【獣医師監修】犬にビール(アルコール)を飲ませては絶対ダメ!理由と飲んでしまった時の対処法!
犬にビールを飲ませたり、舐めさせてはいけません。ビール一口くらい平気かな?と思いがちですが、犬はほんの少しでもアルコール中毒を発症する可能性が高く、場合によっては命に関わることもあります。 犬にビールが危険である理由、誤飲した時によくみられる症状や対処法について解説します。
更新日:
2014年-2019年 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護大学 教授
2019年- 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護専門職短期大学 学科長/教授
【学歴・経歴】
◇1972年 北里大学畜産学部獣医学科卒業 獣医学士
◇2013年 北里大学獣医学系研究科研究生修了 博士(獣医学)
◇1982年-2019年 動物病院NORIKOに勤務
◇1986年- 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物専門学校 非常勤講師
◇2004年-2007年 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護短期大学 非常勤講師
◇2014年-2019年 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護大学 教授
◇2019年- 学校法人ヤマザキ学園 ヤマザキ動物看護専門職短期大学 学科長/教授
【専門分野】
◇獣医病理学
◇動物栄養学(動物臨床栄養学)
◇動物看護学
【資格】
◇獣医師
◇獣医学 博士(獣医学)
◇衛生検査技師
◇ペット栄養管理士
◇KYG栄養カウンセラー
◇日本獣医ホメオパシー医学会認定獣医
◇日本ホメオパシー医学会認定獣医
◇中学校教諭一級普通免許(理科)
◇高等学校教諭二級普通免許(理科)
【所属学会】
◆日本獣医がん学会
◆一般社団法人 日本統合医療学会
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会
◆日本ウマ科学会
◆日本動物看護学会
◆一般社団法人 日本ホメオパシー医学会
◆一般社団法人 日本獣医ホメオパシー医学会
【著作物】
・ 『ペットがガンになってしまったら』(共著)(メタモル出版)
・ 『ペットがガンに負けないために』(メタモル出版)
【翻訳 共著】
・Animal Health Technoloogy
邦訳表題:「アニマルヘルステクノロジー」
・CANINE REHABILITATION TEXT FOR THE ANIMAL HEALTH TECHNICIAN BASIC LEVEL
邦訳表題:「犬のリハビリテーション」
【飼育動物】
トイプードル、日本猫(各1匹)
【ペット歴】
幼少期の3歳頃から、日本犬、秋田犬、スピッツ、ヨークシャーテリア、プードル、日本猫など
現在、耳の聞こえないトイプードル(15歳)と、4歳頃から目の見えなくなったキジトラ猫(11歳)と老夫婦で楽しく暮らしています。
【ペットへの想い、職業上のペットとのかかわり】
ペットはズバリ!「臨床の師」
大学卒業と同時に研究所の病理研究員として顕微鏡相手の毎日を過ごしたのち、友人の動物病院開業を機に勤務医として臨床獣医療に携わることになった私にとって、ペットは暖かくて、かわいらしくて、懸命に辛い治療にも耐えて反応してくれる患者というより先生でした。
この子達にとって何が最良の治療法かと思い悩み、体に優しい自然療法も取り入れたものを行ってきました。
今の私にとってペットは「健康維持を第一」として、病気とも上手に付き合い、共により良い状態になることを目指す協力者です。
目次
犬にビールを飲ませてはダメ!その【理由】は?
damedeeso _ PIXTA(ピクスタ)
犬は人間と異なり、アルコールを分解することができません。
そのためアルコールが入ったビールを飲むと、”命を落とす危険”があります。
【参照元】一般社団法人 全日本動物専門教育協会 愛玩動物救命士養成講座⑥犬・猫に危険な食べ物や中毒について知る
犬がビールを飲むと、ビールに含まれるアルコールの大部分は体内に急速に吸収されます。
そして、血液脳関門(blood brain barrier)を通過し、犬の脳に影響を与えます。
血液脳関門は、脳の毛細血管にあるバリアのような機能のことで、脳に通す物質を選択・調節しています。
【参照元】岡野研Weblog慶応義塾大学医学部生理学教室×岡野研「ショウジョウバエグループ」
iStock.com/kokoroyuki
体内のアルコールは分解されないままなので、呼吸器、心臓や血管、肝臓、腎臓などの内臓にも影響を及ぼします。
【参照元】Frontiers in Veterinary Science「Household Food Items Toxic to Dogs and Cats」
「うちの犬はビールが好き」「晩酌の時ちょっとだけ舐めさせているけど、何ともない」「酔っ払う姿がかわいい」という方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、愛犬の体には、アルコールが大きな負担を与えていることが考えられます。
幸運にもたまたま何でもなかっただけ、と考え直し今日から飲ませることはやめましょう。
iStock.com_prospective56
たとえ故意に飲ませることがなくても、こぼしたビールやコップに残ったビールを、犬が飲んでしまう可能性もあります。
普段の晩酌タイムはもちろん、バーベキューなど人がたくさん集まってお酒を飲むときは、飼い主や周囲の人も開放的な気分になりやすく特に注意が必要です。
iStock.com_prospective56
また、バーベキューなどでよく使われる消毒用ウェットティッシュも、アルコールが含まれていることがあります。
手を拭いた「アルコールウェットティッシュ」は、その辺に置いたままにしないようにしましょう。
特に、食品の匂いがついていると、犬が食べてしまう危険性があります。
犬は、好奇心旺盛な動物です。
人間がおいしそうに飲んでいるビールや、手にしたものに興味を持つことは、十分考えられます。
特に、子犬は、なんでも口にする傾向があるので気をつけましょう。
お酒の席では、犬はクレートなどに入れておくと安心です。
犬に【ノンアルコール】ビールを与えても大丈夫?
leonpapa _ PIXTA(ピクスタ)
ノンアルコールビールは、人間用に作られているので、犬に与えることはやめましょう!
どうしても犬と一緒に飲みたい場合は、犬が飲んでも害のない「犬用ビール」(塩分、アルコール・炭酸抜き)が販売されているので、検討してみてはいかがでしょうか?
犬がビールの誤飲【対処法】【応急処置】は?
iStock.com_bymuratdeniz
犬がビールを飲んでしまった場合、飼い主はあわてずに、まずは落ち着くことが大切です。
ほんの少し舐めただけで特に症状が出ていない場合も、動物病院での受診をおすすめします。
特に、「心臓」「肝臓」「腎臓」に持病のある犬や、子犬、老犬は注意が必要です。
犬のビールの誤飲、対処法・応急処置①【動物病院に連絡する】
かかりつけの動物病院に連絡します。
深夜や休診日は、救急対応している動物病院に連絡をしましょう。
犬のビールの誤飲、対処法・応急処置②【時間を伝える】
犬がビールを何時ごろ飲んだか、または今から何分前に飲んだかなど、なるべく詳しく伝えましょう。
犬のビールの誤飲、対処法・応急処置③【量を伝える】
愛犬が「ビールをどのくらい飲んだか?」量を伝えることも重要です。
正確に量がわからなくても「グラスの半分程度」などとすると、伝わりやすくなります。
犬のビールの誤飲、対処法・応急処置④【今の犬の様子を伝える】
立てない、ふらふらしているなど、犬の様子を伝えます。
吐いているときは回数も伝えるといいでしょう。
余裕があれば、犬の様子を動画で撮っておくと診察の際に説明しやすくなります。
犬のビールの誤飲、対処法・応急処置⑤【応急処置は獣医師の指示に従う!】
獣医師の指示に従って行動することが大切です。
飲んだことに気づいた時点で吐かせる方法がありますが、飼い主が吐かせるのはなかなか困難です。
無理に吐かせないようにしましょう。
犬のビールの誤飲、対処法・応急処置⑥【日頃から心がけたいこと】
普段からかかりつけの動物病院で、緊急時にはどうしたらよいか相談しておきましょう。
また、深夜や休診日に対応してくれる、救急の動物病院の連絡先を控えておくと安心です。
【参照元】公益社団法人 東京都獣医師会杉並支部杉並区獣医師会
犬のビールの誤飲【中毒症状】は?
Mat Hayward- stock.adobe.com
犬がビールを飲んだ場合に生じるアルコールによる中毒症状は、次のようなものが考えられます。
犬によって、また摂取量によっても異なりますが、約30 ~1時間程度で生じることが多いようです。
犬のビールの誤飲、中毒症状①【初期によくみられる症状】
ふらつく
歩けない
よだれを垂らす
吐き気を催す
呼吸が早くなる
興奮する
元気がなくなる
震えが止まらない
犬のビールの誤飲、中毒症状②【重症のときによくみられる症状】
起き上がれない
体温が低下する
脈が速くなる
呼吸困難になる
胃粘膜の刺激や嘔吐中枢への刺激による嘔吐
嘔吐物の誤嚥(ごえん)による肺炎
脱水
昏睡状態
ちょっとふらついただけに見えても、実は”重症”だった、ということもあり得ます。
たとえ症状が出なくても、犬がビールを飲んでしまったら急いで動物病院を受診するようにしましょう。
【参照元】Canadian Veterinary Journal「Acute alcohol intoxication in a dog」
ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会)「Shamrocks & Alcohol: Pet Safety Tips for St. Patrick’s Day」
犬のビールの誤飲【致死量】は?(小型犬・中型犬・大型犬)
kai _ PIXTA(ピクスタ)
犬のアルコール致死量(LD50)は、95%アルコール約5.5~6.5ml/kg程度といわれています。
このことから計算すると、アルコール度数が5%のビールでは、110ml/kgでほぼ致死量に達することになります。
これはだいたい「コップ半分」程度です。
犬のビールの誤飲【致死量】
【犬の種類】 | 【犬の体重】 | 【ビールの量】 |
---|---|---|
小型犬 | 2kg程度 | 約220mlが致死量 |
中型犬 | 10kg程度 | 約1100mlが致死量 |
大型犬 | 30kg程度 | 約3300mlが致死量 |
「3300mlなんて飲むわけない」と思うかもしれませんが、大きな犬なら意外と飲んでしまう危険性もあります。
また、数値はあくまで目安であり、犬の体質や年齢、持病によってはほんの一口舐めただけでもアルコール中毒になる危険があると考えておきましょう。
犬のビールの誤飲【治療法】【治療費】は?
Argus- stock.adobe.com
犬がビールを飲んでしまった場合の治療費について、
点滴治療
深夜料金
入院(中型犬)
で調査をしました。
犬のビールの誤飲【治療費】
【治療内容】 | 【治療費】 |
---|---|
点滴治療(静脈内) | 3,000~5,000円 |
深夜料金 | 3,000~5,000円 |
入院(中型犬の場合) | 2,000~3,000円 |
【参照元】公益社団法人 日本獣医師会「小動物診療料金」家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査及び飼育者意識調査(平成27年度)
他の治療を行う場合もありますし、動物病院によって、そして犬の症状、大きさによっても治療費は変わります。
動物病院でよく確認してください。
犬のビールの誤飲の治療は、点滴をしたり吐かせたりすることが中心ですが、症状や犬によっても治療や処置は異なるので、わからないことは、獣医師に尋ねるようにしましょう。
【参照元】公益社団法人 静岡県獣医師会「異物誤飲について」
犬のビールの誤飲【まとめ】
leonpapa _ PIXTA(ピクスタ)
犬はビールに含まれるアルコールを、体内で分解することができません。
愛犬がビールを誤飲してしまった場合、”命に関わる”ことがあります。
犬がビールを飲んでしまわないよう、飼い主は細心の注意を払いましょう。
また、ふざけて飲ませないことはもちろん、ビールが入ったコップを置いたまま席を外さないなど、普段からしっかり予防することが大切です。
ただ、どんなに注意しても、ちょっと目を離したすきにビールを飲んでしまった、こぼしたビールを舐めてしまったということもあり得ます。
いざという時落ち着いて対応できるように、犬の緊急時にはどうすればよいか、かかりつけの獣医師に相談しておくことも大切です。
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