【内分泌科担当獣医師監修】犬の「甲状腺機能低下症」原因や症状、なりやすい犬種、治療法予防対策は?

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)とは、カラダの代謝を活発にするはたらきを持つ甲状腺ホルモンの分泌量が低下する病気です。ここでは、甲状腺機能低下症の原因や症状、治療法について解説します。

先生にお聞きしました
森 昭博先生
日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学科
獣医保健看護学臨床部門准教授(獣医師)

【資格】
獣医師

日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医学部獣医学科卒業。
2009年に日本獣医生命科学大学大学院で博士(獣医学)号を取得。
2012-2013年、イリノイ大学に留学。
現在、日本獣医生命科学大学付属動物医療センター内分泌化を担当。
犬および猫の内分泌分野を中心に診療、研究を行っている。
5歳のMix犬「ぽよ」と同居中。
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原因

犬の甲状腺機能低下症【原因】

犬の甲状腺の構造

犬の甲状腺の構造

原因①【甲状腺の萎縮によるホルモン分泌の低下】

甲状腺ホルモンは、脳の下垂体から分泌されるホルモンが甲状腺を刺激することによって分泌され、カラダの代謝を活発するはたらきがあります。

甲状腺ホルモンの分泌が不足すると、元気がなくなったり、さまざまな症状が見られるようになります。

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)は、甲状腺が萎縮し、甲状腺ホルモンの分泌量が低下することによって引き起こされます。

犬の甲状腺機能低下症【原因】

Maria Ivanushkina/ Shutterstock.com

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)には、先天性のものと後天性のものがあります。

後天性のものには、甲状腺そのものの病的変化による「原発性甲状腺機能低下症」と、下垂体や視床下部からの分泌ホルモンの不足によって生じる「二次性・三次性の甲状腺機能低下症」があります。

犬の甲状腺機能低下症のほとんどが原発性なので、ここでは原発性甲状腺機能低下症の原因について解説します。

原因②【リンパ球性甲状腺炎】

リンパ球性甲状腺炎とは、異物を認識し排除するための役割を担う免疫系の異常によるもの。

自らのリンパ球が自身の甲状腺を攻撃してしまうことによって炎症が起こり、甲状腺が萎縮して小さくなることで必要量の甲状腺ホルモンが出せなくなります。

原因③【特発性の萎縮】

原因③【特発性の萎縮】

YAMATO / PIXTA(ピクスタ)

甲状腺が特発性(原因不明)に萎縮することによって、必要量の甲状腺ホルモンが出せなくなります。

原因④【甲状腺の腫瘍】

甲状腺の腫瘍が原因で、甲状腺機能低下症を発症することがあります。

甲状腺癌の1〜2割で、甲状腺機能低下症を発症すると言われています。

症状

犬の甲状腺機能低下症【症状】

犬の甲状腺機能低下症【症状】

BIGANDT.COM/ Shutterstock.com

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)には、以下のような症状が見られます。

症状①【元気がなくなる】

歩くのを嫌がる
起立を嫌がる

.

症状②【皮膚に見られる症状】

皮膚が厚くなる
まぶたや唇に水がたまり腫れる
尻尾や体幹に脱毛が見られる
脂っぽくなる
ふけがたまりやすくなる
細菌などの二次感染によって、皮膚が臭くなる/痒がる/脱毛がひどくなる

症状③【神経症状】

動きが悪くなる
首を傾げる
顔が垂れ下がってくる

さらに重篤になると、ずっと寝ている、昏睡てんかん発作などの症状が見られることもあります。

症状④【その他の症状】

低体温(冬に症状が悪化します)
徐脈(心拍数がゆっくりになります)
肥満(代謝が下がるために太りやすくなります)
便秘(腸が動きにくくなります)
吐出(食べたものがすぐに出てきてしまいます)
発症しやすい犬種

犬の甲状腺機能低下症【発症しやすい犬種】

犬の甲状腺機能低下症【発症しやすい犬種】

Joop Snijder Photography/ Shutterstock.com

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)は、すべての犬種に発症の可能性がありますが、統計的には、他の犬種と比べてとくに以下の犬種の発症リスクが高く、1〜6歳齢の大型犬に多いと言われています。

アフガン・ハウンド

アメリカン・コッカ―・スパニエル

グレート・デン

コリー

ゴールデン・レトリーバー

シェットランド・シープドッグ

シベリアン・ハスキー

ダックスフンド

ドーベルマン

ビーグル

ミニチュア・シュナウザー

ラブラドール・レトリーバー

診断方法

犬の甲状腺機能低下症【診断方法】 

診断方法①【問診】

診断方法①【問診】

Africa Studio/ Shutterstock.com

飼い主への問診によって、臨床症状を確認します。

診断方法②【血液検査】

血球算定(CBC)や生化学検査によって、高コレストロール血症や高トリグリセリド血症、軽度の貧血が確認された場合には、甲状腺機能低下症を疑い、確定診断のために内分泌検査を実施します。

診断方法③【内分泌検査】

甲状腺ホルモン(サイロキシン=T4およびフリーサイロキシン=FT4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)を測定します。

診断方法④【超音波検査】

血液検査・内分泌検査だけでは判断できない場合に、超音波検査を実施し、甲状腺の萎縮度合いを調べることがあります。

all_about_people/ Shutterstock.com

甲状腺機能低下症と間違えやすい「ユーサイロイドシックシンドローム」

甲状腺の機能が正常であっても、重症の疾患を抱えている場合には、代謝を下げてカラダを休めようとするはたらきがあるために甲状腺ホルモンは低下します。

この状態を「ユーサイロイドシックシンドローム」と呼びますが、この場合、甲状腺ホルモンの補給を行っても、病気の治療にはなりません。

治療方法

犬の甲状腺機能低下症【治療方法】 

甲状腺ホルモン製剤の生涯投与

甲状腺ホルモン製剤の生涯投与

bee / PIXTA(ピクスタ)

犬の体内で不足している甲状腺ホルモンを、人工の甲状腺ホルモン製剤の投与によって補完することで、ホルモン濃度を正常値まで高める治療を行います。

残念ながら、甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)によって萎縮した甲状腺が回復することはありませんが、生涯にわたって投薬を続けることによって、症状を改善し良好な状態を保持することができます。

予防・対策

犬の甲状腺機能低下症【予防対策】 

犬の甲状腺機能低下症【予防対策】 

Olga_i/ Shutterstock.com

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)に有効な予防法はありません。

定期的に健康診断を受診し、コレステロール値だけが高い場合には、甲状腺ホルモン濃度を測定し、早期発見、早期治療を心がけましょう。

犬の甲状腺機能低下症【間違えやすい病気】

犬の甲状腺機能低下症と間違えやすい病気 

Wynian/ Shutterstock.com

犬の副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)

犬の副腎皮質機能亢進症(ふくじんひしつきのうこうしんしょう)とは、下垂体や副腎の腫瘍が原因となり、コルチゾールが過剰に分泌されます。

多飲多尿が見られます。

また、毛が抜け、皮膚が乾燥するほか体に左右対称の脱毛ができます。

犬の甲状腺機能低下症【まとめ】

犬の甲状腺機能低下症【まとめ】

Deer_Hunter / PIXTA(ピクスタ)

犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)は、甲状腺が萎縮し、甲状腺ホルモンの分泌量が低下することによって引き起こされます。

愛犬に犬の甲状腺機能低下症の症状がみられた場合、動物病院で獣医師に診てもらいましょう。

また、健康診断を受けることも愛犬の病気予防に役立ちますので、定期的に検診をうけることをおすすめします。

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