【プロドッグトレーナー監修】フラットコーテッド・レトリーバーは初心者が飼っても大丈夫?価格や寿命は?
黒やレバー(茶色)の輝く被毛に、スリムな顔とボディがかっこいいフラットコーテッド・レトリーバー。体は大きいですが、人懐こく友好的。ただし、ハイテンションすぎる一面も…。フラットとはどんな犬種なのか、その性格や飼いやすさ、歴史、かかりやすい病気、注意点などについて詳しく解説します。
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麻布大学介在動物学研究室(旧動物人間関係学研究室)で、人と犬の関係学を研究。
この分野では日本で初めての博士号を取得。
目次
フラットコーテッド・レトリーバー【初心者が飼っても大丈夫?飼いやすい?】
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フラットコーテッド・レトリーバーは初心者が飼っても大丈夫ですが、注意が必要です。
水鳥猟で人間が撃(う)ち落とした獲物(えもの)を回収してくる役割を担っていた、フラットコーテッド・レトリーバー。
そのルーツから、飼い主と共同作業をすることが大好きな犬種です。
体は大きいですが、賢く、人に対しても犬に対しても友好的で、初心者の方に対しても穏やかに接してくれます。
ただし、ラブラドール・レトリーバーに比べると柔軟性が低く頑固で、他のレトリーバーよりも独立心が強く興奮しやすいため、レトリーバー種の中では飼いやすいほうとは言えません。
また、留守番が長かったり、飼い主と遊ぶ時間がなかったりすると、ストレスになります。
日ごろの世話や散歩、遊びなどに十分な時間や体力を費やす方や、アウトドアやトレーニング、スポーツなどで愛犬と一緒にダイナミックに体を動かしたい方に向いています。
フラットコーテッド・レトリーバー【原産国・歴史・寿命は?】
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フラットコーテッド・レトリーバー【原産国】
s5iztok / iStock
原産国はイギリス。
19世紀半ばに、カナダから輸入されたセント・ジョンズ・ウォーター・ドッグ(小型のニューファンドランド)などと、セッターとを掛け合わせて作られたと言われています。
【参照元】一般社団法人ジャパンケネルクラブ「フラットコーテッド・レトリーバー」
フラットコーテッド・レトリーバー【歴史(種類)】
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祖先犬は小型のニューファンドランドか、チェサピーク・ベイ・レトリーバーの小型のものと言われていますが、ラブラドールとカーリーコーテッドが祖先という説もあります。
1860年、イギリスのバーミンガム・ショーに登場。
当時はレトリーバーをカーリー、ウェービー、スムースの3種に分類し、フラットの原形となる犬種は「ウェービーコーテッド・レトリーバー」と呼ばれていて、波打つ被毛(波状毛)で体形的にもラブラドールとの差異は少なかったそうです。
1864年の展覧会から、他のレトリーバーと区別されるようになりました。
absolutimages / PIXTA(ピクスタ)
今では珍しくなったカーリーコーテッド・レトリーバーのほうが犬種の歴史が古く、フラットはカーリーよりもさらにおとなしく、くわえた獲物に歯形がつかないようにするための「ソフトマウス」をより高度に習得できるところから、猟犬として高い人気を得ました。
1900年代頃からさらに改良され、ラフ・コリーやセッターとの交配を行うことで、重すぎる体重やバランスの改善がはかられて、今のフラットができたと言われています。
これらの改良により、波状毛から、平滑で体に沿う被毛(平滑毛)に変化し、現在のフラットコーテッドと呼ばれるようになりました。
その後、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーの登場によって人気を奪われ、第二次世界大戦末期までに頭数が激減。
愛好家によって犬種が保存され、今は日本でも一定の人気のある犬種となっています。
フラットコーテッド・レトリーバー【寿命】
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フラットの平均寿命は8〜10歳と言われ、ラブラドール・レトリーバーやゴールデン・レトリーバーに比べて短めです。
フラットコーテッド・レトリーバー【大きさ・毛色・子犬(赤ちゃん)の販売価格は?】
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フラットコーテッド・レトリーバー【大きさ(体重・体長・体格)】
ブルビゴ / PIXTA(ピクスタ)
フラットコーテッド・レトリーバーは、日本では大型犬に分類されることが多いです。
フラット【理想の体高・体重】
【理想体高】 | 【理想体重】 |
---|---|
オス:59~61.5cm | オス:27~36kg |
メス:56.5~59cm | メス:25~32kg |
レトリーバーの中では細身で足が長く、すらっとしていますが力強い体つきです。
細くて長いマズルを持つ顔に、小さめの垂れ耳がついています。
見た目はゴールデン・レトリーバーと似ていますが、見分け方としては、ゴールデンがゴールドからホワイトの毛色なのに対して、フラットは黒かレバー(茶色)です。
顔や体もフラットのほうが細く、セッターに似ているところがあります。
気質的にも、ゴールデンは飼い主にべったりなのに対して、フラットはゴールデンに比べると独立心が強いです。
ラブラドールはフラットと似た毛色ですが、フラットが長毛なのに対し、ラブラドールは短毛なので見分けが付きますね。
フラットコーテッド・レトリーバー【毛色の種類】
Sharon Snider/ Shutterstock.com
FCI(世界畜犬連盟)が定めるスタンダードでは、単色のブラックまたはレバーに限るとされています。
まれにイエローのフラットが生まれますが、遺伝性疾患のリスクが高いとされ、スタンダードとしては認められていません。
被毛は中ぐらいの長さで、直毛=フラット。
わずかにウェーブがかかっているのはスタンダードとして許容されています。
レトリーバー種の中では、抜け毛が少ないほうです。
フラットコーテッド・レトリーバー【子犬(赤ちゃん)の販売価格】
Life In Pixels/ Shutterstock.com
子犬の販売価格は実にさまざまですが、ペットショップやブリーダーのサイトで調べる限り、17〜40万円程度で販売されているようです。
保護団体や里親探しサイトなどで探すという方法もあります。
ただし、その子がそれまで育ってきた環境によっては、迎えてからのしつけなどに手がかかる可能性もあるので、それを理解して受け止められる人におすすめです。
フラットコーテッド・レトリーバー【特徴・性格(気質)・魅力は?】
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フラットコーテッド・レトリーバー【特徴】
レトリーバー(レトリーブ=回収する犬)の名前通り、水鳥猟で人間が撃ち落とした獲物を回収してくる役割を担っていた狩猟犬です。
フラットは、オスのほうがわんぱくでパワフルだけれど素直、メスのほうが体が小さい分扱いやすいけれど自分勝手と言われますが、性差よりは個体差のほうが大きいようです。
フラットは体が大きい分、成犬期のパワーもすごいですが、老犬になると今度は、体調を崩したときや介護が必要になったときに、病院へ運んだり寝返りを打たせたりと、世話に力が必要になります。
フラットコーテッド・レトリーバー【性格(気質)】
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レトリーバー種は社会性が高く、見知らぬ人や犬、家族への警戒心や攻撃性が低い、優しい性格です。
人とのかかわりを好むため訓練性能が高い一方、放っておかれるとストレスが溜まって、興奮しやすくなります。
レトリーバー種の中でも、フラットは特にテンションが高く、興奮すると強い脚力を使って縦跳びをする子が多いです。
その天真爛漫(てんしんらんまん)さは年を取っても変わることがなく、「永遠の子犬」「ピーターパン」などと言われるほど。
他の犬や人に対してもフレンドリーな反面、他のレトリーバーより独立心が強く大胆なため、飼い主の制止を聞かず、興味のあるほうへ突進してしまうところがあります。
力も強いため、コントロールが効きにくい面があり、忍耐強いトレーニングが必要です。
フラットコーテッド・レトリーバー【魅力】
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真っ黒くすらっとしたボディ、キリッとした賢そうな表情に、「かっこいい!」と憧れる人も多いフラットコーテッド・レトリバー。
運動能力が高く、走る姿も優雅で、一緒にアウトドアを楽しむのにぴったりです。
また、いつまでも天真爛漫(てんしんらんまん)で凝りない子犬のような性格が生涯続くため、手のかかるところにかえってハマってしまい、代々フラットを飼い続ける人も少なくありません。
フラットコーテッド・レトリーバー【気をつける病気は?】
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気をつける病気①【悪性腫瘍(がん)】
悪性腫瘍はレトリーバー種全般に多い病気ですが、特にフラットでよく見られます。
フラットは、他の犬種ではあまり見ない「組織球肉腫(そしききゅうにくしゅ)」にかかりやすいです。
この腫瘍は悪性度が高く、急速に全身へ広がり、転移します。
以前は、診断後数日〜6カ月でほぼすべての犬が亡くなってしまうと言われていましたが、現在は有効な抗がん剤が見つかり、早期発見して抗がん治療をすれば延命できる例も出てきています。
フラットのしこりを発見したら、早めに細胞診や組織検査を行うのがおすすめです。
気をつける病気②【股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)】
ブルビゴ / PIXTA(ピクスタ)
犬の「股関節形成不全」とは、股関節(こかんせつ)と大腿骨頭(だいたいこっとう)がうまくかみ合わない病気で、発症すると関節が変形してくる変形性関節症になり、歩行の異常などが現れます。
犬の「股関節形成不全」は、大型犬によく見られ、遺伝的要因と環境的要因の両方が関係していると言われています。
腰を左右に振りながら歩く「モンローウォーク」、横座りをする、左右の後ろ足を一緒に動かして走る、運動することを嫌がるといった症状が見られ、成長期に発覚することが多いです。
軽度であれば鎮痛剤やレーザー療法などの内科的治療や飼育環境を変えることで様子を見ますが、重度になると手術をすすめられる場合もあります。
変形性関節症が進行する前に気付いて、環境を整備し体重管理をすることで、ある程度悪化を抑えられるケースが多いです。
症状が現れていなくても、1歳になった頃にレントゲンを撮り、愛犬の関節の状態を把握しておくといいでしょう。
hana / PIXTA(ピクスタ)
気をつける病気③【眼の病気】
フラットには、進行性網膜萎縮症(しんこうせいもうまくいしゅくしょう)や原発生緑内障など、遺伝性の眼の病気も多く見られます。
眼が白く濁(にご)ったように見える、眼をよくつむっている、瞳孔(どうこう)が大きくなる、眼が充血している、涙が多く出る、特に夜間や暗いところで目が見えにくそうなど、眼に異常が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。
フラットコーテッド・レトリーバー【飼い方(しつけ)・散歩の仕方・注意点!】
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フラットコーテッド・レトリーバー【飼い方(しつけ)】
フラットは人にも犬にもフレンドリーで、臆病ではないため、社会性は身につきやすいです。
ただし、興奮しやすく、力も強く、しかも懲(こ)りない性格で、自分の気持ちをコントロールしにくいため、トレーニングを通して、飼い主がその場に応じたコントロールをしっかりと行う必要があります。
中には、おやつよりも人とおもちゃで遊ぶほうが好きという子もいるほど、人とかかわることに喜びを感じるので、上手におもちゃや遊びを取り入れてトレーニングしていきましょう。
大型犬ですが、人のそばにいられないことがストレスになる犬種であり、暑さにも弱いため、屋外での飼育には向きません。
基本的には室内飼いをしましょう。
フラットコーテッド・レトリーバー【散歩の仕方】
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フラットは運動量も多く太りやすいため、毎日の散歩はできる限り朝晩2回、明るい時間に出かけるようにしましょう。
また、雨の日など散歩に行けない場合は、おもちゃを使ってたくさん遊ぶなど、室内でもできる発散方法を工夫してみて。
飼い主と一緒に何かをすることが好きな犬種なので、ただ歩くだけでは満たされにくいです。
おもちゃを投げて取ってくるレトリーブや引っ張りっこをしたり、スポーツやトレーニング、アウトドアアクティビティを一緒に楽しんだりして、体も心も満足させてあげたいもの。
水鳥猟に使われていた犬種なので、川や海、プールなどで泳ぐことも大好きです。
散歩中の引っ張りが強い場合は、「引っ張り防止ハーネス」といったトレーニングの補助具を利用して、横について歩く練習をするのもいいでしょう。
チョークチェーンやハーフチョークは、使い方を間違えると、犬の首を痛めたり呼吸困難になってしまったりする危険があるため、おすすめできません。
フラットコーテッド・レトリーバー【注意点!】
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レトリーバー種は人への愛着が強いため、留守番の時間が長かったり、あまり遊んでもらえなかったりすると、吠えや落ち着きがないといった、飼い主にとって困った行動につながりがち。
また、子どもやお年寄りは吹っ飛ばされたり、散歩中に引きずられたりする可能性があります。
第三者に飛びついて怪我をさせてしまう危険性もあるため、飛びつきや引っ張りを防ぐトレーニングをしっかりしましょう。
また、高齢になって介護が必要になったときに、家族で世話をできるかまで考えてから、迎えましょう。
他の犬に対しても友好的な犬種のため、多頭飼いもしやすいですが、犬同士だけで遊ばせず、飼い主とそれぞれの犬との関係をしっかり築くことが大切です。
フラットコーテッド・レトリーバー【まとめ】
absolutimages / PIXTA(ピクスタ)
黒くてスリムな外見がかっこいいフラットコーテッド・レトリーバーは、犬と一緒にダイナミックに体を動かして遊びたい人におすすめの犬種。
レトリーバーらしく人にも犬にもフレンドリーで、ハイテンションでしっぽを振りながら寄っていきます。
その一方で、レトリーバーの中では独立心が強いため、飼い主のコントロールが効きにくい面も。
この底抜けの天真爛漫さを愛して、忍耐強くトレーニングできる人におすすめの犬種です。
参考文献:
ジャパン ケネル クラブ「世界の犬 フラットコーテッド・レトリーバー」
Tonoike, A., Nagasawa, M., Mogi, K. et al. Comparison of owner-reported behavioral characteristics among genetically clustered breeds of dog(Canis familiaris). Sci Rep 5, 17710(2016)
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