【獣医師監修】犬の呼吸が早い・荒い・苦しそう・息切れしている。この症状から考えられる原因や病気は?
犬の呼吸がハアハアと荒く苦しそうだったり、息切れしていたりすると、飼い主は心配でたまらないですよね。犬の呼吸が早い、苦しそうといった症状は、どんなことから起こるのでしょうか。
更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
目次
犬の呼吸が早い・荒い・苦しそう・息切れしている【考えられる原因】
犬の呼吸が早くなったり荒くなったり、息切れする原因としては、次のようなものが挙げられます。
運動後の酸素不足
運動時には筋肉が大量の酸素を消費します。
体外から酸素を早く補給するために、息が早くなることがあります。
それでも酸素の供給が間に合わなくなると、立ち止まってしまったり、座り込んでへたったりします。
これを医学的には「運動不耐性」と言い、一般的には「息切れ」と言います。
ただし、犬の身体や運動量には個体差があるため、「この時間で息切れしたら」「この運動量で息切れしたら」といった、異常を見分けるための明確な判断基準がないのが難しいところです。
そのため、飼い主が愛犬の普段の様子をよく見てあげることが重要になります。
もしも呼吸が荒くなっていれば、積極的に休ませてあげてください。
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暑い時の体温調整
犬は人間のように汗をかくことができないため、呼吸を通して体温調節をしています。
健康な犬の呼吸は1分間に15~30回と言われ、それよりも早くて浅い呼吸を「パンティング」と呼びます。
運動後や暑い時に起こるパンディングは生理現象なので、安静にしてまもなく落ち着けば問題ないでしょう。
精神的な要因
興奮時や、恐怖・緊張・不安な時など、交感神経が優位になったときに呼吸が荒くなることがあります。
時間が経ったり、原因となるものがなくなったときに呼吸は正常に戻ることがほとんどです。
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異物を飲み込んだ
飲み込んだ異物がのどに詰まっているのを取ろうとして、努力呼吸をすることがあります。
異物を飲み込んでしまった場合は、すぐに病院へ連れていきましょう。
呼吸器や心臓の疾患
安静時でも呼吸が早かったり、荒くなったりしている場合では、おもに、呼吸器や心臓の疾患が考えられます。
呼吸器や心臓の疾患は、遺伝など先天的なものと、成長過程で起こる後天的なものがあります。
遺伝的なものは、6歳から8歳くらいのある程度の高齢になってから影響が出ます。高齢であってもきちんと治療することが大切です。
後天的なものに関しては、以前の状態と比べることが出来るので見つけやすいでしょう。
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高齢でもないのに、運動でハアハアして座り込んでしまったり肩で息をするようになったら、要注意です。
呼吸器疾患は緊急な対応が必要になるので、速やかに動物病院で診てもらうようにしましょう。
犬の呼吸が早い・荒い・苦しそう・息切れしている【こんな場合は要注意!】
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以下の症状が見られる場合は、病気の恐れがあるので病院で診てもらいましょう。
運動をしはじめてすぐに息切れが起きる
以前は平気だった運動をして息切れをするようになった
カラダ全体で大きな呼吸をしている
安静時でもハアハアと浅く早く呼吸している
安静時でもゼーゼーという音の呼吸をしている
安静時でも口を開けて呼吸している
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横になって休むことが出来ない
上半身を起こした状態で苦しそうに息をしている
上半身を起こした状態でする呼吸は「起座呼吸(きざこきゅう)」と呼ばれ、胸を圧迫すると苦しい時などに見られる姿勢です。
舌の色が紫色になっている
舌の色が紫になっているのは「チアノーゼ」と呼ばれる状態です。すぐに病院へ連れて行ってください。
犬の呼吸が早い・荒い・苦しそう・息切れしている【この症状で考えられるおもな病気】
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犬の気管支炎(きかんしえん)
犬の気管支炎(きかんしえん)とは、気管に炎症が起きる病気です。ウイルスや寄生虫の感染、ハウスダストやタバコなどの化学物質、誤飲等が原因で起こります。
咳や食欲不振、元気消失のほか、重症になると呼吸困難を引き起こすこともあります。
犬の気管虚脱(きかんきょだつ)
犬の気管虚脱(きかんきょだつ)とは、気管がつぶれ、呼吸困難になる病気です。
先天的に気管の軟骨が弱かったり、気管周囲の筋肉が肥満や加齢で弱まると気管がつぶれ、空気の通りが悪くなります。
呼吸が荒くなり、乾いた咳が出ることもあります。
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犬の肺炎(はいえん)
犬の肺炎(はいえん)とは、気管支や肺胞などの肺組織に炎症が起きる病気です。
細菌や真菌、寄生虫などの感染のほか、吸い込んだ薬物やガス等が原因になることもあります。
ひどい咳や鼻水、呼吸困難を引き起こし、死に至るおそれもあります。
犬の肺水腫(はいすいしゅ)
犬の肺水腫(はいすいしゅ)とは、心臓病などで肺に水が溜まり、肺機能が低下する病気です。
酸素と炭素ガスを交換する肺胞が水で邪魔され、呼吸困難が生じます。
進行とともに咳や呼吸困難が悪化し、口を開け、前足をつっぱったような姿勢をとります。
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犬の僧房弁閉鎖不全(そうぼうべんへいさふぜんしょう)
犬の僧房弁閉鎖不全(そうぼうべんへいさふぜんしょう)とは、心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁がきちんと閉じなくなり、血液が逆流する状態です。
運動したり興奮すると咳が現れ、悪化すると呼吸困難に陥ります。
また、毛細血管から血液中の水分が漏れ、肺水腫になることもあります。
犬の心筋症(しんきんしょう)
犬の心筋症(しんきんしょう)とは、心臓の筋肉である心筋に異常が起こり、心臓の機能が低下した状態です。
「拡張型」「肥大型」「拘束型」に分けることができますが、原因不明の病気です。
また、左心室で起きることが多い特徴があります。
そのほかにも、熱中症のほか、気道閉塞などが原因として考えられます。
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