【獣医師監修】犬が小麦粉(生)を食べても大丈夫?アレルギーやグルテンは?実は栄養価も優秀!
小麦を挽(ひ)いた粉である「小麦粉」。うどんやパスタ、パンなどさまざまな食材の原料として使われます。その一方で、グレインフリーやグルテンフリーのドッグフードも販売されており、犬に小麦粉はよくないイメージもありますが、食べさせても大丈夫なのでしょうか?今回は、小麦粉の特長や注意点などを詳しく解説します。
- 更新日:
獣医師 MBA(経営学修士)
ヘリックス株式会社 代表取締役社長
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆ペット栄養学会 理事
◆一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
◆日本獣医生命科学大学 非常勤講師
◆帝京科学大学 非常勤講師
など
大学卒業後、小動物臨床に従事。
その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。
現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。
自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
目次
犬が小麦粉を食べても大丈夫!
iStock.com/Aleksandr Zotov
犬は小麦粉を食べても大丈夫です!
ペットフードの主原料としてもっともよく使われるのが、小麦。
犬用クッキーなどのおやつにも、小麦粉が使われていますね。
適切に調理した小麦粉であれば、犬は100%消化できることがわかっています。
当然、適切な量であれば犬が食べても問題ありません。
また、小麦粉を使ったパンやパスタ、うどん、パンケーキなどの食べ物を愛犬が盗み食いしてしまった、なんてこともあるかもしれません。
iStock.com/Julia_Sudnitskaya
小麦を含む製品自体は犬が食べても問題ありませんが、玉ねぎなど他に食べてはいけない食材が入っていなかったかも確認しましょう。
小麦粉は水分を吸い取るため、出血は止まるかもしれませんが、家の中で保存されている小麦粉には雑菌がたくさん入っているため、傷口に塗り込むことはあまりおすすめできません。
もし愛犬が出血してしまった場合には、無菌ガーゼやばんそうこうなどで押さえて、動物病院に行きましょう。
【子犬・老犬】が小麦粉を食べても大丈夫?
iStock.com/Firn
子犬や老犬が小麦粉を食べても大丈夫です!
特に子犬や運動量の多い犬などには、良質なエネルギー源になります。
ただし、子犬が初めて食べたときは、食べた後に下痢や嘔吐をしないか、子犬の様子をよく観察しましょう。
犬が【生】の小麦粉を食べても大丈夫?
masamimix / PIXTA(ピクスタ)
人間でも犬でも、生の小麦粉は消化によくありません。
生の小麦粉そのままを、体調が悪くなるほど大量に食べてしまう子はいないと思いますが、ちょっと目を離したすきに、焼く前のパンや、ゆでる前のうどん、パスタなどを食べられてしまうことはあるかもしれません。
生の小麦粉を大量に食べると、下痢や嘔吐をする可能性はありますが、一過性のものであればそれほど心配しなくても大丈夫です。
小麦粉の【特長】、犬への【効果】は?
小麦粉の特長・効果①【エネルギー補給】
iStock.com/Solovyova
小麦粉は炭水化物を多く含み、100gあたり約360kcalと高カロリーで、良質なエネルギー源になります。
ドッグフードの原料としてよく使われるのは、そのためです。
特に、若い犬や運動量の多い犬には、エネルギー源として炭水化物が必要です。
ただし、総合栄養食の表示があるドッグフードには、炭水化物が十分に含まれているため、さらに小麦粉をトッピングする必要はありません。
【参照元】文部科学省「食品成分データベース」
小麦粉の特長・効果②【五大栄養素】
iStock.com/Tom Merton
小麦粉には、三大栄養素である炭水化物、たんぱく質、脂質に加えて、五大栄養素であるビタミン、ミネラルも含まれています。
ビタミンは特にビタミンB類やナイアシン、ミネラルはリンやカルシウム、鉄、カリウム、ナトリウム、マグネシウムなどが含まれます。
また、第6の栄養素とも言われる食物繊維も豊富で、栄養価に優れた食品と言えます。
犬に小麦粉を与える際の注意点!
小麦粉の注意点①【アレルギー】
ホタル / PIXTA(ピクスタ)
いくつかの研究を見てみると、犬に多い三大食物アレルギーは、牛肉、乳製品、小麦がアレルゲンとされています。
ただし、小麦自体がアレルギーを起こしやすい食材というわけではありません。
ドッグフードにもっともよく使われている食材であり、アレルギーを起こしやすい1歳未満の子犬の時期からよく与えるので、結果的に小麦アレルギーが出やすいのです。
小麦粉や小麦粉を含む食べ物を食べた後に、体をかゆがる、皮膚の一部が赤くなる、下痢や嘔吐をするなど、体調に不安を感じたら、動物病院で相談しましょう。
小麦粉の注意点②【グルテン腸症(グルテン不耐症)】
iStock.com/agrobacter
「グルテンフリー」の表示があるドッグフードを見たことのある人も多いのではないでしょうか?
グルテンとは、麦類に含まれるたんぱく質の一種と水が合わさったもので、粘着性と弾性を持っています。
小麦粉には「薄力粉」「中力粉」「強力粉」がありますが、これはグルテンの量の違いによるもの。
お好み焼きや天ぷら、お菓子など、一般的な料理によく使われるのは、グルテンの量が少ない薄力粉です。
逆にグルテンの量が多く、もちもちとした食感を生み出せる強力粉は、パンやピザ、麺などの原料として使われます。
iStock.com/kireewongfoto
グルテンが注目されるようになったのは、おそらく、プロテニス選手のノバク・ジョコビッチがグルテンフリーの食事にしたところ、体調がよくなりテニスでも結果が出せるようになった、という話から。
ジョコビッチはグルテンに対する不耐症があったため、グルテンフリーの食事によって、体調が改善したのです。
グルテン不耐症や、グルテンに誘発される自己免疫疾患であるセリアック病は、欧米人に多く見られます。
グルテン不耐症やセリアック病とわかったら、小麦粉だけでなく麦類全般を避ける必要があり、例えば小麦粉を米粉や片栗粉で代用するなど、グルテン除去食を採用することになります。
iStock.com/Drago_Nika
犬では、アイリッシュ・セッターがまれにグルテン腸症と呼ばれる病気にかかることがあります。
これは人の難病であるセリアック病に似た病気で、その場合はグルテンフリーの食事を与える必要があります。
逆に言えば、グルテン腸症でない犬に対してグルテンフリーの食事を与える必要はなく、健康な犬にグルテンフリーの食事を与えたからといって健康増進につながるわけではありません。
ちなみに、「グルテンフリー」と混同されがちな「グレインフリー」は、穀物を使用しないで作られたフード。
小麦だけでなく、大麦、オート麦、米、とうもろこしなどを原材料として使っていないものですが、犬は穀物を消化できるので、基本的には穀物入りのドッグフードを与えても問題ありません。
特に腎臓病の犬には、高たんぱくな「グレインフリー」のフードはおすすめできないので、与える際には動物病院で相談しましょう。
犬に小麦粉を与える際の【適量(許容量)】は?
toitoi / PIXTA(ピクスタ)
小麦粉を愛犬に与える場合、どのぐらいが適量(許容量)なのでしょうか?
ペットフード公正取引協議会の指針によると、犬のおやつや間食は、原則として1日当たりの給餌量(カロリー)に対して、多くても20%までに抑えることが望ましいとされています。
小麦粉を主な原材料とする食パンを例にあげると、その実際の分量は、避妊・去勢をした健康な成犬の場合、以下です。
【犬に与えても良い食パンの目安量】
犬のサイズ(体重) | 1日のエネルギー要求量の目安 | 1日に与えてもよい間食の最大エネルギー量の目安 | 1日に与えてもよい食パンの最大重量の目安 |
---|---|---|---|
小型犬(5kg) | 374kcal | 74.8kcal | 28.8g(8枚切り1/2枚強) |
中型犬(15kg) | 854kcal | 170.8kcal | 65.7g(6枚切り約1枚) |
大型犬(30kg) | 1436kcal | 287.2kcal | 110.5g(4枚切り1枚強) |
食パンに換算すると、与えてもいい小麦粉の量は意外と少ないことがわかります。
食パンなど小麦粉製品を与える場合は、そのカロリー分の主食を減らし、肥満にならないように注意しましょう。
犬に与える小麦粉のまとめ
iStock.com/Chalabala
犬は小麦粉を食べても大丈夫です!
小麦粉はペットフードの主原料として最もよく使われており、適切に調理したものであれば犬は100%消化できるため、適量なら与えても問題ありません。
ただし、焼く前のパンや、ゆでる前のうどん、パスタなど、生の小麦粉を大量に食べると、消化不良で下痢や嘔吐をする可能性はあります。
その場合も、一過性のものであればそれほど心配はありません。
iStock.com/Professor25
小麦はドッグフードに含まれていることが多く、子犬の時期から食べる機会が多いため、食物アレルギーの原因になりやすい食材です。
とはいえ、成犬の場合、これまでに食べても問題が起こっていないのであれば大丈夫です。
小麦粉は炭水化物を多く含み、特に若い犬や運動量の多い犬にとって、良質なエネルギー源になります。
また、「たんぱく質」「脂質」「ビタミン」「ミネラル」「食物繊維」も含む栄養価に優れた食品と言えます。
iStock.com/Mypurgatoryyears
ただし、総合栄養食の表示があるドッグフードを主食として与えているなら、あえて小麦を含む製品をトッピングする必要はありません。
愛犬の健康を守れるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の食生活に取り入れてみてくださいね。
【併せて読まれている人気のおすすめ記事!】
↓ ↓ ↓
みんなのコメント
編集部のおすすめ記事
- 【獣医師監修】犬のエナメル質形成不全(未発達・欠損)原因や症状、治療法、治療費、予防対策は?
- 犬のエナメル質形成不全とは、歯の表面を覆うエナメル質の形成が不十分で、ところどころエナメル質が欠損し、歯の表面がでこぼこになったり、そ...
- 【獣医師監修】犬がプリンを食べても大丈夫? 適量は?容器や乳糖不耐症、アレルギーに注意!
- 卵と牛乳を混ぜて蒸したものの上に、甘いカラメルソースがかかったおなじみのおやつ、プリン。栄養があって犬のおやつにもよさそうですが、犬は...
- 【獣医師監修】犬の「根尖周囲病巣」原因や症状は?対処・治療法、治療(手術)費、予防対策は?
- 犬の根尖周囲病巣(こんせんしゅういびょうそう)とは、外からは見えない歯の根元の周囲組織に炎症が起こった状態を言い、肉芽腫や嚢胞(のうほ...
あなたも一言どうぞ
コメントする