【獣医師監修】犬が下痢をした・うんちがゆるい。この症状から考えられる原因や病気は?
犬のうんちがゆるかったり、下痢のときは、いったいどうしたらよいのでしょうか? すぐに病院に連れていくべきかどうか、飼い主としては悩むところですね。今回は犬のうんちがゆるくなる原因と、要注意の症状、考えられる病名について解説します。
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同大学付属動物医療センター 消化器科担当 獣医師
1993年に北海道大学獣医学部獣医学科を卒業し、獣医師免許を取得。
神奈川の動物病院で数年の勤務の後、北海道大学大学院獣医学研究科に入学、イヌの肥満の分子生物学をテーマに博士号を取得。その後、博士研究員を経て2005年より現職。
動物看護師の教育に携わりながら付属動物医療センターでは消化器科を受け持ち、内視鏡検査などを担当。
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆日本動物看護学会誌 編集委員長
◆全国動物保健看護系大学協会カリキュラム委員長
◆動物看護師統一認定機構カリキュラム検討委員長および問題策定委員長
【著書】
・「犬と猫の臨床検査マスターブック 検査の意義とテクニックのポイント」(AS BOOKS)
など
犬のうんちがゆるくなる(下痢)おもなメカニズムは、以下の4つです。
犬が下痢をした・うんちがゆるい【考えられる原因】
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犬のうんちがゆるくなる(下痢)おもなメカニズムは、以下の4つです。
1. 消化不良とそれに伴う吸収不良
【例】膵臓(すいぞう)の病気で消化不良を起こしているとき
2. 細菌性毒素による水分の分泌
【例】細菌感染によるとき
3. 腸粘膜の破壊による水分の漏出
【例】パルボウイルスの感染によるとき
4. 腸の運動機能の障害
【例】全身的な炎症などで腸が弱っているとき
さまざまな下痢は、通常これらのメカニズムが組み合わさって発症します。
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元気な犬のうんちは、手でつかめる程度の硬さをしています。
少し柔らかい程度で、犬の様子が元気で食欲もあれば、1日程度なら様子を見るという判断もあります。
正確な診断は実際に獣医師に診てもらわないとわかりませんが、つかんだときにグニャっとなってしまったり、ドロドロになってつかめない状態が何日も続くときには、病院で診察を受けるのが賢明です。
犬が下痢をした・うんちがゆるい【こんな症状は要注意!】
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以下の症状が見られる場合は、早めに病院で診てもらいましょう。
うんちの硬さが泥状や液状である
うんちが液状に近いほど、犬の身体に負担がかかっている可能性が高く(脱水が重度)、より重い症状であると考えられます。
できれば診察の際に、密閉容器にうんちを入れて持参してください。
「液体になってしまって、容器に入れられない」という場合は、スマホなどでうんちを撮影し、獣医師に見てもらいましょう。
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うんちの色がいつもと異なる
健康な犬のうんちの色は茶色か焦げ茶色ですが、黒色・赤色のうんちをしているようなら、獣医師の診察を受けるのがよいでしょう。
うんちの状態だけではなく、「いつもより元気があるかどうか?」「食欲があるかどうか?」というのが、大きなチェックポイントになります。
とくに「いつもより元気がない」「食欲がない」といった様子が見られる場合は、深刻な状態も考えられるので、速やかに病院で診てもらう必要があります。
犬が下痢をした・うんちがゆるい【この症状で考えられるおもな病気】
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犬の急性腸炎(きゅうせいちょうえん)
犬の急性腸炎(きゅうせいちょうえん)とは、中毒や細菌など、さまざまな原因で急性に起こる下痢症状です。
自然に治るものもありますが、元気や食欲がないとき、水のような下痢をしているときは要注意です。
犬の食事反応性腸症(FRE)
犬の食事反応性腸症(しょくじはんのうせいちょうしょう)は、食物アレルギーや、体質的に消化できない食物を与えられることが原因です。
下痢が見られますが、食事内容の変更で改善します。
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犬の抗菌薬反応性腸症(ARE)
犬の抗菌薬反応性腸症(こうきんやくはんのうせいちょうしょう)とは、細菌が関与し、抗菌薬の投与で改善する慢性的な下痢症状です。
抗菌薬を中止すると再発するケースもあり、治療が長引くこともあります。
犬の炎症性腸疾患(IBD)
犬の炎症性腸疾患(えんしょうせいちょうしっかん)とは、白血球が腸粘膜に集まり、炎症を起こす原因不明の病気です。
リンパ球プラズマ細胞性腸炎、好酸球性胃腸炎など、発症部位や白血球の種類によって分類されます。
慢性的な下痢や嘔吐を起こします。
プレドニゾロンなどの免疫抑制薬が有効なことから、近年は免疫抑制薬反応性腸症(IRE)と呼ばれるようになりつつあります。
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犬の過敏性腸症候群(IBS)
犬の過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)とは、突発的に激しい下痢や血便を発症するが、すぐにおさまってしばらくするとまた発症する、といったことをくり返す病気です。
ストレスにより、腸の収縮運動が激しくなったり、痛みを感じやすくなるために起こります。
他の病気を除外して診断しますが、ストレスのきっかけになるものを見つけ出すことが重要です。
犬の消化器型リンパ腫
犬の消化器型リンパ腫(しょうかきがたりんぱしゅ)とは、リンパ球が癌化する病気で、胃や小腸、大腸で発生します。
食欲の減退や嘔吐、下痢、体重減少が起こります。
がんの一種なので予後は厳しいのですが、リンパ腫は抗がん剤が比較的効きやすい(症状を和らげやすい)腫瘍と言われています。
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犬の腸腺癌(ちょうせんがん)
犬の腸腺癌(ちょうせんがん)とは、小腸や大腸に癌ができる病気です。
部位によって症状は異なりますが、嘔吐・下痢・血便などの消化器症状、体重減少が起こります。
リンパ節や肺、肝臓等に転移することもあるので、早期発見・治療が重要です。
犬の肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)
犬の肥満細胞腫(ひまんさいぼうしゅ)とは、アレルギー反応に関与する「肥満細胞」が腫瘍化する病気です。
肥満細胞は炎症を引き起こす化学物質(ヒスタミンなど)を持つため、できものが赤く腫れ上がって痒みが出たり、胃潰瘍が起こる恐れもあります。
肥満細胞は白血球の一種でリンパ管を通じて移動することができるため、転移が起きやすい腫瘍として知られています。
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犬パルボウイルス感染症
犬パルボウイルス感染症(かんせんしょう)とは、イヌパルボウイルスによって引き起こされる感染症です。
血液中の白血球が減少し、突然激しい嘔吐やトマトジュース様の血便を起こして重度の脱水状態を起こします。
ワクチンで予防できますが、子犬ではワクチンの効果が出る前に感染する恐れもあるので注意が必要です。
発症したときは、輸液や輸血など積極的な治療をしないと命に関わります。
また、便の中にウイルスがいるので、他の犬に感染させないよう注意することも重要です。
犬の細菌性腸炎(さいきんせいちょうえん)
犬の細菌性腸炎(さいきんせいちょうえん)とは、サルモネラやカンピロバクター、クロストリジウム、大腸菌などの細菌に感染し、腸が炎症を起こす病気です。
食欲不振や嘔吐、下痢、血便、脱水症状が現れます。
子犬や抵抗力の弱った動物で発症しやすいと言われています。
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犬の消化管内寄生虫症(しょうかかんないきせいちゅうしょう)
犬の消化管内寄生虫症(しょうかかんないきせいちゅうしょう)とは、線虫や条虫、原虫などの寄生虫が消化管に寄生する病気です。
線虫(回虫、鉤虫、鞭虫など)は主に虫卵の経口摂取によって感染しますが、条虫(犬条虫)は中間宿主であるノミの経口摂取により感染します。
下痢や嘔吐、血便、体重減少等が見られます。
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