【獣医師監修】犬が激しくまばたきしている・目をしょぼしょぼさせている。この症状の原因や病気は？

人間が目に違和感があると、まばたきをしたり、目を細めたりするように、犬にも目をぱちぱちさせたりしょぼしょぼさせる場合があります。すぐにおさまればいいのですが、それがずっと続く状態は普通ではありません。病気のサインかもしれないので、見過ごさないことが大切です。

更新日：2023.09.03

先生にお聞きしました

余戸（ようご）拓也先生

日本獣医生命科学大学獣医学科獣医外科（獣医師獣医学博士）
◇専門分野：「眼科・外科」

日本獣医畜産大学（現：日本獣医生命科学大学）大学院卒業

比較眼科学会・獣医眼科
アジア獣医眼科学会・獣医眼科

【資格】
◇獣医師

【所属】
◆比較眼科学会
◆公益社団法人日本獣医学会
◆一般社団法人日本獣医麻酔外科学会

【受賞歴】
比較眼科学会奨励賞受賞

現在、日本獣医生命科学大学獣医学部獣医学科獣医外科に所属。同大学付属動物医療センターの眼科獣医師。

獣医眼科学のプロフェッショナルとして、犬や猫の目の治療に従事している。好きなアーティストは葉加瀬太郎。

20頭以上の猫を救い供血猫を引退した中年のオスのサバトラ猫と、捕獲された地域猫でメスの三毛猫と同居中。

【著書】
「カラーアトラスよくみる眼科疾患58」interzoo
「眼科学―獣医学教育モデル・コア・カリキュラム準拠」interzoo
「伴侶動物の眼科診療」緑書房
「犬と猫の眼科診療Ｑ＆Ａ」緑書房
など

犬が激しくまばたきしている【考えられる原因】

Jakrin Chaisuriyawat/ Shutterstock.com

目に異物が混入した

人間は目に何か異物が入ると、目の中がゴロゴロして激しくまばたきをしてしまいますよね。

犬も同様で、目に砂やホコリ、花粉、草、虫、逆さまつげ、短頭種では鼻のシワの皮毛、シャンプーなどが入ったとき、違和感で目をまばたきすることがあります。

結膜や角膜の炎症

結膜炎や角膜炎、乾性角結膜炎（KCS・ドライアイ）など、結膜や角膜に炎症があると、目の痒みや痛みなどの不快感で激しくまばたきすることがあります。

MRAORAOR/ Shutterstock.com

寄生虫

寄生虫が動き回ると、違和感で目をしょぼしょぼさせたり前肢で目をこすったりするようになります。

この寄生虫が原因で結膜や瞬膜の炎症などの病気になるケースもあるので、なるべく早い時期に病院に連れて行って、取り除いてもらいましょう。

おとなしくしている犬であれば、点眼麻酔という局所麻酔で摘出可能です。

犬や猫の目に寄生する「東洋眼虫」という寄生虫が原因で目を激しくまばたきすることがあります。

この寄生虫は、体長8〜16mm程度で白い半透明の糸状をしています。

１匹だけというケースもありますが、場合によって夏から秋にかけては、10匹以上の東洋眼虫が犬の目の表面を動き回っていることもあります。

寄生虫が動き回ると、違和感で目をしょぼしょぼさせたり前肢で目をこすったりするようになります。

この寄生虫が原因で結膜や瞬膜の炎症などの病気になるケースもあるので、なるべく早い時期に病院に連れて行って、取り除いてもらいましょう。

おとなしくしている犬であれば、点眼麻酔という局所麻酔で摘出可能です。

犬が激しくまばたきしている【こんな症状は要注意！】

Susilull/ Shutterstock.com

犬が激しくまばたきしている状態に加え、以下の症状が見られる場合は、病気の恐れがあるので病院で診てもらいましょう。

眼をしょぼしょぼさせて、ぱっちりとまぶたが開かない

涙が異常に増えた

目やにが異常に増えた

目が赤い状態がずっと続いている

眼球で糸状のものが見える、動いている

犬が激しくまばたきしている【この症状で考えられるおもな病気】

Viktoriia Kotliarchuk/ Shutterstock.com

犬の結膜炎

犬の結膜炎（けつまくえん）とは、目の結膜に炎症が起きる病気です。

目の周りの毛による刺激、寄生虫や細菌やウイルスによる感染症、アレルギー、外傷などさまざまなことが原因となります。

まぶたが赤くなり、涙や目やにが出ます。悪化すると角膜炎になることもあります。

【獣医師監修】「犬の結膜炎」原因や症状、なりやすい犬種、治…

人間でもよく聞く「結膜炎（けつまくえん）」は、犬の目にも起こる病気です。「結膜」には、まぶたの内側を覆っている「眼瞼結膜」と、眼球の前側を覆っている「眼球結膜」と、瞬膜を覆う「瞬膜の結膜」があり、そのいずれにも発症する可能性があります。どんな病気なのか詳しく解説します。

犬の角膜炎

犬の角膜炎（かくまくえん）とは、黒目の表面を覆う角膜が炎症を起こす病気です。

まつげの異常、外傷や異物、細菌やウイルスの感染症、結膜炎、乾性角結膜炎などの疾患によって起こります。

痛みによる涙の増加、目やにが現れ、重症の場合は、角膜が白濁したり、潰瘍が生じます。

Susan Schmitz/ Shutterstock.com

犬のぶどう膜炎

犬のぶどう膜炎（まくえん）とは、虹彩（こうさい）、毛様体（もうようたい）、脈絡膜（みゃくらくまく）からなる目のぶどう膜に炎症が起きる病気です。

典型的には瞳孔が小さくなる、白目が充血し痛みが伴う場合は目をしょぼしょぼさせる、目やにや涙が増えるなどの症状が出ます。

続発性の緑内障を併発し、視覚障害が起きることもあります。一見すると濁りが、前房なのか水晶体なのかはわかりません。

【獣医師監修】「犬のぶどう膜炎」原因や症状、なりやすい犬種…

「ぶどう膜炎（まくえん）」という病名には、なじみのない人も多いのではないでしょうか？果物のぶどうの皮のように、眼球を裏打ちしていることから名付けられたとも言われる「ぶどう膜」。そこに何らかの原因で炎症が起こった状態を「ぶどう膜炎」と言います。その原因から予防法までを紹介します。

犬の緑内障

犬の緑内障（りょくないしょう）とは、眼球内部の圧力が高まり、再生のできない中枢神経の一つである視神経を圧迫することで失明してしまう病気です。

初期は無症状ですが、進行すると瞳孔が開いたままになり、瞳の中がオレンジ色や緑に見えます。

さらに悪化すると、眼球が大きくなり、飛び出したようになります。

残念ながら発症してしまうと、完治させることはできません。

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犬の乾性角結膜炎（KCS・犬のドライアイ）

犬の乾性角結膜炎（かんせいかくけつまくえん）とは、目の表面が乾き、角膜と結膜に炎症が起きる病気です。

犬の場合は、自分の免疫の異常で涙をつくっている涙腺や瞬膜腺（第三眼瞼腺）が壊されてしまい、涙が出なくなることが多いです。

その他、短頭種のように目が突出しているために、完全にまぶたを閉じることができず、角膜が絶えず露出して乾いてしまったり、涙の成分が悪いため涙が目をしっかりと濡らせなくなってしまったりすることでも起きることがあります。

そのほか、先天性や涙腺異常等に起因することもあります。

症状としては、目やにのほかに、結膜や角膜の充血や浮腫が現れます。

角膜潰瘍を引き起こすと重症化しやすく、最終的には失明する恐れもあります。