【獣医師監修】「ペットフードの基礎知識③」 ドッグフードの種類や選び方、注意点は?
さまざまな種類のドッグフードの中から、どれを選んだらよいのか迷ってしまう飼い主も多いのではないでしょうか? 愛犬の健康を守るために、今何をどう選ぶべきか?ここでは、ドッグフードの種類について解説していきます。
更新日:
獣医師 MBA(経営学修士)
ヘリックス株式会社 代表取締役社長
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆ペット栄養学会 理事
◆一般社団法人ペットフード協会 新資格検定制度実行委員会 委員長
◆日本獣医生命科学大学 非常勤講師
◆帝京科学大学 非常勤講師
など
大学卒業後、小動物臨床に従事。
その後、ペットフードメーカーに入社し、小動物臨床栄養学に関する研究、情報発信を中心とした活動を行う。
現在は、獣医療・教育関連のコンサルタントとしての活動。ペットの栄養に関する団体の要職を務める。
自宅で9頭の猫と暮らす愛猫家。
ドッグフード【目的別の分類】
Jiri Hera / PIXTA(ピクスタ)
ペットフード公正取引協議会では、2015年7月に改正した「ペットフードの表示に関する公正競争規約」の中で、ペットフードをその目的から「総合栄養食」「間食」「療養食」「その他の目的食」の4つに分類しています。それぞれの特徴を紹介します。
ペットフード「総合栄養食」
iStock.com/cmannphoto
総合栄養食は、犬に主食としてあげることを目的に作られたフードです。
「ペットフードの表示に関する公正競争規約」によって定められている「栄養成分等の基準」を満たすもので、長期間にわたる給与試験やさまざまな検査を合格したものだけが「総合栄養食」と表示できます。
総合栄養食は、犬の年齢や成長段階のカラダに必要とされる栄養素をバランスよく含んでいるものなので、基本的にはこのフードと水だけで愛犬の健康を維持することができます。
ペットフード「間食(おやつ・スナック)」
jonnysek / PIXTA(ピクスタ)
人間でいう「おやつ」にあたるもの。食事以外の間食、ご褒美として愛犬にあげるフードです。
犬が喜ぶ嗜好性の高いものが多く、愛犬とのコミュニケーションにも役立つものです。
「ペットフードの表示に関する公正競争規約」では、「間食」のほかに「おやつ」や「スナック」という表示も許されています。
ただし、主食以外に間食をたくさんあげてしまうと、カロリーオーバーになったり栄養が偏ったりするので、与え方には注意が必要です。
愛犬の年齢や成長段階などから算出された1日の必要エネルギーの20%以内に抑えることが推奨されています。
ペットフード「療養食(特別療養食、食事療法食、食餌療法食)」
iStock.com/Marieclaudelapointe
病気の治療または健康状態にあるペットの栄養学的サポートをする目的で、栄養成分が調整されたフード。
「療養食」あるいは「特別療養食」「食事療法食」「食餌(しょくじ)療法食」と表示されるものです。
例えば、「食物アレルギー用の除去食」「慢性腎臓病用」「減量用」「尿路結石用」などがあります。
その目的を正しく理解し、獣医師の指導のもとで使用することが大事です。
病状の改善具合によっては、ある一定期間後に食事を変える場合もあるので、素人判断で愛犬に食べさせたりやめたりしてはいけません。
ペットフード「その他の目的食(副食、サプリメント、栄養補完食)」
iStock.com/undefined undefined
特定の栄養素を補給または調節したり、食欲を増進させるためのフードで、総合栄養食や間食、療養食以外のフードを指します。
おかずタイプやふりかけタイプの「副食」、特定の栄養素やカロリーを補給するための「サプリメント」や「栄養補完食」などがあります。
これらのフード単体では栄養素のバランスが取れていません。
パッケージに「総合栄養食と一緒に与えてください」と注意書きが加えられているので、確認してして正しく使いましょう。
サプリメントはどんな時に必要?
iStock.com/Fantasista
飼い主自身の健康志向が高まる近年、愛犬にもサプリメントを与えたいという傾向が見られます。
しかし、基本的に総合栄養食を適量与えられている健康な犬は、栄養が不足することはありません。
人間のような「普段の食事で足りない栄養素をサプリメントで補う」という考え方は成り立たないのです。
また、サプリメントを与えても、病気や不調の予防になるわけではありません。
ただし、飼い主が手作りフードを与えている場合は、特定の栄養素が不足する可能性も考えられます。
また、病気によっては、ある種の栄養素が不足したり、さらに多くの栄養素を必要とするケースも考えられます。
そうした場合は、獣医師に補う必要のある栄養成分を相談したうえで、サプリメントを選ぶとよいでしょう。
ドッグフード「総合栄養食」の形状
iStock.com/SharafMaksumov
愛犬に主食として与える「総合栄養食」には、さまざまな形状・食感のものがあり、水分を含んでいる量や形状によって4タイプに分類されます。
「総合栄養食」と表示されているものであれば、形状の違いはあっても犬の成長・健康維持に必要な栄養素をバランスよく含んでいるので、どのタイプを選んで大丈夫です。
ドライフード
iStock.com/yellowsarah
ドライフードとは、水分含有量が10%程度の粒状のフードで、カリカリとした食感。
粒の大きさが大小いろいろあるので、愛犬の口の大きさや歯の状態を考えて選べます。
重さに対して栄養価が高く、保存がきくので経済的でもあります。
注意したいのは、水の用意を忘れないこと。
ドライタイプのフードから水分は摂れないので、いつでも新鮮な水が飲めるようにしてあげましょう。
なお、欧米メーカーのフードにはビスケットタイプの総合栄養食が多く見られますが、国産品でビスケットは間食にあたるものが多く見られます。
ソフトドライフード
keiphoto / PIXTA(ピクスタ)
ソフトドライフードとは、水分含有量25〜35%程度で、加熱発泡処理されているフードなので、適度な弾力があります。
ドライフードが食べにくい犬でも食べやすく作られています。
ソフトドライフードは、ドライタイプに比べると水分が多い分、保存性は高くないので、開封後は早めに使い切るように心がけましょう。
セミモイストフード
makotomo / PIXTA(ピクスタ)
セミモイストフードとは、「ソフイトモイストフード」とも呼ばれています。
水分含有量は25〜35%程度で、ソフトドライフードと同様ですが、発泡処理をせず、押出成型機で造られています。
セミモイストフードは、羊羹のように軟らかくキメが細かいのが特徴です。
糖質が多く含まれているものもあるので、糖尿病を患っている犬などに与える場合は注意が必要です。
ウェットフード
ウェットフードの水分含有量70〜80%程度で、軟らかく風味がよいので、高齢の犬でも食べやすいです。
ただ、「ドライフード」に比べるとやや割高です。
ウェットフードは、栄養だけでなく水分も同時に摂取できるメリットもあります。
缶詰、レトルトパウチ詰、アルミトレイ詰、プラスチックカップ詰など、さまざまな包装容器があり、缶や封を開けるまで風味が保たれています。
ウェットフードは、水分が多い分、傷みやすいので、開缶・開封したら別の容器に移し替えて冷蔵庫で保存し、その日のうちに使い切るようにします。
ドッグフード「総合栄養食」の選び方
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ライフステージに合わせて選びましょう
人間が赤ちゃんから子供、大人へと成長するうえで、カラダに必要な栄養素のバランスやエネルギー量が変わっていくように、犬のカラダも生まれてから高齢期を迎えるまで、必要とする栄養素とカロリーは変化していきます。
ですから、主食である総合栄養食も、ライフステージに合わせて選ぶことが大切です。
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フードごとに適正な年齢目安が設定されています
ペットフード公正取引協議会では、成長期によるフードの区別を「妊娠期/授乳期」「幼犬期/成長期またはグロース」「成犬期/維持期またはメンテナンス」の3段階に分けています。
「老齢期用」など、それ以上に細かく分類されているフードは、統一基準によるものではなく、各メーカーが同時の研究に基づいて分けたものになります。
大まかなドッグフードの切り替え時期は、下記を目安にしてください。
◆生後30日程度→母乳またはミルク
◆〜12カ月齢(妊娠・授乳期)→成長期用のフード
◆1〜6歳→成犬期用のフード
◆7歳以上→高齢期用のフード
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機能に特化したドッグフードも
体重のコントロールや歯石の蓄積を防ぐなど、健康状態に配慮したドッグフードもあります。
主食として与えるなら、パッケージの表示で総合栄養食であること確認して選んでください。
ドッグフードの機能別分類はおもに以下の3つです。
体重に配慮したドッグフード
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体重に配慮したドッグフードとは、高たんぱく質・高繊維・低脂肪に調整されたペットフードです。
犬の肥満防止や体重のコントロールのために作られています。
歯石対応のドッグフード
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歯石対応のドッグフードとは、噛むことで歯垢や歯石の蓄積を防ぐように考えられたフードです。
特殊な粒子を配合したものや、特殊な形状をしたものがあります。
ほかにも、消化吸収がよく胃腸への負担があまりかからないもの、毛艶の維持に役立つと考えられる栄養素を加えたフードがあります。
ドッグフード【与える時の注意ポイント】
愛犬の状態や嗜好性をきちんと把握しましょう
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犬は人間より嗅覚が鋭く、味覚や質感の感じ方は人間とは異なり、当然ながら、好みには個体差があります。
また、動物は本来、今まで食べたことのない食べ物には慎重になるものですが、人間と一緒に生活してきた犬は、飼い主から与えられる食べ物はそれほど警戒することなく食べてくれます。
そうした習性も踏まえながら、愛犬のカラダの大きさや歯の状態、体調、そして経済性も考えたうえで、いろいろなフードを与えてみて愛犬の好みを把握しましょう。
ドッグフードは定期的に変えるべき?
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犬の成長期のはじめにさまざまなドッグフードを食べさせることは、好き嫌いのない犬を育てるうえで有効です。
けれども、それ以降はいったんドッグフードを決めたら、健康上の理由などで変える必要ながない限り、同じものを与えましょう。
1〜2回食べ残したからといって、すぐに新しいドッグフードに変えるのおすすめできません。
頻繁にドッグフードを変えると、常に新しいものを期待して目の前のドッグフードを食べたがらなくなるかもしれません。
なお、フードを変える必要がある場合は、これまであげていたものと同じような栄養成分のものを選ぶとよいでしょう。
これまで食べていたドッグフードと栄養成分が大きく違うと、体調に変化をきたす場合があるので注意してください。
【ドッグフードの量】1日の総量を守ることが大切
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主食として与えるドッグフードの量は、犬の体重や年齢をもとに計算します。
総合栄養食には、1日当たりの給与量が表示されていますから、それを目安にしましょう。
なお、水分量の多いフードのほうが、食べるスピードが速くなる傾向があります。
適量をあげたのに、あっという間に食べきった様子を見て「量が足りてないのでは?」と思ってしまうことも。
いずれのタイプもフードに表示されている適量を守って与えることが大切です。
ここで気をつけなければならないのは、間食(おやつ)をあげる場合です。
総合栄養食に表示されている目安の量は1日の総量です。
食べ物の与えすぎは、肥満や生活習慣病の原因になる心配があります。
おやつをあげる場合は、その分を差し引いて主食の分量を量ってください。
【ドッグフードを与える回数】ライフステージに合わせて回数を調整
Masarik/ Shutterstock.com
犬の食事の回数は、「1日1回」「朝晩2回」「朝昼晩3回」どれが好ましいのでしょうか?
医学的には、何回にするのがベストなのかは証明されていません。
もともと犬の先祖は、野生で狩りによって獲物を手に入れていたので、毎日食べられるわけでもなく、1日のうちでいつ食べるかも定かではありませんでした。
それが、人間と一緒に暮らすようになり、人間から食事を与えられるようになって、毎日、きちんと食事を摂るようになったわけです。
近年は室内で飼われている犬も多いので、人間の生活に合わせて朝と晩の2回に分けて食事を与えるケースが多いようですが、犬のライフステージによって、一度に与える分量と回数は変えるとよいでしょう。
子犬の場合
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子犬の場合、まだ胃が小さくて、一度にたくさんの量を食べられないので、少量ずつ回数を増やしてあげます。
生後3カ月から1歳までは、1日分の食事量を3回に分けてあげましょう。
子供を出産して授乳している母犬
Nadya Chetah/ Shutterstock.com
子供を出産して授乳している母犬の場合は、普段より多くの栄養とエネルギーを必要としているので、1日数回に分けて、栄養補給をしてあげるようにします。
肥満が懸念される犬の場合
Monica Click/ Shutterstock.com
肥満が懸念される犬の場合は、少量頻回がおすすめです。
食事の回数を増やすと、満腹感が得やすく、食物の消化吸収にエネルギーを使う回数も増えるので、肥満予防に役立ちます。
ただし、1日に与える食事の総量はあらかじめ量って取り分けておき、その中から小分けするようにします。
与えるたびに量っていると、誤差が積もって、意外と結構なカロリーオーバーにつながりかねないからです。
【ドッグフードを与える食器】食べた量がわかるように同じ食器で
Olena Yakobchuk/ Shutterstock.com
食器の材質や形にとくに決まりはないのですが、食事の量の目安がわかるように、毎日毎食同じ器を使いましょう。
同じ器を使っていれば、食べ残しの量もわかりやすく、健康状態の観察にも役立ちます。
ちなみに、食べ残した時はそのまま放置せず、一定時間で片付けてしまいましょう。
そして、一食ずつ食器をきれいに洗い、清潔に保つことを心がけてください。
食事の場所・時間は一定にしましょう
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愛犬が落ち着いて食事ができる場所を決めてあげましょう。
都度違う場所で食事をあげると、食べなくなる場合があります。
また、食事をあげる時間も、できるだけ毎日同じ時間にしましょう。
決まった時間に同じ場所で、同じ食器でご飯を与えることで、正しい食習慣が身につきます。
人間の食事に対する考え方と異なる点も多々あります。正しく理解して、愛犬の「健康的な生活」を支える食事を与えるようにしましょう。
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