【獣医師監修】犬の「椎間板ヘルニア」原因や症状、検査・診断、治療、予防方法、なりやすい犬種は?

犬の「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」とは、背骨と背骨の間でクッション的な役割を担う「椎間板」が、あるべき場所から飛び出してしまう病気。痛みやふらつき、麻痺(まひ)などのさまざまな神経症状を引き起こす恐れがあります。ここでは、犬の椎間板ヘルニアの原因や症状、治療やなりやすい犬種について解説します。

先生にお聞きしました
濱本 裕仁 先生
日本獣医生命科学大学 付属動物医療センター 放射線科 獣医師 (獣医学博士)

【資格】
獣医師

日本獣医生命科学大学獣医学科を卒業後、同大学大学院獣医生命科学研究科にて博士(獣医学)の学位を取得。

2018年より日本獣医生命科学大学附属動物医療センターの放射線科を担当。伴侶動物におけるCTやMRIを用いた画像診断や放射線治療に従事。
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原因

犬の椎間板ヘルニアとは?

犬の椎間板ヘルニアとは?

ほしいぬ / PIXTA(ピクスタ)

犬の「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」とは、クッション役の椎間板が何らかの原因であるべき場所からはみ出してしまった状態のこと言います。

はみ出した椎間板が神経の束である脊髄を圧迫すると「痛み」や「ふらつき」「麻痺」「排泄障害」などの症状が現れることがあります。

犬の椎間板ヘルニアの状態

犬の椎間板ヘルニアの状態

犬の椎間板(ついかんばん)とは、背骨と背骨をつなぐゼリー状の組織で、カラダを動かしたり、外から力が加わるときに背骨同士がぶつかる衝撃をクッションのように吸収する役割を担っています。

椎間板をクッションにたとえると、綿にあたる「髄核(ずいかく)」と、カバーに相当する「繊維輪(せんいりん)」の二層で形成されています。

【ヘルニア】とは

カラダの一部があるべき場所から飛び出してしまった状態を「ヘルニア」と言います。

「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」のほかにも、おへそが飛び出す「でべそ」=「臍(さい)ヘルニア」や、腸管が飛び出す「鼠径(そけい)ヘルニア」などがあります。

犬の椎間板ヘルニア【原因(素因)】

犬の椎間板ヘルニア【原因(素因)】

Ryhor Bruyeu / PIXTA(ピクスタ)

犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアには、以下のふたつの素因が深く関わっています。

椎間板ヘルニアの原因①【特定の犬種に見られる遺伝的素因】

2歳前後と比較的若齢の犬に見られるのが、遺伝的素因によるケースです。

ダックス・フンドやペキニーズ、ウェルシュ・コーギーなどの犬種は、生まれつき「軟骨異栄養症」という遺伝子を持つと言われています。

これらの犬種は本来衝撃吸収性に富んだゼリー状の「髄核」が軟骨のように固くなりやすく、背骨に負荷がかかることで椎間板が飛び出てしまうことがあります。

遺伝的素因による犬の椎間板ヘルニアは、激しい運動や衝撃などがきっかけで突然発症し、また急激に重症化する例も多いです。

椎間板ヘルニアの原因②【加齢による椎間板の性質の変化】

高齢の犬に多く見られるのが、加齢によるケースです。

犬の椎間板(ついかんばん)は加齢によって性質が変化し、体積が増してしまうことがあります。

膨らんだ椎間板がはみ出して脊髄(せきずい)を圧迫すると、慢性的な神経症状が現れ、徐々に悪化していきます。

症状

犬の椎間板ヘルニア【症状】

犬の椎間板ヘルニア【症状】

Susan Schmitz/ Shutterstock.com

ヘルニアになる部位やはみ出す椎間板(ついかんばん)の量などにより、症状や重症度は異なります。

以下のような症状が現れたら、なるべく早く動物病院で診察を受けましょう。

椎間板ヘルニアの症状①【必要以上にカラダをひっかく】

知覚過敏の可能性があります。

脊髄圧迫による神経症状のひとつです。

椎間板ヘルニアの症状②【首や背中、腰に痛みがある】

「抱っこすると痛がる」「散歩を嫌がる」「階段の上り下りを嫌がる」ときは、カラダに力みや違和感がある可能性があります。

また、頸部(けいぶ)に痛みがあるときは上目遣いで見上げることもあります。

椎間板ヘルニアの症状③【歩行時にふらつく、歩き方がおかしい】

脊髄(せきずい)圧迫による神経症状は、歩き方にも現れます。

いつもと歩幅が違うなと感じたら、早めに病院を受診しましょう。

椎間板ヘルニアの症状④【足を引きずる】

麻痺(まひ)が生じている可能性があります。

椎間板ヘルニアの症状⑤【自分の意思で排せつができない、おしっこを垂れ流す】

麻痺(まひ)が進行すると、排せつ障害を起こすことがあります。

発症しやすい犬種

犬の椎間板ヘルニア【発症しやすい犬種】

犬の椎間板ヘルニア【発症しやすい犬種】

【IWJ】Image Works Japan / PIXTA(ピクスタ)

犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアは、すべての犬種で発症の可能性がありますが、生まれつき「軟骨異栄養症」の遺伝的素因を持つ以下の犬種は、ほかの犬種と比べて椎間板ヘルニアを発症しやすいと言われています。

椎間板ヘルニア【発症しやすい犬種】

ミニチュア・ダックスフンド

ペキニーズ

トイ・プードル

コッカー・スパニエル

ウェルシュ・コーギー・ペンブローク

ビーグル

シー・ズー

また、高齢の犬は発症リスクが高くなるので、ちょっとした変化も見逃さないようにしてください。

診断方法

犬の椎間板ヘルニア【検査・診断方法】

犬の椎間板ヘルニア【検査・診断方法】

Syda Productions/ Shutterstock.com

犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアの検査や診断は、通常、以下の手順で行います。

検査・診断①【一般身体検査・神経学的検査】

一般身体検査で全身の健康状態を診察し、神経学的検査では姿勢反応や脊髄(せきずい)反射、知覚などを総合的にチェック。

これらの検査で、犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアの可能性を見極めることができます。

ヘルニアが生じた部位をある程度推測できるケースも。

Intarapong/ Shutterstock.com

検査・診断②【X線検査】

X線検査によって、犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアを起こした部位を推測することができます。

しかし、椎間板ヘルニアは飛び出た椎間板が脊髄(せきずい)を圧迫するため、骨(脊椎)を中心に診断するX線検査では病変をうまく描出できない可能性があります。

そのため、麻酔下で造影剤を用いた「X線検査」や「CT・MRI検査」を行う必要があります。

検査・診断③【CT・MRI検査】

腫瘍や血管性障害など椎間板ヘルニア以外の疾患と鑑別するため、「CT・MRI検査」を行います。

椎間板ヘルニアがもとで生じる、犬の「進行性脊髄軟化症(しんこうせいせきずいなんかしょう)」という病気の疑いが生じた場合も、「CT・MRI検査」は有用です。

治療方法

犬の椎間板ヘルニア【治療方法】

犬の椎間板ヘルニア【治療方法】  

WilleeCole Photography/ Shutterstock.com

犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアの治療方法は、重症度によって異なります。

歩行ができる軽度の症状には内科的治療法、麻痺をともなう重度の症状には外科的治療法を採用するのが一般的です。

治療方法①【歩行ができる場合の治療方法】

歩行できる場合の治療①【安静を保つ】

1カ月くらいは、愛犬の散歩を避け、ケージで安静を保ちます。

歩行できる場合の治療②【薬の投与で痛みを取る】

歩行できる場合の治療②【薬の投与で痛みを取る】

Try my best/ Shutterstock.com

脊髄(せきずい)や椎間板(ついかんばん)の炎症を抑えるプレドニゾロンなどのステロイド剤や、非ステロイド系消炎鎮痛剤で痛みを抑えます。

治療方法②【歩行ができない場合の治療方法】

外科的手術で椎間(ついかんばん)板物質を摘出し、脊髄(せきずい)の圧迫を取り除きます。

術後は早期のリハビリが不可欠です。

マッサージや軽い歩行、水泳などで筋肉を刺激してあげましょう。

まれに後遺症が残ったり、車椅子が必要になるケースもありますが、発症前の状態にまで回復する犬もたくさんいます。

ただし、重症度があがるごとに回復率は下がるので、早期治療を心がけてください。

予防・対策

犬の椎間板ヘルニア【予防対策】 

犬の椎間板ヘルニア【予防対策】 

Chutima Chaochaiya/ Shutterstock.com

犬の椎間板(ついかんばん)ヘルニアに明確な予防法はありません。

ただし、太っていると背骨に負担がかかりやすいので、日頃の食事管理と適度な運動は不可欠です。

また、椎間板ヘルニアには再発のリスクがつきもので、犬種によっては別の部位に再発する場合もあります。

一度発症した犬は、フリスビーキャッチなど激しい運動は避けたほうがよいでしょう。

犬の椎間板ヘルニア【間違えやすい病気】

間違いやすい病気①【犬の変性性脊髄症】

間違いやすい病気①【犬の変性性脊髄症】

makotomo/ Shutterstock.com

犬の変性性脊髄症(へんせいせいせきずいしょう)とは、痛みを伴わないものの、後ろ足の歩行障害からはじまり2–3年かけて上行性に進行する病気です。

現在その原因は解明されていません。

ジャーマン・シェパードに多く認められますが、国内ではペンブローク・ウェルシュ・コギーでの発生が高いです。

間違いやすい病気②【犬の脊髄腫瘍】

犬の脊髄腫瘍(せきずいしゅよう)とは、脊髄(せきずい)に腫瘍ができる病気です。

腫瘍の部位によって、「硬膜外腫瘍」「硬膜内腫瘍」「髄内腫瘍」と分かれます。

初期はふらつきや足を引きずるようになり、進行すると四肢が麻痺し(発生部位による)、完全に歩けなくなることもあります。

間違いやすい病気③【犬の線維軟骨塞栓症(FCE)】

犬の繊維軟骨塞栓症(せんいなんこつそくさいしょう)とは、骨と骨のつなぎ目や椎間板(ついかんばん)の一部を構成する繊維軟骨が脊髄(せきずい)の血管に詰まることで発症する急性の血管障害性疾患です。

突然発症し、足を引きずったり排尿障害を起こすといった神経症状が現れることがあります。

間違いやすい病気④【犬のウォブラー症候群(尾側頸部脊椎脊髄症)】

犬のウォブラー症候群は、尾側脊椎(びそくせきつい)の形成異常が原因で、脊髄圧迫が生じる病気です。

「ドーベルマン」や「グレート・デーン」などの大型犬によく見られ、後ろ足のふらつきから始まり、進行すると四肢に麻痺が起きるようになります。

犬の椎間板ヘルニア【まとめ】

犬の椎間板ヘルニア【まとめ】

iStock.com/IvonneW

犬の「椎間板(ついかんばん)ヘルニア」とは、クッション役の椎間板が何らかの原因であるべき場所からはみ出してしまった状態のことです。

はみ出した椎間板が神経の束である脊髄を圧迫すると「痛み」や「ふらつき」「麻痺」「排泄障害」などの症状が現れることがあります。

愛犬に「必要以上にカラダをひっかく」「首や背中、腰に痛みがある」「歩行時にふらつく、歩き方がおかしい」などの症状がみられ、心配な場合には、速やかに動物病院で獣医師に診てもらいましょう。

また、人間同様に健康診断を受けることで愛犬の病気を早期に発見することが可能になるので、定期的に動物病院で検診をうけることをおすすめします。

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