【獣医師監修】犬の「内耳炎」原因や症状(眼振)、検査・診断、治療、予防法、なりやすい犬種は?
犬の内耳炎 (ないじえん)とは、耳の奥の内耳に炎症が起こる病気です。内耳には音やカラダの位置情報を脳へ伝える役割があるため、炎症が起きると体のバランス感覚が崩れたり、音が聞こえづらくなる症状が現れます。こちらでは、犬の内耳炎について詳しく解説します。
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【資格】
◇獣医師
日本獣医生命科学大学獣医学科を卒業後、同大学大学院獣医生命科学研究科にて博士(獣医学)の学位を取得。
2018年より日本獣医生命科学大学附属動物医療センターの放射線科を担当。伴侶動物におけるCTやMRIを用いた画像診断や放射線治療に従事。
目次
シュナウザー
犬の内耳炎とは?
iStock.com/ThamKC
犬の「内耳炎(ないじえん)」とは内耳(ないじ)に炎症が起きる病気です。
内耳にはカラダのバランス感覚をつかさどる器官(半規管・前庭)と音を脳に伝える器官(蝸牛)があり、炎症が起こると前庭神経や聴覚神経が障害されます。
犬の耳【構造】
犬の耳の構造は、耳介で集めた音を中耳(ちゅうじ)、内耳へと伝えるために細い筒状の構造になっています。
そのため、外耳の炎症が中耳に波及することで、中耳炎や内耳炎になることが多くあります。
犬の耳の構造(内耳)
犬の内耳炎【原因】
Iuliubo/ Shutterstock.com
犬の内耳炎(ないじえん)は外耳炎が進行して発症する中耳炎が、さらに悪化または慢性化して発生するものです。
内耳炎の原因は、以下のような中耳炎を進行させる原因と同じです。
内耳炎の原因①【基礎疾患や耳道の狭窄(きょうさく)】
代謝性疾患、内分泌異常、皮膚疾患、ポリープや腫瘍による耳道の狭窄(きょうさく)などは、直接的ではないものの、炎症の発生を誘発する原因となります。
また、歯周炎など歯の疾患がある場合、炎症が口腔と中耳をつなぐ耳管を通って中耳に波及し、内耳に到達して炎症を生じさせることもあります。
内耳炎の原因②【細菌・真菌の繁殖】
細菌(ブドウ球菌・大腸菌など)や真菌(マラセチア・酵母菌など)が耳の中で繁殖すると、中耳炎を悪化または慢性化させる原因となることがあります。
犬の内耳炎【症状】
Lindsay Helms/Shutterstock.com
犬の内耳に炎症が起きると、以下のような症状が現れます。
首を傾ける(斜頸)
目が揺れる(眼振)
グルグル回る(旋回)
歩行困難になる
耳が聞こえにくい
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犬の内耳炎【発症しやすい犬種】
iStock.com/beronb
犬の内耳炎はすべての犬種に発症の可能性があり、耳の中の通気性の悪さから、以下の犬種の発症リスクが高いと言われています。
特に、アメリカン・コッカ―・スパニエルやフレンチ・ブルドッグなどには注意が必要です。
発症しやすい犬種①【耳が垂れている犬種】
アメリカン・コッカ―・スパニエル
ゴールデン・レトリバー
ミニチュア・ダックスフンド
ラブラドール・レトリバー
発症しやすい犬種②【外耳道に毛が生えている犬種】
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キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル
シー・ズー
ミニチュア・シュナウザー
トイ・プードル
発症しやすい犬種③【耳道が狭い犬種】
チワワ
ポメラニアン
マルチーズ
発症しやすい犬種④【短頭種】
パグ
フレンチ・ブルドッグ
ボストン・テリア
犬の内耳炎【検査・診断方法】
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犬の内耳炎を診断するには、以下の検査を行います。
検査①【神経学的検査】
神経学的検査は、斜頸(しゃけい)や眼振(がんしん)などの神経症状を示す犬に対し、病変部位を特定するための検査です。
観察(視診)から始まり、首をかしげているか、目が揺れているか、呼びかけに反応するかなどを調べます。
検査②【脳の炎症を調べる検査】
犬の内耳炎は、重症化すると炎症が脳にまで達し、髄膜炎(ずいまくえん)を併発することがあります。
そのため、CTやMRIなど高度な画像診断によって、炎症が脳に浸潤していないかを調べます。
あわせて脳脊髄液(のうせきずいえき)を採取し、炎症細胞の有無を確認。脳が細菌感染しているかどうかをチェックします。
犬の内耳炎【治療方法】
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犬の内耳炎の治療は、中耳炎の治療とほぼ同じです。
治療法①【鼓室(こしつ)の洗浄】
犬の内耳炎を治療するにあたって、もっとも大切なのは鼓室(こしつ)を洗浄することです。
ビデオオトスコープの鉗子(かんし)などを用いてアレルギーや寄生虫など、耳に異常をもたらす原因を取り除いたのち、耳の中をきれいに洗います。
治療法②【再発防止の処置】
再発防止のために耳毛やポリープなどを適宜除去します。
かゆみがひどい場合、抗生物質や消炎薬を投与することもあります。
治療法③【外科的治療】
上記の治療を行っても改善が見られない場合は、耳道切開術(じどうせっかいじゅつ)・鼓室胞切開術(こしつせっかいじゅつ)・耳道切除術(じどうせつじょじゅつ)などの外科的治療を行います。
犬の内耳炎【予防対策】
予防対策①【耳の中を清潔に保つ】
Barna Tanko/Shutterstock.com
アレルギーや寄生虫などの炎症を引き起こす主因を発生させないためには、耳の中を清潔に保つことが大切です。
シャンプーのときは耳に水が入らないようにする、涼しく快適な環境を整えるといった方法が有効です。
愛犬の耳掃除も効果的な方法ですが、やりすぎは耳毛を増やしてしまうため禁物。適切な頻度とやり方を覚えて、愛犬の耳を清潔に保ちましょう。
関連記事
飼い主が知っておきたい犬の耳掃除の正しい方法
予防対策②【基礎疾患を早めに治療しておく】
代謝性疾患や皮膚疾患など、内耳炎を誘発する基礎疾患があれば、早めに治療しましょう。
予防対策③【外耳炎・中耳炎を治療する】
内耳炎の多くは中耳炎が波及して起こり、中耳炎の多くは外耳炎が波及した結果起こります。
外耳炎や中耳炎の症状が現れたら、炎症が内耳に及ぶ前に治療しましょう。
予防対策④【歯のケア】
歯磨きや歯石取りなどの歯のケアを行い、歯周炎などの歯の細菌感染を防ぎましょう。
犬の内耳炎【間違えやすい病気】
間違いやすい病気①【犬の中耳炎】
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犬の中耳炎(ちゅうじえん)とは、外耳に炎症が起きることを指します。
耳をかゆがったり、耳だれが出たり、耳を触るのを嫌がるほか、難聴になる可能性があります。
また、外耳炎が重症化すると、鼓膜に穴が開いて中耳炎になる恐れもあります。
間違いやすい病気②【犬の特発性前庭障害】
犬の特発性前庭障害(とくはつせいぜんていしょうがい)とは、原因不明で突然平衡感覚に障害が起きる病気です。
眼振や首を傾けたように頭が斜めになったり、円を描くように回る旋回が現れます。
嘔吐や食欲不振が起こり、よろめいて立てない状態になることもあります。
犬の内耳炎【まとめ】
iStock.com/GeorgePeters
犬の「内耳炎(ないじえん)」とは内耳(ないじ)に炎症が起きる病気です。
犬の内耳炎(ないじえん)は外耳炎が進行して発症する中耳炎が、さらに悪化または慢性化して発生するものです。
愛犬に「首を傾ける(斜頸)」「目が揺れる(眼振)」「グルグル回る(旋回)」などの症状がみられ、心配な場合には、速やかに動物病院で獣医師に診てもらいましょう。
また、人間同様に健康診断を受けることで愛犬の病気を早期に発見することが可能になるので、定期的に動物病院で検診をうけることをおすすめします。
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