【獣医師監修】犬の膣(ちつ)から出血している。考えられる原因や症状、おもな病気は?
発情期に見られる症状とは思いつつ、ある日突然、犬の膣から血が出ていたら、驚いて心配になってしまうこと方もいると思います。犬の膣から出血が見られる場合、どんな原因があるのでしょうか?ここでは、犬の膣(ちつ)から出血している場合に考えられる原因や症状、おもな病気について解説します。
更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
犬の膣から出血している【考えられる原因】
Jong42/ Shutterstock.com
発情出血(生理現象)
犬の発情出血は、一般的に「生理」と呼ばれることもありますが、人間とは仕組みがまったく違うので、ここでは「発情出血」と呼ぶことにします。
人間の生理は「性周期をリセットする」合図ですが、犬の発情出血はオスを引き寄せるための、いわば「発情期が始まる」合図です。
発情期は、正常であれば、年に1~2回訪れます。
通常、出血量が多い時期は10日間前後です。その期間が過ぎて、出血が少なくなってきたあたりから本当の発情期が始まり、1週間~10日続きます。
ただし、初めての発情のときには出血が1カ月から2カ月続くことがあります。
なお、避妊手術をしていないメスの犬に発情出血が起きるのは正常なことなので、心配ありません。
オスに発情期はない!?
オスに発情期があると思っている飼い主さんも多いですが、オスはメスの発情に反応して発情します。
そのため、オスには発情期といった性周期はありません。
Hannamariah/ Shutterstock.com
子宮の細菌感染
子宮から出るオリモノの色はさまざまですが、血の混ざったような濃い赤色になり、いわゆる血膿(ちうみ)といったものが出る場合には子宮蓄膿症が疑われます。
子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)は、子宮に膿がたまる病気ですが、進行すると炎症がかなり強くなり、命の危機にかかわります。
そもそも発情期などで子宮の入り口が開いているときは菌が入りやすいのですが、若い頃は活発なカラダの防御機能が守ってくれています。
ところが7歳を超えたあたりからカラダの防御機能が落ちるため、細菌に感染してしまうことがあります。
その場合には、子宮内膜炎を起こしていることがほとんどです。
初めての発情でも子宮蓄膿症になってしまう犬もいますので、注意が必要です。
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生殖器官の腫瘍
悪性良性にかかわらず、子宮や卵巣にできた腫瘍で出血が見られる場合があります。
犬の子宮がんや卵巣がんはあまり多くはないのですが、卵胞嚢腫(らんぽうのうしゅ)は、発情周期が短くなり、頻繁に発情出血を起こすような症状が見られます。
また、きのこ状のできものが膣の中にできる膣ポリープも、出血をともなうことがあります。
犬の膣から出血している【こんな症状は要注意!】
matthewcreid/ Shutterstock.com
犬の膣から出血しているのと同時に、以下の症状が見られる場合は、とくに注意が必要です。
発情出血が終わらない
発情期が終わったのに1カ月~1カ月半ほどの間、オリモノや出血が見られる
短い期間で何度も発情出血が起こる
いずれも異常のサインです。すぐに動物病院へ行きましょう。
膣からきのこ状のポリープが出ている
膣ポリープである可能性が高いです。
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発情出血は正常な生理現象です。
発情出血の期間には食欲が落ちたり、元気がなくなる犬もいますが、膣からの出血が長く続く、出血の量が減らない、出血の量が多くなるなどの場合には、病院で診てもらったほうがよいでしょう。
なお、受診の際は、出血やオリモノがいつから見られたのかなど、メモしておくと診察に役立ちます。
犬の膣から出血している【この症状で考えられるおもな病気】
YAKOBCHUK VIACHESLAV/ Shutterstock.com
犬の子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)
犬の子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)とは、子宮が細菌に感染し、膿がたまる病気です。
発情後の黄体期では免疫が低下するために、感染し、発症します。
多飲多尿、腹部膨満、外陰部の腫れ、そして陰部からの膿の排出も見られることがあります。
放置すると子宮内から身体へ影響をおよぼす毒素や細菌そのものが血流にのって全身に広がり、多臓器不全を起こして命を落とす危険もあります。
犬の卵胞嚢腫(らんぽうのうしゅ)
犬の卵胞嚢腫(らんぽうのうしゅ)とは、卵胞が排卵されずに卵巣で育ち、卵巣が肥大する病気です。
犬の卵巣は2つあり、片側のみが肥大する場合と両側が肥大する場合があります。
症状は現れないことも多いですが、発情期が頻繁に来たり、発情期が延長したり、乳腺の過形成などを引き起こすこともあります。
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犬の膣ポリープ(膣の腫瘍)
犬の膣(ちつ)ポリープとは、膣に腫瘍(ポリープ)ができる病気です。
エストロゲンというホルモンが影響していると言われ、腫瘍が大きくなると膣の外へ出てきてしまいます。
平滑筋肉腫や扁平上皮癌といった悪性腫瘍の場合もあるため、注意が必要です。
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