに置かない
拾い食いなどしないようしつけをする
犬にストレスがありそうな時は原因を探り、なるべくそれを排除し、ストレスコントロールを心がける
定期的に健康診断を受け、病気の早期発見を心がける
パルボウイルスやジステンパーなど感染症の予防ワクチンを接種する
検便、および腸内寄生虫が発見された時には駆虫を行なう
犬の血便【人間用の市販薬を飲ませても大丈夫?】
megaflopp / PIXTA(ピクスタ)
犬の血便にはいろいろな原因があるため、その原因に合わせた治療、対処が必要になります。
したがって、原因がわからないままに自己判断で人間用の市販薬を使うことはおすすめできません。
人間用の市販薬を飲ませる場合には、必ず、動物病院の獣医師に相談するようにして下さい。
老犬(シニア犬)・子犬(幼犬)の血便【注意点・ケア方法】
Hoover Tung/ Shutterstock.com
子犬(幼犬)の血便【注意点・ケア方法】
子犬では腸内寄生虫、パルボウイルスやジステンパーなどの感染症に注意が必要です。
子犬を迎え入れた後には念の為の検便を。
感染症の予防ワクチンは接種後すぐに効果が表れるというわけではなく、抗体が定着するまでには1~2週間かかるので、その間の予防も重要になります。
老犬(シニア犬)の血便【注意点・ケア方法】
老犬では持病をもっていることが多くなるのに加え、癌(がん)・腫瘍のリスクも高くなるので、半年に1回程度の健康診断を受け、病気の早期発見に努めたいものです。
また、子犬、老犬、ともにストレスに弱く、免疫力や抵抗力も低い傾向にあるので、体調を崩した時には日を置かず、早めに動物病院で診てもらうことをおすすめします。
こと下痢の場合は脱水症状を起こすと一気に体力を奪い、子犬や老犬では命に関わることもあるため早めの対処が必要です。
さらには、誤飲にも気をつけましょう。
子犬は何でも口で確認しようとしますし、認知症のある老犬では食べ物でない物を口に入れてしまうこともあるので、生活環境の整理もお忘れなく。
犬の血便【まとめ】
James Player/ Shutterstock.com
愛犬が血便をするということは、少なくとも正常ではありません。
簡単な処置で治まるものから、重大な病気であったり、手術が必要になったりするものまでその原因は様々です。
血便が何によって引き起こされているのかを調べることは重要となるので、愛犬のうんちに血が混じっている場合には、まずは動物病院で診てもらいましょう。
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