【獣医師監修】犬にタンパク質は必要?子犬や老犬、おやつや手作り食など、必要量と注意点を解説!
犬にはどのくらいの量のタンパク質が必要なのでしょうか? 子犬、成犬、老犬といったライフステージで必要量が異なるのか、おやつや手作り食、サプリメントでタンパク質を与える際の注意点など、詳しく知って愛犬の食事管理と健康維持に役立てましょう!
- 更新日:
◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬にタンパク質は必要?
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
犬にタンパク質は必要です!
そもそも、犬の体のおよそ15~20%はタンパク質でできています。
体の約60%が水分なので、水分以外の成分のうちの半分をタンパク質が占めていることになります。
数万種類ものタンパク質が犬の体の中にはあり、それぞれが以下のとおり異なる役割を担っています。
体を作る(筋肉、臓器、皮膚、骨、毛髪など)
体の機能を調整する(ホルモン、酵素、神経伝達、抗体)
体内の物質を運ぶ(酸素を運ぶヘモグロビンなど)
エネルギー源となる(炭水化物や脂肪が不足してきたとき)
タンパク質は、いずれもアミノ酸が結合して連なってできており、動物の体は、20種類のアミノ酸から合成されたタンパク質でできています。
そのうち10種類のアミノ酸は犬の体内で合成されないため「必須アミノ酸」といわれ、健康を維持するためにはフードや食材から摂取しなければなりません。
犬に与えるタンパク質、1日に必要な量は?
iStock.com/Khaneeros
愛犬の体を構成するタンパク質は、常に合成と分解が行われ、入れ替わっています。
食事(フード・食材)内のタンパク質は、まず胃腸でアミノ酸に分解されて吸収されます。
その後、体に必要なタンパク質に再合成されます。
なお、「皮膚」「爪」「筋肉」「血液成分」「臓器」は、古くなると分解されて体外に排出されます。
タンパク質の必要量は、「体重」「性別」「年齢」「運動量」「筋肉量」によって異なるので計算は簡単ではありません。
犬のタンパク質の1日の必要量(g)は、1日に必要なエネルギー量(DER)中の割合から計算します。
まず1日に必要なエネルギー量(DER)を計算します。
その際、犬が静かにしている時、つまり安静時エネルギー要求量(RER)を計算しなければなりません。
【犬のタンパク質の1日の必要量(g)】
RER=√√((体重)×(体重)×(体重))
DERは、RERに活動係数をかけます。
DER=RER×活動係数
活動係数=未避妊・未去勢(1.8)、避妊去勢(1.6)、老齢(1.4)、高齢・減量(1.0-1.2)、成長期(2-4)
タンパク質必要量は1日に必要なエネルギー量(DER)中の割合で計算します。
タンパク質必要量=維持期(4.5~.5g/100kcal=最低必要量4.5g/100g(AAFCO=全米飼料検査官協会))、慢性腎臓病(3.0~3.5g/100kcal)
なお、腎臓に障害がある場合はタンパク質を減らすべきです。
これは、タンパク質の老廃物を捨てる役割を担う腎臓に負担をかけない方が良いからです。
たとえば、体重10kgの避妊成犬で計算してみましょう。
例)【体重10kgの避妊成犬】
1日に必要なエネルギー量であるDER =RER(394)×1.6=630kcal
タンパク質要求量を5.5g/100kcalとして、5.5g×6.30/630kcal=【34.65g】となります。
老犬や子犬に必要なタンパク質の適量は?
michaklootwijk / PIXTA(ピクスタ)
タンパク質の、老犬の必要量は維持期(成犬)より少なくなります。
活動係数は、未避妊と未去勢の維持期で(1.8)なのに対して、老齢(1.4)、高齢(1.0~1.2)となります。
タンパク質必要量は、老犬や高齢犬では 100kcalあたり4.5g/100kcalです。
子犬のタンパク質の必要量は、維持期(成犬)よりも多くなります。
必要量の算出に欠かせない活動係数は、前述のとおり未避妊と未去勢の維持期で(1.8)なのに対して、成長期(主に子犬期)は100kcalあたり 6.0~8.5gです。
犬に与えるタンパク質、過剰や不足に注意!
veloliza / PIXTA(ピクスタ)
総合栄養食のライフステージ別ドッグフードには、その年齢に必要なタンパク質が適量含まれています。
そのため、おやつにタンパク質の高いもの(ささみや牛肉や馬肉のジャーキーなど)を与えると、犬にとってはタンパク質の過剰摂取になります。
タンパク質の摂取量が多いと、余分なタンパク質を排出するために肝臓や腎臓に負担がかかります。
特に腎臓に障害がある愛犬の場合は、腎不全(慢性腎臓病)に進行するかもしれません。
iStock.com/Zontica
また、手作り食で肉などを用いる際も、タンパク質の摂りすぎにならないように気をつけましょう。
手作り食を作る場合も、おやつを与える場合も、炭水化物とタンパク質の割合を守るように心がけてください。
ダイエット(減量)を行う際に、タンパク質が少ない食事を与えたり、極端なエネルギー不足の食事にならないように注意するのも重要です。
低カロリーの食事を続けることにより、エネルギー不足を補おうとして筋肉などのタンパク質をエネルギーとして使用するため、筋肉量の減少が起こります。
また、体のあらゆる機能の調整を行っているタンパク質が不足すると、典型的な症状として活力の低下、免疫力の低下が起こります。
そのほか、食欲不振、貧血、脱毛などが起こることもあるでしょう。
特に子犬期や成長期のタンパク質やエネルギーの不足は、筋肉と骨の不足によって成長不良を起こすので好ましくありません。
なお、必須アミノ酸の欠乏、アミノ酸のアンバランスによっても同じような症状が起こります。
タンパク質は与えすぎても、与えなさ過ぎても、愛犬の健康に悪影響をおよぼす危険性があることを肝に銘じておきましょう。
犬にタンパク質を与える際のおすすめの食材やおやつは?
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
効果的にタンパク質を補給できるメニューを考える際に参考にしたいのが、タンパク質の栄養価を示した「アミノ酸スコア」です。
アミノ酸スコアとは、必須アミノ酸がバランス良く含まれていることを数字にしたもの。
体内で効率よく利用できるものは「アミノ酸スコア100」と表示されています。
「良質なタンパク質」などと言われるものは、アミノ酸スコアが高いことを意味すると考えて良いでしょう。
【動物性・植物性タンパク質におけるアミノ酸スコアの比較】
種別 | 食品 | アミノ酸スコア |
---|---|---|
動物性タンパク質 | 肉類(牛肉・豚肉・鶏肉など)、魚類、卵、牛乳 | 100 |
ハマグリ | 81 | |
ホタテ | 71 | |
植物性タンパク質 | 大豆 | 86 |
とうもろこし | 74 | |
米 | 65 | |
かぼちゃ | 68 | |
小麦 | 40 |
原材料の表示を見ればわかるとおり、ドッグフードにも植物性タンパク質が使われていますが、その場合はアミノ酸が加えられてアミノ酸バランスが整えられています。
また、動物性タンパク質の吸収率は90%とされていますが、植物性タンパク質は食物繊維が多く含まれているために吸収できない部分があり、吸収率は75%とされています。
以上のことから、タンパク質の食材やおやつを与える場合は、「アミノ酸スコア100」の動物性タンパク質が良いと言えるでしょう。
ただし、1日の必要カロリーのうちタンパク質の割合が増えすぎないように注意しなければなりません。
iStock.com/easy_riderka
また、アレルギーを引き起こす原因にもなりうるタンパク質。
過去にアレルギー症状が出たことのある愛犬には、初めて与えるフードやおやつのタンパク質には注意してください。
アレルギーの症状としては、消化器症状(下痢、嘔吐など)、皮膚症状(耳介・そけい部・脇の下・眼の周り・鼻を痒がる)がもっともよく現れます。
アレルギー症状の一つとして、涙が流れて行く涙管に炎症が起こり、目から涙があふれ、涙やけを起こすことがあります。
涙やけには多くの原因があるので、動物病院で診察を受けて原因を調べましょう。
食べ物によるアレルギーの場合は、タンパク源の異なるフードに変えるのも一つの方法ですが、獣医師と相談のうえで食物療法を行うようにしてください。
犬にタンパク質を与える場合の注意点(手作り・サプリ)!
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
手作りごはんの場合、1日の必要カロリー量を計算し、その中の必要タンパク質量を計算する必要があります。
重要なポイントは、以下のとおりです。
必要カロリーの中でのタンパク質比率を守る
カロリー(タンパク質)を下げすぎない(タンパク質不足に陥る恐れがあるため)
タンパク質をあげすぎない(肝臓、腎臓に負担がかかるため)
アミノ酸バランスがすぐれたもの、つまりアミノ酸スコアの良いもの(動物性のもの)で調整する
→タンパク質は動物性タンパク質を多めにする。
(例=動物性4:非動物性1)
ドッグフードにトッピングをする場合や、総合栄養食のほかにおやつを与える場合は、1日の摂取カロリーのうち20%までなら問題ないとされていますが、ドッグフードの20%分のカロリーを減らし、その分をささみといったタンパク質だけで与えてしまうのは好ましくありません。
全体のバランスが崩れ、タンパク質の過剰摂取になってしまうからです。
栄養バランスを考えながら、トッピングやおやつを選ぶようにしましょう。
iStock.com/Kayoko Hayashi
サプリメントを使用するならば、まずは目的を考えてください。
サプリメントは、あくまでも必要な栄養素で不足しているものを摂取させるための補助的な役割を果たします。
人間用のタンパク質(プロテイン)は、筋肉に負荷のかかるトレーニングしていたり、アスリートが使用するためにあります。
スポーツドッグやワーキングドッグであるなど、愛犬の活動量が豊富な場合は、アミノ酸バランスが整ったものを使用するようにしましょう。
アミノ酸スコアの高い動物性タンパク質がベースになっているサプリメントのほうが、タンパク質を補うにはベストです。
iStock.com/RubenPH
肝臓の弱った状態に対する、アミノ酸のサプリメントもあります。
ただし、肝機能に問題のない犬に使用すると、アミノ酸のアンバランスを起こす危険性もあるので要注意。
獣医師に相談をしてから使うようにしましょう。
まとめ
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
犬にタンパク質は必要で、重要な役割を果たしています。
ライフステージにマッチした総合栄養食を食べていれば、必要なタンパク質は摂取できるので心配いりません。
手作り食の場合やおやつを与える際は、愛犬が必要とする総カロリーのうち、タンパク質の比率が高くなりすぎないように注意しましょう。
逆に、タンパク質が足りないと健康面で悪影響が生じる恐れがあるので、ライフステージや体のコンディションによって異なるタンパク質の必要量を、きちんと与えられるように知識を得ておきたいものです。
愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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