【獣医師監修】犬が尿漏れする、失禁する。この症状から考えられる原因や病気は?
尿漏れは、「尿失禁」とも言われますが、意識せずに排尿してしまう症状です。老化やホルモンの減少に伴い発症する場合や、神経系の病気で起こることもあります。ここで詳しく原因や注意すべき状態などをチェックしていきましょう。
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日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医学部獣医学科卒業。
2010年に日本獣医生命科学大学大学院で犬および猫の慢性腎臓病の早期診断の研究で博士(獣医学)号を取得。
2011年から日本獣医生命科学大学に着任し、同時に付属動物医療センター腎臓科を担当。
【資格】
◇獣医師
犬および猫の腎臓病・泌尿器疾患、体液・酸塩基平衡を中心に診療、研究を行っている。
自宅で、自己主張が苦手なシェルティ(オス5歳)と、走り回るのが大好きなミックス猫(メス7歳)と暮らす。
【翻訳書】
「イヌとネコの腎臓病・泌尿器病-丁寧な診断・治療を目指して」Canine and Feline Nephroligy著 ファームプレス
犬が尿漏れする、失禁する【考えられる原因】
Sigma_S/ Shutterstock.com
不安や恐怖
環境の変化をはじめ、雷や地震などで驚くなど、恐怖や不安、興奮などによって思わず尿を漏らしてしまう場合があります。
一過性の尿漏れなので問題はないでしょう。
認知症
加齢による認知症などの脳機能の低下により、膀胱や尿道括約筋が上手に機能せず、尿漏れしてしまう場合があります。
膀胱機能の疾患
ホルモンや神経系の要因により膀胱機能が低下することも尿漏れの原因になります。
膀胱の筋肉が拡張してしまい収縮機能が衰えたり、尿が膀胱に溜まっても意識的に排尿できなくなり、溜まりすぎて尿が漏れることがあります。
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尿道括約筋の疾患
高齢による場合も多いですが、避妊手術後の雌犬にも見られます。この場合には手術後数年で発症します。
また、性ホルモンの低下によって、尿道括約筋(排尿時に膀胱の開け閉めを行う筋肉)の不具合が起きやすくなります。
怪我や腫瘍で中枢神経が傷ついている
骨折などの外傷や脊椎骨折、椎間板ヘルニア、脊椎腫瘍、脳腫瘍などにより中枢神経が傷ついた場合でも、尿道括約筋機能の障害が起きることがあり、尿失禁につながります。
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先天性な尿路疾患
おもに大型犬の場合、まれに先天的に左右の腎臓から出ている尿管の片方、または両方が膀胱以外の所につながっている「異所性尿管」の可能性があります。
膀胱に尿を溜めることができなかったり、排尿のタイミングが合わずに漏らしてしてしまうなどの傾向が見られます。
犬が尿漏れする、失禁する【こんな場合は要注意!】
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犬が尿漏れ・失禁する場合は以下のような症状が見られます。一度病院で相談してみましょう。
寝所や犬が通った後の床が濡れている
排尿姿勢になることなく尿が漏れている
陰部がいつも濡れている、赤くなっている
断続的な尿漏れで陰部や包皮が常に濡れている状態が続くと、皮膚の炎症も多く見られます。
膀胱を押すと尿が漏れてくる
尿が膀胱に溜まっていても意識的に排尿できなくなっている可能性があります。
犬が尿漏れする、失禁する【この症状で考えられるおもな病気】
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犬のホルモン反応性尿失禁(原発性括約筋異常)
犬のホルモン反応性尿失禁(はんのうせいにょうしっきん)とは、ホルモンバランスの乱れにより、膀胱の神経や筋肉の機能が低下し、尿を漏らしてしまう病気です。
避妊による女性ホルモン(エストロゲン)の減少や交感神経系の異常によって生じるとされています。
そのため、避妊手術をした数年後に認められることが多いです。
犬の細菌性膀胱炎
大腸菌などの細菌が尿道から入り、膀胱に炎症が起きる病気です。
感染症以外に、膀胱結石や腫瘍、外傷なども原因になります。
症状としては、頻尿や排尿時痛、血尿などが現れます。
細菌が腎臓にも入り込んでしまうと、腎盂腎炎になり、発熱、食欲低下といった症状を示すことがあります。
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犬の異所性尿管
犬の異所性尿管(いしょせいにょうかん)とは、尿を腎臓から膀胱へ運ぶ尿管が膀胱以外の所へつながってしまう生まれつきの病気ですが、尿管が膀胱を越えて、直接尿道につながってしまうと、失禁を起こします。
雌に多く、尿漏れや排尿障害のほか、陰部の皮膚炎や膣炎、水腎症を引き起こすこともあります。
犬の椎間板ヘルニア
犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアとは、背骨の中を走っている脊髄が圧迫され、首や腰に痛みが出たり、足が麻痺したりする病気です。
脊髄神経が障害され足がもつれる、歩けない等、歩行に異常が見られます。
ヘルニアが発生する場所によって、膀胱や尿道を支配している神経の伝達が行われなくなり、排尿できなくなったり、失禁したりします。
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犬の脊髄腫瘍
犬の脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)とは、脊髄に腫瘍ができる病気です。
腫瘍の部位によって、硬膜外腫瘍・硬膜内腫瘍・髄内腫瘍と分かれます。
初期はふらつきや足をひきずるようになり、進行すると四肢が麻痺し、完全に歩けなくなることもあります。
ヘルニアと同様に障害の部位によって排尿できなくなったり、失禁したりします。
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