【獣医師監修】犬は栄養失調で死亡する?症状や原因は?愛犬の栄養(カロリー)不足の予防・解決法!

犬も栄養失調になる可能性があり、最悪は死亡します。栄養失調は、健康を維持する上で必要なエネルギー不足(カロリー不足)や栄養素の摂取量の不足で生じます。愛犬の栄養失調の症状や原因、対処法をはじめ、栄養を不足させない方法を知っておきましょう!

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【獣医師監修】犬は栄養失調で死亡する?症状や原因は?愛犬の栄養(カロリー)不足の予防・解決法!
出典 : YUMIK / PIXTA(ピクスタ)
先生にお聞きしました
左向 敏紀 先生
【所属】
日本獣医生命科学大学 名誉教授
一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長

【資格】
獣医師

【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学

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犬の【栄養失調】の症状は?

犬の【栄養失調】の症状は?

k-boo / PIXTA(ピクスタ)

犬が栄養失調になると、

皮膚病(荒い毛並み・脱毛)

痩せる(削痩/さくそう)

筋肉の衰え(起立難渋、立てない)

骨格の異常

成長不良

貧血(ビタミンB12不足が原因)

便秘・下痢

食欲不振

傷の治りが遅い

空腹からの性格変化(凶暴性が増すなど)

食糞・異食

などの症状が見られます。

特に、栄養不良や栄養失調の初期症状として、脱毛などの皮膚症状が起こりやすいでしょう。

皮膚症状は、タンパク質の変性、必須脂肪酸の不足、亜鉛の摂取・吸収不足が引き金になって起こります。

骨の変形や、神経症状として痙攣(けいれん)、昏睡(ビタミンB1不足が原因)などが現れるケースもあります。

さらに、栄養失調が進んで犬が飢餓状態になると腹水がたまり、外観から腹部がぽっこり出ているのが確認できるようになるでしょう。

犬の【栄養失調】の原因は?

犬の【栄養失調】の原因は?

Satoshi KOHNO / PIXTA(ピクスタ)

犬が栄養失調になる原因はさまざまあり、栄養素の摂取不足、消化・吸収障害、代謝障害などが挙げられます。

体重低下を伴う栄養失調は、タンパク質不足など食事で必要なエネルギー(カロリー)が摂取できていないこと、特定の栄養素の不足は偏食や何らかの事情により特定の栄養素を含む食品が摂取できない場合に起こります。

犬の栄養失調の原因①【病気】

消化・吸収障害が原因で愛犬が栄養失調に陥る場合、消化管閉塞(誤飲)、食道拡張症、慢性下痢、肝臓病、腎不全、グルテン反応性下痢(イングリッシュ・セターに比較的多い)などの病気によるものがあります。

先天的な異常として、門脈体循環シャントがある犬も栄養失調になる可能性が高まります。

犬の栄養失調の原因②【ダイエット】

犬の栄養失調の原因②【ダイエット】

iStock.com/huettenhoelscher

肥満の愛犬をダイエットさせようとして失敗した結果、栄養失調に陥るケースも見られます。

体重の減量方法として「ドッグフードの量を減らせばいい」と、安易に考えないようにしましょう。

避妊・去勢手術後には、基礎代謝量が約25%低下します。

けれども、手術後に単純に食事の減量だけで適正体重を維持することは簡単ではありません。

犬 軽い運動 エネルギー消費

sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)

基礎代謝量が低下してきているので、軽い運動や活動を維持させたり増加させたりすることで、エネルギーの消費を増やす必要があります。

基礎代謝量を維持するには、筋肉量を減らさないことが重要です。

避妊・去勢後であっても、愛犬が摂取するタンパク質、ミネラル、ビタミンなどの必須栄養素が不足しないように心がけてあげてください。

カルシウム、リン、マグネシウムの低下は、筋肉を支える骨の弱体化を招くので要注意です。

犬の栄養失調の原因③【消化・吸収機能の低下】

犬の栄養失調の原因③【消化・吸収機能の低下】

iStock.com/TamaraLSanchez

高齢の犬では、うまく栄養が取れずに栄養不良の状態に陥りやすくなります。

老犬になると、消化機能の低下、膵臓機能の低下、肝臓機能の低下、慢性腎臓病などが起こってきます。

消化器や膵臓の機能が落ちると、食べたものが上手く消化・吸収できません。

肝臓の働きが落ちると、吸収したものを体内で効果的に使えなくなります。

慢性腎臓病を発症すると、食欲低下、タンパク質の代謝異常などが生じます。

これらの対応法として、老犬の筋肉が減らないように、消化の良いタンパク質を十分量与えましょう。

ただし、慢性腎臓病の場合はタンパク量の制限があるので獣医師に相談してください。

老犬の足腰に負担がかかりすぎないように気をつけながら、筋肉量が低下しすぎないように、ある程度の運動量を確保するようにもしたいものです。

犬の栄養失調の原因④【手作り食】

犬の栄養失調の原因④【手作り食】

wombatzaa / PIXTA(ピクスタ)

愛犬の手作り食で、カロリー量、タンパク質量、必須脂肪酸、ビタミン・ミネラルのバランスを最適な量で調整するのは実際のところ簡単ではありません。

必須のビタミンやミネラル、必須アミノ酸、必須脂肪酸のどれかひとつでも不足すると、愛犬が栄養失調を引き起こす可能性があります。

また、栄養不足だけでなく栄養過剰という問題も見逃せません。

リンが多く含まれている肉を多量に食べさると、愛犬の骨からカルシウムが溶け出してしまい、骨が弱くなることもあるので、犬に最適な栄養バランスに関してしっかり知識を得て、手作りごはんを与えるのが重要です。

犬の栄養失調の原因⑤【ジェネリックフード症候群】

犬の栄養失調の原因⑤【ジェネリックフード症候群】

sasaki106 / PIXTA(ピクスタ)

海外で報告されている栄養失調の原因に、「ジェネリックドッグフード症候群」があります。

これは、品質が悪いフードを犬が摂取したために、様々な栄養素の不足が起こるというもの。

日本では症例が確認されていませんが、ドッグフードを選ぶ際は信用あるメーカーの総合栄養食を選ぶようにしましょう!

【栄養失調】になりやすい犬種

【栄養失調】になりやすい犬種

yuki / PIXTA(ピクスタ)

栄養失調になりやすい犬種というのは、特に存在しません。

けれども、どんな犬種でも飼い主さんによる適切な給餌ができないと、栄養失調に陥る可能性はあります。

また、アイリッシュ・セターはグルテン感受性下痢になりやすいので、食事の管理により消化・吸収に問題を生じさせないことが大切です。

近年の日本の人気犬種は、トイ・プードル、チワワ、柴犬、ミニチュア・ダックスフント、ポメラニアン、パピヨン、シー・ズー、ヨークシャー・テリアなどの小型犬が多数を占めます。

一般社団法人 ジャパンケネルクラブ(JKC)の犬種標準では、チワワは1.5~3.0kg、ポメラニアンは1.8~2.3kg、ヨークシャー・テリアは3.1kgまでなどと理想体重が定められています。

けれども、これはあくまでも標準的なサイズであり、個体差が大きいのが実際のところ。

また、たとえばチワワで考えると、40kgから倍の80kgまでの人間が正常と判断可能なほど、幅があります。

チワワ 体重 栄養失調

あっスー / PIXTA(ピクスタ)

理想体重にとらわれず、体の基礎を作る成長期は、十分な栄養素が含まれたフードを食べさせてください。

チワワは1.5~3kgという固定観念から、1.5~3kgに収まるような食事量しか与えないと、栄養失調になる可能性があり危険です。

【参照元】一般社団法人 ジャパンケネルクラブ『全犬種標準書(第12版)』

犬の【栄養失調】の予防方法!

犬の【栄養失調】の予防方法!

Jiri Hera / PIXTA(ピクスタ)

愛犬が栄養不足や栄養失調にならないよう、飼い主さんは以下の予防法に取り組みましょう!

犬の栄養失調の予防方法①【BCSスコア】

愛犬の体重よりもBCSスコア(ボディ・コンディション・スコア)を参考にしながら、肋骨や背骨や腰骨が肉眼ではっきり確認できるほどには痩せさせないようにします。

犬の栄養失調の予防方法②【栄養バランス】

愛犬の手作り食は栄養バランスのすぐれた確実なレシピで作りましょう。

犬の栄養失調の予防方法③【総合栄養食】

総合栄養食と呼ばれるドッグフードを可能な限りメインに、手作り食は週に1回~半分までぐらいにしてください。

犬の【栄養失調】の対処法!

犬の【栄養失調】の対処法!

successo images / PIXTA(ピクスタ)

愛犬に栄養失調が疑われる場合、食事の面で工夫と改善を行いましょう。

けれども、正しい食事にすぐに戻すと、かえって体調が急に悪くなることがあるので注意が必要です。

まず、急なインスリン分泌が起こらないように、食事開始には炭水化物の少ない食事で開始します。

これは、カリウムやリンの低下、電解質バランスの異常を防ぐのに重要な対処となります。

また、栄養失調の対症療法として、初期の給餌量は安静時エネルギー要求量(RER)を越えないように注意して、タンパク質の量も少なめから始めるようにしてください。

犬の【栄養失調】の治療方法・解決方法!

犬の【栄養失調】の治療方法・解決方法!

つむぎ / PIXTA(ピクスタ)

愛犬に栄養失調が疑われる場合、獣医師は食事の状況、偏食の有無、摂取不足、身長・体重測定により、標準体重からどの程度低下しているのかを計算するのが一般的です。

栄養状態を評価する血液検査項目として、アルブミンというタンパクの数値も参考になります。

犬が栄養失調になっていると診断された場合、栄養を再度与え直すのが治療の基本。

犬 栄養失調 点滴

iStock.com/stockdevil

けれども、急激に栄養を補充すると、リフィーディング症候群と呼ばれる、筋肉虚弱・硬直、心不全、不整脈、発作、電解質異常を起こすかもしれません。

徐々に栄養を補充することが重要です。

腹水(低タンパク質血症)がある場合などは、愛犬の食事前に、動物病院でビタミンB1やカリウム、リン、マグネシウムなどのミネラルを点滴で補充しておくのが望ましいでしょう。

獣医師は、血清カリウム、リン、マグネシウムの値を監視しながら、栄養失調の治療を行います。

犬の【栄養失調】と間違えやすい病気は?

犬の【栄養失調】と間違えやすい病気は?

YAMATO / PIXTA(ピクスタ)

犬の栄養失調と間違えやすい病気には、慢性胃腸炎、炎症性腸炎、消化管の腫瘍があります。

心疾患やフィラリア症による胸水や腹水と、栄養失調による腹水も外観は似ています。

飼い主さんは、愛犬が痩せてきていると感じたり、ご飯を食べないといった異変に気づいたら、早めに獣医師に相談しましょう。

犬の【栄養失調】のまとめ

犬の【栄養失調】のまとめ

..mon / PIXTA(ピクスタ)

犬の栄養失調の原因は多岐にわたります。

愛犬が痩せてきたからといって、ただ単に食餌量を増やすだけでは栄養不足や栄養失調を解決できない場合もあるため、愛犬の体型や体調変化を飼い主さんはよく観察しておくようにしましょう。

気になる症状が見られたら、早めに獣医師に相談したいものです。

犬 飼い主

Claudia / PIXTA(ピクスタ)

犬たちは体の異変が、栄養失調、栄養素不足やエネルギー不足症状で起こっているという自覚症状はありません。

日頃から家族が愛犬の体調に気をつけて、それが食事から起こっている可能性があることを理解しておきましょう。

愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。

正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。

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