【獣医師監修】「犬の脊髄空洞症」原因や症状、検査・診断、治療、予防方法、なりやすい犬種は?

「犬の脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)」とは、脊髄(せきずい)の内部に「脳脊髄液(のうせきずいえき)」が異常にたまり、痛みや知覚過敏など神経の障害を引き起こす病気。多くは先天性で、症状が現れないこともあります。ここでは、犬の脊髄空洞症について詳しく解説します。

先生にお聞きしました
濱本 裕仁 先生
日本獣医生命科学大学 付属動物医療センター 放射線科 獣医師 (獣医学博士)

【資格】
獣医師

日本獣医生命科学大学獣医学科を卒業後、同大学大学院獣医生命科学研究科にて博士(獣医学)の学位を取得。

2018年より日本獣医生命科学大学附属動物医療センターの放射線科を担当。伴侶動物におけるCTやMRIを用いた画像診断や放射線治療に従事。
続きを読む

犬の【脊髄空洞症】とは?

犬の「脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)」とは、脊髄の内部に脳脊髄液(のうせきずいえき)が過剰に溜まることで神経組織の束を圧迫し、脊髄障害や脳障害など、さまざまな神経学的障害を引き起こす奇形性疾患です。

MRI検査を行うと、脳脊髄液が溜まった部分が空洞のように写ります。

脊髄(せきずい)と脳脊髄液(のうせきずいえき)の役割

犬の脳脊髄液の流れ

犬の脳脊髄液の流れ

「脊髄(せきずい)」とは、体の各部位に分布する末梢(まっしょう)神経と脳をつなぐ神経組織の束で、脳と合わせて「中枢神経系」と呼ばれるもの。

末梢神経から伝わる情報を脳に伝達したり、脳が出した指令を全身へ伝えることで、反射や運動、感覚、意思、呼吸などをコントロールしています。

脊髄は延髄(えんずい)の下方からカラダのほぼ全身を貫き、その外側を背骨(脊椎:せきつい)によって守られています。

その内部は脳で作られる脳脊髄液が循環し、クッション的な役割を担っています。

原因

犬の脊髄空洞症【原因】

犬の脊髄空洞症【原因】

TCGraphicDesign / Shutterstock.com

犬の脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)の多くは先天性の奇形と考えられており、多くの場合は小脳の一部が頭蓋骨(ずがいこつ)の底からはみ出し脳幹部の脳脊髄液の循環障害を引き起こした結果、脊髄に空洞ができると考えられています。

また後天的な原因として、脊髄の腫瘍や椎間板ヘルニアにともなって後天的に発症することもあります。

犬 脊髄空洞症 首

Sutichak / PIXTA(ピクスタ)

なお、脊髄内に空洞ができる原因やそのメカニズムについては、さまざまな要因が重なった結果と考えられています。

脊髄のどの部分でも起こる可能性がありますが、多くは頸部(けいぶ=首)に現れます。

頭蓋骨の底から小脳の一部がすべり出る先天性奇形「キアリ様奇形(ようきけい)」に合併するケースが多く報告されていますが、後頭骨形成不全や重度の水頭症(すいとうしょう)を併発している症例もあります。

症状

犬の脊髄空洞症【症状】

犬の脊髄空洞症【症状】

John Barreca/ Shutterstock.com

犬の脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)は脳脊髄液(のうせきずいえき)がたまる部位によって症状が異なりますが、多くの場合は頸部脊髄の圧迫が原因と考えられる以下のような症状が現れます。

犬の脊髄空洞症【症状】

【犬の脊髄空洞症】【症状】
脊髄空洞症の症状①体勢を変えたり抱き上げるときに痛がる
脊髄空洞症の症状②頭や首をしきりにひっかく(スクラッチング行動)
脊髄空洞症の症状③ジャンプしたり階段を上ることができない、足に力が入らない
脊髄空洞症の症状④攻撃的になったり、内向的になったり、不安を訴える
脊髄空洞症の症状⑤睡眠障害になる
脊髄空洞症の症状⑥ボーっとしていることが多い
脊髄空洞症の症状⑦首や背骨が左右に湾曲している


なお、まったく症状が現れないケースもあります。

発症しやすい犬種

犬の脊髄空洞症【発症しやすい犬種】

犬の脊髄空洞症【発症しやすい犬種】

pearlinheart / PIXTA(ピクスタ)

犬の脊髄空洞症【発症しやすい犬種】

【犬の脊髄空洞症】【発症しやすい犬種】
発症しやすい犬種①キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
発症しやすい犬種②チワワ
発症しやすい犬種③パグ
発症しやすい犬種④トイ・プードル
発症しやすい犬種⑤ペキニーズ
発症しやすい犬種⑥ポメラニアン
発症しやすい犬種⑦マルチーズ
発症しやすい犬種⑧ヨークシャー・テリア
診断方法

犬の脊髄空洞症【検査・診断方法】

犬の脊髄空洞症【検査・診断方法】

Oksana Kuzmina/ Shutterstock.com

犬の脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)は、神経学的検査で可能性が指摘されますが、確定診断にはMRI検査が必要です。

ここでは、脊髄空洞症が疑われる症状が現れたときの検査について紹介します。

検査・診断①【問診】

いつごろからどのような症状が現れ、どれくらい続いているかを飼い主との対話から確認します。

検査・診断②【一般身体検査・神経学的検査】

まずは触診や視診、聴診などで体の状態をチェックする一般身体検査を行います。

その後、意識状態や姿勢・脊髄反応、反射などを確認する神経学的検査を実施。

これらの検査で皮膚病の可能性を除外します。

検査・診断③【X線検査】

首の痛みや違和感は頸部ヘルニアの疑いがあるため、X線検査を行う場合があります。

検査・診断④【MRIによる画像診断】

上記の検査結果から脊髄空洞症の可能性が指摘された場合は、検査設備がある大学付属動物病院などの診療施設を紹介されるので、予約を取ってMRI検査を受けましょう。

MRI検査には全身麻酔が必要です。

治療方法

犬の脊髄空洞症【治療方法】

犬の脊髄空洞症【治療方法】  

Alexsander Ovsyannikov/ Shutterstock.com

犬の脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)は、症状が現れた場合のみ以下のような治療を行います。

治療法①【痛み止めを投与】

カラダに触れたり抱き上げたときに痛みを訴える場合は、痛み止めを投与します。

治療法②【利尿剤・ステロイド剤を投与】

「キアリ様奇形」と「脊髄空洞症」を合併している時は、利尿剤で過剰に貯留した脳脊髄液を減少させ、必要があればステロイドを投与して脳脊髄液の産生を抑制します。

治療法③【重度の場合は手術も】

治療法③【重度の場合は手術も】

Kukota / PIXTA(ピクスタ)

「水頭症」や「キアリ様奇形」を合併し、重い症状が現れている場合は、脳室に溜まった水を人工のチューブで腹腔に流す「脳室—腹腔シャント術」や、空洞に溜まった水をクモ膜下腔に流す「空洞—クモ膜下腔シャント術」を行います。

また、小脳の一部が垂れ下がるキアリ様奇形が原因で脳脊髄液の流れが妨げられている場合は、大後頭孔拡大手術(だいこうとうこうかくだいしゅじゅつ)を行い、脳脊髄液の流れを改善させます。

予防・対策

犬の脊髄空洞症【予防対策】 

犬の脊髄空洞症【予防対策】 

Bachkova Natalia/ Shutterstock.com

犬の脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)の多くは先天性なので、有効な予防法はありません。

犬の脊髄空洞症【間違えやすい病気】

犬のキアリ様奇形

犬のキアリ様奇形

Phanuwat Yoksir/ Shutterstock.com

犬のキアリ様奇形(きありようきけい)とは、小脳の一部が背骨の方に垂れ下がる先天性奇形です。

頭蓋骨の底からはみ出た小脳の一部が脳幹を圧迫すると、脊髄内に脳脊髄液(のうせきずいえき)がたまり、疼痛(せんつう)や知覚過敏などの神経学的障害を引き起こします。

多くは脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)を併発しているため、症状がある場合は脊髄空洞症の治療が必要になることもあります。

犬の水頭症

犬の水頭症(すとうしょう)とは、脳を衝撃から守ったり栄養補給などの役割を担う脳脊髄液が過剰にたまって脳を圧迫し、ふらつきやてんかん発作などの神経症状を引き起こす病気です。

脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)と同じくぼーっとしたり、活動性が低下することがあり、脊髄空洞症やキアリ様奇形と併発している症例も報告されています。

犬の頸部ヘルニア

犬の頸部ヘルニア(けいぶへるにあ)とは、頸椎の間にある椎間板が突出し、神経を圧迫する病気です。

加齢や肥満が原因になるほか、「ダックスフンド」」や「フレンチブルドッグ」のように軟骨異栄養症の遺伝子を持つ犬に見られます。

頸部の痛みや肢の痙攣、ふらつき、歩行障害が起こります。

犬の環軸亜脱臼

犬の環軸亜脱臼(かんじくあだっきゅう)とは、首の骨の環椎と軸椎の関節が亜脱臼になり、神経を圧迫する病気です。

先天性のほか、交通事故などの外傷が原因で起こり、「チワワ」や「ヨークシャーテリア」「トイプードル」などの小型犬種によく見られます。

頸部痛(けいぶつう)や肢の麻痺、歩行障害が起こり、進行すると呼吸不全で死に至るおそれもあります。

そのほか、痛みや痒みを伴う皮膚病なども挙げられます。

犬の脊髄空洞症【まとめ】

犬の脊髄空洞症【まとめ】

thisislove / PIXTA(ピクスタ)

犬の「脊髄空洞症(せきずいくうどうしょう)」とは、脊髄の内部に脳脊髄液(のうせきずいえき)が過剰に溜まることで神経組織の束を圧迫し、脊髄障害や脳障害など、さまざまな神経学的障害を引き起こす奇形性疾患です。

愛犬に「体勢を変えたり抱き上げるときに痛がる」「頭や首をしきりにひっかく(スクラッチング行動)」「ジャンプしたり階段を上ることができない、足に力が入らない」などの症状がみられ、心配な場合には、速やかに動物病院で獣医師に診てもらいましょう。

また、人間同様に健康診断を受けることで愛犬の病気を早期に発見することが可能になるので、定期的に動物病院で検診をうけることをおすすめします。

みんなのコメント

あなたも一言どうぞ

コメントする

編集部のおすすめ記事

内容について報告する

関連する情報をもっと見る

「病気」の人気記事RANKING