【獣医師監修】犬がボーっとしている。考えられる原因や症状、おもな病気は?
犬がボーっとしている。飼い主の声やごはんにあまり反応しない…。起きてはいるし意識もあるのに、いつもより反応が鈍かったり興味を示さないといった様子を「ボーっとしてる」ととらえる飼い主は多いようです。犬がボーっとしているときには一体どんな原因があるのでしょうか?
更新日:
日本大学大学院獣医学研究科修了 博士(獣医学)
【資格】
◇獣医師
【所属】
◆公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部 会員
◆JPMA(社)日本ペットマッサージ協会 理事
◆ペットシッタースクール(ビジネス教育連盟) 講師
◆ペット栄養管理士(日本ペット栄養学会認定)
◆日本獣医皮膚科学会 会員
◆日本小動物歯科研究会 会員
◆日本ペット栄養学会 会員
◆産業カウンセラー(一般社団法人 日本産業カウンセラー協会認定)
◆ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド(HANB)教育マスターインストラクター(日本ヒューマン・アニマル・ネイチャー・ボンド・ソサエティ認定)
「最良のホスピタリティと獣医療を提供する」をミッションに、地域や飼い主のニーズに応えている。
犬の食事についての造詣も深い。
【著書】
「イラスト、写真でよくわかる 愛犬の育て方~選び方・しつけ・飼い方・健康管理~」(新星出版社)
「年をとった愛犬と幸せに暮らす方法」(WAVE出版)
「愛犬健康生活BOOK 5歳からはじめる病気と介護」(主婦と生活社)
【監修】
「愛犬の介護ガイドBOOK」(文化出版局)
ほか
犬がボーっとしている【考えられる原因】
Veronika 7833/ Shutterstock.com
「ボーっとしている」という表現はとても抽象的です。
ボーっとしているのか、ぐったりしているのか、意識が混濁しているのか、獣医師ではないわたしたち飼い主の判断は、とてもあいまいなものです。
ここでは、カラダを起こしているいないに関わらず、意識はあるけれどほとんど動かない、意識はあるけれど反応が鈍い、起きているのに目がうつろ…といった状態を「ボーっとしている」として、考えられる原因を解説していきます。
加齢
人間同様に犬にも認知症はあります。
加齢により徐々に認知機能が衰えていくにつれて、周囲の物に興味を示さなくなり、ボーっとしているように見えることがあります。
Tunde Gaspar/ Shutterstock.com
脳神経系の異常
犬がボーっとするという症状が出る病気でまず疑われるのが、脳や神経の異常です。
脳神経系に障害が起きた場合には、ボーっとしているような状態になることがあります。
小型犬に多く見られる水頭症などでは障害を受ける部位によって、動作が緩慢になる、元気消失、周囲に興味を示さないなどの症状が見られます。
ホルモンバランスの異常
甲状腺や副腎皮質の機能が低下すると、寝ることが増えたり、反応が鈍くなるなどの症状が見られます。
老犬に多く見られるため、加齢が原因であると飼い主は見過ごしてしまう可能性があります。
ホルモンバランスの異常が原因の場合には、元気もなくなっているため注意が必要です。
Marco Saracco/ Shutterstock.com
熱中症
熱中症の症状として、目がうつろになり、ボーっとしているように見えることがあります。
高温多湿の車内や室内に長時間いたり、暑い季節に散歩すると、カラダに熱がこもったままになるため、多臓器不全などの深刻な症状になりかねません。
犬は人間のようにうまく汗をかいて体温を下げるということができない、人間よりも熱に弱い生き物であることを知っておくことが重要です。
発熱
人間と同様に、熱がある場合には犬もボーっとします。
反応が鈍くなる、あまり動きたがらない、食欲がない、などの症状も一緒に出ることが多いので注意してください。
Javier Brosch/ Shutterstock.com
視力の低下
失明あるいは失明寸前の状態では、犬はあまり動きまわらなくなるので、「犬がボーっとしている」と見える可能性があります。
白内障など徐々に進行する視力低下は、飼い主が比較的気づきやすい病気ですが、目の病気には、飼い主が気がつかないうちに失明してしまう病気もあります。
犬は、視力が低下していても、家の中では家具の配置などを覚えているため動きまわることはできますが、外に出ると周囲が見えないため、犬がボーっとしているように見えるかもしれません。
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犬がボーっとしている【こんな症状は要注意!】
fongbeerredhot/ Shutterstock.com
犬がボーっとしているのと同時に、以下の症状が見られる場合は、すみやかに獣医師に診てもらいましょう。
元気がない・ぐったりしている
同じ姿勢のまま動かない
発作を起こした
熱がある
食欲がない
意識はあるのに呼び声やごはんに反応しない
歩き方がおかしい・歩かない
.
犬がボーっとしている【この症状で考えられるおもな病気】
NAAN/ Shutterstock.com
犬の脳腫瘍
犬の脳腫瘍(のうしゅよう)とは、脳に腫瘍ができる病気で、もともと脳に腫瘍ができる「原発性」と他から腫瘍が転移する「続発性」があります。
発作や旋回、眼振、運動失調など、腫瘍の部位によって症状が異なります。
また、性格や顔の表情が変わることもあります。
犬の水頭症
犬の水頭症(すいとうしょう)とは、頭蓋骨の内部を満たしている脳脊髄液が異常に増え、脳を圧迫することで、てんかん発作や失明、歩行障害などを引き起こす病気です。
感覚の麻痺、視力障害、過食など、症状はさまざまですが、目立った症状が現れないこともあります。
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犬の認知機能低下
犬の認知機能低下(にんちきのうていか)とは、加齢により起きる、いわゆる認知症です。
呼んでも反応がない等、ぼんやりする時間が増えるほか、失禁、昼夜逆転、徘徊などの行動障害が現れます。
柴系の犬に多い傾向があります。
犬の甲状腺機能低下症
犬の甲状腺機能低下症(こうじょうせんきのうていかしょう)とは、代謝などをコントロールする甲状腺ホルモンが分泌されなくなる病気です。
甲状腺の腫瘍が原因であることもあります。
おもな症状として、多飲多尿、肥満、活動性の低下、体温の低下、被毛のつやがなくなる、尾っぽの毛が少なくなる、食事量の減少といった症状をきたします。
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犬の熱中症
犬の熱中症(ねっちゅうしょう)とは、体温が上がりすぎ、内臓や脳の機能不全が起きる病気です。
犬の平熱は38度前後ですが、41度を超えると熱中症とされます。
初期はパンティングやよだれ、頻脈などが現れ、進行すると、血液の循環不全からけいれんや昏睡、散瞳が起こり、死に至ります。
犬の白内障
犬の白内障(はくないしょう)とは、目のレンズの役割をしている水晶体が白く濁り視覚障害を起こす病気です。
犬では遺伝性疾患であることが多いですが、そのほかに老化や糖尿病、外傷などが原因で水晶体の透明度が落ちて濁ります。
進行すると、視覚が低下し、慣れない環境下では物にぶつかりながら歩くようになります。
Stickler/ Shutterstock.com
犬の緑内障
犬の緑内障(りょくないしょう)とは、眼球内部の圧力が高まり、再生のできない中枢神経の一つである視神経を圧迫することで失明してしまう病気です。
原発性の緑内障の初期は無症状ですが、進行すると瞳孔が開いたままになり、瞳の中がオレンジ色や緑に見えます。
さらに悪化すると、眼球が大きくなり、まぶたが閉じられなくなります。
残念ながら発症してしまうと、完治させることはできません。
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