【獣医師監修】犬のお腹が黒ずんでいる。この症状から考えられる原因や病気は?
犬のお腹に黒い斑点があったり皮膚が黒ずんでいる場合、なんらかの原因でメラニン色素が皮膚に沈着していることが考えられます。ここでは、犬のお腹が黒ずむ症状から考えられる原因や病気などについて解説していきます。
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一般社団法人「日本獣医皮膚科学会」認定医
一般社団法人「日本コスメティック協会」 認定指導員(獣医師)
【資格】
◇獣医師
株式会社VDTに所属し、各地の動物病院へ出張して皮膚科診療を行っている。
ペットの皮膚への造詣の深さはもとより、飼い主にわかりやすい説明に定評があり、セミナーやイベントなどでの講師経験も多数。
犬のお腹が黒ずんでいる【考えられる原因】
Dora Zett/ Shutterstock.com
メラニン色素は、肌・毛・瞳などの色を作る色素のことで、メラニンの量が多いほど皮膚が黒く見えます。
人間のような加齢によるメラニン色素の沈着は科学的には証明されていませんが、犬のお腹にも以下のような原因でメラニン色素が沈着し、皮膚が黒ずみます。
皮膚疾患の慢性化
皮膚に炎症が起きた後には、皮膚の色が黒ずんでくることがあります。
皮膚の腫瘍
犬の皮膚には、メラニン色素を形成する細胞(メラノサイト)が表皮を中心に広く分布しています。
メラノサイトから腫瘍が発生することがあり、腫瘍が発生すると、肌が黒ずみます。
なお、この腫瘍には良性のもの(良性黒色腫:メラノサイトーマ)と悪性のもの(悪性黒色腫:メラノーマ)があります。
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ホルモン分泌の異常
甲状腺や副腎皮質などから分泌されるホルモンや生殖器官などから分泌される性ホルモンの異常が原因で、犬のお腹の肌が黒ずむことがあります。
ホルモン分泌に異常があると、ホルモンバランスが崩れる、メラニンの産生が増えるため、メラニン色素が沈着して皮膚が黒くなります。
犬のお腹が黒ずんでいる【こんな場合は要注意!】
ThanikaThaiPhotoStock/ Shutterstock.com
犬のお腹が黒ずんでいるとともに、以下の症状が見られる場合は、病気の恐れがあるので病院で診てもらいましょう。
皮膚をしきりに掻く
皮膚上に常にかさぶたができている
皮膚炎が慢性化している可能性があります。
皮膚がデコボコしている
皮膚の腫瘍が考えられます。
腫瘍には良性と悪性があるので、獣医師に詳しく診てもらいましょう。
脱毛している
ホルモンを分泌する器官の異常が考えられます。
犬のお腹が黒ずんでいる【この症状で考えられるおもな病気】
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犬のアトピー性皮膚炎
犬のアトピー性皮膚炎(せいひふえん)とは、ダニや花粉などの環境中のアレルゲンが原因で皮膚炎を起こす病気です。
強い痒みで体をかいたり、舐めるため、皮膚が傷つき、ただれることもあります。
悪化すると、皮膚が厚く硬くなり、色素沈着も起こります。
犬のノミアレルギー性皮膚炎
犬のノミアレルギー性皮膚炎(せいひふえん)とは、ノミのアレルギーによる皮膚炎です。
ノミが体表から吸血する際の唾液がアレルゲンとなり、痒みや赤い発疹、脱毛を引き起こします。
特に、症状が出やすいのは、背中から腰にかけてです。
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犬の食物アレルギー
犬の食物(しょくもつ)アレルギーとは、本来無害な食べ物に対し、免疫が過剰に働き、過敏に反応してしまう状態です。
原因は小麦、牛肉、乳製品、大豆などさまざまで、体を痒がる、毛が抜ける、下痢や嘔吐、顔面の発赤等のアレルギー症状が起こります。
犬の表在性膿皮症(ひょうざいせいのうひしょう)
犬の表在性膿皮症(ひょうざいせいのうひしょう)とは、毛穴や皮膚に、細菌が感染して起きる皮膚疾患です。
痒みを伴う丘疹(きゅうしん)やかさぶたができ、その後、膿疱(のうほう)や脱毛、フケが現れます。
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犬の皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)
犬の皮膚糸状菌症(ひふしじょうきんしょう)とは、真菌が原因で起きる皮膚病です。
円形に毛が抜け、掻いてかさぶたができます。
人畜共通感染症のひとつです。
犬の疥癬(ヒゼンダニ症)
犬の疥癬(かいせん)とは、表皮に寄生する、ヒゼンダニによる感染症です。
耳、肘などに起こりやすく、激しい痒みに襲われます。
痒みだけでなく、フケが出たり、脱毛が全身に広がることがあります。
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犬の毛包虫症(ニキビダニ症、アカラス症)
犬の毛包虫症(もうほうちゅうしょう)とは、毛包に寄生する毛包虫(ニキビダニ・アカラス)が異常増殖し、炎症が起きる病気です。
目や口の周り、四肢などに脱毛が見られ悪化すると、痒みやフケ、皮膚のただれが現れます。
犬のマラセチア皮膚炎(脂漏性皮膚炎)
犬のマラセチア皮膚炎(ひふえん)とは、皮膚に常在するマラセチアが皮脂の過剰分泌等により、増殖して痒みや赤みを引き起こす病気です。
脇や股、指の間に発症しやすく、強い痒みでひっかいたり舐めたりします。
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犬の悪性黒色腫(メラノーマ)
犬の悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)とは、皮膚に存在し、メラニン色素を産生する「メラニン細胞」が腫瘍化する病気です。
口や口唇の粘膜、眼球、皮膚などの色素沈着の見られる部分に発生します。
急速に大きくなり、リンパ節や肺に転移する危険が高い腫瘍です。
犬の良性黒色腫(メラノサイトーマ)
犬の良性黒色腫(りょうせいこくしょくしゅ)とは、色素細胞(メラノサイト)に良性の腫瘍ができる病気です。
全身の皮膚や目、口などの粘膜に存在する色素細胞に、いわゆる黒子のような黒い半円状の隆起ができます。
癌である悪性黒色腫は切除が必要なため、悪性か良性か、早めの診断が重要です。
Prystai/ Shutterstock.com
犬の甲状腺機能低下症
犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)とは、代謝などをコントロールする甲状腺ホルモンが分泌されなくなる病気です。
甲状腺の腫瘍が原因であることもあります。
おもな症状として、多飲多尿、肥満、活動性の低下、体温の低下、被毛のつやがなくなる、尾っぽの毛が少なくなる、食事量の減少といった症状をきたします。
犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)
犬の副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)とは、副腎の出血や腫瘍で、副腎からのホルモン分泌量が不足する病気です。
副腎皮質ホルモンを持続的に投与されていた場合に急にそれをやめてしまうことや副腎皮質機能亢進症の治療薬によって発症することもあります。
元気がなくなり、ふらつきや下痢、嘔吐、震えが見られます。
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犬の性ホルモン失調
犬の性ホルモン失調(しっちょう)とは、睾丸や卵巣の腫瘍などにより、性ホルモンの分泌機能が低下する病気です。
中年から高齢の未去勢・未避妊の犬によく見られ、体幹や股間に左右対称性の脱毛や色素沈着が現れます。
また、発情周期の乱れや繁殖機能の低下も引き起こします。
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