【獣医師監修】犬に手作りご飯を与えても大丈夫?子犬・成犬・老犬に食べさせる際のポイントや注意点!

飼い主さんが選んだ食材を使って、愛犬に手作りご飯を与えても大丈夫でしょうか?子犬から成犬、老犬まで、愛犬の食事を手作りする際の食材選びや分量計算といったポイントや注意点などを知って、愛犬の食事管理と健康維持に役立てましょう。

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【獣医師監修】犬に手作りご飯を与えても大丈夫?子犬・成犬・老犬に食べさせる際のポイントや注意点!
出典 : Luljo / PIXTA(ピクスタ)
先生にお聞きしました
左向 敏紀 先生
【所属】
日本獣医生命科学大学 名誉教授
一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長

【資格】
獣医師

【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学

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犬に手作りご飯を与えても大丈夫?

犬に手作りご飯を与えても大丈夫?

おでか犬 / PIXTA(ピクスタ)

愛犬に手作りご飯を与えても大丈夫です!

一般社団法人 日本ペットフード協会による2020年までの直近5年間の調査では、手作り食を与えている犬のオーナーは、4.3~5.2%

インターネットや書籍で犬用手作りご飯のレシピや記事が多数紹介されていることからわかるとおり、手作りご飯に興味がある飼い主さんは多いでしょう。

普段のドッグフードに加え、週に数回は手作りご飯を与えているという飼い主さんもいるかと思います。

とはいえ、国内で紹介されている100種類のレシピを調査した結果、AAFCO(全米飼料検査官協会)の総合栄養食の基準に適合しているものはひとつもなかったという報告(2017年、日本ペット栄養学会誌)があるのも事実です。

その報告によると、調査したレシピの80%で、栄養素のうちカルシウム、銅、亜鉛、ビタミンAが最低値以下で、ヨウ素とビタミンDが過剰でした。

手作り食の一般的な問題点として、タンパク質の量が多くなりがちで、エネルギー、カルシウム、ビタミン、微量ミネラル(鉄、亜鉛、マンガン、銅、セレンなど)が不足がちな点が挙げられます。

飼い主 野菜 手作りご飯

iStock.com/Inside Creative House

飼い主さんによって野菜の分量が多すぎる、肉の分量が多すぎる、レバーを多用しすぎる、ミネラルの添加がないなどと、食事内容が偏る傾向も見られます。

野菜が多いと繊維の摂取が過剰になり、便秘になったり、食事中の栄養素を食物繊維が吸着して糞便に捨ててしまう可能性があります。

レバーが多すぎるとビタミンAやDの過剰症を引き起こすこともあります。

犬に手作りご飯を与えても大丈夫ですが、栄養バランスには気をつけて作りたいものです。

通常は総合栄養食を愛犬に与えておき、1週間に1~2食を手作りご飯にすることで、栄養のアンバランスを生じるリスクは少なくなるでしょう。

つまり、総合栄養食を10%~20%減らして手作り食に置き換えれば、大きなトラブルは起きません。

子犬や老犬に手作りご飯を与えても大丈夫?

子犬や老犬に手作りご飯を与えても大丈夫?

nozomin / PIXTA(ピクスタ)

子犬や老犬に手作りご飯を与えても大丈夫です!

ただし、子犬の成長期は栄養素も多く必要で、栄養素のバランス調整は簡単ではありません。


また、成長時期によってその必要量も変化します。

バランスを崩した食事を続けてしまうと、取り返しのつかない栄養障害を引き起こす恐れもあります。

そのため、手作り食の割合を減らすか、栄養バランスを厳密に注意しながら作りましょう。

老齢の犬では、手作り食を与えることに問題はないでしょう。

ただし、腎臓病や肝臓病では病態によりタンパク質の量を減らす必要があります。

獣医師と相談しながら手作りしてください。


がんなどの病気で終末医療(ターミナルケア)を行っている時期は、食欲が低下しているケースもあるでしょう。

その場合、とりあえず栄養をつけるために食べてもらわなければなりません。

愛犬 子犬 食事

iStock.com/delusi

愛犬の好きなものを組み合わせながら、可能な限りバランスの取れた手作り食を与えるのも有効です。

子犬でも老犬でも、好き嫌いを示したりしてドッグフードを食べなくなるからといって、おやつやジャーキーなどを食事の代わりに与えるのは良くありません。

また、手作り食にするとよく食べるというわけでもありません。

どちらかというと、ドッグフードの方が嗜好(しこう)性は高いと考えられます。

犬に手作りご飯を与える際のご飯(米)の割合は?

犬に手作りご飯を与える際のご飯(米)の割合は?

CReeam / PIXTA(ピクスタ)

愛犬の食事を手作りで与えたい飼い主さんも少なくないでしょう。

初心者が手作りご飯を作る場合、すべての食事を手作りにせず、総合栄養食をベースに1週間に1~2回ずつ手作り食にしたり、食事の20%分を手作りで与える程度で気軽に取り組むのがおすすめです。

手作り食に取りかかる際、基本的には最初に、安静時エネルギー要求量(RER)を計算します。

そして、それに活動係数をかけて1日に必要なエネルギー量(DER)を計算します。

【エネルギー計算】

・RER=70×0.75で求められます。

計算機では((体重)×(体重)×(体重)=√√×70という方法で計算


できます。

・DER=RER×活動係数で計算します。

活動係数の例:未避妊・未去勢(1.8)、避妊去勢(1.6)、老齢(1.4)、高齢・減量(1.0~1.2)、成長期(2-4)

たとえば、体重10kgの去勢犬では、RERは、10×10×10= √√×70 =394kcal、DER=RER×1.6=630kcalとなります。

【タンパク質必要量の計算】

タンパク質必要量は、維持期(4.5~6.5g/100kcal=最低必要量4.5g/100g(AAFCO))、成長期(6.0~8.5g/100kcal)、高齢(4.5~5.5g/100kcal)、であり、高齢では成長期や維持期より少なくなります。

また、慢性腎臓病(3.0~3.5g/100kcal)がある場合は、より少量になります。

タンパク質要求量を5.5g/100kcalとして、5.5g×630kcal/100kcal=34.65g/体重10kgとなります。

同じ肉でも、同じ脂肪の少ない材料でも脂肪の現有量が異なります。

ゆでたささみはカロリーも低く(125kcal/100g)タンパク質(27g/100g)、脂質(1g/100g)とタンパク質の割合が大きい。

けれども、ささみベースで作ると脂肪分や必須脂肪酸が不足することも多いので、(油で炒めるといった方法で)脂肪を加えることが重要です。

和牛かた脂身の無い赤身は、カロリー(201kcal/100g)、タンパク質(20.2g/100g)、脂質(12.2g/100g)と脂質がかなり含まれています。

植物性のゆで大豆も、カロリー(180kcal/100g)、タンパク質(16.0g/100g)、脂質(9.7g/100g)と同じくらいの割合で脂質が多く含まれています。

犬 手作りご飯 脂肪 油

iStock.com/kuppa_rock

【脂肪添加量の計算】

エネルギー必要量の5~15%を脂肪から摂取できるように計算しましょう。

その際、リノール酸が1.1%以上の割合で必要とされています(※AAFCO)。

その後、残りの必要エネルギーを炭水化物(ご飯)で加えるようにします。

脂肪量を多く加えると、白米などの炭水化物の必要量は減ってきます。

逆に脂肪量を少なくすると、炭水化物の必要量は多くなります。

なお、タンパク質として使用する肉やゆで大豆の中にも脂肪分が含まれているので注意が必要です。

たとえば、タンパク質として使うのが和牛かた赤肉だけタンパク質34.65gを補おうとすると、肉171.5g、カロリー345kcal、脂肪20.2 g(181kcal)が含まれています。

タンパク質をゆで大豆で置き換えても脂質の量はほとんど変わりません。

必須脂肪酸のために、ゆで大豆を使うかサンフラワー油などを加えるのが良いでしょう。

【炭水化物(白米を加える割合)】

油としてサンフラワー油を5g加えたとすると、炭水化物として加えられるのは、630kcal-345kcal-45kal=240kcalです。

精白米は168kal/100g なので、240kcal/143g、すなわち143gの白米を加えられます。

なお、ビタミンやミネラルも加える必要があります。

また、ビタミンやミネラルを含む食物繊維として野菜を加える場合には、消化吸収性の高いデンプンを多く含むものがあり(かぼちゃにんじん、いも類など)、それらの炭水化物量にも気をつけましょう。

【参照元】『小動物の臨床栄養学 第5版』(マーク・モリース研究所発行、監訳:岩﨑利郎、辻本元)2014年インターズー

犬におすすめの手作りご飯(食材)は?(子犬・成犬・老犬)

おすすめの手作りご飯①【牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉】

おすすめの手作りご飯①【牛肉、豚肉、鶏肉、馬肉】

WildStrawberry / PIXTA(ピクスタ)

子犬から成犬、そして老犬まで、手作り食を用意する際によく使用されるタンパク質としては、牛肉豚肉鶏肉馬肉があります。

なお、赤身でも牛肉などは脂肪分を多く含みカロリーが高いことを覚えておきましょう。

肉類は、品種や部位によって、タンパク質や脂肪の量が異なるのがポイントです。

おすすめの手作りご飯②【鶏のささみやむね肉、馬肉の赤身】

脂肪分が少ないのは、鶏肉のささみとむね肉、馬肉の赤身など。

それらを使う場合は、脂肪は脂肪単独で加えることができます。

おすすめの手作りご飯③【大豆や植物油】

おすすめの手作りご飯③【大豆や植物油】

iStock.com/4kodiak

脂肪・脂質として、必須脂肪酸のリノール酸は多くの油に含まれていますが、大豆にも含まれています。

タンパク源として大豆を使うと一定量のリノール酸は確保
できます。

植物油では、ひまわり油、紅花油(ハイノールサフラワー油)の脂肪・脂質の含有率は70%以上で、少量で必須脂肪酸をまかなえるのがメリットです。

また、ω3系の脂肪酸はサンマやに含まれるEPAとDHAが有名ですが、最近、エゴマ油や亜麻仁油に含まれるαリノレン酸も注目を浴びており、これらを用いることでω6とω3のバランスを取ることが可能になるのでおすすめです。

おすすめの手作りご飯④【とうもろこし、小麦、米、大麦、タピオカなど】

炭水化物では、ドッグフードでよく使用されているとうもろこし、小麦、米、大麦、タピオカなどが食材のチョイスになるでしょう。

おすすめの手作りご飯⑤【レバー】

おすすめの手作りご飯⑤【レバー】

iStock.com/aristotoo

ビタミンとミネラルを調整する際には、脂溶性ビタミンが多く含まれているレバーが活用しやすいでしょう。

ただし、レバーには、摂り過ぎると好ましくないビタミンAとビタミンDが多く含まれているので、過剰に与えないようにするのが注意点です。

総合栄養食であるドッグフードと同様に、ビタミンとミネラルは添加剤などで調整するという方法もあります。

犬に手作りご飯を与える際の注意点!(塩分など)

手作りご飯の注意点①【ジビエ肉】

手作りご飯の注意点①【ジビエ肉】

cynoclub / PIXTA(ピクスタ)

犬の手作りご飯で注意したいのは、まずはジビエ肉や生肉に関してです。

これらは、細菌や寄生虫のリスクが高めです。

人間用として生食が可能な肉以外は、愛犬に生で食べさせないようにしてください。

手作りご飯の注意点②【鶏の骨】

鶏の骨にも注意が必要です。

噛むと鋭利な形状で砕けて犬の食道や内臓を傷つけやすいので、愛犬には鶏の硬い骨は与えないのが鉄則です。

手作りご飯の注意点③【塩分や脂肪分】

手作りご飯の注意点③【塩分や脂肪分】

iStock.com/antos777

調理の際に塩分や脂肪を添加してはいけません!

過剰な塩分は心臓循環に負担をかける可能性があり、脂肪はエネルギーの過剰を引き起こすからです。

嗜好性を高めようと、塩やしょう油などを加えないことと、人間用に味付けされたものをおすそ分けしないことが重要です。

手作りご飯の注意点④【食物アレルギー】

食物アレルギーの多くは肉類や乳製品などの動物性タンパク質で起こりますが、麦類などで起こるケースも少なくありません。

炭水化物で麦の代わりに使うとすると、いも類(じゃがいもさつまいも、タピオカ)、とうもろこしになるでしょう。

ただし、それらは、必ず火を通してα化した状態で与えないと、消化不良を起こして下痢になるので要注意

一方で、しっかりα化した状態で消化しやすいと、摂取カロリーがオーバーする可能性もあるので注意しましょう。

最後に、手作り食のストックは室温や冷蔵で保存せず、必ず1食分ずつを小分けにして冷凍するのをおすすめします。

そして、愛犬に与える前に解凍して40度程度に温めて与えるのが最良です。

犬に与える手作りご飯(食材)のまとめ

犬に与える手作りご飯(食材)のまとめ

keechuan / PIXTA(ピクスタ)

愛犬に手作りご飯をあげても大丈夫です!

ただし、総合栄養食のドッグフードは消化性がすぐれていますが、手作り食は一般的にはドッグフードより消化性は劣ります。

そのため、含まれている栄養素を数字だけ合わせてると、不足する栄養素がでてくる可能性があるので注意して作らなければなりません。

栄養素が過剰も不足もせず摂取できるような、バランスの取れた食事を手作りするのが重要です。

愛犬 総合栄養食 栄養

iStock.com/Ekaterina79

愛犬にきちんと栄養を摂らせたい場合、総合栄養食をベースに、週に数回ほど手作りご飯を与えるのが最良と言えるでしょう。

愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。

正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。

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