【獣医師監修】犬にビタミンは必要?子犬や老犬、おやつや手作り食など、必要量と注意点を解説!
犬にはどのくらいの量のビタミンが必要なのでしょうか?子犬、成犬、老犬といったライフステージで必要量が異なるか、おやつや手作り食、サプリメントでビタミンを与える際の注意点など、詳しく知って愛犬の食事管理と健康維持に役立てましょう!
更新日:
◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬にビタミンは必要?
おでか犬 / PIXTA(ピクスタ)
犬にビタミンは必要です!
ビタミンは動物が体内で合成できないため、体外から取り入れなければなりません。
ビタミンは、動物が生きていくために欠かせない5大栄養素のひとつで、炭水化物、タンパク質、脂質、ミネラル以外の有機化合物です。
身体のバランスを保つための成分で、ビタミンは、自動車が動くための「オイル」にたとえられます。
ビタミンの摂取量が不足すると、病気になったり、成長期には成長障害を起こしたりします。
ビタミンは主なもので13種類があります。
ビタミンには、水に溶ける水溶性ビタミンと、油に溶ける脂溶性ビタミンがあります。
脂溶性ビタミンは、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンKの4種類です。
水溶性ビタミンには、ビタミンB群、その他葉酸などがあります。
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
ビタミンB群には、ビタミンB1、B2、B6、ビタミンB12があり、それぞれ重要な働きを持っています。
なお、水溶性ビタミンであるビタミンCに関してのみ、犬は体内でで合成できるため、犬には必須の成分とされていません。
ビタミンを多く含む食べ物として飼い主さんがすぐ思い浮かべるのは、緑黄色野菜ではないでしょうか。
そのほか、ビタミンはレバーや肉、魚にも多く含まれています。
犬に与えるビタミン、1日に必要な量は?
buritora / PIXTA(ピクスタ)
ビタミン不足が起こらないように、動物種ごとに最低必要量が推奨されています。
脂溶性ビタミンは体内に蓄積することにより過剰症を起こす可能性があるため、特に過剰症を起こしやすいビタミンAおよびビタミンDについては、摂取最大量が定められています。
ビタミン不足の症状は?
ビタミンA
成長が遅れる、夜盲症(暗い場所が見えにくくなる)、網膜変性(もうまくへんせい)、眼球乾燥症、免疫機能低下、被毛が貧弱になる。
※ビタミンAは視覚成分であり、免疫機能、骨吸収作用を持つため。
ビタミンD
くる病、骨軟化症、骨粗しょう症。
※ビタミンDは小腸から、ミネラルのうちカルシウムおよびリンの吸収を促進し、骨吸収・骨形成を促進するため。
ビタミンE
脂肪組織炎、皮膚炎、筋炎、免疫不全、視覚異常、食欲不振。
※ビタミンEは細胞膜の脂肪酸や脂質の酸化を防止する作用を持つため、欠乏すると脂質、細胞が壊死(えし)して炎症を起こす。
ビタミンK
iagodina / iStock
血液凝固時間の延長、出血傾向。
※ビタミンKは、血液の凝固因子が肝臓で作られるのを助けるため。
ビタミンB1
脚気(かっけ)、神経炎、食欲減退,体重減少、運動失調。
※ビタミンB1はブドウ糖などのエネルギー代謝を助けるため、ブドウ糖エネルギーを使う神経系の障害が起こる。
ビタミンB2
食欲不振、体重減少、運動失調、乾燥性皮膚炎、白内障、口内炎。
※ビタミンB2は、エネルギー代謝を助けるため。
ビタミンB6
食欲不振、成長不良、体重減少、貧血、痙攣(神経症状)、尿細管委縮、皮膚炎、シュウ酸カルシウム結石。
※ビタミンB6はアミノ酸代謝を助けるため。
ビタミンB12
Sergey-Med / PIXTA(ピクスタ)
貧血。
※ビタミンB12は赤血球の合成、エネルギー代謝を補助するため。
ナイアシン
食欲不振,成長遅延、口唇炎。
※ナイアシンはエネルギー代謝の補助するため。
葉酸(ようさん)
貧血、食欲不振、体重減少。
※葉酸は赤血球の合成を補助するため。
パントテン酸
痩せる、脂肪肝。
※パントテン酸は脂質代謝、糖代謝を補助するため。
コリン
脂肪肝、成長が遅くなる。
※コリンは脂質代謝を補助するため。
ビタミン過剰の症状は?
..mon / PIXTA(ピクスタ)
ビタミンの蓄積による毒性や障害の強さは、ビタミンAが最も強く、次いでビタミンD、Kとなります。
ビタミンEにはほとんど毒性はありません。
ビタミンA
骨および軟骨の形成抑制、骨・関節の変形、四肢骨腫脹(ししこつしゅちょう)、疼痛(とうつう)、跛行(肢を引きずって歩く)、体重減少、知覚過敏、尿失禁、食欲不振、運動失調、子犬の起立不能。
ビタミンD
高カルシウム血症、腎臓・神経・肺などの石灰化、尿石症、腎不全。
ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しているアメリカの団体である「米国飼料検査官協会」(AAFCO:American Association of Feed Control Officials)、および「米国科学アカデミーの米国学術研究会議」(NRC:National Research Council)では、最低必要量と、ビタミンAおよびビタミンDの最大量を定めています。
日本でもこの基準を参考(以下の表のとおり)にしています。
【犬が1日に必要とするビタミン量(フード1000kcalあたり)】
【ビタミン種】 | 【乾物あたり】 | 【AAFCO:2016】 | 【NRC:2006】 | ||
---|---|---|---|---|---|
/1000kcalME | 最小値 | 最大値 | 最小値 | 最大値 | |
ビタミンA (レチノール) | IU/ | 1250 | 62500 | 1263 | 53333 |
ビタミンD(カルシフェロール) | IU/ | 125 | 750 | 136 | 800 |
ビタミンE(トコフェロール) | IU/ | 12.5 | 11.2 | ||
ビタミンK(フィロキノンなど) | mg/ | 0.41 | |||
ビタミンB1 (チアミン) | mg/ | 0.56 | 0.56 | ||
ビタミンB2 (リボフラビン) | mg/ | 1.3 | 1.3 | ||
ビタミンB6 (ピリドキシン) | mg/ | 0.38 | 0.375 | ||
ビタミンB12 (コバラミン) | mg/ | 0.007 | 0.0088 | ||
ナイアシン | mg/ | 3.4 | 4.25 | ||
葉酸 | mg/ | 0.054 | 0.0675 | ||
パントテン酸 | mg/ | 3 | 3.75 | ||
コリン | mg/ | 340 | 425 |
犬にビタミン剤(人間用)を与えても良い?
mrwed54 / PIXTA(ピクスタ)
人間用のビタミン剤やサプリメントとしては、1種類ごとのビタミン剤をはじめ、総合ビタミン剤やマルチビタミン、マルチビタミン&ミネラルサプリメントなどが販売されています。
それらの人間用のビタミン剤を犬に与えても良いケースもありますが、注意が必要です。
そもそも、犬用の総合栄養食には十分なビタミンが含まれます。
そのため、健康な犬にはわざわざ人間用のビタミン剤やマルチビタミンやミネラルサプリメントを追加で与える必要はありません。
愛犬に与えると、脂溶性ビタミンの過剰症などの副作用が起こる可能性があります。
もし与える場合は、脂溶性ビタミン、とくにビタミンAやビタミンDの含有量に気をつけましょう。
高齢・老齢の犬には、必要に応じて、人間用のマルチビタミンやミネラルサプリメントを少し与えながら健康をサポートする方法もあります。
けれども、飼い主の独自の判断で行わず、獣医師に相談しながら人間用のビタミン剤を使用するようにしてください。
老犬や子犬に必要なビタミンの適量は?
makotomo / PIXTA(ピクスタ)
老犬のビタミンの適量
老犬や超高齢犬では、消化吸収能力が低下してくるため、ビタミンを十分に与える必要があります。
とくにビタミンB12の吸収が悪化すると貧血の原因となります。
また、ビタミンDおよびカルシウムの吸収が低下して、骨折のリスクが上がる場合があります。
もし老犬の食欲が低下して総合栄養食が食べられない場合、種々のビタミンの不足が起こるかもしれません。
それを解消するには、バランスの良いマルチビタミンやミネラルサプリメントを取り入れるのも有効です。
ただし、病気であったり、薬を飲んでる犬では、ビタミン剤との飲み合わせに注意が必要なケースもあるので、必ず獣医師に相談しましょう。
子犬のビタミンの適量
infinityyy / PIXTA(ピクスタ)
子犬の成長期には、体重あたりのエネルギー要求量が多くなります。
そのため、それに合わせてビタミンの要求量、摂取量も増えます。
ただし、成長期の子犬におけるビタミンAやビタミンDの過剰症には要注意。
ビタミンAの過剰症では、骨軟症や関節炎の症状が出るでしょう。
ビタミンDの過剰症では、カルシウムの過剰症と同様に骨が短くなったり曲がったりします。
これらの影響は大型犬ほど起こりやすいことが知られています。
ビタミンを含めた栄養バランスを整えるために重要なポイントは、ライフステージにマッチした子犬用(パピー用、成長期用)やシニア用などの総合栄養食を適量食べることだと言えます。
犬にビタミンを与える際のおすすめの食材(野菜)やおやつは?
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
多くの食材にビタミンは含まれています。
たとえば、ビタミンAは多数の食品中に天然に含まれますが、牛乳、レバー、肝油(かんゆ)やその他の臓器肉、鮭などの魚類に豊富に含まれます。
なお、緑黄色野菜(かぼちゃ、にんじん、ほうれん草等、特に黄色の野菜)やフルーツ(マンゴ−など)には、プレビタミンAであるカロテンとして含まれています。
野菜に含まれるカロテンは消化吸収されると体内でビタミンAとなります。
野菜の取りすぎでのビタミンA過剰症にはならないとされているので、愛犬にビタミンをおやつや食事のトッピングで与える際に野菜は比較的おすすめです。
以下に、それぞれのビタミンを多く含む、犬にもおすすめ(※アレルギーがない場合)の食材を紹介します。
ビタミンを含む食材【一覧】
【ビタミンの種類】 | 【食材】 |
---|---|
ビタミンE | 大豆、穀類、緑黄色野菜 |
ビタミンD | レバー、肝油、魚類、しいたけ、きくらげ |
ビタミンK | 緑黄色野菜 |
ビタミンB1 | 豚肉、牛乳、チーズ、枝豆、豆腐、 みかん、にんじん |
ビタミンB2 | レバー、魚、牛乳、 緑黄色野菜(とくにモロヘイヤ、ほうれん草) |
ビタミンB6 | 赤身の魚、豚肉、鶏肉、レバー、卵、 バナナ、赤パプリカ、さつまいも |
ビタミンB12 | レバー、肉、魚、チーズ、卵 |
ナイアシン | 魚介類、鶏肉、ピーナッツ |
葉酸 | 豆類、 葉物野菜(とくに菜の花、ほうれん草、モロヘイヤ)、 果物(とくにいちご) |
パントテン酸 | 牛乳、レバー、鶏肉、魚介、卵、 モロヘイヤ、アボカド |
【参照元】文部科学省「食品成分データベース」
犬にビタミンを与える場合の注意点!(手作り・サプリ)
ホタル / PIXTA(ピクスタ)
愛犬にビタミンを手作り食やサプリメントで与える場合、脂溶性ビタミン剤やサプリメントの過剰摂取には注意しましょう。
水溶性ビタミンは過剰摂取しても過剰分は尿中に捨てられますが、脂溶性ビタミンは過剰摂取すると体内に蓄積されてしまうからです。
脂溶性ビタミンの取り過ぎによって過剰症の症状が出るケースもめずらしくありません。
とくに、マルチビタミンやミネラル(MVM)サプリメントに含まれるビタミンAと、体内でビタミンAに変換されるβカロチンの量には注意しましょう。
また、愛犬が人間用のビタミン剤を誤飲しないようにも注意してください。
もし誤飲した場合は、発見が早ければなるべく吐かせるようにしましょう。
とくにビタミンAやビタミンDを含んでいるビタミン剤の場合は過剰症の影響が長く残る可能性があります。
愛犬が飲んだビタミン剤やサプリメントを持参して、すぐに動物病院へ。
普段から愛犬が誤って食べることがないように、人間用のビタミン剤やサプリ、薬を保管しておくのが重要です。
犬のビタミン【まとめ】
アオサン / PIXTA(ピクスタ)
犬にビタミンは必要で、生命維持に重要な役割を果たしています。
ライフステージにマッチした総合栄養食を食べていれば、必要量のビタミンは摂取できるので追加でサプリメントなどを与える必要はありません。
食べ物からだけでは十分なビタミンやミネラルを摂取できないケース、ダイエットのために低カロリー食を実行しているケース、食欲が低下しているケースなどでは、獣医師の判断によってマルチビタミンやミネラル(MVM)サプリメントの追加給与が推奨されるかもしれません。
ただし、ほかの食事と合わせて、安全な摂取量の上限を超えないようにするのが重要です。
また、手作り食の場合やおやつを与える際は、愛犬が必要とする総カロリーのうち、ビタミンを摂取させるために与える食材のカロリー比率が高くなりすぎないように注意しましょう。
愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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