【獣医師監修】犬の「中耳炎」原因や症状、検査・診断、治療、予防方法、なりやすい犬種は?

犬の中耳炎 (ちゅうじえん)とは、中耳に炎症が起こる病気です。多くは外耳の炎症が慢性化することで、鼓膜を破って炎症が中耳に波及し、中耳炎になります。ここでは、犬の中耳炎の原因や症状、なりやすい犬種、治療法などについて解説します。

先生にお聞きしました
濱本 裕仁 先生
日本獣医生命科学大学 付属動物医療センター 放射線科 獣医師 (獣医学博士)

【資格】
獣医師

日本獣医生命科学大学獣医学科を卒業後、同大学大学院獣医生命科学研究科にて博士(獣医学)の学位を取得。

2018年より日本獣医生命科学大学附属動物医療センターの放射線科を担当。伴侶動物におけるCTやMRIを用いた画像診断や放射線治療に従事。
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犬の中耳炎とは?

犬の中耳炎とは

Helen Sushitskaya/Shutterstock.com

「犬の中耳炎(ちゅうじえん)」とは、文字通り中耳に炎症が起きる病気です。

中耳は、鼓膜・耳小骨(じしょうこつ)・耳管(じかん)・鼓室から構成されており、中耳炎の炎症部位の多くは「鼓室」です。

犬の耳【構造】

犬の耳は、耳介(じかい)で集めた音を鼓膜(こまく)、そして中耳へ伝えるために、耳道(じどう)という細い筒状の構造になっています。

そのため、外耳の炎症が中耳に波及することで中耳炎になることが多くあります。

犬の中耳の構造(中耳)

犬の中耳の構造(中耳)

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原因

犬の中耳炎【原因】

犬の中耳炎【原因】

Dimedrol68/Shutterstock.com

犬の中耳炎は、外耳炎が慢性化または悪化して発生することが多く認められます。

犬の中耳炎の原因は、以下のような外耳炎を進行させる原因と同じです。

中耳炎の原因①【アレルギー・寄生虫、肌の異常など】

「食物アレルギー」や「アトピー性皮膚炎」「ミミヒゼンダニなどの寄生虫」「異物・腫瘍」「角化異常(肌がゴワゴワして垢のようにはがれる状態)」などは、単独で耳に炎症を引き起こす主因となります。

中耳炎の原因②【基礎疾患・耳道(じどう)の狭窄】

「代謝性疾患」「内分泌異常」「皮膚疾患」「ポリープ・腫瘍」による耳道の狭窄(きょうさく)などは、直接的ではないものの、炎症の発生を誘発する原因となります。

中耳炎の原因③【細菌・真菌の繁殖】

細菌(ブドウ球菌・大腸菌など)や真菌(マラセチア・酵母菌など)が耳の中で繁殖すると、中耳炎を悪化または慢性化させる原因となることがあります。

症状

犬の中耳炎【症状】

犬の中耳炎【症状】

iStock.com/Capuski

犬の中耳炎には特徴的な症状はなく、外耳炎の二次的疾患としてとらえられることがほとんどです。

そのため、基本的には外耳炎と同じ症状が現れますが、炎症が進行すると内耳炎と似た症状が現れることもあります。

耳を痒がる
耳を触られるのを嫌がる
耳が臭い
頭を振る

犬の外耳炎と同じ症状を示します。

犬 中耳炎 眼振

iStock.com/primeimages

目が揺れる(眼振)
首を傾ける(斜頸)
グルグル回る
片方の目が落ち込む
瞼(まぶた)が下がる
瞬膜が突出する
耳が聞こえにくい

中耳炎が進行すると、内耳炎と似た症状を示します。

発症しやすい犬種

犬の中耳炎【発症しやすい犬種】

犬の中耳炎【発症しやすい犬種】

Steve Bruckmann/Shutterstock.com

犬の中耳炎はすべての犬種に発症の可能性があり、耳の中の通気性の悪さから、以下の犬種の発症リスクが高いと言われています。

特に、「アメリカン・コッカ―・スパニエル」「フレンチ・ブルドッグ」などには注意が必要です。

発症しやすい犬種①【耳が垂れている犬種】

アメリカン・コッカ―・スパニエル

ゴールデン・レトリバー

ミニチュア・ダックスフンド

ラブラドール・レトリバー

発症しやすい犬種②【外耳道に毛が生えている犬種】

発症しやすい犬種②【外耳道に毛が生えている犬種】

iStock.com/fotyma

キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル

シー・ズー

ミニチュア・シュナウザー

トイ・プードル

発症しやすい犬種③【耳道(じどう)が狭い犬種】

チワワ

ポメラニアン

マルチーズ

発症しやすい犬種④【短頭種】

発症しやすい犬種④【短頭種】

iStock.com/gollykim

パグ

フレンチ・ブルドッグ

ボストン・テリア

【中耳】から炎症を起こしやすい犬種

中耳炎の多くは、外耳炎が慢性化した場合に起こります。

ところが、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルなどのキャバリア種は、中耳から炎症を起こしやすい犬種として知られています(原発性分泌性中耳炎)。

その原因は不明ですが、症状がないことが多く、発見されずに見過ごされることも多いようです。

診断方法

犬の中耳炎【検査・診断方法】 

犬の中耳炎【検査・診断方法】 

Evgeniy Kalinovskiy/Shutterstock.com

犬の中耳炎は診断が難しく、外耳炎の治療中に見つかることも多いです。

中耳炎を診断する際は以下の検査を行います。

検査①【耳鏡(じきょう)検査】

耳鏡(じきょう)を用いて耳道(じどう)内と鼓膜に異常がないかを調べます。

ただし、この検査では鼓膜を精査することが難しい場合があり、完全な中耳炎の診断ができないことがあります。

検査②【CT検査】

炎症によって中耳内部の状況や耳周辺の骨が溶けているかを調べます。

検査③【MRI検査】

炎症が内耳や脳に浸潤していないかを調べます。

検査④【ビデオオトスコープ】

耳の中にカメラを挿入し、耳道や鼓膜を拡大して観察することができる検査機です。

耳鏡(じきょう)と比べて中耳の貯留物の精査を行うことが可能であり、推奨される検査法です。

治療方法

犬の中耳炎【治療方法】 

治療法①【鼓室(こしつ)の洗浄】

治療法①【鼓室(こしつ)の洗浄】

iStock.com/Tatyana

犬の中耳炎を治療するにあたって、もっとも大切なのは鼓室を洗浄することです。

ビデオオトスコープの鉗子(かんし)などを用いてアレルギーや寄生虫など、耳に異常をもたらす原因を取り除いたのち、耳の中をきれいに洗います。

治療法②【再発防止の処置】

再発防止のために耳毛やポリープなどを適宜除去します。

かゆみがひどい場合、抗生物質や消炎薬を投与することもあります。

治療法③【外科的治療】

上記の治療を行っても改善が見られない場合は、耳道切開術(じどうせっかいじゅつ)・鼓室胞切開術(こしつほうせっかいじゅつ)・耳道切除術(じどうせっかいじゅつ)などの外科的治療を行います。

予防・対策

犬の中耳炎【予防対策】 

予防対策①【耳の中を清潔に保つ】

予防対策①【耳の中を清潔に保つ】

iStock.com/Ирина Мещерякова

アレルギーや寄生虫など炎症を引き起こす主因を発生させないためには、耳の中を清潔に保つことが大切です。

シャンプーのときは耳に水が入らないようにする、涼しく快適な環境を整えるといった方法を取り入れてみましょう。

愛犬の耳掃除も効果的な方法ですが、やりすぎは耳毛を増やしてしまうため禁物。

適切な頻度とやり方を覚えて、愛犬の耳を清潔に保ちましょう。

関連記事
飼い主が知っておきたい犬の耳掃除の正しい方法

予防対策②【基礎疾患を早めに治療しておく】

代謝性疾患や皮膚疾患など、中耳炎を誘発する基礎疾患があれば、早めに治療しましょう。

予防対策③【外耳炎を治療する】

中耳炎の多くは外耳炎が波及した結果生じます。

外耳炎の症状が現れたら、炎症が中耳におよぶ前に治療しましょう。

犬の中耳炎【間違えやすい病気】

間違いやすい病気①【犬の外耳炎】

間違いやすい病気①【犬の外耳炎】

iStock.com/Watcharin panyawutso

犬の外耳炎(がいじえん)とは、外耳に炎症が起きることを指します。

耳をかゆがったり、耳だれが出たり、耳を触るのを嫌がるほか、難聴になる可能性があります。

また、外耳炎が重症化すると、鼓膜に穴が開いて中耳炎になる恐れもあります。

間違いやすい病気②【犬の内耳炎】

犬の内耳炎(ないじえん)とは、耳の奥の内耳に炎症が起こる病気です。

内耳にある聴覚神経やバランスを保つ前庭神経に障害されると、難聴や同じ方向に回ったり、頭を傾けたりします。

重症の場合、平行感覚が麻痺し、歩けなくなることもあります。

犬の中耳炎【まとめ】

犬の中耳炎【まとめ】

iStock.com/RyanKing999

「犬の中耳炎(ちゅうじえん)」は、中耳に炎症が起きる病気です。

犬の中耳炎には特徴的な症状はなく、外耳炎の二次的疾患としてとらえられることがほとんどです。

基本的には外耳炎と同じ症状が現れますが、炎症が進行すると内耳炎と似た症状が現れることもあります。

愛犬に「耳をかゆがる」「耳が臭い」「頭を振る」などの症状がみられ、心配な場合には、速やかに動物病院で獣医師に診てもらいましょう。

また、人間同様に健康診断を受けることで愛犬の病気を早期に発見することが可能になるので、定期的に動物病院で検診をうけることをおすすめします。

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