【獣医師監修】実践!愛犬の「食事ダイエット」具体的な対策や重要ポイント!
愛犬のダイエットを成功させるには、日頃の食習慣がとても大事です!ここでは、愛犬がダイエットをおこなう上で必要な「栄養」「エネルギー」「カロリー」の説明だけでなく、食事による愛犬のダイエットの具体的な対策や重要なポイントについて解説します。愛犬のダイエットに関する【特別コラム】もご用意していますので、ぜひ、ご覧下さい!
更新日:
獣医師 MBA(経営学修士)
ヘリックス株式会社 代表取締役社長
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆ペット栄養学会 理事
◆一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
◆日本獣医生命科学大学 非常勤講師
◆帝京科学大学 非常勤講師
など
大学卒業後、小動物臨床に従事。
その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。
現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。
自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
目次
犬の食事に必要な栄養素とその役割は次のとおりです。
犬にとっての食事とは?
犬には犬特有の食性や食習慣があり、人の基準で考えてはいけないことがたくさんあります。
犬本来の健康な体を取り戻すためにも、食事における犬の特性をよく理解し、適切な食事制限を行うことが大切です。
犬の食習慣
犬は出された食事を一気に食べつくしてしまう習性があります。これは、犬のなかまが、狩りをあまり得意としないことに起因します。
獲物を捕らえたり、腐肉を確保できないことが多く、何日も食べられないことも。
そこで一旦獲物が手に入れば、体重の1/5から1/4、およそ8㎏も食いだめし、しかも他の犬が今か今かと狙っているため、早く食べてしまおうと一気食いします。
この「ため食い」と「早食い」の特性が犬にも引き継がれているのです。
そのため、犬にとって食事の仕方や量の管理はとくに大切なことと いえます。
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犬の食事と栄養
犬の食事に必要な栄養素とその役割は次のとおりです。
タンパク質
タンパク質は、皮膚や毛、筋肉、じん帯、腱、軟骨、血球、抗体、ホルモンといった動物の体を作るアミノ酸の供給源です。
アミノ酸には20種類あり、その組み合わせや配列によって皮膚になったり、毛になったりします。アミノ酸はまた、ホル モンや抗体の材料にもなります。
アミノ酸の多くは体内で合成できますが、犬の場合10種類のアミノ酸(アルギニン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、スレオニン、トリプトファン、バリン)は、十分な量を合成できないため、食べ物から摂取しなければなりません。これらを必須アミノ酸といいます。
ドッグフードに含まれるタンパク質には動物性と植物性があり、動物性には必須アミノ酸がすべて含まれますが、穀類のタンパク質はリジンやメチオニン、ロイシン、トリプトファンの含有量が少なく、植物性タンパク質だけだと必須アミノ酸が不足しがちです。
総合栄養食では、タンパク質が、成犬の場合18%以上含まれるよう定められています。
不足すると・・・ タンパク質はあらゆる細胞を作るもととなるため、不足すると発育不良、体重減少、貧血、筋肉の衰え、被毛のパサつきがおこります。
低品質のフードは、タンパク質の量が少ないことがあるので、気をつけましょう。
ただし、一部の療法食には、 内臓への負担を減らすため、極端にタンパク質が少ないものがあります。
脂肪
脂肪はエネルギーを供給し、体温を維持するのに役立ちます。また、脂溶性ビタミンの吸収を助けたり、必須脂肪酸を供給したりする働きもあります。
犬の必須脂肪酸はリノール酸(オメガ6)、αリノレン酸(オメガ3)で、これらを基にさまざまな脂肪酸(細胞膜の構成成分ともなる)がつくりだされます。
また、体内の水分コントロールといった重要な役割も担っています。 脂肪は嗜好性を高め、少量で多くのエネルギー量を得ることができますが、摂り過ぎると肥満を招く原因となります。
総合栄養食における脂肪含有量は成犬で5%以上とされています。
不足すると・・・ 脂肪は臓器を保護したり、細胞膜を形成する材料になったり、ホルモンの生成に関わったりするため、不足すると繁殖機能が抑制されたり被毛のツヤがなくなります。
低脂肪の食事ばかり与えていると、必須脂肪酸が不足します。
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炭水化物
炭水化物は、糖質(糖、でんぷん)と食物繊維に分かれ、糖質はエネルギー源になり、食物繊維は便秘予防など腸内環境を整えるのに役立ちます。
また糖質は、妊娠・授乳期には胎児の成長や母乳の生産のため、多く必要な栄養素です。
炭水化物は安価なエネルギー源で満腹感も得られるため、以前は食物繊維が多く含まれているのは低品質なフードであるといわれることもありました。
しかし現在では、食物繊維はその性質によって可溶性繊維(ペクチンなど)や不溶性繊維(セルロース)に分類され、減量用フードや胃腸疾患用フードなどに積極的に使用されています。
不足すると・・・ 炭水化物は、犬にとって必須の栄養素ではありませんが、まったく摂取しないなど極端に不足すると、低血糖を起こして 無気力になったりすることがあります。
ビタミン
ビタミンは体内で合成することができないため、食事から摂らなければなりません。水溶性ビタミンと脂溶性ビタミンがあり、犬に必要なビタミンは以下の11種類とされています。
ちなみに、ビタミンCは、人間は食事として摂取しないといけないですが、犬は体内で合成することができます。また、ビタミンKは、腸内細菌が合成してくれるので、通常では欠乏するということはありません。
◇水溶性ビタミン
ビタミンB1・B2・B6・B12(代謝の調整、正常な発育)、パントテン酸、葉酸、ナイアシン、コリン
◇脂溶性ビタミン
ビタミンA(視力の維持、成長、繁殖、免疫機能、健全な被毛の維持)、ビタミンD(カルシウムとリンの代謝)、ビタミンE(生体内抗酸化成分としての働き)
不足すると・・・ 総合栄養食を与えていれば、ビタミンが不足することはありません。むやみにサプリメントを与えて過剰に摂取すると、 脂溶性ビタミンが体内に蓄積してしまい、中毒や副作用を生じることがあります。
ミネラル
ミネラルは、体液バランスの調整、細胞の機能、神経伝達、筋収縮、体組織の構成で重要な役割を果たします。
犬に必要なミネラルは、少なくとも18種類とされていて、1日あたりの給与量によって2つに分類されます。
1つは、グラム・ミリグラム単位の量が必要な多量ミネラルで、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム、イオウの6種類です。
もう1つはマイクログラム単位のわずかな量必要な微量ミネラルで、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、セレン、クロム、フッ素、コ バルト、モリブデン、ホウ素、マンガンの11種類です。
ミネラルは、それぞれに相互作用が働くため、過不足なく適切な バランスで摂取することが大切です。
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エネルギーとカロリー
ダイエットを語るうえで、カロリーの話は欠かせませんが、カロリーとは一体何なのでしょう。
カロリーとは、食べ物のエネルギーを完全燃焼(酸化)させたときに生まれる熱量のことで、ふつうカロリー(cal)という単位で表します。
1gの水の温度を1℃上昇させるエネルギーが1calです。エネルギーを供給する栄養素は、炭水化物と脂質とタンパク質です。
「総エネルギー」「可消化エネルギー」「代謝エネルギー」の違い
それぞれの食べ物が本来持っているエネルギーを「総エネルギー(GE)」といいますが、犬はそれをすべて吸収できるわ けではなく、吸収されなかったエネルギーは糞になって排せつされます。
この排せつされてしまったエネルギーを総エネル ギーから差し引いたものを「可消化エネルギー(DE)」といい、実際に犬が消化・吸収したエネルギーです。
しかし、じつは可消化エネルギーもすべて利用されるわけではなく、尿、ガスとして排せつされるエネルギーがあり、可消化エネルギーからこれらを差し引いたものを「代謝エネルギー(ME)」といいます。
フードの成分表にエネルギーが書かれていることがありますが、これは、代謝エネルギーのことです。
・可消化エネルギー(DE)=総エネルギー(GE)- 糞で排せつされるエネルギー
・代謝エネルギー(ME)=可消化エネルギー(DE)- 尿・ガスで排せつされるエネルギー
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犬にとっておいしい食事とは?
犬の嗅覚や味覚は人間とはまったく違いますし、それこそ、「おいしそうな見た目」は犬にとってほとんど関係がありま せん。
犬がどんな食事をおいしいと感じるのか、犬の好みについて知ることは、食事を管理するうえでとても大切です。
【味】
味はもちろん食べ物に含まれる成分で決まりますが、犬と人間では味覚が違います。犬も人間も、味覚は味蕾(みらい) という舌にある器官で感じますが、犬の味蕾の数は、人間の1/5程度で2000個しかありません。
犬は甘味や酸味を感じることができますが、塩味は感じないとされています。また、苦味は人と感じ方が違うと考えられています。
【食感】
犬は、ベタベタした食感のものは好きではなく、また、ドライフードよりも半生タイプのフードの食感を好むようです (Kitchell1978)。
同じ組成配合のドライフードであれば、より粒の大きなものが好きです。
【匂い】
犬の嗅覚が非常に発達していることはよく知られていますが、犬にとって食べ物のおいしさを判断する重要な要素は匂いです。
嗅覚が正常な犬では、牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉などさまざまな肉に対してはっきりと嗜好性を示すのに、嗅覚に異常 があると肉の判別もできず、穀類との区別もできません(Houpt他1978)。
また、味気ない食べ物だとしても、匂いさえよければ食べる意欲がわきます。ただし、よい匂いがしても味気ないことがわかってくれば、食べなくなってしまいます。
食べ物の匂いは、摂食行動のよいきっかけになりますが、ずっとおいしく食べてもらうには、やはり味とのバランスが重要です。
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犬の食べ物に対する「好み」とは
犬は、かなりの食いしん坊なのでお腹が減ってさえいれば、基本的に出されたものは何でも食べます。とはいえ、犬にもある程度の好みはあり、水分含有量、栄養素、材料、調理法、温度などが犬の嗜好を左右する要素となります。
また、過去の経験も重要で、犬の食べ物の好みは生まれる前~生後6か月までに決まるとされています。生まれる前というのは驚きかもしれませんが、ある実験によると、犬は生まれたばかりの子犬でも味覚が機能していることがわかりました(Ferrel 1984)。
また、子宮内で経験した母犬の食事の傾向が生まれた後も影響したり(Pedersen & Blass 1982)、母親が食べていたものの味や匂いが母乳に移行して母乳の風味に影響し、それを飲んで育った子犬は母親と似た嗜好になるという報告があります(Galef & Henderson 1972)。
さらに、生後6か月まで決まった食事しか与えられない子犬は、好き嫌いが激しくなり、 いろいろなものを食べて育った子犬は、新しい食べ物でもちゃんと食べることが報告されています(Kuo 1967)。
このようなことから、犬の食べ物に対する好き嫌いは生後6か月くらいまでに決まり、つまり若いうちにいろいろな食べ物を経験 させたほうが好き嫌いなく育つと考えられます。
ドッグフードの種類
ドッグフードには、使用する目的によって、主食となる「総合栄養食」、おやつなどの「間食」、食事療法に用いられ、獣医師のアドバイスに基づいて使用する「療法食」、そしてそれ以外の目的のために使用する「その他の目的食」の4つに分類されます。
法律および公正競争規約に基づく記載事項
「ペットフード安全法」では、販売用愛がん動物用飼料には、以下1~5に挙げる事項を表示しなければならないと定めて います。
加えて「ペットフードの表示に関する公正競争規約」では、以下6~9を表示することを指示しています。
1.販売用愛がん動物用飼料の名称
2.原材料名
3.賞味期限
4.製造業者、輸入業者または販売業者の氏名または名称および住所
5.原産国名
6.ペットフードの目的
7.内容量
8.給与方法
9.成分
犬の総合栄養食
毎日の主食として使用するためのペットフードで、このフードと水を与えれば、指定された成長段階の犬の健康を維持できる栄養バランスで作られて います。
公正競争規約に定められている「栄養成分等の基準」を満たし、長期間の給与試験を行って血液検査などさまざまな検査にパスしたもの、もしくは科学的な分析検査にパスしたものが「総合栄養食」と表示することができます。
栄養成分等の基準は、AAFCO(米国飼料検査官協会/Association of American Feed Control Officialの略称)の基準をもとに定められています。
犬猫の違いはもちろん、年齢やライフステージの段階別栄養基準に則って設定されています。
犬の間食
ご褒美としてときを選ばず限られた量与えることを想定して作られたフードのことです。「間食」「おやつ」「スナック」「トリーツ」などと表示されます。
間食の製品には、適切な栄養量・栄養バランスを維持するために、給与量と回数の限度、主食給与量の調整が必要なことを表示し、注意喚起がなされています。給与限度量は、一般に一日あたりのエネルギー要求量の20%以内にすることが望ましいとされています。
犬の療法食
療法食は、獣医師が食事療法を行う目的で使用する、治療内容に合わせて栄養成分量・比率が調整されたフードです。
例えば、食物アレルギー用の除去食、尿路結石用、減量用、慢性腎臓病用などがあります。
極端な栄養制限や栄養バランスのものもあり、いずれも、獣医師の指導の下で管理されるという設定で作られているので、絶対に飼い主の判断だけで与えてはいけないフードです。
その他、犬の目的食
「総合栄養食」、「間食」、「療法食」のいずれにも 該当しない、特定の栄養補給やカロリー補給、または嗜好性を高めるために、総合栄養食など他の食事と一緒に与えることを目的として作られています。
「一般食(おかずタイプ)」、「一般食(総合栄養食と 一緒に与えてください)」、「栄養補完食」、「カロリー 補給食」、「副食」、「サプリメント」など利用目的によって表記されています。
犬の総合栄養食の形状による分類
総合栄養食には、「ドライ」「ソフトドライ」「セミモイスト」「ウェット」の4つの形状があります。おもに水分量と食感が大きな違いです。
【犬用】ドライフード
水分10%程度以下のフード。加熱発泡処理され、ほとんどが固形タブレットの形状でカリカリした食感です。
重量あたりの栄養価が高く、コストパフォーマンスに優れます。
また、 カビなどが繁殖しにくく、適正に保存すれば、他のフードに比べ保存期間が長いことが特徴です。
水分含有量が少ないので、別に水をしっかり飲ませるよう留意しなければなりません。
【犬用】ソフトドライフード
水分が25~35%程度のフードで、固形タブレット状ですが、ドライフードより食感が柔らかいタイプです。
加熱発泡処理されていて、しっとりした柔らかさを保つために湿潤調整 剤を使用していることがあります。
ドライフードより水分含有量が多いため、開封後は早めに消費しなければなりません。
【犬用】セミモイストフード
水分量は25~35%とソフトドライと同じですが、発泡処理をせず、押し出し機で製造されています。
適度な弾力感で食べ応えのある食感です。柔らかさを保つために湿潤調整剤が使用されていることも。
水分含有量が多いため、開封後は早く消費する必要があります。糖質が多く含まれているものもありますので、糖尿病の犬では注意が必要です。
【犬用】ウェットフード
水分量約80%とかなり水分が多く、風味のよさと柔らかさでシニア犬でも食べやすいフー ド。
アルミトレーやレトルトパウチ、缶詰にパッケージした後、殺菌処理されていますが、開封後はできるだけ早く消費してください。
栄養素と一緒に水分も補給できますが、重量あたりの栄養価は低くなります。ウェットフードを好む犬は多いので、与え過ぎに注意しましょう。
年齢による犬の代謝の変化
犬の1日あたりのエネルギー要求量のうち、安静にしていたとき、基本的な生命活動を行うために必要な最小のエネルギー量を「基礎代謝量」といいます。
成犬のエネルギー要求量のうち、約60~80%が基礎代謝に使われるとされていますが、2、3歳ごろをピークに、その後はゆるやかに減っていきます。
つまり、年齢が上がると基礎代謝は減るので、太りやすくなります。 とくに基礎代謝の40%は筋肉で消費されているため、筋肉が落ちると基礎代謝も減ります。
つまり、年齢を重ねても筋肉量 を維持できれば基礎代謝は減りにくくなるのです。しかしながら、より高齢な犬は、基礎代謝が減少する一方で肥満になる ことも少なくなります。
先述したとおり、肥満にとくに気をつけなければならないのは、6~12歳で、最も肥満の多い年齢は7歳です。
年齢による犬の食事内容の違いと適切な与え方
子犬期(成長期~1歳)
生まれてすぐは、人の20倍の速さで成長するため、授乳期の母犬は、生涯のなかでもっとも多くのエネルギーと栄養が必要となります。
この時期は母犬の栄養状態に十分配慮しましょう。離乳後の小犬は、成犬の2倍程度のエネルギーが必要です。
とくに、成犬と比べてタンパク質、脂質、カルシウム、リン、ナトリウムを多く必要とします。
子犬は一度にたくさん食べることができないうえ、消化器官も未発達なため、 高カロリー食を少量ずつ回数を分けて与える必要があります。
食欲旺盛だからといって、この時期に太らせてしまうと、脂肪細胞の数が増えて肥満しやすい体質になってしまうため、食べさせ過ぎないよう注意しましょう。
食べたいだけ食べさせるのではなく、1日の量を体重から計算し、決まった量を与えるようにしてください。
適切な与え方
生後8か月までは適正量を分けて回数を多く与えます。1日に3~4回程度に分けて与えるようにしましょう。
注意点
子犬は成犬ほど消化器官が発達していませんし、必要なエネルギー量・栄養素も成犬とは異なります。高栄養で消化の良 い成長期用フードを与えてもよいでしょう。
成犬期(1~7歳)
成犬の標準体重の80%に達すると、成長がほぼ終わって成犬期に入ります。そのため、子犬期ほどの栄養素とエネルギーは必要ありません。
この時期には、犬の理想体重と健康を維持できる食事を与えることが大切です。食事量はその犬の飼育環境に左右されます。
運動量が多ければそれだけエネルギーが必要ですが、現在日本ではあまり散歩に行かない飼い主も多く、ペットフードの表示通りに与えると太ってしまいます(1日に必要なエネルギー量は、散歩していることを前提に計算されているからです)。
ライフスタイルに合わせて2割くらい増減するようにしましょう。また、避妊・去勢を行っている犬には肥満防止用フードを与えるようにしましょう。
適切な与え方
成犬の場合は通常1日2回の給与とされています。しかし、肥満傾向の犬にはあらかじめ取り分けた1日の分量を小分けにし、回数を多くしたほうがよいでしょう。
注意点
基本的におやつは犬に必要ありませんが、与える場合はその量を1日の総量から差し引きましょう。おやつは犬のためというより、むしろ飼い主のため。
おやつを与えるおもな動機は、犬とのコミュニケーションを深めることですが、おやつではなく、一緒に遊んであげることでコミュニケーションをとったほうが、信頼も深まって、犬の健康にもよいといえます。
犬のシニア期(7歳~)
高齢期になると筋肉が衰え、基礎代謝が減少してエネルギー要求量は成犬の80%程度となるため、肥満防止に気をつけなければなりません。
しかし、12歳を超えるころから肥満犬の割合は減少し、むしろ痩せている犬が多くなります。
身体機能が衰え、消化・吸収が悪くなるため、しっかりとエネルギーを与えるため にカロリーが高く内臓に負担がかからないような食事内容が大切です。
例えば、腎機能や心臓・循環器系に負担をかけないよう、タンパク質、リン、ナトリウムは与え過ぎないようにする必要があります。
とくに慢性腎臓病などの 疾患があると、これらの栄養素を大幅に制限することもあります。タンパク質は、量を少なくするだけでなく、高品質で消化率の高いものを与えましょう。
適切な与え方
シニア犬は、消化器官も衰えるため、少量を何度も与えるようにしましょう。また、嗅覚が衰えて食いつきが悪いときは、 40℃くらいに温める(ドライフードはふやかしてから)と香りが立って食べやすくなります。
注意点
12~13歳以降のシニア犬は、むしろ体重減少が問題になることがあります。その場合は消化のよい高カロリーのフードを与える必要もあります。
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食事による犬のダイエットの具体的な対策!
犬の食事ダイエットとは、エネルギーの摂取量を減らすために行う食事管理のことですが、絶食したり、今与えているフードを減らしたりする方法は、栄養が偏り、健康を損なうためよくありません。
健康的に減量するためには、必要な栄養素はしっかり摂取し、かつ低カロリーにすることが大切です。
愛犬の食事ダイエットの重要ポイント!
愛犬に与える1日の食事量をしっかり管理
愛犬の目標体重が決まったら、減量のための食事適正量を算出し、そこから1日あたりのフードの量を計算します。この1日のフード量をしっかり守らないとダイエットは失敗してしまいます。
一番よいのは、朝に1日の必要量をキッチンスケールで正確に測り、別の容器に移し替え、この容器のフード以外のものは与えないと決めることです。
愛犬の食事は少量頻回で
愛犬に与える1日の必要量を小分けにして、1日3~4回に分けて与えましょう。
たくさんの量を一度に与えるよりも満腹感が得られやすいうえ、胃腸を動かすことでかなりのエネルギー消費を促すことができるからです。
愛犬に与えるおやつを控える
愛犬の減量期間中は、おやつは控えましょう。どうしても与えたい場合は、その日に食べる主食をおやつとして与えることがもっとも望ましいでしょう。
ジャーキーやクッキーなど別のおやつを与えて1日の必要量から差し引く方法もありますが、与える際は市販のおやつではなく、病院に相談して減量中にも与えられるおやつを購入することもできます。
減量中は、1日のエネルギー摂取量の10%以下にとどめるようにしましょう。
減量用に作られた犬のフードを活用する !
愛犬の減量には、高繊維質、低脂肪、低カロリーでかつ栄養バランスのよい食事が必要です。そのため、今与えているフードを単に減らすだけだと、栄養が偏ってよくありません。
減量用に栄養バランスのとれた市販フードがあるので活用してもよい でしょう。ただし、市販フードの中にはカロリーがあまり制限されていないにもかかわらず減量用としているものもあるので、よく表示を見て購入してください。
動物病院で購入できる療法食は、しっかりカロリーと栄養が管理されているので安心です。ただし、獣医師の指示のもとに使用しましょう。
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愛犬がダイエットを始める前に動物病院で健康診断
もし病気があった場合は、減量方法や必要な栄養素が変わってくるかもしれません。肥満度が高い場合はダイエット自体 獣医師の指導が必要な場合もあります。
愛犬が減量を始める前に、動物病院で獣医師の健康診断を受けましょう。
愛犬の体重測定を2週間に1度は行う
愛犬の減量ノートを作り、体重の推移をグラフにすると現状を把握できますし、やる気にもつながります。測定するときは、朝食前の空腹時などいつも同じ時間帯、同じ状態で測るようにしましょう。
計量のときに獣医師や動物看護師に相談することもできますので、動物病院で定期的に測定するのもおすすめです。
家族一丸となって愛犬のダイエットに取り組む !
なかなか体重が落ちないと思ったら、家族の誰かが知らない間におやつを与えたり、人の食事をおすそ分けしたりしていた、ということもあります。
家族みんなで犬の肥満について話し合い、減量に協力してもらうようにしましょう!
愛犬の適正食事量を計算しましょう!
一日の減量に適正な食事量は次の計算式で求めます。計算機を用意してください。
1日に必要な食事量 = 1日に必要なエネルギー量(A)÷ 給与するフードのエネルギー量 × 100
この計算を行うために、まずは「1日に必要なエネルギー量(A)」「給与するフードのエネルギー量(B)」をそれぞれ算出してみましょう。
「1日に必要なエネルギー量(A)」=「目標体重」×「目標体重」×「目標体重」√√×70
【例】:目標体重が7.8㎏の犬の場合
① 7.8を三乗する 7.8×7.8×7.8 =474.55
② ①の値に√(ルート)を2回押す √√ =4.667
③ ②の値に70をかける 4.667×70 =326.7 目標体重7.8㎏の犬の「1日に必要なエネルギー(A)」は、326.7kcal
※目標とする理想体重⇒「犬種別理想体重早見表」
「給与するフードのエネルギー量」= フードのパッケージに表示されている100グラムあたりのカロリー(代謝エネルギー)
【例】:目標体重が7.8㎏の犬で、パッケージに「280kcal/100グラムあたりのカロリー」と表示されている場合
「1日に必要なエネルギー量(A)」326.7 kcal ÷「給与するフードのエネルギー量(B)」280 kcal × 100 = 1日に必要 な食事量(C)117g
「犬種別理想体重早見表」
肥満犬に適した栄養バランス
エネルギー
3.4 kcal(代謝エネルギーME)/g(DM)以下とする
※DMとは乾物量(水分を0%として換算した重量)のこと。
脂肪含有量
減量時:9%DM以下、減量後の体重維持時:14%DM以下
脂肪は、炭水化物やタンパク質の2.25倍ものエネルギーがあるうえ、体に蓄積しやすいため、カロリーが同じでも脂肪 が多いと減量の効率が悪くなります。
食物繊維
減量時:12~25%DM、減量後の体重維持時:10~20%DM
食物繊維は、満腹感を生じさせる効果と炭水化物、脂肪の吸収速度を低下させます。しかし、糞便量が増えたり、ガスが溜まったりするので与え過ぎもよくありません。
タンパク質
減量時:25%DM以上、減量後の体重維持時:18%DM以上(粗タンパク質)
減量時、脂肪組織以外の体の組織を減らさないようにするために、タンパク質を多めに摂取する必要があります。
その他
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L-カルニチンや、ビタミンC・Eなどの抗酸化物質を添加すると、減量効果を高めたり、肥満による酸化ストレスを和らげる効果が期待できるとの考え方もあります。
犬の減量用フードへの切り替え方、フードの与え方
犬の減量用フードの種類
減量用のフードには3タイプがあります。
◇市販の体重維持用フード
◇獣医師の指示のもと使う療法食
◇減量用に手作りしたフード
確実なダイエットフードの組み合わせは「まず療法食のち市販品」。動物病院で獣医師の指示のもと療法食を使って目標 体重まで減量し、その後、維持のために市販の体重維持用フードに切り替える、という方法が、最も確実な方法といえます。
ただし、市販品の中には(低価格製品に多い)、栄養バランスが悪かったり、それほど低カロリーでなかったりするものもあるので、成分表示をよく見て購入するようにしてください。
犬の減量用フードの切り替え方
これまでのフードから減量用フードに切り替える際は、いきなり全部取り換えるのではなく、今までのフードに少しずつ 混ぜて徐々に切り替えるようにしましょう。
例えば、初日は1割、2日目は2割……と、1日に1割ずつ増やし、1週間か ら2週間くらいかけることが望ましいです。
いきなり変えると、新しいフードに対して慎重になって食べなかったり、軟便 や下痢、吐き出したりすることがあります。
しばらくの間、2種類のフードを別々に与えて新しいフードに慣れさせるのも よいでしょう。
減量用フードの与え方
1日に必要な食事量を算出し、その量をキッチンスケールなどで正確に測ります。1日分を3~4回に小分けにして 与えましょう。
※療法食の与え方については獣医師の指示に従ってください。
手作りフードについて
低脂肪・低カロリーとしつつも必要な栄養素はしっかり確保しなければならないため、減量用フードを手作りするのは、 栄養学の知識が必要ですし、容易ではありません。
例えば、飼い主向けに販売されている書籍11冊(37レシピ)と飼い主アンケートから得られた63レシピをAAFCOの基準(2016)と比較したところ、適合しているレシピは1つもなかっ たとの研究報告もあるほどです。
特にカルシウム、銅、亜鉛、ビタミンAは8割のレシピで最小量を下回り、反対にヨウ素、 ビタミンDは、最大値を超えるレシピがあったとのことでした(清水他2016)。
愛情をかけて手作りしたい気持ちはわかり ますが、ダイエット中だけでも栄養バランスを配慮して作られている療法食または市販品を利用することをおすすめします。
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【まめ知識①】犬も猫舌?
猫が熱い食べ物を好まないことは有名ですが、それはなにも猫だけではなく、犬を含めたいていの動物は猫舌です。
調理されたアツアツの食べ物は、火を使うことができる人間だけの専売特許であり、自然界には存在しないからです。
では冷えた食べ物を犬や猫が好きかといえば、そうではありません。彼らにとってふつうの食べ物とは、捕れたての獲物の温度、つまり獲物の直腸の温度です。
この40℃前後の温度が、犬も猫も好む食べ物の温度となります。愛犬の食いつきが悪いとき、その原因は温度かもしれません。
人肌程度に湯せんしたり、レンジで温めたりすると食べてくれることがあります。
※電子レンジで温めた場合、部分的に非常に熱くなることがあるため火傷に注意しましょう。一度イヤな思いをすると、その食べ物自体を嫌いになってしまうことがあります(食物忌避)。
【まめ知識②】猫は食い気よりも狩猟欲!?
猫のなかまは、犬と違って狩りが得意な動物です。狩猟対象は小動物で、ネズミやカエルなどをたくさん捕まえます。ただし、獲物が小さいがゆえに、必要なエネル ギーを確保するには、ネズミだと1日に10~20匹も捕まえなくてはなりません。
猫が犬とは対照的に、少し食べてはやめる、「ちょこちょこ食い」をするのはそのためだと考えられます。食事中におもちゃで気を引くと、犬はそのまま食事を続けますが、猫は狩りへの欲求が強いため、食事をやめておもちゃに飛びつくでしょう。
【特別コラム】ダイエットの食事でこんなときどうする?
Q:愛犬の早食いを防止するには?
A:満腹感を得るために、早食いは禁物。早食いを防止する1つの方法は、早食い防止用の食器を使用することです。この 食器は仕切りが複雑に分かれているなど、わざと食べづらくして、時間がかかるようになっています。ペットボトルやおもちゃの中に仕込む方法もありますが、破壊して誤飲する可能性もあるので、与えているときは目を離さないようにしましょ う。 多頭飼いの場合は、同居犬に取られてしまう、というあせりから早食いになっている可能性もあるので、食事スペースを1頭ずつ離して区切ると落ち着いて食べるようになります。その他、ドライフードからウェットフードに切り替えたり、ドライフードをぬるま湯に浸してふやかすと、食べる速度が遅くなります。
Q:愛犬が空腹で吐いてしまうときは?
A:空腹で吐いてしまうほどの食事制限をするのはよくありません。いつも食べていたフードの量を減らすのではなく、減量用フードを使用し、さらに少量頻回与えるようにすれば、吐くほど空腹な状態にはならないでしょう。
Q:減量用フード、療法食の食いつきが悪くて残してしまう
A:減量用フードや療法食は、繊維質が多いなど今までの食事の内容と異なるため、躊躇して残してしまうこともあります。 その場合は、これまでのフードに少しずつ混ぜ、1週間くらいかけてゆっくり切り替えるようにしましょう。 ただし、いくら食べないからといって、これまでのフードと一緒にずっと与え続けるのは、とくに療法食ではおすすめできません。療法食を食べない場合は、獣医師に相談してください。
Q:愛犬に食物アレルギーがあると言われたのですが?
A:動物病院で何を食べてはいけないかをきちんと診断してもらい、その原材料が入っていない減量用フードを探しましょう(獣医師に相談しましょう)。
Q:平日は留守で仕方なくフードを置きっぱなしにしているけどNG?
A:平日留守の場合は置きっぱなしにせず、計測して取り分けた1日量を朝、夕2回に分けて与えるようにしましょう。
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【獣医師監修】犬の肥満の正体を知る!「愛犬版」肥満チェックシート!あり
現在、日本で飼育されている犬の約3割が過体重または肥満であるとの報告もあり、犬の肥満は深刻な「現代病」となりつつあります。人と同様、犬の肥満も他の病気の原因となることが解明されてきました。ここでは、犬の「肥満原因」「肥満リスク」について解説しつつ、【愛犬版】肥満チェックシート!もご用意していますので、ぜひご活用下さい。
【獣医師監修】愛犬のダイエットを始める前に理想体重と肥満度(BCS)を要チェック!
家族の大切な一員である愛犬が、できるだけ健康に長生きできる飼育環境を作ってあげられるのは、飼い主だけです。まずは愛犬の「理想体重」を知り、「ボディコンディションスコア(BCS)評価表」を使って肥満度を判定しましょう!愛犬のダイエットに対する考え方や運動についても解説します。
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