【獣医師監修】愛犬のダイエットを始める前に理想体重と肥満度(BCS)を要チェック!
家族の大切な一員である愛犬が、できるだけ健康に長生きできる飼育環境を作ってあげられるのは、飼い主だけです。まずは愛犬の「理想体重」を知り、「ボディコンディションスコア(BCS)評価表」を使って肥満度を判定しましょう!愛犬のダイエットに対する考え方や運動についても解説します。
更新日:
獣医師 MBA(経営学修士)
ヘリックス株式会社 代表取締役社長
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆ペット栄養学会 理事
◆一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
◆日本獣医生命科学大学 非常勤講師
◆帝京科学大学 非常勤講師
など
大学卒業後、小動物臨床に従事。
その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。
現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。
自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
犬の理想体重を知りましょう!
愛犬の現在の体型が標準なのか、痩せているのか、太っているのか、太っているとすればどの程度太っているのか、「ボディコンディションスコア(BCS)」という評価方法を使用してしっかり把握しましょう!
犬のボディコンディションスコア(BCS)で肥満度を調べましょう!
「犬のボディコンディションスコア(BCS)」とは、犬の肥満を体重だけでなく、体格や体型、皮下脂肪のつき具合によって、肥満度を評価する指標のことです。
5段階評価と9段階評価の2種類があり、日本では、5段階評価※が一般的に使用されています。
獣医師もおもにBCSを利用して肥満の診断と治療にあたります。
※あくまで目安ですが、愛犬の体型を5段階のスコアで評価します。
1.「痩せすぎ」
2.「痩せ気味」
3.「標準体型」
4.「太り気味」
5.「太りすぎ」
犬のボディコンディションスコア(BCS)、4つのチェックポイント !
1.犬のお腹の出具合をチェック
犬を真横から見て、お腹のくびれ具合を確認します。長毛種の場合はお腹の被毛を手で寝かせて、お腹に直接触り、体のラインがわかる状態で確認しましょう。
2.犬の腰のくびれをチェック
犬を真上から見て、腰のくびれ具合を確認します。
3.犬の肋骨をチェック
肋骨のある場所に直接触り、どのくらい肋骨が浮き出ているかを確認します。長毛種の場合、被毛をかき分けてできるだけ皮膚に直接触れるようにして確認してください。
4.犬の腰骨をチェック
腰部分に触り、腰骨がどの程度浮き出ているかを確認します。長毛種の場合は、3と同じように皮膚に直接触れるようにして確認しましょう。
犬のボディコンディションスコア(BCS)評価表を使って肥満度を判定しましょう !
さきほどのチェック方法を用い、評価表に従って愛犬の肥満度を判定しましょう。判断に迷う場合は、かかりつけの獣医師に相談してください。
犬のBCS3「標準体型」の確認ポイント
・ポイント1:ウェストがゆるやかに細くなっているのが観察できる。
・ポイント2:ウェストにゆるやかなくびれが観察できる。
・ポイント3:皮下脂肪と筋肉に覆われているが、触ると肋骨と背骨の両方が確認できる。
・ポイント4:皮下脂肪と筋肉に覆われているが、触ると腰骨が確認できる。
犬のBCS4「太り気味」の確認ポイント
・ポイント1:ウェストが引き締まっておらず、わずかなへこみしか確認できない。
・ポイント2:ウェスト部分にわずかなくびれしか確認できない。
・ポイント3:厚い脂肪に覆われていて、触っても肋骨と背骨に触ることが困難。
・ポイント4:厚い脂肪に覆われているので厚みがあり、触るとかろうじて腰骨を確認できる。
犬のBCS5「太りすぎ」の確認ポイント
・ポイント1:ウェストのへこみがまったく観察できないか、むしろ垂れ下がっている。
・ポイント2:ウェストのくびれはまったく確認できず、樽のような胴体。
・ポイント3:厚い脂肪に覆われているため、触っても肋骨と背骨の所在を確認できない。
・ポイント4:厚い脂肪に覆われているため厚みがあり、触っても腰骨を確認できない。
愛犬の理想(目標)体重を求めましょう!
BCSのスコアがわかったら、まず、愛犬の現在の体重を測定し、該当犬種の標準体重を確認してください。
次に下表の「犬種別理想体重早見表」を使って、愛犬の理想体重を求めましょう。この体重がダイエット時の目標体重となります。目標体重の設定については、最終的には獣医師と相談して決めましょう。
とくに30%以上の重度肥満の場合には、目標体重が過 小評価されてしまうため、獣医師のアドバイスが不可欠です。
【例】:BCSが「4」だった場合 現在の体重÷1.15=理想体重の目安
【例】:BCSが「5」だった場合 現在の体重÷1.30=理想体重の目安
※BCS4は15%オーバー、BCS5 は30%オーバーの肥満として計算しており、あくまで目安です。
犬種別理想体重早見表
無理のない目標を設定しましょう !
もし、愛犬の肥満度が高くて現在の体重と理想体重が大きくかけ離れているときは、無理して一気に痩せさせなくても大丈夫です。
2段階に分けるなどして、無理のない目標値を定めると達成感が出てダイエットが持続しやすくなります。
犬のダイエットの考え方とは?
ダイエットというと、体重さえ落とせばよいと考えがちですが、基礎代謝を作る筋肉まで落ちてしまうような減量は正しくありません。
ダイエットとは、本来の体組成に体を戻すこと。筋肉量と体脂肪量の比率を正常に近づけるための減量であることを念頭におきましょう。
ダイエットの基本は「食事制限」と「運動」です。
目標体重に近づけるための一日の摂取エネルギーを制限するとともに、 運動量も確保し、筋肉を維持(あるいは増量)させながら、体脂肪を落としていくことが大切です。また、急激な減量は脱水と筋肉量の減少につながります。
1週間に、今までの体重の0.5~2%落とす程度が適切な減量といえます。
例えば5㎏の犬なら多くても1週間に100g、つまり1か月に400gまでにしましょう(400gというと少なく感じるかもしれませんが、 50㎏の人だったら4㎏に相当します)。
犬のダイエットのための食事とは
100%の獣医師が、肥満対策として食事管理が重要と考えているとのアンケート結果(日本ヒルズ・コルゲート株式会社2008年獣医師から見た「ペットの肥満」傾向調査)の通り、ダイエットに最も効果的なのは、「食事制限」つまりエネルギーの摂取量を減らすことです。
ただし、無理な食事制限は栄養が偏ってしまうため、健康によくありませんし、絶食はもってのほかです。
正しい食事制限とは、必要な栄養素をしっかり摂りながらカロリーを制限することです。
犬のダイエットのための運動とは
運動ダイエットは、エネルギーの消費量を増やすために行いますが、食事制限に比べると運動量の管理や持続することが難しい側面があります。
運動ダイエットの効果に期待する獣医師は、実は、わずか25%にとどまるとのアンケート結果もあります(日本ヒルズ・コルゲート株式会社2008年獣医師から見た「ペットの肥満」傾向調査)。
しかし、先述したとおり、運動は筋肉を維持・増量し、基礎代謝量を増やすためにも必要です。
現代の生活スタイルではなかなか習慣づけることは難しいかもしれませんが、愛犬を健康的に減量するためにもぜひ取り組んでほしいものです。
ただし、太り過ぎですでに関節に負担がかかっている場合や、心臓や呼吸器に問題がある場合、急な運動はかえって健康を害することもあります。
また、散歩嫌いに見える犬の中には、関節炎や心臓病のために辛くて嫌がっている場合もあります。
運動ダイエットを始める前に獣医師の診断を受け、指示に従って運動内容を決めましょう。
愛犬のダイエットには獣医師や動物看護士の心理的サポートを受けましょう!
ダイエットは、毎日の地道な努力が必要なため、長続きせず途中でやめてしまう飼い主のお話をよく聞きます。
体重がなかなか落ちず、くじけそうになったとき、飼い主を心理的にサポートする専門家の存在があれば、心強いものです。
ダイエットで病院に行くのは気が引けると思いがちですが、そんなことはありません。
病院では獣医師も動物看護師もダイエットに取り組む飼い主に対し、いつでも気軽に対応してくれるはずです。気後れせず、ぜひ相談してみてください。
愛犬の定期的な体重測定が大切!
ダイエットの効果を見るためにも、愛犬の体重を常に把握しておくことが大切です。
2週間に1度は体重を測り、減量の進み具合を確認しましょう。
また、ダイエット後も体重維持のために定期的に体重を測定しましょう。
大型~中型犬であれば、人間用の一般的な体重計で計測できますが、小型犬の場合はペット用もしくは人間の赤ちゃん用の、10g単位まで測れる体重計を用いるようにし、細かくチェックするようにしてください(超大型犬は、かかりつけの動物病院などで測ってもらいましょう)。
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【まめ知識】猫の食事制限は犬より難しい?
猫は、犬よりも新しい食べ物に対して慎重になることが多く、ダイエットのために用意されたフードを食べないことがしばしばあります。
最近では療法食の嗜好性はとてもよくなっているのですが、食物繊維が強化された療法食は、それまで食べてきたフードとはだいぶ異なることが一因です。
中には、いくら空腹でも何日も食べないほど頑固な猫もいます。犬の場合、数日間食事をとらなくても重大な健康被害につながることはありませんが、太った猫にとって何日も絶食することは「肝リピドーシス」という、死亡することもあるような深刻な病気につながるため、絶食は避けなければなりません。
そのような場合は、7~10日間かけてゆっくりと食事を切り替える必要があります。
【獣医師監修】犬の肥満の正体を知る!「愛犬版」肥満チェックシート!あり
現在、日本で飼育されている犬の約3割が過体重または肥満であるとの報告もあり、犬の肥満は深刻な「現代病」となりつつあります。人と同様、犬の肥満も他の病気の原因となることが解明されてきました。ここでは、犬の「肥満原因」「肥満リスク」について解説しつつ、【愛犬版】肥満チェックシート!もご用意していますので、ぜひご活用下さい。
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【獣医師監修】実践!愛犬の「食事ダイエット」具体的な対策や重要ポイント!
愛犬のダイエットを成功させるには、日頃の食習慣がとても大事です!ここでは、愛犬がダイエットをおこなう上で必要な「栄養」「エネルギー」「カロリー」の説明だけでなく、食事による愛犬のダイエットの具体的な対策や重要なポイントについて解説します。愛犬のダイエットに関する【特別コラム】もご用意していますので、ぜひ、ご覧下さい!
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