【獣医師監修】犬がはちみつを食べても大丈夫?マヌカハニーは?腎不全やボツリヌス菌など注意点も!
マヌカハニーやはちみつヨーグルト、咳(せき)止めに役立つなど、健康効果が注目されているはちみつ。人間では腎不全のときの味付けにもよく使われるようです。犬ははちみつを食べても大丈夫でしょうか? はちみつの食材としての特長や注意点、適量などを詳しく解説します。
更新日:
◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬がはちみつを食べても大丈夫!
iStock.com/DPLight
犬ははちみつを食べても大丈夫です!
はちみつは、ミツバチが集めてきた花の蜜に、ミツバチの唾液や体内に含まれている酵素が混ざって、花の蜜の成分が分解されることでできます。
花の種類によって成分や香りが異なり、養蜂家は花の時期によってミツバチの箱を移動させながら、はちみつを集めます。
日本では「アカシアはちみつ」が有名ですが、「ラベンダー」「レンゲ」「クローバー」「ひまわり」「オレンジ」「レモン」「そば」「タンポポ」「シロコ(キハダ)」「ローズマリー」「トチ」などの単花蜜や、複数の花の蜜が混ざったものもあります。
甘いものの好きな犬は、はちみつも好きな子が多いです。
糖分の補給に利用したり、薬を飲ませるときに混ぜたりと、カロリーオーバーにならない範囲でうまく活用しましょう。
犬に【マヌカハニー】を与えても大丈夫?
K321 / PIXTA(ピクスタ)
犬にマヌカハニーを与えても大丈夫です!
マヌカハニーとは、ニュージーランドやオーストラリアに自生する植物マヌカの花を蜜源としたはちみつのことを言います。
「マヌカ」はニュージーランドの先住民族マオリの言葉で、日本では「ギョリュウバイ」と呼ばれています。
マヌカハニーに関しては、まだ不明な点が多いものの、抗菌活性が高い成分メチルグリオキサールが豊富に含まれており、近年ブームにもなっています。
ただ、マヌカハニーはその希少性から高値で取り引きされているため、偽物や粗悪品も多く出回っています。
そのため、ニュージーランドの第一次産業省(MPI)は2018年に、DNAレベルの高精度テストを導入し、純度の高い「モノフローラルマヌカハニー(単花蜜)」、他の花蜜も多く含む「マルチフローラルマヌカハニー」を名乗るための基準を設けました。
kuro3 / PIXTA(ピクスタ)
また、「UMF10+」「UMF15+」というように、UMF(Unique Manuka Factor)の数値によって抗菌活性のランクが示されており、数値が大きいほど高品質とされ、価格も高くなります。
マヌカハニーに関しては、「除草剤グリホサート」が微量ながら検出されたとして、「残留農薬の危険性」に関する記事がインターネット上で見られます。
ただし、ニュージーランド政府による検査で検出されたのも残留基準値(0.1ppm)以下で、ニュージーランド政府は「安全性に問題はない」としています。
そもそも、日本政府はグリホサートの発がん性自体を否定しており、国内では除草剤として一般的に使われているもので、これはマヌカハニーに限った問題ではありません。
【参照元】国立医薬品食品衛生研究所 安全情報部「食品安全情報(化学物質) No. 25/2013」
犬がはちみつ【クッキー】【梅干し】【レモン】【ヨーグルト】【パン】を食べても大丈夫?
shige hattori / PIXTA(ピクスタ)
犬にはちみつ【クッキー】を与えても大丈夫?
犬が「はちみつクッキー」を食べても大丈夫です!
ただし、人間用の市販のはちみつクッキーは、糖分や塩分、添加物などが含まれており、犬には合わないものも入っている場合が多いです。
犬用に手作りしたものを与えましょう。
犬にはちみつ【梅干し】を与えても大丈夫?
犬は「はちみつ梅干し」を少量なら、食べても大丈夫です!
はちみつに漬け込んだはちみつ梅は、甘みがあるので、好きな犬もいるかもしれません。
ただ、はちみつ梅は塩分も糖分も高いので、犬に与えるとしても少量に。
また、梅干しの種を喉(のど)や消化管に詰まらせると危険なので、種を取り除き、果肉の部分を細かく刻むかつぶして与えましょう。
midori_chan / PIXTA(ピクスタ)
犬にはちみつ【レモン】を与えても大丈夫?
犬は「はちみつレモン」を飲んでも大丈夫です!
レモンにはちみつを混ぜて水分を足した「はちみつレモン水」は、レモンの酸味が和らげられるので、好んで飲む犬もいます。
レモンのビタミンCやクエン酸、はちみつの糖分、そして水分を摂ることができ、咳に効果があるとの意見もあります。
ただし、はちみつのカロリーが高いので、与えすぎには気をつけましょう。
piyopiyo / PIXTA(ピクスタ)
犬にはちみつ【ヨーグルト】を与えても大丈夫?
犬は「はちみつヨーグルト」を食べても大丈夫です!
特に食欲の低下しているシニア犬に、はちみつとヨーグルトを混ぜて与えると、お腹の調子を整えつつ、エネルギー補給ができるかもしれません。
この場合も、カロリーオーバーには気をつけましょう。
犬にはちみつ【パン】を与えても大丈夫?
犬は「はちみつ入りパン」を食べても大丈夫です!
余分なものが入っていないパンであれば、犬が食べても基本的には問題ありません。
ただし、カロリーや塩分の摂りすぎ、小麦アレルギーには注意しましょう。
犬にはちみつを与えると【咳(せき)止め】効果がある?
foly / PIXTA(ピクスタ)
人間では、はちみつが咳止めに効果があることが知られています。
犬が咳(せき)をしている場合、「気管支炎」「アレルギー性気管支炎」「気管虚脱」「喘息」「肺炎」といった呼吸器の病気だけでなく、「フィラリア症」「弁膜症」といった心疾患など、病気が潜んでいる可能性もあります。
自己判断ではちみつを飲ませて何とかしようとせず、まずは動物病院でしっかりと診断してもらいましょう。
犬に【薬】を飲ませる際、はちみつに混ぜると良い?
0120 / PIXTA(ピクスタ)
犬に薬を飲ませるときに、甘いはちみつに混ぜると、喜んで飲んでくれることがあります。
粉薬や液体の薬はそのままはちみつと混ぜれば、飲ませやすくなります。
犬に薬を飲ませるのには、ウェットフードやおやつ、バナナに隠したり、薬を入れ込める投薬補助用のおやつが販売されていたりと、さまざまな方法があります。
高齢になると特に、腎不全などの慢性腎臓病や心臓病を抱える犬が多くなり、毎日たくさん薬を飲ませることになります。
そんなときに、タンパク質や塩分の多いおやつを使うと、腎臓や心臓に負担がかかってしまうので、はちみつもうまく利用してみましょう。
ただし、薬を飲ませる前に、食べ物との飲み合わせや、錠剤を砕いたりカプセルの中身を出したりしてもいいかは、獣医師に確認してからにしましょう。
【子犬】や【老犬】にはちみつを与えても大丈夫?
iStock.com/KAT_TAKA
【子犬】にはちみつを与えても大丈夫?
子犬にはちみつを与えないほうがいいでしょう。
人間では、腸内環境の整っていない1歳未満の赤ちゃんで、はちみつによるボツリヌス症が報告されています。
犬でも、1歳になる前の離乳期や成長期には、はちみつを与えないほうが安全です。
ボツリヌス菌ははちみつを加熱しても死ににくい性質を持っているので、”加熱”しても与えないほうがいいでしょう。
【老犬】にはちみつを与えても大丈夫?
老犬にはちみつを与えても、基本的には大丈夫です!
ただし、超高齢の犬やお腹の弱い犬、抗生物質を使っていて腸の細菌叢が変化している犬に与える場合は、気をつける必要があります。
多くの細菌が存在する犬の腸内では、少量のボツリヌス菌は他の菌との競争に負けるため、症状が出ることはありません。
しかし、大量のボツリヌス菌を食べたときや、腸内の菌が偏っているときには、ボツリヌス症が起こる可能性があります。
心配な場合は与えるのを避けておいたほうが安心ですね。
はちみつの【特長】、犬への【効果】は?
iStock.com/Floortje
はちみつの特長・効果【糖分補給】
はちみつには、炭水化物が100gあたり81.9gと、糖分が多く含まれています。
花の蜜はショ糖ですが、ミツバチによって集められた花蜜は、ミツバチの体内でブドウ糖と果糖(フルクトース)に分解されます。
ブドウ糖や果糖はすでに分解された状態の糖分なので、砂糖より吸収が早く、犬が運動後に低血糖になったときなど、疲労回復に最適です。
はちみつそのままだと濃度が濃く、与えすぎも心配なので、水などで薄めて飲ませると水分補給にもなります。
糖分は、肝臓に負担がかかっているときに、肝臓の回復を助ける効果もあります。
rsooll / PIXTA(ピクスタ)
人間でも、お酒を飲んだ後にお茶漬けや麺類が食べたくなりますよね。
マヌカハニーが肝臓に効くと言われるのも、このような理由です。
また、ブドウ糖を多く含むはちみつは、てんかんの症状を起こしそうな犬の発作を抑える効果が期待できるかもしれません。
犬のてんかん症状は、脳内のブドウ糖の値が低下すると起こることがあります。
ただし、てんかんの原因はいろいろあるので、まずは動物病院でしっかりと相談してみましょう。
【参照元】日本食品標準成分表2020年版(八訂)
犬にはちみつを与える際の【注意点!】
vetre / PIXTA(ピクスタ)
はちみつの注意点①【ボツリヌス症】
はちみつには「ボツリヌス菌」が混入していることがあり、人間では1歳未満の赤ちゃんで、はちみつによるボツリヌス症が報告されています。
ボツリヌス菌は海や川、湖や土壌に広く存在しており、酸素が少ない状態で増えるため、缶詰やビン詰、真空パック食品、発酵食品などが原因になります。
1歳以上になって腸内環境が整うと、少量のボツリヌス菌は他の菌との競争に負けるため、症状が出ることはありません。
犬でも、1歳未満の犬には与えないほうがよく、高齢の犬やお腹の弱い犬、抗生物質を使っていて腸の細菌叢が変化している犬に与える場合も、注意が必要です。
【参照元】消費者庁「ハチミツによる乳児のボツリヌス症」
kinpachi / PIXTA(ピクスタ)
はちみつの注意点②【アレルギー】
「花粉に対するアレルギー」がある場合、はちみつを食べるとアレルギー症状が出る可能性があります。
犬がはちみつを食べた後に、下痢や嘔吐、口や目、耳のまわり、脇の下、内股などの皮膚が赤くなったり、かゆがったりといった症状が出たら、アレルギーが疑われます。
もしアレルギー症状が出た場合は、そのビンのはちみつや、同じ種類の植物のはちみつは与えないようにしましょう。
他の植物のはちみつであれば大丈夫なこともありますが、心配な場合はやめておきましょう。
はちみつの注意点③【カロリー】
はちみつは100gあたり329kcalと、カロリーが高めです。
与えすぎて肥満にならないよう、下記の適量を守りましょう。
犬にはちみつを与える際の【適量】は?(小型犬・中型犬・大型犬)
iStock.com/Imagesbybarbara
犬にはちみつを与える場合、どのぐらいが適量なのでしょうか?
ペットフード公正取引協議会の指針によると、犬のおやつや間食は、原則として「1日当たりの給餌量(カロリー)に対して、多くても20%までに抑える」ことが望ましいとされています。
その実際の分量は、避妊・去勢をした健康な成犬の場合、以下です。
犬にはちみつを与える際の【適量(目安)】
【犬のサイズ(体重)】 | 【エネルギー要求量/日】 | 【最大エネルギー量/日】 | 【最大重量/日】 (329kcal/100gとして) |
---|---|---|---|
超小型犬(3kg) | 255kcal | 51kcal | 16g(小さじ2強) |
小型犬(5kg) | 374kcal | 75kcal | 23g(大さじ1強) |
中型犬(10kg) | 630kcal | 126kcal | 38g(大さじ2弱) |
大型犬(30kg) | 1059kcal | 212kcal | 64g(大さじ3強) |
小さじ1杯で7g、大さじ1杯で21gとすると、超小型犬に与えてもいいはちみつの量は小さじ2杯強と、けっこう少なめです。
また、例えば超小型犬に小さじ1杯のはちみつを与える場合、いつもの食事を10%程度減らす必要があります。
トータルでカロリーオーバーにならないよう、気をつけましょう。
犬に与えるはちみつ【まとめ】
Mariyana M/ Shutterstock.com
犬ははちみつを食べても大丈夫です!
はちみつは糖分、特にブドウ糖と果糖が多く、運動後の疲労回復やシニア犬のエネルギー補給などに役立ちます。
ただし、はちみつには「ボツリヌス菌」が混入している可能性があるので、1歳未満の犬には与えないほうがよく、高齢の犬やお腹の弱い犬、抗生物質を使っていて腸の細菌叢が変化している犬に与える場合も注意が必要です。
また、「花粉によるアレルギー」や、与えすぎによる「カロリーオーバー」にも気をつけましょう。
愛犬の健康を守れるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の食生活に取り入れてみてくださいね。
編集部のおすすめ記事
- 【獣医師監修】犬のエナメル質形成不全(未発達・欠損)原因や症状、治療法、治療費、予防対策は?
- 犬のエナメル質形成不全とは、歯の表面を覆うエナメル質の形成が不十分で、ところどころエナメル質が欠損し、歯の表面がでこぼこになったり、そ...
- 【獣医師監修】犬がプリンを食べても大丈夫? 適量は?容器や乳糖不耐症、アレルギーに注意!
- 卵と牛乳を混ぜて蒸したものの上に、甘いカラメルソースがかかったおなじみのおやつ、プリン。栄養があって犬のおやつにもよさそうですが、犬は...
- 【獣医師監修】犬の「根尖周囲病巣」原因や症状は?対処・治療法、治療(手術)費、予防対策は?
- 犬の根尖周囲病巣(こんせんしゅういびょうそう)とは、外からは見えない歯の根元の周囲組織に炎症が起こった状態を言い、肉芽腫や嚢胞(のうほ...
みんなのコメント
あなたも一言どうぞ
コメントする