【獣医師監修】犬の体重が減少している。考えられる原因や症状、おもな病気は?
ごはんもこれまで通りなのに、急激に体重が増えたり減ったりすると飼い主は心配ですよね。犬の体重は、人間と同様に、摂取カロリーと消費カロリーのバランスによって変動します。ここでは、犬の体重が減る原因と考えられる病気について解説します。
更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
犬の体重が減少している【考えられる原因】
Africa Studio/ Shutterstock.com
消費カロリーが増えて、摂取カロリーを上回った
一般的に摂取カロリーより消費カロリーのほうが大きければ、人間と同じように犬の体重は減ります。
犬がカロリーを摂取するおもな方法は食事になりますが、犬が健康であり、食欲もきちんとあって体重が減った場合は、シンプルに「消費カロリーが摂取カロリーを上回った」と考えてよいでしょう。
運動量が増えた、筋肉が増えた
運動量が多いと、消費カロリーが増えるため、摂取カロリーより消費カロリーが多ければ、体重は減少します。
また、運動によって筋肉が増えると、基礎代謝が上がるため、消費カロリーはより増えます。
Javier Brosch/ Shutterstock.com
体温調整をする機会が多い
基礎代謝には、体温調整に使う消費カロリーもあります。
例えば、犬も摂取カロリーも同じという条件で、屋外で飼う場合と屋内で飼う場合を比較すると、屋外で飼う場合の方が体温調整をする機会が多くあるため、カロリーをより消費し、体重が減ると考えられます。
寄生虫
お腹の中に寄生虫がいると栄養を消費するため、体重が減ります。
多くの場合は下痢や嘔吐を伴いますが、症状が出ないこともあるため注意が必要です。
腫瘍
腫瘍が発症している場合も、腫瘍が栄養を奪うため、体重が減ります。
Africa Studio/ Shutterstock.com
消費カロリーは変わらず、摂取カロリーが減った
偏食や少食
食事を与えようとしても、原因不明の少食や、味の好みが合わないといった偏食が理由で、食事量が少ない場合には、摂取カロリーが少ないため、体重は減ります。
与えている食事量の不足
いつもと同じ食事量をあげていると思っていても、きちんと計量していないなら、食事の量は意外とバラツキがあるかもしれません。
もし毎回少しずつ「与えるべき量」より少なく与えていたとしたら、エネルギー摂取が不足することになります。
まずは1日分の適量を図ったうえで、小分けに与えてください。
Mariia Boiko/ Shutterstock.com
消化器系の疾患
慢性的な下痢や嘔吐が続いている場合には、栄養や水分の吸収が妨げられ、体重が減ります。
歯の疾患による食欲不振
歯周病や歯槽膿漏といった歯のトラブルが原因となって、食べたくても食べられない、または食欲がなくなることがあります。
この他の病気でも、病状が進行すると、食欲がなくなることも多く、結果として、体重が減少することになります。
食欲不振を放置しないなど、日ごろから愛犬の変化を気にしておくことが必要です。
【獣医師監修】犬の食欲不振・犬が食べない。考えられる原因や対処方法は?
犬の体重が減少している【こんな症状は要注意!】
Javier Brosch/ Shutterstock.com
犬の体重が減少するとともに、以下の症状が見られる場合は、すぐに病院で診てもらいましょう。
水をたくさん飲む
おしっこをたくさんする
糖尿病の可能性があります。
ThamKC/ Shutterstock.com
下痢が続いている
たびたび嘔吐する
消化器系の疾患の可能性があります。
ウンチや吐いたものを持参したり、スマホで撮影するなどして、なるべく早く獣医に診てもらいましょう。
犬の体重が減少している【この症状で考えられるおもな病気】
Boryana Manzurova/ Shutterstock.com
犬の糖尿病
犬の糖尿病(とうにょうびょう)とは、「インスリン」というホルモンがきちんと働かなくなったり、膵臓からの分泌量が減ることで、糖をエネルギーとしてうまく利用できなくなる病気です。
多飲多尿、体重減少のほか、重度になると脂肪の分解が増えるためにケトン体が増え、血液が酸性化し、食欲低下、元気消失、下痢や嘔吐を示します。
犬の消化管内寄生虫症
犬の消化管内寄生虫症(しょうかかんないきせいちゅうしょう)とは、回虫や条虫、原虫などの寄生虫が消化器官に寄生する病気です。
線虫はおもに虫卵の経口摂取によって感染しますが、条虫は中間宿主であるノミの経口摂取により感染します。
下痢や嘔吐、血便等の消化器系症状が現れます。
Mary Lynn Strand/ Shutterstock.com
犬の慢性腸炎(まんせいちょうえん)
犬の慢性腸炎(まんせいちょうえん)とは、慢性的に腸の炎症が続く病気です。
多くは、急性腸炎が慢性化して発症します。
周期的な下痢や嘔吐、体重減少、強い口臭、多飲多尿などが現れます。
不安やストレスが原因になることもあり、治りにくい病気です。
犬の慢性膵炎(まんせいすいえん)
犬の慢性膵炎(まんせいすいえん)とは、慢性的に膵臓に炎症が起きる病気です。
急性膵炎になった後、感染症や膵管の狭窄により、慢性膵炎に移行します。
食欲旺盛にもかかわらず、体重が減少し、粘土色をした強い臭いの下痢をするようになります。
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犬の歯周病
犬の歯周病(ししゅうびょう)とは、歯垢中の細菌が歯面に付着して、歯周組織(歯肉、セメント質、歯根膜、歯槽骨)が炎症を起こす病気で、3歳以上の成犬・成猫の約80%が歯周病をもっていると言われています。
口腔内の炎症が鼻腔内に影響すると、くしゃみや鼻水を引き起こすことがあります。
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