【獣医師監修】犬に炭水化物は必要?子犬や老犬、おやつや手作り食など、必要量と注意点を解説!
犬にはどのくらいの量の炭水化物が必要なのでしょうか?子犬、成犬、老犬といったライフステージで必要量が異なるのか?おやつや手作り食で炭水化物を与える際の注意点など、詳しく知って愛犬の食事管理と健康維持に役立てましょう。
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◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬に炭水化物は必要?
Natallia Boroda / PIXTA(ピクスタ)
犬に炭水化物は必要です!
炭水化物は、エネルギーとなる三大栄養素の中心です。
犬に炭水化物が必要な理由は?
iStock.com/alexei_tm
動物はエネルギーとしてブドウ糖(グルコース)をメインに使うため、その本体である炭水化物が体のエネルギーの中心として重要な役割を果たすからです。
動物が消化できる炭水化物であるデンプンは、ブドウ糖が連なった物質。
動物は炭水化物であるデンプンを膵臓(すいぞう)などから分泌されるアミラーゼなどを使って消化し、ブドウ糖として吸収します。
吸収されたブドウ糖は、全身のエネルギーとして使われます。
また、余剰なブドウ糖は、肝臓のグリコーゲンや、筋肉・脂肪組織にさまざまな形で蓄積されます。
炭水化物は不要という考えもあるようですが、炭水化物は体のエネルギーとして欠かせません。
エネルギーの観点からいう良い炭水化物とは、消化吸収しやすいデンプンと言えるでしょう。
ただし、消化吸収しやすくすぐに体のブドウ糖になるものは、インスリンが分泌しやすかったり、肥満しやすいという特徴も備えています。
iStock.com/kohei_hara
炭水化物(ブドウ糖)が不足すると、脂肪や、身体を構成している筋肉や臓器などのタンパク質をエネルギーとして使います。
そのような状態を悪液質と呼び、免疫が落ちて病気になりやすくなる恐れがあります。
そのため、炭水化物は不要という考えは肯定できるものではありません。
もし炭水化物を摂らないで低栄養状態に陥ってしまうと、体の脂肪を燃やすだけでなく、筋肉などのタンパク質を消耗してしまいます。
筋肉を守るためにも炭水化物は必要です。
肉食の野生動物は炭水化物を摂らない?
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肉食の野生動物は炭水化物を摂らないと言われることもあるようですが、正しくありません。
たとえば高度な肉食動物である猫族は、獲物を食するときは内臓から食べます。
この時、草食動物の消化器官に含まれる炭水化物や、肝臓に蓄積したグリコーゲン(ブドウ糖の蓄積体)を食べています。
犬との共通点も多いオオカミは狩りが得意ではないため、空腹時は植物も食べることが知られています。
犬は人間の伴侶動物として長く生活していたために穀物や炭水化物を食べる習慣もつき、炭水化物を分解する膵臓のアミラーゼ分泌が発達しました。
炭水化物は、主に穀物から取り入れられます。
犬に与える炭水化物、1日に必要な量は?
Nenov Images / PIXTA(ピクスタ)
犬が1日に必要な炭水化物量は、人間とほぼ同程度の摂取エネルギーである約50%とされてきました。
犬種によって、あるいは減量中や糖尿病の犬の療法食には、約50%よりも少ない割合が適しているのではないかとされています。
この目的のためのペットフードの炭水化物は、30~50%のものが多いでしょう。
また、腎臓病(慢性腎臓病)や肝臓トラブルに対する療法食は、低タンパク食が基本なので、炭水化物の割合や脂肪の割合が多くなっています。
ちなみに、ドライフードでは、穀物の炭水化物が吸収しやすいように、スナック菓子のように「α化」という工程を経て成型されています。
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炭水化物は重要な栄養素でありながら、フードのラベルにはほとんど記載されていません。
フードのラベルには、カロリーとタンパク質、脂質、食物繊維と書かれていることが多く、炭水化物の割合は、
【炭水化物の割合】
100-(水分+タンパク質+脂肪(脂質)+繊維+ミネラル)
という計算で求めることができます。
炭水化物は4kcal/gと言われていますが、それは消化吸収の良い「デンプン」のこと。
実際は与える炭水化物の種類によって、食後の血糖の上昇や量が異なります。
いわゆる「トクホ(特定保健用食品)」の製品でなじみのある難消化性デキストリン、フラクトオリゴ糖などは、同じ炭水化物でもそれぞれ1kcal/g、2kcal/gです。
これらの食後に血糖が上がらない炭水化物を混ぜることにより、血糖上昇は抑制できます。
ペットフードには食物繊維だけでなく、水溶性繊維を多く含んでいるために血糖の上がりにくい大麦などの穀物を使うこともあります。
子犬や老犬に必要な炭水化物の適量は?
Katamount / PIXTA(ピクスタ)
子犬の成長期に重要なエネルギー源となる炭水化物は、成長の時期にもよりますが、成犬の1.5倍ほど必要とされます。
なお、同様にタンパク質や脂肪は約2倍、ミネラルは約2.5倍が必要になります。
老犬(高齢期)のエネルギー・炭水化物の必要量は、成犬の20%減ぐらいで、大きく減らす必要はありません。
高齢期でも、犬によって活動量などは個体差があるので、常に体重やBCS(ボディ・コンディション・スコア)の変化を見ながら食事内容に気をつけましょう。
iStock.com/f8grapher
愛犬の筋肉が減って細くなってきたら、タンパク質だけではなく必ず炭水化物も与えるようにしてください。
炭水化物が不足してくると、体の筋肉やタンパク質をエネルギーとして使ってしまうからです。
高齢になったら、エネルギー、1日に必要な炭水化物量はしっかり与えるのが重要です。
犬に炭水化物を与える際のおすすめの食材やおやつは?
infinityyy / PIXTA(ピクスタ)
炭水化物を含む食材としては、小麦、米、とうもろこしといった穀類およびそれから作られる食品、さつまいも、じゃがいも、タピオカなどのイモ類、エンドウマメ、ひよこ豆、小豆などの豆類、かぼちゃなどの野菜、りんご、バナナ、みかんなどの果実類などがあります。
炭水化物を与えたい場合、これらの食材や、これらを含むおやつを与えると良いでしょう。
おすすめの食材やおやつ【穀物アレルギーの場合は?】
iStock.com/A8-dct
穀物アレルギーの犬には、フードの材料に穀物を用いない「グレインフリー」フードが適している可能性が高いでしょう。
穀物の代わりにタピオカなどのイモ類や、エンドウマメのなどの豆類が用いられています。
犬のドライフードに用いられる一般的な炭水化物源は小麦です。
穀物にはタンパク質も含まれており、小麦タンパク質に対するアレルギーを示す犬もいます。
大麦や米、とうもろこしにもタンパク質は含まれているため、これらのタンパク質に対してアレルギーを示す犬もめずらしくありません。
アレルギーの原因はタンパク質だからです。
おすすめの食材やおやつ【食物繊維】
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炭水化物にはエネルギーとなるデンプンのほか、単胃動物では消化吸収できない食物繊維(植物の細胞壁の成分)もあります。
糖やデンプンは細胞の中身で、とうもろこしや小麦などの皮が食物繊維です。
食物繊維は消化できませんが、食事のかさを増やせたり、血糖上昇の抑制効果や通便効果、吸収抑制効果などがあり、肥満している動物の消化の調整効果などがあります。
このような働きを持つ食物繊維は、ある意味「良い炭水化物」と言えるかもしれません。
肥満気味や肥満している愛犬には、炭水化物と一緒に食物繊維を与えるのがおすすめです。
痩せ気味の愛犬には、消化率のすぐれた、糖やデンプンを含む炭水化物の含有率が高いフードが適しています。
かぼちゃ、バナナ、りんご、キウイなどのフルーツをおやつに与えるのも良いでしょう。
犬に炭水化物を与える場合の注意点(手作り・サプリ)!
makotomo / PIXTA(ピクスタ)
手作りご飯の場合、タンパク質や脂肪を調整したあとに炭水化物を加えると良いでしょう。
【手作りご飯の適量】
まずは愛犬の理想体重、年齢、活動状況などから1日に必要なカロリー量(DER)を算出します。
それから、DERにおけるタンパク質量割合(4.5~10g/100kcal:愛犬の年齢状況により異なる)から、タンパク質の給与量を決めます。
さらに、加える脂肪の量を決めます。
ここでは、エネルギー必要量の5~15%を脂肪から摂取できるように計算と設計を行います。
その際には、リノール酸の割合が1.1%以上必要とされています(AAFCO)。
このあと、残りの必要エネルギーを炭水化物で加えるようにしてください。
脂肪量を多く加えると、炭水化物の必要量は減ってきます。
逆に脂肪量を少なくすると与える炭水化物量は多くなります。
なお、総合栄養食のライフステージ別ドッグフードには、その年齢に必要な炭水化物が適量含まれています。
パピー(子犬)用、シニア(高齢)用や超高齢犬用などのライフステージにマッチした総合栄養食を必要量食べられていれば、炭水化物が含まれるサプリメントなどをあえて足す必要はありません。
【参照元】『小動物の臨床栄養学 第5版』(マーク・モリース研究所発行、監訳:岩﨑利郎、辻本元)2014年インターズー
まとめ
おでか犬 / PIXTA(ピクスタ)
犬に炭水化物は必要で、エネルギー源として重要な役割を果たしています。
愛犬がライフステージにマッチした総合栄養食をしっかり食べていれば、炭水化物の必要量は摂取できるので、あえてトッピングやサプリメントで足さなくて大丈夫です。
手作り食の場合やおやつを与える際は、愛犬が必要とする総カロリーのうち、炭水化物の比率が高くなりすぎないように注意しましょう。
炭水化物に含まれるタンパク質に対してアレルギーを示す場合は、グレインフリーフードなどが活用できるかもしれません。
iStock.com/Solovyova
獣医師と相談のうえ、食事内容を考慮してください。
愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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