【獣医師監修】犬の健康診断は必要?愛犬の健康寿命を延ばすために、年1回の健康診断を!(特にシニア期)
昨今の動物病院は、病気を予防するための場所にもなってきています。愛犬が病気になってから駆け込むのではなく、日頃から飼い主とかかりつけ医が信頼関係を築くことの大切さ、そして愛犬の健康寿命を延ばすための予防医療の大切さを、地域密着型病院の院長である成城こばやし動物病院の小林 元郎獣医師に教えていただきました。

公益社団法人 東京都獣医師会 副会長
獣医学修士
【経歴】
◇1986年 北里大学獣医畜産学部獣医学科 卒業
◇1990年~1991年 New York州Animal Medical Centerにて研修
◇1993年 成城こばやし動物病院 開業
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆先制動物医療研究会 副会長
◆一般社団法人 東京城南地域獣医療推進協会 理事
◆一般社団法人 日本獣医皮膚科学会 所属
◆アジア小動物獣医学会(FASAVA) 所属
【メディア】
◇Webメディア
「オトナンサー」アドバイザー
目次
【犬や猫の予防医療】の目的は?

獣医師とのコミュニケーションも健康診断のメリット
【小林 元郎先生(以下、小林)】:犬や猫の予防医療の最大の目的は、「健康寿命を延ばすこと」にあります。
愛犬に「健康で」長生きしてもらいたいと願うのは皆さんの共通の思いですよね。
日本の犬の平均寿命は14.29歳です。

【獣医師監修】犬の平均寿命や最高齢は何歳?【犬種別】寿命を縮める要因、長生きの秘訣やポイント!
チワワ、トイ・プードル、柴犬など、愛犬と一緒に暮らす中で、愛犬の平均寿命や最高齢について気になる方も多いと思います。小型犬と大型犬では寿命が違うことは知られていますが、犬種によっても寿命は異なります。ここでは、犬種別の平均寿命だけでなく、寿命を縮める病気などの要因、寿命を延ばす秘訣やポイントについて解説していきます。
小型犬と中型犬では8,9歳から、大型犬では7,8歳からがシニア、小型犬では11,12歳から、中型犬では10,11歳から、大型犬では9,10歳が高齢の域に入ると考えられます。

【獣医師監修】【小型犬の平均寿命】は何歳?小型犬は中型犬・大型犬より長生きなのは本当?
一般的に超小型犬や小型犬は中型犬や大型犬に比べて寿命が長いと言われていますが、小型犬の中でも、犬種によって寿命はそれぞれ異なります。チワワ、ヨークシャー・テリア、パピヨン、トイ・プードル、柴犬、ミニチュア・ダックスフンドなど、小型犬の犬種別の平均寿命や最高齢、長生きの秘訣やポイントについて解説します。

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人間同様、早い段階から愛犬の健康管理を気遣い、もし病気になっても早期発見と早期治療ができるように備えれば、愛犬の健康寿命は確実に延ばせるはずです。
【参照元】一般社団法人 ペットフード協会「平成30年(2018年)全国犬猫飼育実態調査 結果」
【愛犬の健康寿命】を延ばすために、飼い主にできることは?

レントゲン検査では愛犬の内臓の様子や腫瘍(しゅよう)、胃内異物など様々なことがわかります
【小林】:たくさんあります。
なかでも、シニア期に近づいてからの定期的な「健康診断」はとても大切だと実感しています。
当院では、十数年前から9~11月に、秋の健康診断キャンペーンを行っています。
初年度に受診したのは、わずか1頭でしたが、現在では、毎年約250頭が健診を受けています。
それだけ、飼い主さんの意識が高くなってきたのでしょう。

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当院では、問診や一般身体検査をはじめ、血液検査・レントゲン検査・超音波検査・尿と糞便の検査などをベーシックコースとして実施しています。
また、既往歴、ご希望によってさまざまなオプション検査を用意しています。
健康診断で病気が発見でき、重症化を免れたり、一命を取り留めたりした例も少なくありません。

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地域密着型のホームドクターは、専門的な治療が必要な病気を発見したら、いち早く適切な2次診療施設を紹介することが大切です。
とにかく最短で治癒に向かうプランを立てなければなりません。
こうしたハブ的な役割を担うためにも、かかりつけ医としての存在意義は大きいのです。
健康診断で異常がなければ、愛犬が健康であることの証明になり、飼い主さんの安心につながります。
その意味でも、愛犬の「健康診断」は大切ですね。
愛犬が【病気になる前から】動物病院を訪れるべき理由は?

動物病院では愛犬の歯磨きなど日常の健康管理のアドバイスをもらうこともできます
【小林】:愛犬を「健康な状態」、「病気になるかならないかのギリギリな状態」、「病気の状態」という3つのステージに分けるとしましょう。
ギリギリな状態までに動物病院を訪れていれば、コストも、愛犬や飼い主へのダメージも最小限で済みます。
病気の多くは、ある日突然なるわけではありません。
生活習慣などがもとで、徐々に進行しつつ発症するのです。

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たとえば、肥満になると、わずかな炎症物質が常に体内で分泌される状態が続きます。
もはや肥満は病気と認識する必要があります。
でも、愛犬を毎日見ている飼い主さんは、愛犬が肥満になっていることに気づかないケースも珍しくありません。

【獣医師監修】犬の肥満の正体を知る!「愛犬版」肥満チェックシート!あり
現在、日本で飼育されている犬の約3割が過体重または肥満であるとの報告もあり、犬の肥満は深刻な「現代病」となりつつあります。人と同様、犬の肥満も他の病気の原因となることが解明されてきました。ここでは、犬の「肥満原因」「肥満リスク」について解説しつつ、【愛犬版】肥満チェックシート!もご用意していますので、ぜひご活用下さい。

【肥満度チェックリスト付き】犬のメタボが健康に及ぼす悪影響を知る
近年、犬の肥満——犬のメタボ化が進み、病気に苦しんでいる犬を見掛ける機会が増えてきました。メタボが犬の健康に及ぼす悪影響について知識をつけましょう。犬の肥満度が確認できるチェックリストもありますので、ぜひ犬の肥満防止に役立ててください。

【獣医師監修】愛犬のダイエットを始める前に理想体重と肥満度(BCS)を要チェック!
家族の大切な一員である愛犬が、できるだけ健康に長生きできる飼育環境を作ってあげられるのは、飼い主だけです。まずは愛犬の「理想体重」を知り、「ボディコンディションスコア(BCS)評価表」を使って肥満度を判定しましょう!愛犬のダイエットに対する考え方や運動についても解説します。
われわれ獣医師は、犬の年齢、種類、性別、毛色や被毛の状態、食べているもの、飼育環境、体型などを見れば、犬たちが出している、「病気が進行しつつある」、「すでに病気である」というアラートをいち早く察知し見逃しません。

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獣医師は、膨大なプロファイルから、判断するプロフェッショナルです。
ですから愛犬が健康な時から、かかりつけ医が関わり把握しておくことが重要なのです。
【参照元】菅波孝祥/小川佳宏 「日本内科学会誌」2011 年 100 巻 4 号 p. 989-995『肥満と炎症』
先制動物医療研究会 機関誌「先制動物医療第2巻」第1号総説にて、小林 元郎先生が発表

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飼い主さんと日頃から信頼関係が築けていれば、飼い主さんでは気づけていないアラートを伝えることもできますし、もし愛犬が病気になったら適切な治療方針を相談しあうこともできます。
散歩途中に立ち寄るような感覚で、健康なうちから動物病院を訪ねてみてください。
そして、愛犬がシニアになったら、かかりつけ医の健康管理に関するアドバイスを日常の生活に役立てていただきたいですね。
【シニア】になった愛犬の健康寿命を延ばすためには?

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【小林】:愛犬の健康寿命を延ばすポイントとして、病気を見逃さないことに加えて、「運動」や「栄養」も重要です。
運動と言うと、散歩を毎日しっかりしているから大丈夫と飼い主さんは思うのではないですか?
愛犬の心肺機能を保つためにも脳トレのためにも散歩は必要です。
でも、散歩をしてもそれほど犬の筋肉量は増えません。

バランスボールは犬も遊び感覚で体幹を鍛えられます
筋肉は免疫力の維持や内分泌機能の維持に貢献しています。
犬も同様で、良質な筋肉を適度に備えていれば、健康寿命を延ばせるでしょう。
散歩だけでなく、犬用のバランスボールのようなものに載せて体幹を鍛えたり、筋肉に負荷をかけるような運動を積極的に行う事を強くおすすめします。
【シニアドッグの食事】のポイントは?

愛犬の飲水量が減らないように、ヨーグルトの上澄み液(ホエー)や鶏肉のゆで汁などで水に味をつけるなどの工夫もおすすめです
【小林】:高齢犬(シニアドッグ)の健康寿命を延ばす栄養のポイントは、エネルギーとタンパク質と水分をライフステージに併せてバランス良く摂取することにあります。
犬も高齢期に向かうと、基礎代謝が低下してきます。

【獣医師監修】愛犬の代謝(基礎代謝)を上げるには?代謝が関係する病気も知っておこう!
代謝に関して知識を持っていれば、愛犬の健康管理に役立ちます。食事や筋肉の維持など基礎代謝を上げるために重要なことや、代謝が関係する病気や代謝が関わる肥満についても知っておき、愛犬のヘルシーライフをサポートできるようにしましょう!
それは、加齢に伴う筋肉量の低下によって引き起こされるためです。
その意味でも、「筋トレ」は大切です。
犬は高齢期に突入すると、加齢に伴う様々な体の変化によって体重が減ってきます。
フードの摂取量も減ってくるでしょう。
食事に含まれるタンパク質の摂取量が減ると、筋肉も落ち、免疫力が低下してしまいます。

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そこで、シニアから高齢期にかけては、「高タンパク」の食事を愛犬に与えることが重要です。
シニア期以降は、高タンパク低脂肪の食事が理想なのです。

【獣医師監修】老犬におすすめの食事は?適量や回数、注意点は?食べさせ方と手作りレシピ!
老犬の食事は悩みがつきものです。筋肉維持には良質のタンパク質、認知症予防には抗酸化食品やオメガ3脂肪酸、関節のためにはグルコサミンやコンドロイチンなど積極的に与えたいですが、食事の回数を調整し、食べさせ方にも工夫が必要になります。今回は、老犬の食事に関して詳しく解説します。

【獣医師監修】老犬がご飯を食べない原因や理由は?ご飯を食べない時の対処法やポイント・コツ!
老犬が、元気がなく、ご飯を食べない(食欲不振)といった悩みはよく聞かれます。犬も加齢にしたがい、体や気持ちにもいろいろ変化が出てきます。ご飯を食べない原因や理由は、歯や床など、意外なところに原因がある場合もあります。今回は老犬がご飯を食べない原因や理由、対処法やポイント、コツなどについて詳しく解説します。
犬は老化に伴い、腎機能が低下して脱水症状に陥りやすい点にも注意しておきましょう。
愛犬が十分に水分を摂取できるよう、飼い主さんが工夫できればベストです。

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それでも、愛犬のおしっこが濃い黄色をしているといった症状が見られて脱水が疑われた場合、電解質の補給や補液が必要かどうかをかかりつけ医に相談してください。
ちなみに、「歯周病」も食欲低下の原因になるので、若齢のうちから歯磨きを習慣にしておくことも大切ですね。

【獣医師監修】犬の歯周病、原因や症状(重度・軽度)は?対処・治療法、治療費、予防対策は?
犬は虫歯にはなりにくいものの、歯周病にはなりやすく、3歳以上の犬の80%は歯周病と言われています。愛犬が歯周病になったとき、症状や対処・治療法はどのようなものがあるのか?原因や予防方法も含めて、歯周病について詳しく解説します。高齢になったときの健康にも影響を及ぼすので、若いうちから歯周病予防をしましょう!

【獣医師監修】老犬のお困りごと(愛犬の老化・ケア方法)解消「お役立ち」まとめ記事【20選】
なんだか愛犬に元気がないみたい…と感じたら、それは老化のサインかもしれません。いつでも愛嬌たっぷりで可愛い犬たちですが、実は人間よりも歳をとるのが早い生き物。犬の老化のサインを見逃さず、老後も快適な暮らしが送れるようにしてあげるためには、犬の老化についての知識を身につけておく必要があります。

【獣医師監修】老犬を介護する際の悩みは?病気や医療費、トイレなど介護のポイントやコツ!
老犬の介護生活には悩みがつきものです。それゆえに、試行錯誤と工夫は必要。そして、もう一つ大事なのが飼い主さんの気持ちの持ち方です。そうしたメンタル面も含め、老犬の介護について知っておきたいポイントをまとめました。各テーマについては、別の記事でお伝えします。
【愛犬の健康寿命】を延ばすには、飼い主の意識が重要!

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【小林】:私は、人も動物も健康は与えられるものではなく、自分で勝ち取るものだと思っています。
愛犬の健康寿命を延ばせるかどうかは、すべて飼い主さんにかかっていると言っても過言ではないでしょう。

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愛犬が健康なうちからかかりつけ医と信頼関係を築くこと、定期的な健康診断も行いつつ病気を見逃さないようにすること、運動や栄養に気をつけること、ペット保険に加入して、病気の治療コストに備えること、
これらはすべて愛犬が自分の意志でできることではなく、すべて飼い主さんにかかっています。

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さらに、愛犬が病気や介護状態になった時に孤軍奮闘せず気軽に相談できる場所を持つこと、いざという時の譲渡先を確保しておくのも、とても大切な準備と言えます。

【獣医師監修】老犬を介護する際の悩みは?病気や医療費、トイレなど介護のポイントやコツ!
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【獣医師監修】老犬ホームとはどんなサービス?メリットやタイプ、料金、選び方のポイントは?
近年、「老犬ホーム」や「老犬介護ホーム」と呼ばれる高齢犬のケアに特化した施設が増えています。人・犬ともに高齢化・長寿化の時代に登場した新しいサービスですが、そのサービス内容や料金・費用、選び方などについて解説します。
どんなことでも、いつでも、愛犬が健康なうちから気軽に動物病院にご相談ください。
獣医師や動物看護師が、プロの目線から親身にアドバイスさせていただきます。

【獣医師監修】犬のストレス、病気や死亡の原因になる?ストレス行動やサイン、発散・解消法!
ストレスは万病のもとと言われます。それは、人間だけでなく犬にも当てはまること。愛犬のストレスを遠ざけて、健康に暮らしてもらえるよう、飼い主としてできることを心得ておきたいものです。

【獣医師監修】犬の栄養について知っておこう!犬も三大栄養素は必要?手作り食での注意点は?
愛犬の食事管理を適切に行う上で、犬の栄養に関してはぜひ知っておきたいところです。そもそも栄養とは?3大栄養素や5大・6大栄養素って何?愛犬に栄養バランスの良い手作りご飯を作るには?など、飼い主さんが愛犬の健康をサポートできるように詳しく解説します。

【獣医師監修】愛犬の代謝(基礎代謝)を上げるには?代謝が関係する病気も知っておこう!
代謝に関して知識を持っていれば、愛犬の健康管理に役立ちます。食事や筋肉の維持など基礎代謝を上げるために重要なことや、代謝が関係する病気や代謝が関わる肥満についても知っておき、愛犬のヘルシーライフをサポートできるようにしましょう!

【獣医師監修】犬の肥満の正体を知る!「愛犬版」肥満チェックシート!あり
現在、日本で飼育されている犬の約3割が過体重または肥満であるとの報告もあり、犬の肥満は深刻な「現代病」となりつつあります。人と同様、犬の肥満も他の病気の原因となることが解明されてきました。ここでは、犬の「肥満原因」「肥満リスク」について解説しつつ、【愛犬版】肥満チェックシート!もご用意していますので、ぜひご活用下さい。

【肥満度チェックリスト付き】犬のメタボが健康に及ぼす悪影響を知る
近年、犬の肥満——犬のメタボ化が進み、病気に苦しんでいる犬を見掛ける機会が増えてきました。メタボが犬の健康に及ぼす悪影響について知識をつけましょう。犬の肥満度が確認できるチェックリストもありますので、ぜひ犬の肥満防止に役立ててください。

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