【プロドッグトレーナー監修】オーストラリアン・シェパードはどんな犬?初心者が飼って大丈夫?性格は?
オーストラリアン・シェパードは犬種名に反してアメリカで発展した犬とされます。ハーダー(牧羊犬・牧畜犬の類い)らしく繊細で知能が高く、作業能力は抜群。ファームの頼れる相棒は、家庭犬になっても文句なしの存在感で、多くのファンの心をつかんで離しません。そんなオーストラリアン・シェパードの魅力に迫ってみましょう。
- 更新日:
麻布大学介在動物学研究室(旧動物人間関係学研究室)で、人と犬の関係学を研究。
この分野では日本で初めての博士号を取得。
目次
オーストラリアン・シェパード【初心者が飼っても大丈夫?飼いやすい?】【断耳・断尾は必要?】
Emkacf/ Shutterstock.com
オーストラリアン・シェパード【初心者が飼っても大丈夫?飼いやすい?】
オーストラリアン・シェパード(Australian Shepherd)は、あまり初心者向きではないでしょう。
飼育すること自体は可能かもしれませんが、オーストラリアン・シェパードをはじめ、ボーダー・コリーやシェットランド・シープドッグ、ラフ・コリーなどのハーダー(牧羊犬・牧畜犬の類い)系の犬は、飼い主から離れた場所で作業することも多かった歴史をもつだけに、知性が高く、自分で考えて行動するようなところがあります。
また、繊細で、飼い主の気持ちや考えていることを先読みするような賢さももちあわせています。
さらには、物覚えも速い。
このようなタイプの犬は付き合い方を間違えると、犬のほうが飼い主をコントロールしてしまい、犬に振り回される状況になってしまうことがあります。
加えて、運動性能が抜群なので、メンタル面と肉体面の両方の欲求を満たしてあげる必要があり、そうした特性を理解した上で、真摯(しんし)に犬と向き合える人には向くでしょう。
オーストラリアン・シェパード【断耳・断尾は必要?】
SubertT/ Shutterstock.com
オーストラリアン・シェパードでは断耳は行なわれませんが、尻尾については断尾される場合と、断尾せずに自然なままの尾、生まれつきの短い尾(ボブ・テイル)の場合とがあります。
断尾した尻尾、自然のままの短尾、そのどちらにしろ、スタンダード上では10cmを超えないとなっています。
これまでオーストラリアン・シェパードの尻尾は習慣的に断尾が行なわれてきました。
その理由として、「羊や牛を追う時に尻尾を怪我しないように」「作業犬であることを識別するため」、はたまた「尻尾の長さがまちまちなのでそろえるため」などというものまでいくつかの説がありますが、真相は定かではありません。
それはさておき、現在では動物福祉の観点から、断耳(生後2~3ヶ月で形成手術)・断尾(誕生後すぐに形成手術)ともに否定的な気運が高まり、「ペット動物の保護に関する欧州条約(European Convention for the Protection of Pet Animals)」に代表されるように、ヨーロッパ、オーストラリア、カナダなど断耳・断尾を禁止とする国や州、地域があります。
Carolyn Parsons-Janes/ Shutterstock.com
そのため、現在のオーストラリアン・シェパードは人工的な尾の犬と自然な尾の犬と、両タイプが存在するというわけです。
【「ペット動物の保護に関する欧州条約」で禁止されるべきとする外科手術】
✔ 断尾
✔ 断耳
✔ 声帯手術
✔ 爪除去および犬歯除去
日本の場合は、「動物の愛護及び管理に関する法律」に「何人も、動物をみだりに殺し、傷つけ、又は苦しめることのないよう…」とありますが、断耳・断尾とも禁止にはなっていません。
したがって、オーストラリアン・シェパードに断尾が必要か、それは飼い主となる人や繁殖者の考え方に委ねられるところが大きいと言えるでしょう。
【参考元】
・COUNCIL OF EUROPE「European Convention for the Protection of Pet Animals」
・Veterinary Information Network「Animal Welfare」
・ANIMAL WELFARE VICTORIA「Prohibited procedures on dogs」
・Veterinary Practice News「Ear Cropping Ban Spreads to Western Canada」
・e-Govポータル「動物の愛護及び管理に関する法律」
オーストラリアン・シェパード【ボーダー・コリーとの違いは?】
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパードはボーダー・コリーとよく似ていると言われますが、それもそのはず、原種となるハーディング・ドッグがオーストラリアに渡った後、改良の途中で他犬種の血が配され、その中にボーダー・コリーもいたとの話があり、風貌(ふうぼう)がどことなくボーダー・コリーと似ているのも不思議なことではないでしょう。
ただし、違う犬種として存在する以上、それぞれに違いもあります。
ボーダー・コリーのほうがやや小柄で、軽やかな印象があるのに対し、オーストラリアン・シェパードはややがっしりとした体型をしています。
毛色に関しては、オーストラリアン・シェパードでは基本色が定義されているのに対し、ボーダー・コリーでは様々な毛色が許容されています。
決定的な違いは尻尾の長さ。
オーストラリアン・シェパードは短尾な個体が多いのに対し、ボーダー・コリーにはふさふさとした長い尾があります。
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
実は、オーストラリアン・シェパードには、他にも似ている犬種が存在します。
一つには、オーストラリアン・シェパードのミニチュア版である「ミニチュア・アメリカン・シェパード(元の名はミニチュア・オーストラリアン・シェパード)」。
もう一つは、「オーストラリアン・クーリィ」。
【オーストラリアン・シェパードとボーダー・コリー、ミニチュア・アメリカン・シェパード、オーストラリアン・クーリィとの相違点】
【種類】 | 【体高】 | 【尻尾】 | 【耳】 | 【毛色】 |
---|---|---|---|---|
オーストラリアン・シェパード | 46cm~58cm | 断尾、短尾 | 垂れ耳 | ブラック、レッド、ブルーマール、レッドマールを基調にタンやホワイトのマーキングが入ることもある |
ボーダー・コリー | 53cm メス犬はやや小柄 | 長い | 垂れ耳、立ち耳、半立ち耳 | 様々な毛色 |
ミニチュア・アメリカン・シェパード | 33cm~46cm | 断尾、短尾 | 垂れ耳 | ブラック、レッド、ブルーマール、レッドマールを基調にタンやホワイトのマーキングが入ることもある |
オーストラリアン・クーリィ | 43cm~65cm | 長い | 立ち耳 | 様々な毛色と組合わせ |
【参考元】
・ジャパン・ケネル・クラブ「ミニチュア・アメリカン・シェパード」
・AMERICAN KENNEL CLUB「Miniature American Shepherd」
・FEDERATION CYNOLOGIQUE INTERNATIONALE 「BORDER COLLIE」
・THE KENNEL CLUB「Border Collie」
・Koolie Club Of Australia「Koolie Fundamentals」
オーストラリアン・シェパード【原産国・歴史・寿命は?】
Sbolotova/ Shutterstock.com
オーストラリアン・シェパード【原産国】
原産国:アメリカ合衆国
犬種名に「オーストラリアン」と付くことから、この犬種の原産国はオーストラリアであると思いたいところですが、犬種として発展したのはアメリカ(カリフォルニア州)とされています。
一言で言えば、ヨーロッパのハーディング・ドッグ(牧羊犬・牧畜犬)がオーストラリアに渡り、その後、さらにアメリカに渡って発展したというストーリーが定説になっています。
実際、オーストラリアの犬種団体であるオーストラリアン・ナショナル・ケネル・カウンシル(ANKC)でもアメリカン・ケネル・クラブ(AKC)のスタンダードを引用し、オーストラリアン・シェパードの原産国はアメリカとして紹介しています。
Melounix/ Shutterstock.com
オーストラリアン・シェパード【歴史(種類)】
オーストラリアン・シェパードのルーツを辿ると1800年代初頭のヨーロッパに遡(さかのぼ)ります。
スペインとフランスとの国境にそびえるピレネー山脈、その西端部でビスケー湾に接する地域は古くからバスク地方と呼ばれています。
このバスク地方はスペインとフランスの両国にまたがり、農耕民と狩猟採集民とのミックス集団を祖先とするバスク人と呼ばれる民族が住んでいました。
一方、オーストラリアは1901年に国として独立するまで、イギリスの植民地であった時代です。
イギリスからの移民たちは本格的に牧畜業を営むようになり、それと同時に多くのハーディング・ドッグを必要とするようになっていました。
バスク地方でも牧畜業は盛んで、長きに渡り、優秀なハーディング・ドッグを育て上げていました。
バスク人の中にはそうした犬を伴い、オーストラリアで一旗揚げようと考えた人たちもいたようで、やがてオーストラリアに渡ることになります。
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
折りしも、かの地ではカルリスタ戦争が勃発した時代でもあり、時が同じ頃とすれば、故郷を追われてのことだったのかもしれませんが。
この時、バスク人が連れていた犬が「ピレニアン・シープドッグ(別名ピレニアン・シェパード・ドッグ、シャン・ド・ベルジェ・デ・ピレニーズ、ラブリ:愛称プティ・ベルジェ)」で、オーストラリアン・シェパードの原種犬であると考えられています。
ピレニアン・シープドッグにはスムースとロングヘアがいますが、特にスムースのブルーマールの犬を見ると、確かにオーストラリアン・シェパードとよく似ています。
また、スペインのハーディング・ドッグを紹介した資料を見ると、古い写真の中に尻尾のないブルーマールの犬がおり、撮影地がバスク地方かはわからないものの、少なくともスペインにはオーストラリアン・シェパードに似た犬がいたことが窺(うかが)い知れます。
こうしてオーストラリアに渡って来た犬たちは、さらに洗練された犬を求め、すでにイギリスから移入されていたコリーやボーダー・コリーなどのコリー種と交配されたそうですが、中にはタフさを強化するため、ディンゴ*とも交配されたという話もあります。
時が過ぎ、1800年代中頃~後半になると、バスク人たちは新天地を求め、その犬を連れてアメリカ(カリフォルニア州周辺)に渡りました。
ゴールドラッシュに沸く時代背景でしたが、彼らが流れ着いた先は牧場。
まだら / PIXTA(ピクスタ)
働き者でガッツがある犬たちはたちまち牧場主に気に入られ、人気となったようです。
付けられた名前は、「オーストラリアから来た犬だから」と「オーストラリアン・シェパード(別名オーストラリアン・シープドッグ)」。
アメリカでさらに発展する中で、ロデオ・ドッグ(ロデオ競技で興奮した牛を誘導したり、パフォーマンスをしたりする犬)として活躍する姿は、競技はもちろん、テレビや映画を通して広く知られるようになり、ウェスタンおよびカウボーイ文化の一端を担う犬となりました。
Picpick / PIXTA(ピクスタ)
以上のストーリーが定説となっていますが、実は異論も存在します。
それは、オーストラリアにピレニアン・シープドッグが渡って来る以前から、オーストラリアには自然な短尾をもつ「スミスフィールド」と呼ばれる犬がおり、これがオーストラリアン・シェパードと関係しているのではないかというのです。
それが真実だとすれば、原産国はオーストラリアと言えるのかもしれませんが。
スミスフィールドは、もともとイギリスの同名の肉市場で牛追いに使われていた犬で、一系統の犬は天然の短尾であり、それがオーストラリアに渡っていたようです。
しかし、事の真相はわかりません。
どこにルーツがあるにしろ、オーストラリアン・シェパードは今も多くの人に愛され続け、「Aussie(オーシィー、またはオージィー)」の愛称で親しまれています。
オーストラリア原産種のディンゴ/©Pmoon
*ディンゴ=野生の犬なのか、狼の亜種なのか、長らく論争が続いていますが、2019年にオーストラリアのフリンダース大学の研究チームにより、ディンゴはディンゴというオーストラリア原産の独立した動物種であると発表されており、「ほとんどのイヌ科動物が異種交配できるという事実にもかかわらず、ディンゴとの異種交配が可能であることを支持するエビデンスはほとんどない」としています。
【参考元】
・ジャパン・ケネル・クラブ「オーストラリアン・シェパード」
・FEDERATION CYNOLOGIQUE INTERNATIONALE 「AUSTRALIAN SHEPHERD」
・AMERICAN KENNEL CLUB「Australian Shepherd」
・AMERICAN KENNEL CLUB「Official Standard of the Australian Shepherd」
・AUSTRALIAN NATIONAL KENNEL COUNCIL「Australian Shepherd」
・THE KENNEL CLUB「Australian Shepherd」
・CANADIAN KENNEL CLUB「Australian Shepherd」
・The Australian Shepherd Club Of America「About Aussies」
・デズモンド・モリス「デズモンド・モリスの犬種事典」(株式会社 誠文堂新光社、2007)
・Bruce Fogle, D, V, M.「The ENCYCLOPEDIA of the DOG」(DK PUBLISHING, INC.)
・FLINDERS UNIVERSITY「Dingoes a native species – so need protecting」
・THE CONVERSATION「The dingo is a true-blue, native Australian species」
オーストラリアン・シェパード【平均寿命】
平均寿命: 12歳~15歳
*個体の健康度や国・地域、気候、環境などによって寿命には差が生じます。
オーストラリアン・シェパード【大きさ・毛色・子犬(赤ちゃん)の販売価格は?】
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパード【オスの大きさ(体重・体高・体格)】
体高: 51cm~58cm
体重: 23kg~29kg
オーストラリアン・シェパードは、ハーディング・ドッグにしてはがっしりとした体型をしており、エネルギーとパワーを感じさせる「中型犬」です。
しかし、決して重さや緩みを感じさせるものではありません。
オーストラリアン・シェパード【メスの大きさ(体重・体高・体格)】
体高:46cm~53cm
体重:18kg~25kg
オス犬に対してメス犬はやや小柄で、メス犬らしい性徴感があります。
オーストラリアン・シェパード【毛色の種類】
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパードの毛色は「ブラック」「レッド」「ブルーマール」「レッドマール」を基本として、それらに「ホワイトマーキング」や「タン(カッパー)ポイント」のいずれか、またはその両方が入るもの、入らないものがあります。
「マール」とはいわゆる大理石のような不規則模様、タンは褐色(茶色)を指し、カッパーは銅のような色を意味します。
ホワイトはブレーズやマズルの下側、首、胸、四肢の下部などに出ますが、その場合、ボーダー・コリーとよく似ています。
一般的に、トライカラーとはブラック&タン&ホワイトを指すの対し、オーストラリアン・シェパードではブラック基調のトライカラーを「ブラック・トライカラー」レッド基調のトライカラーを「レッド・トライカラー」と呼ぶのは特徴的です。
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
色の組み合わせによって印象ががらっと変わるのもこの犬種の魅力ですが、ジャパン・ケネル・クラブ(JKC)によれば、スタンダード上、ブルーに関しては非公認の毛色となっています。
被毛の長さは中庸で、気候の変化に強いダブルコート。
胸や四肢の後ろ側、お尻には少し長めの飾り毛があります。
【参考元】ジャパン・ケネル・クラブ「犬種スタンダードで認められていない毛色について」
オーストラリアン・シェパード【子犬(赤ちゃん)の販売価格】
Yuki.243 / PIXTA(ピクスタ)
18万円~
*価格はあくまでも目安であり、販売者や犬の状況によって変動します。
ジャパン・ケネル・クラブ(JKC)におけるオーストラリアン・シェパードの登録数は139頭(2020年)。
街で見かけるチャンスが多いとは言えない数ですが、国内にもブリーダーがいるので手に入れることは可能です。
【参考元】一般社団法人ジャパン・ケネル・クラブ「2020年(1月~12月)犬種別犬籍登録頭数」
オーストラリアン・シェパード【特徴・性格・食事は?】
anri / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパード【容姿・スタイル】
オーストラリアン・シェパードは頭部のバランス、マズルの長さ、体のサイズ、骨量、被毛の長さ、どれを取っても全体的に中庸な犬と言えます。
尻尾がない、または短い犬では、そのシルエットそのものが特徴的で、尻尾がない故なのか、どこか骨太でどっしりとした印象を与えます。
マズルとスカルの長さはほぼ等しいか、もしくはマズルがわずかに短く、はっきりとしたストップの両脇に並ぶ眼はアーモンド型で、色はブラウン、ブルー、アンバー(琥珀色)。
時に両目の色が違うオッドアイ/バイアイになることもあります。
Kouki / PIXTA(ピクスタ)
色素の薄いブルーやアンバーは鋭い印象を受け、この犬種が仕事のできる犬であることをアピールしているかのようです。
頭蓋の高い位置に付いたやや大きめの耳は先端に丸みのある三角形で、半立ち耳と言ってもいいくらい根元が少し浮いた感じの垂れ耳になります。
何かに注意を向けた時には、ローズ・イヤー(ブルドッグのように耳の内側を見せて後方に反りかえる耳のこと)のようになることも。
胸は深みがあり、肘と同程度の高さになり、真っ直ぐな力強い脚で支えられ、首をきりっと上げた姿は作業犬としての自信に満ち溢れています。
▼オーストラリアン・シェパードの動く姿を見たい!という方は、AKCが公開している同犬種の紹介動画をご覧ください。
Australian Shepherd - AKC Dog Breed Series
オーストラリアン・シェパード【性格(気質)・魅力】
トレーニングに対する反応が高く、エネルギッシュで作業意欲に溢れ、牧羊犬・牧畜犬としてのみならず、警察犬や介助犬、捜索救助犬、セラピードッグとして活躍する犬たちがいるのも頷けます。
家族に対しては愛情深く、おおむね穏やかで友好的な性格の持ち主ですが、ハーダーとしての警戒心や縄張り心ももち合わせていることは言うまでもありません。
他人ともそこそこうまく付き合いながらもベタベタはせず、程良い距離を保てる、そうしたバランスがとれているあたりは多くのハーディング・ドッグに共通した特質でしょう。
活動的で、何か楽しいことをするのが好き。
とは言っても、静かにしている時は心得ており、動と静のバランスも取れています。
ただ、ハーダーであるだけに、何か群れた生き物を見ると反応しがちなのは玉に瑕ですが。
【参考元】Canyon Oaks Aussies「AUSTRALIAN SHEPHERD SERVICE DOG」
オーストラリアン・シェパード【食事(食べ物)・お手入れ】
OlhaSolodenko / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパードのごはん
オーストラリアン・シェパードは、子犬の成長期にはどんどん体重が増え、食べる量も増えていきますが、ある時期になると食べる量が減ることがあります。
それは体重の増加率が緩やかになり、おのずと必要エネルギー量も減るからです。
心配することではありませんが、食べる量が減るには体の不調やストレスなど他の原因の場合もあるので、犬の様子をよく観察し、気になることがある場合には、念のために動物病院で相談してみてください。
なお、子犬を迎えたならば、それまで食べていたのと同じものを2週間程度与え、それから各ご家庭でチョイスした食事と切り替えるといいでしょう。
その際、急に変えるとお腹を壊すことがあるので、1週間程度かけて少しずつ変えるようにします。
栄養バランスが整っており、お腹を安定させることを優先したいならドッグフードでも良いでしょうし、高齢期や入院時、災害時などを見据えて、犬にとって安全な範囲で何でも食べられるようにしたいということであればフードのメーカーを時々変更したり、手作り食や半手作り食などを与えたりするのも良いでしょう。
オーストラリアン・シェパードのお手入れ
Nynke van Holten / PIXTA(ピクスタ)
豊かなダブルコートのオーストラリアン・シェパードにはこまめなブラッシングが必要です。
飾り毛は必ずしもトリミングをする必要はありませんが、好みに応じて軽くトリミングをするのもいいでしょう。
中にはサマーカットをするケースもあるようですが、オーストラリアン・シェパードのような犬種ではカットを繰り返すことで毛伸びが悪くなったり、色が変わったりすることがあるのでご注意ください。
また、垂れた耳は蒸れやすく、汚れもたまりやすいので、定期的にチェックするとともにイヤークリーナーでお掃除を。
その際、綿棒で耳の穴の奥まで掃除をすると、かえって耳垢が奥に押し込まれてしまうことがあるので、耳の穴の手前くらいまでを優しく拭き取る程度にしましょう。
シャンプーは汚れが目立たないのであれば月に1回程度を目安に。
毛が濡れたままであると皮膚炎につながることがあるので、ドライングでは毛の根元までしっかり乾かすようにします。
意外に見逃しやすいのが歯のチェックです!
歯周病は他の病気に悪影響を与えてしまうことがありますが、全身麻酔をかけて歯石を除去するのも犬にとってはなかなか大変なこと。
それよりも毎日、もしくは1日おきの歯磨きで歯周病を予防したいものです。
オーストラリアン・シェパード【気をつける病気は?】
freeangle / PIXTA(ピクスタ)
気をつける病気①【股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)】
オーストラリアン・シェパードなどの大型犬に多い股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)。
この病気は股関節に緩みが生じ、お尻を左右に振るように歩く、後肢を同時に蹴るウサギのような走り方をする、散歩や段差を嫌がる、後肢の幅が狭いなどの様子が見られるようになります。
7割は遺伝的要素、3割は環境的要素が関係するとされ、生後1年未満の若齢で症状が出ることが多いといいます。
肥満や滑りやすい床などは症状を悪化させるため、体重コントロールや環境改善は重要となります。
オーストラリアン・シェパードには太りやすい個体もいるので、太らせ過ぎないよう、肥満には気をつけましょう。
【参考元】
・日本動物遺伝病ネットワーク「股関節形成不全とは」
・Australian Shepherd Health & Genetics Institute「Disease Prevalence in Aussies」
シンリ / PIXTA(ピクスタ)
気をつける病気②【肘関節異形成(ひじかんせついけいせい)】
通常、大型犬に多く発症すると言われるこの関節疾患は、肘の関節に異常が生じ、前肢の跛行が見られるようになります。
成犬に満たない生後5ヶ月~10ヶ月頃に発症することが多いとされ、重度の関節炎につながることから、早期発見早期治療が望まれます。
気をつける病気③【てんかん】
犬のてんかんとは、大脳に異常が生じ、脳の神経細胞が興奮して発作を繰り返す病気です。
大きくは、原因がわからない「特発性てんかん」と、脳腫瘍や水頭症、外傷、肝臓病などに起因する「症候性てんかん」とに分けられます。
さらには、症状も顔面や脚など体の一部が痙攣する「部分発作」と、意識を失ったり、全身が突っ張ったりする「全般発作」とに分けることができます。
注意が必要なのは、24時間以内に2回以上の発作がある(群発発作)、1回の発作が5分以上続く、または意識がはっきりと戻らないうちに発作を繰り返す(重責発作)という場合には危険な状態なのですぐに動物病院に連絡してください。
オーストラリアン・シェパード【病気になった場合、ペット保険は適用される?】
will&be / PIXTA(ピクスタ)
愛犬が病気や怪我をした時に、その治療費を補償してくれるのがペット保険ですが、どんな病気や怪我でも補償されるというわけではありません。
基本的に、
予防にあたるもの(例:狂犬病や各種感染症の予防ワクチン、フィラリア予防、マイクロチップ装着費用、健康診断費用)
病気にはあたらないと判断されるもの(例:歯石除去、乳歯遺残、去勢・避妊手術、交配・出産関連、トリミング関連)
先天性の異常、遺伝性疾患、すでに罹っている病気(例・膝蓋骨脱臼、股関節形成不全、進行性網膜萎縮症)
代替医療(例:アロマセラピー、ホメオパシー、理学療法)
などは補償対象外となるのが一般的です。
また、本来は病気のくくりであっても、鼠径(そけい)ヘルニア、臍(さい)ヘルニア、眼瞼(がんけん)内反・外反、停留睾丸(ていりゅうこうがん)なども補償対象外になることが多いです。
ただし、同じ病気であっても、A社では補償対象外であるのに対し、B社では補償対象となることもあり、ペット保険会社によって違いがあります。
加えて、加入できる年齢の制限や補償条件など各社各様なので、ペット保険の加入を考える時には、愛犬の健康リスクや年齢などを踏まえ、各ペット保険会社をよく比較検討して選ぶことをおすすめします。
オーストラリアン・シェパード【飼い方(しつけ)・散歩の仕方・注意点!】
Ryhor Bruyeu / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパード【飼い方(しつけ)】
オーストラリアン・シェパードは知性が高く、エネルギッシュで、刺激を求めるタイプであり、他人には慎重になる傾向にあることからも早い時期からの「社会化」が大切となります。
また、ハーダーの特質上、群れている生き物や走り去る車などに即座に反応し、追いかけたくなる衝動に駆られることもあるので、日頃のトレーニングはもちろんのこと、リードをしっかりと持ち、コントロールできるように管理することが大切です。
その際、首輪だけだと突発的な引っ張りによって首が締まってしまうこともあるため、ハーネスを使用すると良いでしょう。
引っ張りが強い場合は、引っ張り防止用のハーネスがおすすめです。
加えて、この犬種は活動的で、退屈な時間が長いと個体によっては破壊的行動に出る可能性もあります。
犬にとって退屈はストレスになり、ストレスは行動の問題につながることも。
たとえば、留守番が長くなるようであれば、留守番をさせる前に十分に遊んであげ、留守番中は退屈させないようにフードを隠したおもちゃをいくつか部屋に隠しておき、それで遊ばせるのも一つの方法です。
OlhaSolodenko / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパード【散歩の仕方】
運動性能が高く、スポーツドッグとしても活躍する犬がいるオーストラリアン・シェパードでは、目安として1日に1~2時間の運動・散歩はさせてあげたいものです。
ただ歩くのではなく、「一緒にジョギングをする」「ボールやディスクで遊ぶ」「ドッグランで思い切り走らせる」など、少しでも体を使うことができる時間を設けてあげられるとベストです。
また、仕事をすることが好きなオーストラリアン・シェパードなので、物を持って来させる、ドアを開けさせるなど何か仕事を与えてあげると多少なりとも彼らの欲求を満たしてあげることができるでしょう。
散歩に行けない日は匂いを使ったゲームをする、かくれんぼをするなど、脳を活性化するとともに楽しい時間を作ってあげましょう。
オーストラリアン・シェパード【注意点!】
オーストラリアン・シェパードをはじめ、コリーやシェットランド・シープドッグ、ボーダー・コリーなどのハーダー系の犬ではMDR1(マルチ・ドラッグ・レジステンス・トランスポーター/MDR-1 Transporter)という遺伝子の変異により、一部の薬剤に対する感受性が高く、嘔吐や痙攣(けいれん)、沈鬱(ちんうつ)、振戦、意識障害、呼吸低下といった副反応の他、昏睡(こんすい)、場合によっては死に至るケースもあることが知られています。
MDR1は蛋白質の一つであるP糖蛋白を生成するには必須の遺伝子なのですが、P糖蛋白は血液脳関門(余計な物質が脳に入り込まないように制御している機能)や肺、腸などの毛細血管内に存在し、毒性のある物質を細胞に取り込まないようにバリアとなる働きをもっています。
しかし、MDR1が欠如していることで、P糖蛋白がうまく作られず、毒性物質がより多く体内に取り込まれてしまい、強い副反応が出てしまうというわけです。
LustreArt / PIXTA(ピクスタ)
そうした副反応が出る薬剤には駆虫薬や抗菌剤、下痢止め、抗生剤、抗癌剤、免疫抑制剤などがありますが、筆頭に挙がるのがフィラリア予防薬として使用されるイベルメクチンやモキシデクチン。
フィラリア予防薬として使用する場合は微量なのでそれほど問題ないという話もありますが、いずれにしてもオーストラリアン・シェパードでは、フィラリア予防薬を使用する際、動物病院でよく相談することをおすすめします。
現在、MDR1遺伝子が欠如しているのか血液検査で調べることも可能なので、心配な場合は併せて動物病院でご相談ください。
参考までに、オーストラリアン・シェパード健康&遺伝学研究所によると、オーストラリアン・シェパードにおけるMDR1変異の割合は50%だそうです。
【参考元】
・日本動物医療センター フリーマガジンSmile「コリーやシェルティに危険な薬があるって本当?」(2020冬号、No. 022 p10-13)
・Australian Shepherd Health & Genetics Institute「MDR1 FAQs」
オーストラリアン・シェパード【まとめ】
MirasPictures / PIXTA(ピクスタ)
オーストラリアン・シェパードは作業意欲が高く、アクティブで、家庭犬はもちろん働く犬としても活躍できる犬種です。
彼らの良さをどう引き出してあげるか、犬としての欲求をどう満たしてあげるか、それは飼い主さんの肩にかかっています。
特にスポーツやアウトドアが好きな人には良き相棒となることでしょう。
なにより、互いの絆を築くことができれば、人生最良の友となれるだけの資質を彼らはもっています。
*注意:犬は生き物であり、性格やサイズ、運動量、寿命など個体差があります。
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