【獣医師監修】犬の栄養について知っておこう!犬も三大栄養素は必要?手作り食での注意点は?

愛犬の食事管理を適切に行う上で、犬の栄養に関してはぜひ知っておきたいところです。そもそも栄養とは?3大栄養素や5大・6大栄養素って何?愛犬に栄養バランスの良い手作りご飯を作るには?など、飼い主さんが愛犬の健康をサポートできるように詳しく解説します。

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【獣医師監修】犬の栄養について知っておこう!犬も三大栄養素は必要?手作り食での注意点は?
出典 : iStock.com/damedeeso
先生にお聞きしました
徳本 一義 先生
ペット栄養学会理事。小動物の臨床栄養学に関するスペシャリスト。
獣医師 MBA(経営学修士)

ヘリックス株式会社 代表取締役社長

【資格】
獣医師

【所属】
ペット栄養学会 理事
一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
日本獣医生命科学大学 非常勤講師
帝京科学大学 非常勤講師
など

大学卒業後、小動物臨床に従事。

その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。

現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。

自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
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犬の【3大(5大)栄養素】とは?

犬の【3大(5大)栄養素】とは?

damedeeso / PIXTA(ピクスタ)

「栄養」とは、動物が体外から物質を摂取し、それを消化・吸収して成長し、健全な活動を行うために役立たせることを意味します。

取り入れる物質が、「栄養素」です。

「栄養素」が消化・吸収されて、犬の体で利用されることを「代謝」と言います。

犬の食べ物中の栄養素は、次の3つに分けられます。

1.エネルギー源となるもの

2.体の構成成分となるもの

3.体のバランスを整えるもの

これらの成分は自動車に見立てると、1.は「ガソリン」、2.は「車のボディ」、3.は「オイル」に例えられます。

犬の「3大栄養素」とは、このうちの「エネルギー源となる」栄養素を指し、炭水化物、脂肪、タンパク質のことを言います。

これにビタミンとミネラルを加えたものを、犬の「5大栄養素」と言います。

ミネラルは主に体を構成し、ビタミンは生体のバランスを取ります。

最近では、「水」を加えて「6大栄養素」と言うことも少なくありません。

「3大栄養素」のカロリーは、犬では、炭水化物1g=3.5kcal、脂肪1g=8.5kcal、タンパク質1g=3.5kcalになるとされています。

なお、人間では、炭水化物1g=4kcal、脂肪1g=9kcal、タンパク質1g=4kcalとされています。

愛犬の年齢に合わせた栄養管理【必要量】は?

愛犬の年齢に合わせた栄養管理【必要量】は?

webweb / PIXTA(ピクスタ)

エネルギーと栄養素の必要量は、犬のライフステージによって変動します。

ライフステージは、

成長期

成犬期

中高齢期

に大別されます。

成犬期でも、避妊・去勢を行った犬では必要エネルギー量は低下します。

また、「妊娠期」「新生子期」「離乳期」等はさらに異なる栄養管理が必要なのは言うまでもありません。

その他、病中病後や手術後、回復期になどでも、必要エネルギーや栄養素が異なってきます。

愛犬のライフステージや体調にマッチしたエネルギーや栄養素を与えるのは、栄養学的にも大変重要なことです。

犬の栄養管理【成長期】

犬の栄養管理【成長期】

iStock.com/gyro

犬の成長期は、離乳期以降から成熟までの時期を指していて、その期間は犬種により異なります。

小型犬:9~12ヶ月齢

中型犬:12〜14ヶ月齢

大型犬:12〜24ヶ月齢

頃とされます。

犬の成長期は、カロリーと、タンパク質やミネラル等の栄養素の割合が多く必要になります。

犬 パピー 子犬 成長期 総合栄養食 ご飯

SerhiiBobyk / PIXTA(ピクスタ)

そのため、それらの成分の含有量が多い「成長期用」(パピー用、子犬用)の総合栄養食を与えましょう。

犬の成長期は、成犬期の食事より、体重あたりで2倍程度与えることになりますが、成犬に近づくにつれてその割合が小さくなってきます。

愛犬にずっと倍ほどの調子で与え続けると、肥満となります。

成長期の肥満はなかなか改善しないばかりか、成長後にも影響が出るので注意しなければなりません。

逆に、その時点での体重あたりの栄養だけしか与えていないと、愛犬が栄養失調になってしまいます。

サイズが大きくならないように育てたいなどという理由で十分に栄養を与えないと、急激に栄養失調に陥ってしまい不健全です。

多くもなく少なくもない、愛犬には適量の栄養を摂らせることが成長期には大変重要だと肝に銘じておきましょう。

愛犬に不足しがちの成分を、栄養剤や栄養ドリンクとして与えたくなりますが、その不足量は犬の大きさや成長段階で異なります。

栄養剤を与えたことでかえって摂取量が過剰となり、健康上のトラブルを招きかねません。

この時期は、愛犬の成長期にマッチした総合栄養食を与えるのが安心でしょう。

犬の成犬期の栄養管理【成犬期(維持期)】

犬の成犬期の栄養管理【成犬期(維持期)】

アオサン / PIXTA(ピクスタ)

愛犬が成犬になっても成長期用のフードを与えていると、肥満になりやすいので注意しましょう!

シニア期(犬種などにより個体差がある)に入るまでは、総合栄養食で飼い主さんが管理しやすいドライフードが多く用いられています。

ドライフードをはじめ総合栄養食の適正な給与量は、フードのパッケージに表示されている給与量を目安にしてください。

ただし、記載されているのはあくまでも適正体重(理想体重)に対しての給与量です。

愛犬が痩せすぎでも太り気味でもないことを、BCSを参考にしたり獣医師などに聞いて確認の上、適量を与えるようにしましょう。

犬の栄養管理【中高齢期(シニア期)】

犬の栄養管理【中高齢期(シニア期)】

アオサン / PIXTA(ピクスタ)

犬のシニア期以降はエネルギーの必要量が20%程度低下してきます。

とはいえ、低下率は個体差や犬種差などがあるので、あくまでも目安と考えてください。

そう考えると、よく耳にする「8歳のシニア期に入ったら、フードの量を20%減らしましょう」というのは正しいとは言えません。

愛犬の活動量、体重、BCSを見ながら、食事の量を決めましょう。

愛犬が歯周病などでドライフードが食べにくい場合は、高カロリーで栄養素の豊富なペーストフードを試してみるのも良いでしょう。

犬は高齢になると、消化・吸収の能力が落ちてきて、かえって痩せてしまうケースもめずらしくありません。

同じ量を与え続けているのに愛犬が痩せてきた場合は、病気が隠れていることもあるので、獣医師に相談を。

病気の高齢犬には、必要に応じて、鼻などにチューブを取り付けて流動食を与える場合があります。

また、食欲が落ちた高齢犬に栄養成分を点滴して体力を回復させると、再び元気に食べ始めることも多々あります。

病気から回復するためにも栄養が必要なので、高齢犬であってもしっかり食べさせるのが重要です。

高齢による問題として、筋力の低下、筋肉量の低下(サルコペニア)も軽視できません。

タンパク質の低下は、犬の栄養失調につながり、筋力の低下だけでなく免疫力の低下や余命の短縮が不安要素になります。

近年、人間においてもサルコペニア防止のため、高齢であってもタンパク質の摂取が必要とされています。

犬も同様に、消化率の良い、良質なタンパク質を適量取ることが重要です。

愛犬に与える【栄養素が豊富】な食べ物は?

愛犬に与える【栄養素が豊富】な食べ物は?

iStock.com/gyro

総合栄養食のドライフードウエットフードなどは、犬のライフステージに合わせて欠乏症や過剰症が起こらないように配合されています。

そのため、ライフステージにマッチした総合栄養食を選んで愛犬に与えていれば、必要な栄養素を得ることができます。

手作り食をしている飼い主さんのためにも、犬が食べても大丈夫(アレルギーのケースを除く)で、それぞれの栄養素が豊富な食べ物をリストアップしておきましょう。

栄養豊富な食べ物①【タンパク質】

牛肉豚肉鶏肉などの肉類、

その他、魚介類大豆などの豆類、動物が効率よく使用できる必須アミノ酸バランス「アミノ酸スコア」が良いタンパク源は、肉やです。

栄養豊富な食べ物②【脂溶性ビタミン】

脂溶性ビタミン①【ビタミンA】

レバー、特に豚肉鶏肉

脂溶性ビタミン②【ビタミンD】

いわし、サーモン、さんまなどの魚類

キクラゲ、椎茸(しいたけ)、卵黄など。

ビタミンDはカルシウムの吸収を助けます。

脂溶性ビタミン③【ビタミンK】

納豆、青菜(小松菜ほうれん草などの野菜)、鶏肉わかめやひじきなど

脂溶性ビタミン④【ビタミンB1】

豚肉

なお、ビタミンB1は、ブドウ糖を中心としたエネルギー産生に関わります。

栄養豊富な食べ物③【カルシウム】

しらす、あゆ、わかさぎ、いわし、ししゃも()、ひじき、わかめ昆布

パセリ、モロヘイヤ、しそダイコン葉卵黄

栄養豊富な食べ物④【鉄】

豚肉レバー、鶏レバー、牛肉、青海苔、ひじき、鰹節(かつおぶし)など

栄養豊富な食べ物⑤【カリウム】

納豆大豆野菜、イモ類。

カリウムは、ナトリウムによる血圧上昇を抑制します。

栄養豊富な食べ物⑥【食物繊維】

豆類(インゲン豆、あずき、ひよこ豆,大豆)、大麦、オートミール、キクラゲ、ひじきなど。

栄養豊富な食べ物⑦【水溶性繊維】

大麦、オートミール、納豆大豆、小豆、エンドウ豆、さつまいもなど

【参照元】文部科学省「食品成分データベース」

犬に【栄養剤・栄養ドリンク】は与えてもいい?

犬に【栄養剤・栄養ドリンク】は与えてもいい?

iStock.com/ilona75

人間用の栄養剤、栄養ドリンク、栄養ゼリーなどは犬には与えないのが無難です。

人間用の栄養剤や栄養ドリンクには、犬には好ましくない成分であるカフェインやアルコールが含まれていたり、犬の体質に合うかわからない漢方薬成分が含まれていることがあるからです。

また、糖分が多く含まれているものもあるため、糖分を取りすぎないように注意しなければなりません。

もちろん、それらの成分が含まれていないことが確認できれば、食欲が低下していてエネルギーやタンパク質、ビタミンを効率よく摂取させるために、愛犬に与えても良い可能性があります。

もし与えるのであれば、目的別になってる製品の中から、愛犬には何が必要かを考えて与えてください。

吸い取って飲めるようになっているものは、中身を出して使用しましょう。

高齢犬用のペーストフードを問題なく食べるようならば、人間用の栄養ドリンクや栄養ゼリーなどを与える必要はありません。

愛犬に【手作りご飯】を与える際の注意点は?

愛犬に【手作りご飯】を与える際の注意点は?

iStock.com/gyro

手作り食で犬に必要な栄養素を満たすのは、なかなか大変です。

まず、手作りごはんの栄養バランスを考慮する際には、栄養計算を行いましょう。

最初に、愛犬の必要な1日エネルギー量を計算します。

それには安静時エネルギー要求量(RER)を計算し、それにライフステージ等似合わせた係数をかけて、1日の必要エネルギー量を計算します。

次にメインに使いたい食材を考えます。

たとえば、鶏ささみ大豆白米などと決めて用意をします。

それぞれの食材の栄養分も調べておくのがポイント。

特に肉は、動物種、部位、油の量により栄養成分が異なるので注意してください。

食品成分表にも部位ごとの成分が示されているので参考にしたいものです。

手作りごはん栄養の調整には、カロリーの後、タンパク質量を決めます。

たとえば、成熟・維持期犬のタンパク質/エネルギー比は、4.5〜6.5(g/100kcal)が良いとされているので、タンパク質源の鶏ささみ肉と大豆でどのように補うかを決めましょう。

脂肪の量も決めなければなりません。

エネルギー必要量の5〜15%を脂肪から取ると良いとされています。

そのため、大豆や肉に含まれる脂肪量を差し引き、残りを使用したい油、たとえばひまわり油などを計算して加えます。

そして残りのエネルギー量を、使おうとしている炭水化物源でエネルギーを計算して加えます。

ここまで行えば、3大栄養素と、エネルギーのバランスを取ったことになります。

けれども、ビタミンやミネラルはバランスが取れていない可能性があります。

そこで、不足分をさまざまな食材で加えていくことになるでしょう。

豚や鳥のレバーは多くのビタミンが含まれているので、補充するのには便利な材料です。

ただし過剰になりすぎないように注意しましょう。

特に、ビタミンAの過剰には要注意!

手作り食では必要な栄養素、特に微量のミネラルや水溶性のビタミンの欠乏症が起こりやすいので注意する必要があります。

必須脂肪酸やビタミンや微量ミネラルが欠乏することにより、それほど多くはありませんが栄養失調を起こすこともあります。

【参照元】『小動物の臨床栄養学 第5版』(マーク・モリース研究所発行、監訳:岩﨑利郎、辻本元)2014年インターズー

犬の【栄養】のまとめ

犬の【栄養】のまとめ

dimarik / PIXTA(ピクスタ)

愛犬に元気で長生きしてもらうためには、飼い主さんによる栄養管理が欠かせません。

ライフステージ別、体調によって、また手作りごはんを作るにあたっても、適切な栄養が摂取できるように気遣ってあげましょう。

愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。

正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。

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