【獣医師監修】犬がぐったりしている。考えられる原因や症状、おもな病気は?
愛犬の全身の力が抜けたようにぐったりしている時には、さまざまな原因が考えられます。深刻な病気の場合もあるので、注意が必要な症状です。ここでは、犬がぐったりしている時に考えられる病気の原因や症状などについて解説します。
更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
犬がぐったりしている【考えられる原因】
fongleon356/ Shutterstock.com
「元気がなくなる」という症状と同様に、「ぐったりする」という症状には、さまざまな原因が考えられます。
飼い主によって愛犬の様子の捉え方も「ボーっとしている」「元気がない」「ぐったりしている」などさまざまです。
ここでは、意識がある・ないに関わらず、カラダの力が抜けて横になってしまうような症状を「ぐったりしている」として解説します。
peat kai3/ Shutterstock.com
疲労
激しい運動や長時間の散歩の後や、慣れない環境で緊張して過ごした後などには、疲れからぐったりすることもあります。
疲労が原因であれば、ある程度休んだら元通りの元気を取り戻すので、ゆったりと休息をとらせてあげてください。
加齢
犬は年齢を重ねると、疲れやすくなったり、運動をあまりしなくなったり、食が細くなったりします。
寝ている時間も多くなるので、その様子を「ぐったりしている」と捉える飼い主もいるかもしれません。
この場合の「ぐったり」は、長い時間をかけて徐々に顕著になるため、犬が歳をとって来たら、普段の様子をいっそう気にしてあげることが必要です。
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熱中症
高温多湿の車内や室内に長くいたり、暑い季節に散歩すると、熱がカラダにこもったままになるため熱中症にかかります。
「ぐったりしてしまう」ほどになると、かなり深刻な病状です。
発熱
熱がある場合には、人間と同様に犬もぐったりとカラダに力が入らないことがあります。
おもに細菌やウイルスによる感染性の呼吸器系疾患による発熱が考えられますが、「ぐったりしている」ならかなり深刻です。
呼吸器系の疾患
ケンネルコフ(犬風邪)や肺炎などの呼吸器系疾患が進行すると、ぐったりとする症状を引き起こします。
発熱に加え、咳をしたり呼吸が速くなるなどの症状が同時に見られます。
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消化器系や代謝系の異常
わたしたち人間が食事などで体内に取り込んだ物は、体内で代謝されて体外に排泄されます。
この代謝のトラブルによって、うまく体内に取り込んだ物が処理されないと、さまざまな症状を引き起こします。
同様に犬でも、消化器系の不調や腎機能の低下、低血糖症、脱水症状、肝機能の障害などが原因で、犬の元気がなくなることはよくあります。
脳神経の異常
小型犬に多く見られる水頭症や、脳の腫瘍などによって、侵襲(しんしゅう)を受ける部位によっては、動作が緩慢になったり、「ぐったりする」などの症状が見られます。
また、てんかんなどの発作が起きた後は、筋肉の緊張が解けたり体力を消耗したことで「ぐったり」する姿が見られます。
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そのほかにも、さまざま病気が進行し重篤なレベルになると「ぐったり」とした症状が現れます。
若い犬に起こることが多い副腎皮質機能低下症(アジソン病)なども、「ぐったり」とした状態になると、かなり深刻な病状です。
いずれの疾患も、ぐったりするほどの状態になるまでに、何かしらのサインが出ているはずです。
それらのサインを見逃さず少しでも早い段階で異常に気づいてあげることが大切です。
犬がぐったりしている【こんな症状は要注意!】
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とりあえず様子を見ようと考える飼い主もいますが、「ぐったりしている」症状がどれほど危険なレベルなのか、素人が判断することは危険です。
早めに獣医師の診察を受けましょう。
症状が軽いに越したことはないので、犬が「ぐったりしている」だけでも病院に連れていくことをおすすめします。
犬がぐったりしている【この症状で考えられるおもな病気】
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犬の熱中症
犬の熱中症(ねっちゅうしょう)とは、体温が上がりすぎ、内臓や脳の機能不全が起きる病気です。
犬の平熱は38度前後ですが、41度を超えると熱中症とされます。
初期はパンティングやよだれ、頻脈などが現れ、進行すると、血液の循環不全からけいれんや昏睡、散瞳が起こり、死に至ります。
犬のケンネルコフ(犬風邪、犬伝染性気管支炎)
犬のケンネルコフとは、ウイルスや細菌が原因で起きる、咳が長く続く伝染性呼吸器疾患です。
初期には乾燥した咳や発熱が現れ、抵抗力が衰えている場合は、高熱や肺炎を引き起こし、死に至ることもあります。
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犬の低血糖症
犬の低血糖症(ていけっとうしょう)とは、血液中の血糖値が低下する病気です。
生後3か月までに起こりやすく、長時間食事を摂れないことやストレス、腸疾患などが原因になります。
成犬では、副腎皮質機能低下症や膵臓の腫瘍等の病気、糖尿病のインスリン過剰投与などが原因で発症します。
ふらつきや元気喪失、食欲低下のほか、けいれんや昏睡を引き起こします。
犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)
犬の慢性腎不全(まんせいじんふぜん)とは、糖尿病や腎臓病、高血圧などが原因で、腎機能が徐々に低下し、機能不全になった状態です。
初期症状では多飲多尿やたんぱく尿が現れ、進行すると食欲低下や体重減少、貧血、尿毒症症状が起こります。
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犬の尿毒症
犬の尿毒症(にょうどくしょう)とは、腎臓のろ過機能が低下し、有毒物質が全身を回ることで生じる臓器障害です。
初期は、食欲不振や嘔吐、アンモニア臭のする口臭が現れます。
進行すると、痙攣や昏睡を引き起こし、死に至る恐れもあります。
犬の脳腫瘍
犬の脳腫瘍(のうしゅよう)とは、脳に腫瘍ができる病気で、もともと脳に腫瘍ができる「原発性」と他から腫瘍が転移する「続発性」があります。
発作や旋回、眼振、運動失調など、腫瘍の部位によって症状が異なります。
また、性格や顔の表情が変わることもあります。
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犬の水頭症
犬の水頭症(すいとうしょう)とは、頭蓋骨の内部を満たしている脳脊髄液が異常に増え、脳を圧迫することで、てんかん発作や失明、歩行障害などを引き起こす病気です。
感覚の麻痺、視力障害、過食など、症状はさまざまですが、目立った症状が現れないこともあります。
犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)
犬の副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)とは、副腎の出血や腫瘍で、副腎からのホルモン分泌量が不足する病気です。
副腎皮質ホルモンを持続的に投与されていた場合に急にそれをやめてしまうことや副腎皮質機能亢進症の治療薬によって発症することもあります。
元気がなくなり、ふらつきや下痢、嘔吐、震えが見られます。
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