【獣医師監修】犬が手足を気にしている。考えられる原因や症状、おもな病気は?
ふと見てみると、愛犬が手足をよく舐めたり浮かせている。犬が手足を気にする仕草には、どんな理由があるのでしょうか。愛犬の普段の仕草をよく見ているからこそ気づく小さなサイン。ここでは犬が手足を気にしている時に考えられる原因や病気を解説します。
更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
犬が手足を気にしている【考えられる原因】
iStock.com/shotbychatty
言葉を話したり手指を器用に使えない犬にとって、犬が手足を気にしている場合にとる行動は、舐めたり、噛んだり、特定の手足を浮かせたりすることです。
普段とは違う愛犬の様子には、次のような原因が考えられます。
セルフグルーミング
リラックスした様子で犬が手足を舐めている場合に考えられるのは、「セルフグルーミング」と呼ばれる、お手入れです。
この場合は、長時間または頻繁に舐めているのでなければ、さほど気にしなくても大丈夫です。
iStock.com/dimarik
常同行動
特に理由もなく、同じ行動を繰り返すことを「常同行動」と言います。
犬は「常同行動」のひとつで、手足を繰り返し舐めることがあります。
通常は、ある程度の時間で収まりますが、長時間あるいは一心不乱に手足を舐めている場合には「常同障害」の可能性があるので、獣医師へ相談しましょう。
手足の皮膚炎
アレルギーや膿皮症(のうひしょう)、ノミやダニの感染による皮膚炎の痒みが原因で、犬は手足を舐めることがあります。
手足をしきりに舐めたり、噛んだりすることで、炎症が悪化する可能性があるため、早めに病院へ連れて行きましょう。
Mari_art- stock.adobe.com
手足の外傷や火傷
皮膚炎と同様に、外傷や火傷が原因で、犬は手足を気にすることがあります。
たとえば、爪が割れていると、違和感を感じて手足を気にする仕草を見せます。
愛犬の様子を見るときは、手足の肉球だけでなく肉球と指の間など、細かく見てあげましょう。
また、暑い季節のアスファルトは肉球を火傷し、赤くなったり皮が剥けることがあります。
舗装したてのアスファルトなどは、飼い主も案外気づかないため、注意が必要です。
人間のように靴を履いていない犬の手足はデリケートなので、特に夏の暑い時間の散歩は気を付けなければいけません。
Maria Sbytova / PIXTA(ピクスタ)
筋肉や骨、関節の病気
愛犬が手足を舐めたり特定の手足を浮かせていたりと、手足を気にする様子が見られるのに、皮膚の炎症や外傷などが見当たらない場合は、捻挫や骨折をはじめ、筋肉や骨、関節の腫瘍や疾患が考えられます。
愛犬が手足を触られるのを嫌がる、散歩に行きたがらない、歩き方がおかしいなど、いつもと違う行動や反応がないか注意しましょう。
【獣医師監修】犬が足を舐める・噛む。この症状から考えられる原因や病気は?
愛犬のしぐさを眺めていると、時々足を舐めたり、噛んでみたりすることがあります。このサインは前足や後足、舐める・噛むタイミングによってさまざまな原因が考えられますが、時には重大な疾患につながることも。愛犬の様子をよく観察して、重要なサインを見逃さないようにしましょう。
犬が手足を気にしている【こんな症状は要注意!】
iStock.com/chendongshan
犬が手足を気にしているのと同時に、以下の症状が見られる場合は、動物病院で診てもらいましょう。
ずっと手足を噛んだり舐めたりしている
できものがある
炎症やかさぶた、皮がめくれている
皮膚炎を発症している可能性が高いです。
iStock.com/marcoventuriniautieri
傷や出血が見られる
歩き方がおかしい
触られるのを嫌がる
外傷や捻挫、骨折のほか、関節や骨、筋肉などに痛みが発生している可能性があります。
普段から愛犬の手足の仕草を観察しておくと、いち早く異変に気づくのに役立ちます。
単なるクセだと決めつけず、日常的によく観察しておくことが大切です。
犬が手足を気にしている【この症状で考えられるおもな病気】
iStock.com/olaser
犬の表在性膿皮症
犬の表在性膿皮症(ひょうざいせいのうひしょう)とは、毛穴や皮膚に、細菌が感染して起きる皮膚疾患です。
痒みを伴う丘疹やかさぶたができ、その後、膿疱(のうほう)や脱毛、フケが現れます。
犬のアトピー性皮膚炎
犬のアトピー性皮膚炎(あとぴーせいひふえん)とは、ダニや花粉などの環境中のアレルゲンが原因で皮膚炎を起こす病気です。
強い痒みで体をかいたり、舐めるため、皮膚が傷つき、ただれることもあります。
悪化すると、皮膚が厚く硬くなり、色素沈着も起こります。
iStock.com/wichatsurin
犬のツメダニ症
犬のツメダニ症とは、イヌツメダニの寄生によって起きる皮膚炎です。
痒みとともに大量のフケが出るのが特徴で、痒みのために体をひっかくので皮膚が赤くただれることもあります。
人畜共通感染症のため、飼い主に移らないように注意が必要です。
犬のノミアレルギー性皮膚炎
犬のノミアレルギー性皮膚炎(せいひふえん)とは、ノミのアレルギーによる皮膚炎です。
ノミが体表から吸血する際の唾液がアレルゲンとなり、痒みや赤い発疹、脱毛を引き起こします。
とくに、症状が出やすいのは、背中から腰にかけてです。
iStock.com/Willee Cole
犬の肢端舐性皮膚炎
犬の肢端舐性皮膚炎(したんしせいひふえん)とは、前足の皮膚を舐め続けることで炎症が起きる病気です。
アレルギーやアトピー、外傷、虫刺され、ストレスなどが原因で、足を舐めるようになり、脱毛が見られることがあります。
犬の熱傷(火傷)
犬の熱傷(ねっしょう)とは、熱や化学薬品などによって皮膚や粘膜に損傷が起きた状態です。
軽度であれば皮膚に赤みが出る程度ですが、重症になると、皮膚が変色し、表面がはがれます。
広範囲の熱傷の場合、命を落とす危険もあります。
iStock.com/Liliboas
犬の骨折
犬の骨折(こっせつ)とは、骨にひびが入ったり、折れた状態です。
骨折すると骨自体の損傷だけでなく、内臓や皮膚を損傷し、重症化する恐れがあります。
交通事故や落下事故、外傷だけでなく、食餌やホルモン異常が原因になることもあります。
犬の関節炎
犬の関節炎(かんせつえん)とは、関節軟骨の炎症のため、関節に痛みが生じ、重症になると歩行障害が起きる病気です。
慢性の疾患ですが、症状に波があり、痛みがある時には動きたがらず足をかばって歩くようになります。
加齢によるもの以外に、感染症や免疫性疾患が原因になることもあります。
肥満が症状を悪化させることもわかっているので、体重管理には十分に気をつけましょう。
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