【内分泌科担当獣医師監修】犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)原因や症状、なりやすい犬種、治療法は?

犬の副腎皮質機能低下症(ふくじんひしつきのうていかしょう)とは、副腎皮質から分泌されるコルチゾールとアルドステロンの両者が不足する病気です。ここでは、副腎皮質機能低下症(アジソン病)の原因や症状、治療法について詳しく解説します。

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先生にお聞きしました
森 昭博先生
日本獣医生命科学大学 獣医保健看護学科
獣医保健看護学臨床部門准教授(獣医師)

【資格】
獣医師

日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)獣医学部獣医学科卒業。
2009年に日本獣医生命科学大学大学院で博士(獣医学)号を取得。
2012-2013年、イリノイ大学に留学。
現在、日本獣医生命科学大学付属動物医療センター内分泌化を担当。
犬および猫の内分泌分野を中心に診療、研究を行っている。
5歳のMix犬「ぽよ」と同居中。
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犬の副腎【機能・構造】

犬の副腎(外部構造)

犬の副腎(外部構造)

犬の副腎は、腎臓に隣接する(左右一対)小さな内分泌器官です。

生命や血圧を維持するために欠かせない重要なホルモンを分泌しています。

副腎は、副腎皮質(外側の組織)と副腎髄質(内側の組織)で構成されています。

副腎皮質は、血糖値を上昇したり、ストレスを和らげる糖質コルチコイド(おもにコルチゾール)や電解質をコントロールする鉱質コルチコイド(主にアルドステロン)などのステロイドホルモンを分泌します。

一方、副腎髄質は、アドレナリン、ノルアドレナリン、ドーパミンなどのカテコールアミンを分泌します。

カテコールアミンが分泌すると、血圧や心拍数が上昇します。

犬の副腎(内部構造)

犬の副腎(内部構造)

副腎皮質のなかでもっとも皮膜に近い「球状帯」は、犬の主要な鉱質コルチコイドであるアルドステロンを産生、分泌しています。

アルドステロンは、腎臓でNa(ナトリウム)を再吸収して、K(カリウム)を排泄する役割を担っています。

また、「束状帯」では、犬の主要な糖質コルチコイドであるコルチゾールを産生・分泌しています。

コルチゾールには、血糖値の上昇や食欲UPなどの働きがあります。

そして、もっとも副腎髄質に近い「網状帯」では、性ホルモンを産生しています。

原因

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【原因】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【原因】

Wynian/ Shutterstock.com

【副腎皮質全体の萎縮】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、副腎皮質全体が萎縮することによって、副腎皮質の束状帯から分泌される「コルチゾール」と、球状帯から分泌される「アルドステロン」が不足して発症します。

コルチゾールとアルドステロンは、生命維持に欠かせない重要なホルモンであり、副腎皮質機能低下症(アジソン病)を放置すると、ショック状態となって死を招くことがあるので、適切な診断と治療が必要になります。

副腎皮質の萎縮【原因】

副腎皮質の萎縮が起きる原因は、よくわかっていませんが、免疫系の異常で、自らのリンパ球が自身の副腎を攻撃してしまうことによって起きると言われています。

症状

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【症状】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【症状】

ardiwebs/ Shutterstock.com

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)には、以下のような症状が見られます。

元気がなくなる(元気消沈)
食欲がなくなり、食べる量が減る(食欲不振)
体重減少
水を多く飲み、尿の量が多くなる(多飲多尿・脱水)
下痢、嘔吐
カラダの震え(振戦)

ひどくなると痙攣(けいれん)が見られるようになります。

心拍数がゆっくり(徐脈)

Oleksandr Lytvynenko/ Shutterstock.com

これらの症状の多くは、副腎皮質の機能が20%以下になったところで現れます。

初期には、副腎皮質の予備能力が残っているために、犬にストレスが加わった時(ホテルやトリミング、シャンプー、通院など)にのみ、症状が現れることがあります。

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)の初期症状に気づき、早期に獣医師に診てもらうことが大切ですが、これを見過ごすと、症状が現れる頻度が徐々に高くなり、最終的にはショック症状に陥ることがあるため、注意が必要です。

発症しやすい犬種

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【発症しやすい犬種】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【発症しやすい犬種】

..mon / PIXTA(ピクスタ)

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、すべての犬種に発症の可能性がありますが、統計的に日本では、他の犬種と比べてとくに以下の犬種の発症リスクが高いと言われています。


トイ・プードル

パピヨン

診断方法

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【診断方法】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【診断方法】

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診断方法①【血液生化学検査】

アルドステロンの欠乏による低ナトリウム血症、高カリウム血症を確認。

加えて脱水によって生じる高窒素血症(BUN=尿素窒素およびCRE=クレアチニンの上昇)を確認します。

さらに、コルチゾールの欠乏によって起きることがある低血糖、高カルシウム血症を確認します。

診断方法②【ACTH刺激試験】

合成ACTHの投与前、筋肉あるいは静脈内に投与後60分の血中コルチゾール値を測定。

投与後のコルチゾール値が3.0μg/dL未満であれば、副腎皮質機能低下症(アジソン病)と診断します。

治療方法

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【治療方法】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【治療方法】

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治療法①【内科治療】

コルチゾールとアルドステロンの作用を併せ持つ酢酸フルドロコチゾンを投与します。

この治療によってNa(ナトリウム)やK(カリウム)が正常レベルに回復してもなお、元気や食欲が改善せず、血糖値が上がらない場合には、ヒドロコルチゾンまたはプレドニゾロンを投与します。

治療法②【緊急時(ショック症状)の対応】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)を放置すると、「副腎クリーゼ」と呼ばれるショック症状を示すことがあります。

このような緊急時には、静脈内に生理食塩水やステロイド剤(コルチゾール)を投与します。

予防・対策

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【予防対策】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【予防対策】

Enna8982/ Shutterstock.com

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)を予防する有効な対策はありませんが、環境の変化に気をつけて、ストレスのない生活を心がけることが大切です。

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【間違えやすい病気】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)と間違えやすい病気

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犬の慢性腎不全(慢性腎臓病)

犬の慢性腎不全(まんせいじんふぜん)とは、糖尿病や腎臓病、高血圧などが原因で、腎機能が徐々に低下し、機能不全になった状態です。


初期症状では多飲多尿やたんぱく尿が現れ、進行すると食欲低下や体重減少、貧血、尿毒症症状が起こります。

その他、腸炎などの消化器疾患全般も間違えやすい病気として挙げられます。

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【まとめ】

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)【まとめ】

佐々木 / PIXTA(ピクスタ)

犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)は、副腎皮質全体が萎縮することによって、副腎皮質の束状帯から分泌される「コルチゾール」と、球状帯から分泌される「アルドステロン」が不足して発症します。

コルチゾールとアルドステロンは、生命維持に欠かせない重要なホルモンであり、副腎皮質機能低下症(アジソン病)を放置すると、ショック状態となって死を招くことがあるので、適切な診断と治療が必要になります。

また、犬の副腎皮質機能低下症(アジソン病)を放置すると、「副腎クリーゼ」と呼ばれるショック症状を示すことがあります。

愛犬に副腎皮質機能低下症(アジソン病)の症状が出た際には、速やかに動物病院で獣医師に診てもらいましょう。

健康診断を受けることで早期に愛犬の病気を発見することができるので、定期的に検診をうけることをおすすめします。

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