【獣医師監修】犬に脂質は必要?子犬や老犬、おやつや手作り食など、必要量と注意点を解説!
愛犬の食事で、脂質はどのくらいの量が適量なのでしょうか?子犬、成犬、老犬といったライフステージで必要量が異なるのか、おやつや手作り食で脂質を含む食べ物を与える際の注意点など、詳しく知って愛犬の食事管理と健康維持に役立てましょう。
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◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
犬に脂質は必要?
tiverylucky / PIXTA(ピクスタ)
犬に脂質は必要です!
脂質とは、水に溶けない物質の総称。
脂肪組織に溜まってる「脂肪」、ステロイドホルモンや細胞膜を構成する「コレステロール」、体中の細胞を作っている「リン脂質」、「脂肪酸」などがあります。
たとえばサラダ油、ごま油、牛脂は「脂肪」であり、脂質のひとつ。
エネルギーが高く、1gあたり9kcalあるのは「脂肪」のことで、「中性脂肪」と呼ばれることもあります。
脂肪のカロリーは炭水化物やタンパク質の2.25倍です。
なお、牛や豚の動物性脂肪は常温で個体で存在していて、植物性脂肪および魚の脂肪は常温で液体の状態です。
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必須脂肪酸
iStock.com/zeljkosantrac
脂肪には3個の「脂肪酸」が結合しています。
脂肪酸のうち動物の体で合成できず、食事から摂取が必要な脂肪酸が「必須脂肪酸」です。
必須脂肪酸には、オメガ6脂肪酸としては「リノール酸」、オメガ3脂肪酸としては「α-リノレン酸」があります。
広義の必須脂肪酸として、オメガ3脂肪酸のエイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキサエン酸(DHA)も分類されています。
犬の脂質代謝異常【原因】
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犬の脂質代謝異常の原因として、糖尿病、クッシング症候群(副腎の病気)、甲状腺機能低下症といった内分泌の病気、腎臓の病気(ネフローゼ症候群や慢性腎臓病)が挙げられます。
糖尿病以外は、病状が目立たずに高脂血症の状態になっていることも少なくありません。
遺伝的原因として、ミニチュア・シュナウザーは高中性脂肪血症、シェットランド・シープドッグは高コレステロール血症になりやすいことが知られています。
ミニチュア・シュナウザーや食事中の脂肪分が多い犬では、膵炎(すいえん)を発症するリスクが高いともされています。
そのため、肥満の犬、脂肪分の多い食事をしている犬、ミニチュア・シュナウザーでは、脂肪分の低い高カロリーな(低脂肪フードなど)の食事が適していると言えるでしょう。
ちなみに、人間の脂質代謝異常は、コレステロール(特にLDLコレステロール)または中性脂肪の上昇を示すものをいい、動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞などを起こしやすくなるとして注意喚起されています。
遺伝的要因だけでなく、生活習慣や、脂質、エネルギーの過剰摂取が軽視できません。
また、人間では高脂血症が慢性腎臓病の進行に関係することも知られています。
犬に与える脂質、1日に必要な量は?
Jiri Hera / PIXTA(ピクスタ)
犬に与えるべき脂肪の必要量の基準としては、AAFCO(米国飼料検査官協会)およびNRC(National Research Council 米国科学アカデミーの米国学術研究会議)ともに、成犬・維持期の1.38g/100kcalとしています。
また、脂質の中の必須脂肪酸の必要量(最少量)として、リノール酸は、280mg/100kcalとしています。
NRCでは広義の必須脂肪酸とされるEPA+DHAの必要量を11mg/100kcalと定めています。
日本でもこれに準じています。
フードからの必須脂肪酸の摂取量が不足すると、体重減少、皮膚の異常(フケ、脱毛、乾燥など)が起こるので、愛犬に食べ物から摂らせてあげましょう。
子犬や老犬に必要な脂質の適量は?
Ushico / PIXTA(ピクスタ)
子犬の成長期の脂肪の必要量は、成犬・維持期に比較して約1.5倍高く、2.13g/100kcalとされています(AAFCO)。
また、必須脂肪酸であるリノール酸についても、約1.2倍多い280mg/100kcalとされています。
老犬(高齢犬)の脂質、脂肪の必要量については明確な基準はありません。
一般には、高齢になると消化吸収能力が落ちてくるので、膵臓(すいぞう)の消化機能に負担をかける脂肪分を少なくするのが良いとされています。
膵臓に負担をかけると下痢をしたり、膵炎(すいえん)を引き起こすことがあるからです。
そのため、総合栄養食である高齢犬用のドッグフードは脂質(粗脂肪)の含有率が低めに作られています。
【参照元】『小動物の臨床栄養学 第5版』(マーク・モリース研究所発行、監訳:岩﨑利郎、辻本元)2014年インターズー
犬に脂質を与える際のおすすめの食材やおやつは?
おすすめの食材やおやつ①【食物繊維】
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好ましくない中性脂肪やコレステロールを下げる食物としては、食物繊維があります。
食物繊維は、脂質や脂肪の吸収に関係する胆汁酸と結合して、糞便(ふんべん)に混じって排出させる作用があります。
ただし、食物繊維を加えすぎると、脂肪や脂質ばかりではなく、体に大切な栄養素も結合して排泄してしまったり、便秘を起こすこともあります。
脂質と同時に食物繊維を摂取させるように心がけつつ、食物繊維の与えすぎには気をつけましょう。
おすすめの食材やおやつ【魚類(EPA・DHA)】
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良質な脂質として注目されているのが、EPAやDHAを含む魚類です。
愛犬に脂質を与える際は、それらを含む青魚などを食材として選ぶのがおすすめです。
ただし、魚の油は変性や酸化をしやすいため、必ずビタミンEを多く含有する食材と一緒に与えるようにしてください。
犬に脂質を与える場合の注意点(手作り・サプリ)!
dimarik / PIXTA(ピクスタ)
手作りご飯で脂質を加える場合、脂肪に含まれる脂肪酸の質に気遣ってあげましょう。
必須脂肪酸のリノール酸を加えることが、大変重要です。
また、オメガ3脂肪酸を少量でも加えることが大切で、
【オメガ3脂肪酸を与える適量】
オメガ-6:オメガ-3比すなわち(リノール酸+アラキドン酸):(αリノレン酸+EPA+DHA)=30:1以下
になるようにするのが良いとされています。
αリノレン酸はエゴマ油やアマニ油に、EPAやDHAは、サバやサンマといった青魚の油に含まれています。
EPAやDHAは、市販されているサプリメントを使用することもできます。
愛犬の記念日に、ケーキなどを手作りすることもあるでしょう。
その際、生クリームやホイップクリーム、ホットケーキ、メイプルシロップ、バターなども使いたくなるかもしれません。
けれども、犬用のおやつ作りではカロリーを減らすように工夫すること、塩分や糖分を少なくすること、カロリーオーバーにならないように気をつけましょう。
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トレーニングの特別ごほうびや食が細い時のトッピングとしてチーズを与える場合は、脂肪分が低いカッテージチーズがおすすめです。
なお、カッテージチーズとモッツァレラチーズ以外は塩分が多いので控えたほうが良いでしょう。
乳成分のタンパク質が多い食材です。
乳製品に対するアレルギーがある犬では、下痢、嘔吐、皮膚の痒み、涙やけなどの症状が現れる可能性があるので、注意しながら与えるようにしてください。
まとめ
PongMoji / PIXTA(ピクスタ)
犬に脂質は必要です。
愛犬がライフステージにマッチした総合栄養食をしっかり食べていれば、あえて脂質を加える必要はありません。
魚の良質な油であるEPAやDHAの成分は、サプリメントで摂取しても大丈夫です。
ハイグレードなドッグフードには、同時に摂取したいビタミンEとともに含むものもあります。
手作り食の場合やおやつを与える際は、愛犬が必要とする総カロリーのうち、脂質の比率が高くなりすぎないように注意が必要です。
特に高齢になると、脂質の摂り過ぎは内臓に負担をかけるので気をつけましょう。
愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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