【獣医師監修】犬の膣(外陰部)が赤い(おりもの・膿)。考えられる原因や症状、主な病気は?
「犬の膣がいつもより赤い!?」「 普段からこんな色だったかな…?」 犬の膣(外陰部)が赤い時、毎日気にして観察することがなかなかない部位なだけに、戸惑ってしまう飼い主は多いようです。犬の膣(外陰部)が赤い場合に考えられる原因や症状、主な病気について解説します。
投稿日: 更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
目次
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」【考えられる原因】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」原因①【トリミング後のカミソリ負け】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」原因②【発情期(生理現象)】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」原因③【外陰部の腫瘍】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」原因④【子宮の細菌感染】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」原因⑤【膣が外に出ている】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」【こんな症状は要注意!】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」【この症状で考えられるおもな病気】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気①【子宮蓄膿症】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気②【卵胞嚢腫】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気③【膣ポリープ(膣の腫瘍)】
- 「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気④【腟脱】
「犬の膣(外陰部)が赤い」【考えられる原因】
MitchyPQ/ Shutterstock.com
飼い主が愛犬の膣(ちつ)の内部を見ることはなかなかできないので、「犬の膣が赤い」で検索された方がイメージしている「膣」は、犬の「外陰部」を指していることが多いです。
ここでは、膣の外陰部が赤くなる原因や症状、主な病気などについて解説していきます。
「犬の膣(外陰部)が赤い」原因①【トリミング後のカミソリ負け】
Helen Sushitskaya/ Shutterstock.com
トリミングでは、肛門や陰部周辺の毛をバリカンでカットすることがあります。
バリカンを当てると、犬の皮膚が柔らかいので、カミソリ負けを起こしてしまい、炎症で赤くなることがあります。
炎症が起きると、犬は違和感から頻繁に舐めたり、おしり歩きをして患部を擦るため、炎症がさらに悪化する可能性があります。
トリミングの際は、犬の肛門や陰部周辺にはなるべくバリカンを使わないようお願いするほか、トリミングが終わったら愛犬の様子をよく見てあげましょう。
「犬の膣(外陰部)が赤い」原因②【発情期(生理現象)】
ikaew101/ Shutterstock.com
一般的に犬の「生理(ヒート)」と呼ばれる発情出血ですが、人間の「生理」とは異なることをご存知の飼い主は意外と少ないのが事実です。
【獣医師監修】犬の「生理(ヒート)」期間はいつまで?陰部腫れ、生理痛は?避妊手術は必要?
犬の生理(ヒート)は人間とは仕組みが異なります。発情出血のサイクルや、ヒート中に注意すべきこと、何歳まで生理があるのか?避妊手術のメリットとデメリットなど、メスの犬と暮らすのであれば頭に入れておきたいものです。
犬の発情出血にともなって、発情出血が始まる数日前から外陰部が腫れます。
発情出血が始まってもしばらく腫れた状態が続きますが生理現象ですので、病気などではありません。
なお、発情期が短いと、卵胞嚢腫(らんそうのうしゅ)などの疾患の可能性がありますので、発情出血の時期には出血の期間や頻度などにも注意しましょう。
「犬の膣(外陰部)が赤い」原因③【外陰部の腫瘍】
MikumiStock / PIXTA(ピクスタ)
犬の外陰部の皮膚内に腫瘍ができると、外陰部自体が大きく腫れて、赤く見えることがあるかもしれません。
また、きのこ状のできものが膣の中にできる膣ポリープは、ポリープが大きくなると膣外に飛び出してくるため、外陰部が腫れているように見えることがあります。
「犬の膣(外陰部)が赤い」原因④【子宮の細菌感染】
iStock.com/pedrojperez
犬の子宮が細菌感染により炎症を起こしている場合にはおりものなどが見られますが、少量なら犬が舐め取ってしまうため、なかなか気づきにくいかもしれません。
また、細菌感染による炎症の痛みや違和感などでその場所をしきりに舐めたり、おしり歩きをして患部を擦るため、外陰部が赤くなってしまうことがあります。
「犬の膣(外陰部)が赤い」原因⑤【膣が外に出ている】
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膣が反転して、膣外へ飛び出す病状を「膣脱(ちつだつ)」と言います。
膣の内部の粘膜はもともと赤みのある色をしているため、腟脱になると外陰部が赤くなったように見える可能性があります。
膣脱はあまり見られない症状で、起きる原因は定かではありませんが、発情期や分娩期(ぶんべんき)に多く見られ、ホルモンの異常で膣が極端に肥大してしまうことで起きたり、交配や分娩の際に起きることが多いようです。
「犬の膣(外陰部)が赤い」【こんな症状は要注意!】
iStock.com/ThamKC
犬の膣(外陰部)が赤いのと同時に、以下の症状が見られる場合は、すぐに病院で診てもらいましょう。
おりものや発情出血が続く
しきりに外陰部を舐める
※子宮や外陰部で炎症を起こしている可能性があります
膣からきのこ状のポリープが出ている
※膣ポリープである可能性が高いです
膣から赤い粘膜が出ている
※膣脱である可能性が高いです
「犬の膣(外陰部)が赤い」【この症状で考えられるおもな病気】
Kukota / PIXTA(ピクスタ)
メス犬の膣(外陰部)が赤い場合、考えられるおもな病気は次の通りです。
「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気①【子宮蓄膿症】
iStock.com/thisislover
「犬の子宮蓄膿症(しきゅうちくのうしょう)」とは、子宮が細菌に感染し、膿がたまる病気です。
発情後の黄体期では免疫が低下するために、感染し、発症します。
多飲多尿、腹部膨満、外陰部の腫れ、そして陰部からの膿の排出も見られることがあります。
【獣医師監修】犬の多飲多尿。この症状から考えられる原因や病気は?
生命の維持に不可欠な水。けれども、犬が水をいつもより飲み過ぎている場合は、病気の兆候ということも考えられます。水をたくさん飲むと同時に、尿の色が薄くなり、尿の量も増え、何度もトイレへ行って排尿している時は、とくに注意。そんな犬の多飲多尿について、その原因や症状などを詳しく紐解きます。
放置すると子宮内から身体へ影響をおよぼす毒素や細菌そのものが血流にのって全身に広がり、多臓器不全を起こして命を落とす危険もあります。
「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気②【卵胞嚢腫】
Anna Hoychuk/ Shutterstock.com
「犬の卵胞嚢腫(らんほうのうしゅ)」とは、卵胞が排卵されずに卵巣で育ち、卵巣が肥大する病気です。
犬の卵巣は2つあり、片側のみが肥大する場合と両側が肥大する場合があります。
症状は現れないことも多いですが、発情期が頻繁に来たり、発情期が延長したり、乳腺の過形成などを引き起こすこともあります。
「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気③【膣ポリープ(膣の腫瘍)】
iStock.com/marcoventuriniautieri
「犬の膣(ちつ)ポリープ」とは、膣に腫瘍(ポリープ)ができる病気です。
エストロゲンというホルモンが影響していると言われ、腫瘍が大きくなると膣の外へ出てきてしまいます。
平滑筋肉腫(へいかつきんにくしゅ)や扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)といった悪性腫瘍の場合もあるため、注意が必要です。
【獣医師監修】「犬の扁平上皮癌」原因や症状、なりやすい犬種、治療方法は?
「犬の扁平上皮癌(へんぺいじょうひがん)」とは、カラダの表面を覆う皮膚や、外界と接する粘膜を構成する扁平上皮細胞が腫瘍化する病気です。犬の場合は、口腔内の粘膜か爪の根元に発生するケースがほとんどです。ここでは、扁平上皮癌の原因や症状、治療法について解説します。
「犬の膣(外陰部)が赤い」主な病気④【腟脱】
jagodka / PIXTA(ピクスタ)
「犬の膣脱」とは膣の一部が外陰部から外に出てしまう病気です。
原因は、エストロゲンという女性ホルモンの影響で膣が過形成されることのほか、ボクサーやブルドッグ、セントバーナードなどの犬種によく見られます。
膣の突出により、排尿障害や感染症が起こりやすくなります。
「犬の膣(外陰部)が赤い」【まとめ】
iStock.com/VioletaStoimenova
犬の膣(外陰部)が赤くなる原因や病気はさまざまです。
子宮蓄膿症や膣ポリープは、愛犬の命にも関わる可能性のある病気です。
病状がわからず不安な場合は、自己判断せずに、早めにかかりつけの獣医師に診てもらいましょう。
【獣医師監修】犬の「生理(ヒート)」期間はいつまで?陰部腫れ、生理痛は?避妊手術は必要?
犬の生理(ヒート)は人間とは仕組みが異なります。発情出血のサイクルや、ヒート中に注意すべきこと、何歳まで生理があるのか?避妊手術のメリットとデメリットなど、メスの犬と暮らすのであれば頭に入れておきたいものです。
【獣医師監修】「犬の細菌性膀胱炎」原因や症状、なりやすい犬種、治療方法は?
犬の「細菌性膀胱炎(さいきんせいぼうこうえん)」とは、膀胱内に侵入した細菌の増殖が原因で起きる、 犬の泌尿器でもっとも多発する病気です。とくにメスの発症が多く、治りにくくて再発しやすいという難治性になることも。時に、尿石症や腫瘍などのサインにもなる細菌性膀胱炎について詳しく解説しましょう。
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