【獣医師監修】犬のおしっこ(尿)が茶色い・血尿を出した。この症状から考えられる原因や病気は?
犬の尿が、時に色が違っていて驚くことがあります。観察していてもわかりにくいのですが、褐色や赤色ならば血尿。重大な病気のサインであることもあります。ここでは、尿の色の変化および血尿の原因や気をつけたい症状などを解説します。
更新日:
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医学部獣医学科卒業。
2010年に日本獣医生命科学大学大学院で犬および猫の慢性腎臓病の早期診断の研究で博士(獣医学)号を取得。
2011年から日本獣医生命科学大学に着任し、同時に付属動物医療センター腎臓科を担当。
【資格】
◇獣医師
犬および猫の腎臓病・泌尿器疾患、体液・酸塩基平衡を中心に診療、研究を行っている。
自宅で、自己主張が苦手なシェルティ(オス5歳)と、走り回るのが大好きなミックス猫(メス7歳)と暮らす。
【翻訳書】
「イヌとネコの腎臓病・泌尿器病-丁寧な診断・治療を目指して」Canine and Feline Nephroligy著 ファームプレス
目次
犬のおしっこ(尿)が茶色い・血尿を出した【考えられる原因】
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水分不足
体内の水分が足りない場合、尿が黄褐色になることがありますが、尿が濃いこと自体は病気ではありません。
ただし、あまり水を飲まない場合は脱水症状を起こしてしまうことがあります。
とくに冬は水を飲まないことが多いので水を与えましょう。
雌犬の発情期
個体差はありますが、避妊手術をしていない雌の場合、半年に1回ほどのサイクルで訪れる発情期に出血が見られます。
これが尿に混じって赤く見えることがあります。1~3週間ほど外陰部より出血しますが、この時期を過ぎればおさまります。
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赤血球が壊れた(溶血)
タマネギによる食中毒
タマネギを食べたことによる食中毒で、尿が赤くなることがあります。
タマネギの中毒物質により、血液内の赤血球が破壊されて溶血すると、赤血球の色素が尿に混じり、血色素尿になります。
フィラリア症
フィラリア(犬糸状虫)という寄生虫が体内で大量に寄生したり、長期的に感染していたりすると溶血して血尿が出ることがあります。
この場合は重症で命にかかわるため急いで病院へ行きましょう。
泌尿器・生殖器の疾患
膀胱や尿道、腎臓など泌尿器、前立腺に炎症や結石ができた場合、出血して尿に血液が混ざることがあります。
また、膀胱など泌尿器系にできた腫瘍から出血し、血尿が出る場合があります。
犬のおしっこ(尿)が茶色い・血尿を出した【こんな場合は要注意!】
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はっきりと目に見えて尿が赤い場合は、出血が大量か、出血が直前に生じた場合です。
尿が濃い場合や出血から時間が経過すると、赤褐色になります。
水分不足(褐色には見えますが、赤くはなりません)や、発情期などが思い当たらない場合は、病気の恐れがあるので病院で診てもらいましょう。
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なお、血尿の場合、以下のとおり排尿のどのタイミングで出るかによって、出血の場所をある程度推測できます。
排尿のはじめのみ血尿が出る
尿の出口(尿道、膣)付近の出血だと考えられます。
排尿のはじめから最後まで血尿が出る
膀胱の中での出血、腎臓や尿道からの出血だと考えられます。
排尿の最後に血尿が出る
膀胱か前立腺からの出血だと考えられます。
犬のおしっこ(尿)が茶色い・血尿を出した【この症状で考えられるおもな病気】
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犬の尿石症(尿路結石)
犬の尿石症(にょうせきしょう)とは、尿路に結石ができる病気で、尿路が詰まったり、痛みを生じることがあります。
感染症や偏った食事などが原因となり、尿中のミネラルや細胞、タンパク質が固まって結石ができます。
頻尿や血尿などの症状を伴うことがあります。
結石が尿管や尿道に詰まると尿が出にくくなることがあり、雄では尿道に詰まることが多いです。
犬の細菌性膀胱炎
犬の細菌性膀胱炎(さいきんせいぼうこうえん)とは、大腸菌などの細菌が、膣や包皮から尿道を通って膀胱に入り炎症が起きる病気です。
膀胱結石や腫瘍、外傷があると細菌に感染しやすくなります。
症状としては、頻尿や排尿痛、血尿が現れます。
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犬の腎盂腎炎
犬の腎盂腎炎(じんうじんえん)とは、細菌性膀胱炎に伴う病気で、膀胱から腎臓に細菌が侵入することで発生します。
腎不全を発症することもあり、多飲多尿や発熱、下痢、嘔吐、貧血といった全身的な症状が現れることもあります。
犬のタマネギ中毒
犬のタマネギ中毒とは、タマネギや長ネギ、ニラなどのネギ類に含まれるアリルプロピルジスルファイドによる食中毒です。
赤血球が溶け、溶血性貧血を起こし、血尿や貧血、黄疸等が現れます。
加熱しても毒性は変わらないため、注意が必要です。
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犬の犬糸状虫症(フィラリア症)
犬の犬糸状虫症(けんしじょうちゅうしょう)とは、蚊を媒介に、糸状虫(フィラリア)という寄生虫が心臓に寄生する病気です。
初期は、咳や腹水が現れ、進行すると食欲低下や呼吸困難、貧血などの症状が見られます。
心不全で死に至る危険もあります。
犬の免疫介在性溶血性貧血
犬の免疫介在性溶血性貧血(めんえきかいざいせいようけつせいひんけつ)とは、別名、自己免疫性溶血性貧血(じこめんせきせいようけつせいひんけつ)と呼ばれる病気で、ウイルスや細菌などを攻撃する免疫が赤血球を破壊し、貧血になる病気です。
元気消失や息切れのような貧血症状に加え、多飲多尿、黄疸等が現れます。
重症や急性では、命を落とす危険があります。
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犬の前立腺炎
犬の前立腺炎(ぜんりつせんえん)とは、前立腺が細菌感染し、炎症を起こす病気です。
急性では、激しい痛みや発熱、嘔吐、排尿障害、血尿が起こります。
慢性ではほぼ無症状です。また、急性では前立腺が肥大するのに対し、慢性では前立腺が萎縮します。
そのほか、泌尿器系の腫瘍が原因として考えられます。
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