【獣医師監修】老犬に健康診断は必要?定期健診の頻度、内容や注意点を解説!
シニア期に入った愛犬の健康診断は、いつから、どのくらいの頻度で行うのが最適でしょうか?老犬の健康診断で行っておくべき検査項目は?犬の大きさ別に違うシニア犬の定義をはじめ、中高齢の犬の健康診断の内容や、注意点などについて解説します。
- 更新日:
東京城南地域獣医療推進協会 理事
【経歴】
◇1986年 北里大学獣医畜産学部獣医学科 卒業
◇1990年~1991年 New York州Animal Medical Centerにて研修
◇1993年 成城こばやし動物病院 開業
◇2012年~2022年6月(公社)東京都獣医師会 副会長
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会
◆アジア小動物獣医学会(FASAVA) 所属
◆一般社団法人 東京城南地域獣医療推進協会TRVA 理事
【メディア】
◇Webメディア
「オトナンサー」アドバイザー
【hotto Professionalインタビュー】
Professionalインタビュー Vol.1【成城こばやし動物病院代表 小林元郎先生】
目次
老犬の健康診断、しなくても大丈夫?シニア犬の健康診断(定期健診)はいつから必要?
kei.channel / PIXTA(ピクスタ)
ひとことでシニア犬や老犬と言っても、主には犬の大きさによってその定義が異なります。
小型犬は一般的に”寿命が長い”傾向にあるので、シニア犬と呼ばれるのは、「7~8歳」から。
大型犬は小型犬より”寿命が短め”なので、「5~6歳」からシニア期に入ります。
実際には、シニア犬と呼ばれるのは、人間の肉体年齢に換算すると「40代」。
飼い主さんとしては、愛犬はまだまだ元気で健康だという実感が大きいかもしれません。
けれども、人間でも40代以降は、がんや糖尿病などの生活習慣病を発症しやすくなり、健康状態に黄色信号が灯る人も増えてきます。
愛犬がシニア犬と呼ばれるライフステージに入ったら、病気の早期発見のため積極的に健康診断を受けるようにしましょう。
makotomo / PIXTA(ピクスタ)
小型犬では「11歳前後」、大型犬では「8歳前後」の高齢期と呼ばれるライフステージに入ってからは、健康維持のため、定期健診はとても重要になってきます。
老犬を動物病院に預けて健康診断を受けさせるのはストレスになって寿命を縮めてしまうかもしれないと、心配になるかもしれません。
けれども、老犬になる前に定期的に健康診断を受けていれば健診慣れもしていて、通い慣れた病院の獣医師や看護師に対しては、愛犬もそれほど緊張しないはずです。
愛犬の健康寿命を延ばすためには病気を早期に発見し、負担をかけず最短で治療をすることが大変重要です。
その第一歩として、定期健診の果たす役割はとても大きいと言えます。
シニア犬や老犬の健康診断の頻度は?
makotomo / PIXTA(ピクスタ)
犬種により若干異なりますが、およそ1歳で成犬となった犬は、人間の約4~5倍のスピードで肉体年齢を重ねていきます。
それを考えると、シニア犬や老犬は、半年に1度は定期健診を受けましょう。
なお、健康時のデータをシニア期以降に活用するためにも、1歳を過ぎたら、理想的には「半年に1回」、最低でも「1年に1回」は歯科検診も含めた定期健診を受けたいものです。
また、近年は健康診断前や診断時の問診によって、柴犬などの日本犬に多い「認知症」の症状である夜鳴きや昼夜逆転が始まったことに飼い主さんが初めて気づき、生活環境の改善や早期治療につながるケースも増えています。
獣医師は、病気を早く発見してくれるのはもちろんのこと、病気になる前から愛犬の健康寿命を延ばせるように力を尽くしてくれます。
定期的に健康診断を受け、その結果をもとにした獣医師のアドバイスを日常生活に取り入れながら、愛犬に最良な健康管理を行ってあげましょう。
老犬の健康診断の項目や内容、所要時間は?検査前にご飯をあげても良い?
Luljo / PIXTA(ピクスタ)
老犬の健康診断の項目や内容は?
犬の健康診断の検査項目をセットにした、「犬ドック(ドッグドック)の健診パック」を実施している動物病院も増えています。
若齢犬の健康診断であれば、「視診」「触診」「聴診」「血液検査」「レントゲン検査」「尿検査」「糞便検査」が一般的な検査項目です。
シニア期に入ったら、病気をしっかり探すというモードで、獣医師は健康診断を行うことになります。
そのためには、心臓や肺の状態をはじめ、椎間板ヘルニアや関節疾患などの有無、消化管内の異物の有無がわかるレントゲン検査だけでなく、レントゲン検査では発見しにくい疾患や腫瘍、「胆泥(たんでい)」や「尿路結石(にょうろけっせき)」の有無などを調べるために行う超音波検査(エコー検査)も追加したいものです。
また、老犬の病気ランキングの上位には、小型犬では心臓病の「僧帽弁閉鎖不全症(そうぼうべんへいさふぜんしょう)」、すべての犬で、「がん(悪性腫瘍)」、「腎臓疾患」「肝臓疾患」などがあります。
Herraez / PIXTA(ピクスタ)
そして、人間同様に「肥満」はあらゆる生活習慣病の原因になり得るので、高齢期の体重管理にはもっとも注意を払いたいものです。
近年では血液検査の技術が飛躍的に進歩し、膵炎や初期の腎機能低下といった疾患も早期診断ができるようになりました。
シニア期以降は内分泌の病気(甲状腺機能低下症、クッシング症候群など)に、犬はかかりやすい傾向にあります。
甲状腺機能を調べる、T4やFT4といった血液検査項目も、炎症マーカーであるCRPなどとともに獣医師と相談のうえ追加してもらうとよいでしょう。
シニア犬用の健診プランに、それらの血液検査項目をセットにしている動物病院もあります。
老犬の健康診断を動物病院で予約したら、便や尿を持参するなど事前準備の指示に従って、受診日は決められた時間に病院へ。
Kukota / PIXTA(ピクスタ)
老犬の健康診断、検査前にご飯をあげても良い?
愛犬の血液検査のデータに影響しないよう、健康診断の当日はご飯を抜くように指示されるかもしれません。
獣医師からご飯を与えないように指示があった場合には、検査前にご飯は与えないようにしましょう。
なお、飼い主さん自身による採尿がむずかしい場合は、動物病院で行ってもらえるので健診予約時に相談してください。
老犬の健康診断の所要時間は?
犬の健康診断の所要時間は、受ける検査内容により異なりますが、たいだい1時間前後です。
飼い主さんは、ずっと健診中の愛犬に寄り添う必要はありません。
半日程度、健康診断を受ける犬を預かる動物病院が多数を占めます。
老犬の健康診断、費用や料金は?健康診断書はもらえる?
freeangle / PIXTA(ピクスタ)
犬の健康診断の費用は、動物病院によって異なります。
「視診」「触診」「聴診」「血液検査」「尿検査」「糞便検査」のパックプランで、「最低1万円」からが目安と言えるでしょう。
超音波検査やオプションの血液検査項目を追加する場合、さらに「1~3万円」ほど健診費用がアップするのが一般的です。
愛犬の健康診断後、人間ドックの報告書のようなものを作成し、飼い主さんにそれをもとに健診結果を説明・カウンセリングする動物病院もあります。
動物病院によっては、血液検査の結果報告書だけを渡すところもあります。
費用や報告書、カウンセリングの有無などで、飼い主さんが希望する健診パックかどうかを選ぶと良いでしょう。
かかりつけの病院以外で健康診断を受けた場合、そのデータはかかりつけ医と共有しながら、健康管理に役立ててください。
老犬の健康診断の費用に、保険は適用される?
【IWJ】Image Works Japan / PIXTA(ピクスタ)
子犬から老犬まで、健康診断の費用は、避妊・去勢手術同様にペット保険の補償対象外です。
けれども、病気を早期発見できた場合、悪化を防ぐための生活環境の改善やサプリメントの投与などが早期から行えます。
それにより、愛犬の「健康寿命を延ばせたり」「手術による治療が不要になる」ケースもあるのは間違いありません。
愛犬は重症化に伴う苦痛を感じずにすみ、飼い主さんは”治療費の負担を軽減”できます。
その意味では、保険適応にならなくても、健康診断を受ける価値は大きいと言えます。
老犬の健康診断、注意点やポイント!
Halfpoint / PIXTA(ピクスタ)
老犬の健康診断で病気が発見されると、その治療や管理のために定期的に動物病院を訪れ、必要に応じて血液検査やレントゲン検査などを行うことになるでしょう。
定期受診している愛犬には、すべての検査項目による健診パックが不要になる場合もあります。
獣医師と相談のうえ、病気管理のための検査以外に、どのような検査を健康診断として行ってもらえばよいかを相談してください。
老犬の健康診断のまとめ
haru / PIXTA(ピクスタ)
シニア犬や老犬に行う健康診断は、病気の早期発見のために大きな意義があります。
ぜひ、定期的に健康診断を受けましょう!
愛犬の健康は、獣医師と力を合わせて勝ち取っていくものだという認識を、飼い主さんは得ておきたいものです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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