【獣医師監修】老犬ホームとはどんなサービス?メリットやタイプ、料金、選び方のポイントは?

近年、「老犬ホーム」や「老犬介護ホーム」と呼ばれる高齢犬のケアに特化した施設が増えています。人・犬ともに高齢化・長寿化の時代に登場した新しいサービスですが、そのサービス内容や料金・費用、選び方などについて解説します。

  • 更新日:
【獣医師監修】老犬ホームとはどんなサービス?メリットやタイプ、料金、選び方のポイントは?
出典 : iStock.com/MartinPrescott
先生にお聞きしました
箱崎 加奈子 先生
麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
【獣医師】【ドックトレーナー】【トリマー】
ペットスペース&アニマルクリニックまりも 病院長
一般社団法人女性獣医師ネットワーク 代表理事
株式会社WVN代表取締役

【学歴・経歴】
◇1982年:東京生まれ、東京育ち
◇2001年:青山ケンネルスクールトリミング科 卒業
◇2007年:麻布大学獣医学部獣医学科 卒業
◇2009年:アニマルプラザ ドッグトレーナーズカレッジ 卒業
◇2009年:ペットスペース&アニマルクリニックまりも 開業
◇2011年:女性獣医師ネットワーク設立(2016年一般社団法人化)
◇2017年:株式会社WVN 設立

【資格】
獣医師
日本ドッグトレーナー協会 ドッグトレーナー A級ライセンス
日本アニマルアロマセラピー協会認定 アニマルアロマセラピスト
◇青山ケンネルスクールトリミング B級ライセンス 

【所属】
一般社団法人 女性獣医師ネットワーク代表理事

【著作物】
最新版 愛犬の病気百科」愛犬の友編集部
犬にも人にも優しい飼い方のメソッド 愛犬をケガや病気から守る本」愛犬の友編集部

【ペットへの想い、職業上のペットとのかかわり】
18歳でトリマーとなり、以来ずっとペットの仕事をしています。
ペットとその家族のサポートをしたい、的確なアドバイスをしたいという思いから、トリマーとして働きながら獣医師、ドッグトレーナーになりました。
病気の予防、未病ケアに力を入れ、家族、獣医師、プロ(トリマー、動物看護師、トレーナー)の三位一体のペットの健康管理、0.5次医療の提案をしています。
現在の愛犬は「シーズー」。
看板犬、スタッフ育成のモデル犬として良きパートナーです。
ハムスター、うさぎ、ハリネズミ、ヨークシャテリアとも暮らしてました。
家族のいない犬の一時預かり、離乳前の子猫を育てるミルクボランティアなどもやってます。
続きを読む

【老犬ホーム】とは?

【老犬ホーム】とは?

iStock.com/TriggerPhoto

高齢犬のケアサービスを提供する施設が登場した裏には、現代だからこその時代背景があります。

老犬ホームが生まれた背景①【人も犬も高齢化・長寿化】

老犬ホームが生まれた背景①「人も犬も高齢化・長寿化」

iStock.com/RichLegg

厚生労働省の調査によると、現在、日本人男性の平均寿命は81.25歳、女性は87.32歳であり、「人生100年時代」と言われるようになっています。

一方、「一般社団法人 ペットフード協会」の飼育調査によると、日本の犬の平均寿命は、14.29歳。

2016年~2018年の3年間で7歳以上のシニア層にあたる犬の数はわずかに減少しているものの、55.7%にあたる犬がシニア層となっています。

【参照元】
厚生労働省「平成30年簡易生命表の概況」主な年齢の平均余命
一般社団法人 ペットフード協会「平成30年 全国犬猫飼育実態調査」

老犬ホームが生まれた背景②【人と犬の高齢化・長寿化の裏側にある問題】

老犬ホームが生まれた背景②「人と犬の高齢化・長寿化の裏側にある問題」

iStock.com/Halfpoint

人・犬ともに高齢化・長寿化する中で、飼い主も犬も高齢であるケースが増えるとともに、ペット版の老老介護が目立つようになってきました。

飼い主が高齢ゆえに、体力的に寝たきりや歩行困難、徘徊などがある老犬の介護、看病が思うようにならない。

飼い主が病気となり、入院が必要となったものの、犬の面倒を見てくれる人がいない。

老人ホームに入ることになったが、犬を一緒に連れて行けない。

などの理由から、自分に代わって介護が必要な愛犬の世話を誰かにしてもらいたいと希望する飼い主たちは少なからずいます。

高齢者のペット飼育

iStock.com/stonena7

加えて、高齢者のペット飼育には、飼い主自身の認知機能の低下により、犬の面倒がうまく見られない、飼い主が亡くなり、残された犬の引き取り手がいないといった問題も。

このような現状から、犬猫の殺処分数を減らそうというムーブメントが高まりを見せる一方で、高齢者が飼いきれなくなったペットが保健所や動物愛護センターに持ち込まれるケースも増えています。

しかし、高齢者のペット飼育には肉体面・精神面ともに健康に寄与することは知られているとおりで、相反する問題も抱える中、環境省は2019年9月に『共に生きる 高齢ペットとシルバー世代』というパンフレットを制作し、公開しました。

老犬ホームが生まれた背景③【核家族化により、犬の世話をする人が限られる】

老犬ホームが生まれた背景③「核家族化により、犬の世話をする人が限られる」

iStock.com/maroke

核家族化が進む中では家族の構成人数が少なく、実際に老犬の世話をするのが特定の人、または一人に限られるというケースも珍しくありません。

それによって、体力的・精神的な負担が強いられる場合もあります。

老犬ホームが生まれた背景④【老犬介護生活の長期化】

老犬ホームが生まれた背景④「老犬介護生活の長期化」

iStock.com/BackyardProduction

老犬の介護状況はそれぞれですが、中には年単位で介護生活が続くケースもあります。

そうなると肉体的・精神的・経済的・時間的な負担も増えることになります。

飼い主のニーズによって生まれた【老犬ホーム】

飼い主のニーズによって生まれた【老犬ホーム】

iStock.com/SeventyFour

上記のように、老犬の介護をすること自体が難しい場合もある他、介護生活を続けることによってイライラがつのる、状況によってはノイローゼ状態になるという人もいるのが現実です。

そうでなくとも仕事に支障が出たり、たまには自分の時間をもちたいと思ったりする人もいることでしょう。

前出の飼育調査では、シニアペット飼育の懸念点として、「自分や家族の病気・入院・介護で飼育自体が困難になること」と答えている人は36.5%にのぼります。

また、4人に一人は「自分や家族の死亡、または気力・体力が衰えて飼育自体が困難になること」を心配しており、「ペットが高齢化して介護が必要になった際にケアがしきれないこと」を心配している人も同じ割合でいます。

【参照元】一般社団法人 ペットフード協会「平成30年 全国犬猫飼育実態調査」

飼い主の高齢化に伴う老犬ホームの需要

iStock.com/EKAKI

そうした現状にあって、飼い主が高齢化した場合にあったらいいと思うサービスについては、老犬ホームのような「専門スタッフがシニアペットの世話を代行してくれるサービス」は3位にランクイン。

このような背景から登場したのが老犬ホームであり、その数は2016年に91軒だったものが、2018年には1.5倍の138軒に増えています。

対象は元気な老犬から寝たきりの老犬まで。

ショートステイはもとより、長期預かり、終生預かりまで、飼い主に代わって老犬のケア・世話をしてくれる施設が「老犬ホーム」です。

【参照元】
一般社団法人 ペットフード協会「平成30年 全国犬猫飼育実態調査」
環境省「動物取扱業者の登録・届出状況(都道府県・指定都市)平成28年(2016年)」
環境省「動物取扱業者の登録・届出状況(都道府県・指定都市)平成30年(2018年)」

【老犬ホーム】メリットは?

【老犬ホーム】メリット・注意点!

iStock.com/svetikd

老犬ホームの利用には良い面もありますが、注意したい点もあります。

【老犬ホーム】のメリット

【老犬ホーム】のメリット

iStock.com/Rawpixel

老犬ホーム「メリット」①【リフレッシュ(精神的余裕)】

長引けば長引くほどいろいろな面でストレスになることもあり、一時的にでも愛犬を預けることで自分の時間をつくることができ、気持ちに少し余裕を取り戻せることがある。

老犬ホーム「メリット」②【一時預かり】

仕事に出ている間、寝たきりや看病が必要な老犬を置いて行くのが心配だという場合、その間だけ預かってもらうことも可能。

また、冠婚葬祭や旅行、自分が病気になった時など犬を預けることができる。

老犬ホーム「メリット」③【介護・看病】

飼い主が高齢で老犬の世話をするだけの体力がない場合、自分に代わって介護・看病など世話をしてもらえる。

老犬の扱いに慣れているスタッフが多い。

【老犬ホーム】利用する際の注意点!

【老犬ホーム】を利用する際の注意点!

iStock.com/LaurieSH

老犬ホーム「注意点」①【料金】

利用料金が高額になるケースもあり、ある程度の費用はかかる。

老犬ホーム「注意点」②【容態の急変】

老犬ゆえに、預けている間に容態が急変する、そのための治療が必要になる、最悪、亡くなってしまうこともあり得る。

場合によっては自分が立ち会わないままに、スタッフに治療を任せることもある。その覚悟は必要。

老犬ホーム「注意点」③【ワクチン接種】

基本的に、各種ワクチン接種はしてあることが前提条件になる。

接種していない(できない)犬は受け入れ不可、要相談、または免除証明書や動物病院での検査が必要とされることがある。

老犬ホーム「注意点」④【感染・駆虫処理】

他の犬に感染するおそれのある病気をもっている場合、基本的に受け入れは難しい。

寄生虫やノミ、ダニがある場合は駆虫の必要がある。

老犬ホーム「注意点」⑤【持病】

持病がある犬、治療中の犬は受け入れてもらえないこともある。

老犬ホーム「注意点」⑥【しつけ】

人や他の犬に対して攻撃性の強い犬は、基本的に受け入れは難しい。

老犬ホーム「注意点」⑦【責任】

老犬ホームは、飼い主としての責任を放棄し、施設にそれを押しつけるものでは決してない。

【老犬ホーム】タイプ(種類)

【老犬ホーム】タイプ(種類)

iStock.com/momo

老犬ホームの施設やサービス内容は様々です。

老犬ホームの特徴や違いをいくつかピックアップしてみました。

【老犬ホーム】の特徴や違い

項目タイプ(種類)
犬の居住スタイル・1頭ずつ個室割り当て型/一軒家もしくは同じ部屋で同居型/犬の状況によって同居型と個室型を併用/
 ペットホテルや動物病院の付加サービス型
・部屋は室内に設置/室内に加え、外犬用に外部屋も用意/歩ける犬と寝た切りの犬とは居住スペースを分ける
受け入れ対象の犬・大型または超大型犬まで可/大型または超大型犬は要相談/大型または超大型犬は不可/小型犬のみ
・特別年齢設定はしていない/10歳以上など年齢を設定
・病気や障がいがある犬も可/病気や障がいがある犬は要相談
夜間・24時間スタッフ常駐で対応/24時間対応かつ犬の状況によってはスタッフが添い寝をすることも/監視カメラ使用
健康管理・動物病院と提携/動物病院が運営母体
・健康管理表を作り、定期的に健康チェック
・呼吸や心拍数などを計測できるモニターも使用/診療室や隔離室の設備がある施設も
リハビリ・車椅子/マッサージ/バランスディスクやバランスボール/整体/水中トレッドミル/
 温泉など積極的に取り入れている施設は少なくない
・リハビリに特化したスタッフがいる施設も
ドッグラン・
運動スペース
・外に用意/室内に用意/外と室内ともに用意/可能な犬は散歩に連れ出す
・土/芝生/ウッドチップ/足に優しい床材・石材など
手入れ・専属のトリマーが常駐/トリマーと提携/犬に慣れたスタッフが行う
・トリミングルームを用意/老犬に優しい洗い場やシャワーなどを設置している施設も
面会・基本的に前もって連絡や予約が必要
・面会できる時間帯が決まっている/面会の時間はいつでも可
・犬の状況によっては飼い主の付き添いを許可する施設も
・面会用の部屋やスペースを用意/飼い主が宿泊できる部屋も用意
スタッフの保有資格・老犬介護士や類似の資格/動物看護師/医師/ペットシッター/ドッグトレーナー/トリマー/
 愛玩動物飼養管理士/愛犬飼育管理士/アニマルセラピスト/犬の整体師など

現在のところ、老犬ホームで働くには、特定の資格が必須とされてはいませんが、犬猫の介護を含め、動物関連の何らかの資格を保有しているか、動物に関わる仕事経験や飼育・介護経験が豊富な人が多くを占めています。

【老犬ホーム】料金・費用

【老犬ホーム】料金・費用

iStock.com/Image Works Japan

老犬ホームの料金は、犬のサイズや介護度、預ける期間、施設の設備、地域、立地条件などによって大きく差が生じ、料金体系も様々です。

項目【内容】【料金・費用】
入所金・あり/なし
・ある場合、3~35万円程度、10万円前後が比較的多い
・終生預かりでは高くなり、年単位預かりではそれより安くなる・入所金が医療費預かり金と同義になっている場合もある
預かりコース・ショートステイ/デイケア/1泊~短期/1ヶ月~長期(月、3ヶ月、半年、1年単位)/終生

・月=小型犬2~13万円程度、4~6万円前後が比較的多い
   中型犬3~18万円程度、5~7万円前後
   大型犬4~20万円程度、6~13万円前後
 年=小型犬16~85万円程度、30~50万円前後
   中型犬20~90万円程度、40~60万円前後
   大型犬22~115万円程度、55~80万円前後
 終生=小型犬40~180万円程度、110~150万円前後
   中型犬50~240万円程度、120~160万円前後
   大型犬90~360万円程度、140~200万円前後

・終生で超大型犬の場合は400万円になるケースもある

・長期、終生では支払いが一括計算、半年ごとの更新、月ごとに加算などのスタイルがある

・犬のサイズにかかわらず、一定料金の施設もある

・終生預かりは設けていない施設もある

・長期預けた場合、3~4年以降は割引になる施設もある

・複数頭を預けた場合、割引になる施設もある
介護度別・あり/なし
・ある場合、1~8万円程度加算される、2万円前後が比較的多い
・介護が必要かどうかで加算される場合や、さらに介護度を2~3段階に分けて加算料金を設定している場合もある
ケア費用の返金・長期、終生では一定の期間を設け、その日数以内に犬が死亡した時には規定の何割か、
または日割り計算によって残金を返却する施設が多いが、中には返却できないとする施設もある。

【老犬ホーム】選び方・ポイント!

【老犬ホーム】選び方・ポイント!

iStock.com/Chalabala

老犬ホームを利用したいと思う時は、以下のような点を考慮するといいでしょう。

老犬ホーム「選び方・ポイント」①【費用・サービス・設備】

費用やサービス内容、施設の設備も様々なので、自分と愛犬に合った施設をよく調べる。

特に長期、終生預ける場合、利用料金は決して安くはないので、その費用を自分が出せるか?

長期、終生預かりの場合、犬が死亡した時、使わなかった分の費用の返却についてチェック。

また、リハビリはしてもらえるのか、食事や手入れなど、ケア内容、面会や一時帰宅のルールについてもチェック。

動物病院と提携できているか、犬の容態に異変があった時にはどのような対応をしてくれるのか?

可能な限り施設を見学し、自分の目で確かめてから決める。

老犬ホーム「選び方・ポイント」②【スタッフ】

老犬の状態はそれぞれ。

食事の与え方や介護の仕方、愛犬の性格・癖など、こと細かにスタッフが聞こうとしてくれるかチェック。

預かっている犬の様子をメールやホームページ、SNSなども含み、飼い主に向けてこまめに報告しているか。

スタッフ自身に老犬介護の経験があるか。

動物関係の資格を有していることは有利だが、その人自身に介護経験があると飼い主としての心情も理解しやすく、より理想的。

スタッフの人柄をチェック。大切な愛犬を預けるのであるから、人柄は大きなポイント。

老犬ホーム「選び方・ポイント」③【距離・愛犬の性格】

面会に行くことを考えると、距離的なことも考慮点。

併せて、他人に預けられるか、愛犬の性格や状態も考慮したい。

【老犬ホーム】まとめ

【老犬ホーム】まとめ

iStock.com/PK-Photos

大切にしてきた愛犬をいろいろな事情で預けざるを得ない場合、最期まで自分自身が世話をしてやれないことに対し、中には罪悪感を覚える人もいます。

しかし、たとえ一時的であっても介護生活の疲れやストレスから解放され、親身に世話をしてもらっている愛犬の様子を見て、預けてよかったと思う人は少なからずいます。

老犬と暮らす飼い主にとって「老犬ホーム」は助かるサービスですが、トラブルがまったくないわけでもありません。

このサービスが登場してからまだ歴史は浅く、優良なホームかどうか判断するのは飼い主の目にかかっています。

「老犬ホーム」の利用を考えるのであれば、サービス内容も料金も様々である分、どうぞ情報収集は怠りませんように。

みんなのコメント

とうふ14歳さん
実家で飼っているゴールデンレトリバーが14歳となり、父母も高齢化してきました。 大切な家族の犬も含めて、どうするのが1番幸せなのか悩んでいた先に、読みました。 老犬ホームについて色々知ることができました。 ありがとうございました。

あなたも一言どうぞ

コメントする

編集部のおすすめ記事

内容について報告する

関連する情報をもっと見る

「犬の飼い方・しつけ」の人気記事RANKING