【獣医師監修】パピヨンの乳歯の生え変わり時期は？歯並びが悪い場合は矯正が必要？歯磨きのやり方は？

パピヨンの乳歯の生え変わりの時期と順番は？

パピヨンの乳歯①【発育・萌出（ほうしゅつ）】

Mallivan / PIXTA(ピクスタ)

子犬が母犬のお腹の中にいる頃から、パピヨン（犬）の歯はすでに発育が始まっています。

という歯の発育段階を経て、“歯の芽”である「歯胚（しはい）」が「歯」として成長し、歯肉から顔を出すのは生後21日（3週）頃。

そして生後2ヶ月くらいまでの間に乳歯がすべて生え揃います。

【犬の歯が成長する過程】
子犬の歯は母犬のお腹の中にいる時からすでに発育が始まっている。

パピヨンの乳歯②【歯の生え変わり時期】

やがて生後4ヶ月半頃になると永久歯が生え始め、生後7～8ヶ月頃までには乳歯と永久歯との生え変わりが完了します。

【犬の乳歯（左）と永久歯（右）の歯並び】

なお、歯の生え変わりの時期には乳歯と永久歯とが併存する期間があり、切歯と臼歯では数日程度、犬歯の場合は2〜3週間にわたります。

パピヨンの乳歯③【歯が生える順番】

通常、歯が生えてくる順番は以下のとおりで、これは乳歯も永久歯も同じです。

ちなみに、乳歯の段階では前・後臼歯の区別がなく、単に臼歯あるいは乳臼歯と呼びます。

パピヨンの歯の本数は？（何本抜ける？）

iStock.com/Laures

パピヨン（犬）の歯の本数は乳歯で28本、永久歯は42本あります。

ただし、小型犬の場合、「切歯」「前臼歯」「後臼歯の一部」が欠如していることも少なくありません。

下の表にパピヨン（犬）の歯の本数を切歯・犬歯・前臼歯・後臼歯ごとに示しますが、歯の本数は次の歯式によって示すこともできます。
（歯式は犬の顔を片側から見た時の歯の数を基本として数えます）

【成犬の歯】
切歯＝I1（第1切歯）～I3（第3切歯）
犬歯＝C
前臼歯＝P1（第1前臼歯）～P4（第4前臼歯）
後臼歯＝M1（第1後臼歯）～M3（第3後臼歯）

パピヨンの歯磨きの仕方・オススメの歯ブラシは？

パピヨンの歯磨き【歯磨きの仕方】

Rodrusoleg / PIXTA(ピクスタ)

急に歯を磨き始めると犬が歯磨き嫌いになる可能性があります。

何事も最初が肝心。パピヨンが歯磨きを受け入れられるよう、少しずつ慣らすようにしましょう。

歯磨きの仕方【ステップ①】

おやつを与える時や体を撫でる時に何気なく指や手で愛犬の口元に触れ、口周りに触られることに慣らします。

歯磨きの仕方【ステップ②】

それに慣れたら、今度は指を口に入れてみる、唇を少しめくってみる、歯肉に触れてみるなどしてみます。

歯磨きの仕方【ステップ③】

次に、ぬるま湯で湿らしたガーゼを指に巻いて歯を軽くこすってみましょう。

最初は切歯（前歯）から。慣れるにしたがい、徐々に奥歯へ移動します。

歯磨きの仕方【ステップ④】

指ガーゼに慣れたら歯ブラシへ移行します。

最初は「歯ブラシの匂いを嗅がせたり」「遊ばせたりし」「瞬間的でも歯ブラシを口に入れること」があったなら褒めてあげましょう。

歯磨きの仕方【ステップ⑤】

歯ブラシで歯を磨いてみます。

切歯から始め、少しずつ犬歯や奥歯も慣らしていきます。

最初は歯の外側だけでも大丈夫。徐々に裏側も磨けるようにしていきます。

パピヨンの歯磨き【歯磨き嫌いになる原因】

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パピヨンが歯磨き嫌いになる理由としては、以下のようなことが考えられます。

口に触られることに慣れていない

磨き方が強過ぎて痛い

歯ブラシが硬過ぎる、または大き過ぎる

歯や口の中にトラブルがあって違和感や痛みがある

無理強いされるのが嫌だ

普段からマズルを捕まれて叱られている

パピヨンの歯磨き【歯磨きのポイント】

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以上を踏まえ、パピヨンの歯磨きをする際のポイントをいくつか挙げてみましょう。

パピヨンが気をつける歯のトラブルや病気（歯周病）は？

Mallivan / PIXTA(ピクスタ)

パピヨンで気をつけたい歯のトラブルには、以下のようなものがあります。

パピヨンの歯のトラブル①【乳歯遺残（にゅうしいざん）】

犬の歯の生え変わりが終わっても乳歯が抜けずに残っている状態を乳歯遺残（にゅうしいざん）と言います。

通常、乳歯は切歯（前歯）から抜け始め、次いで犬歯、最後に臼歯が抜けていき、一方で永久歯は乳歯の内側（上顎の犬歯のみは乳歯の前方）に生えてきます。

歯の生え変わりの時期が過ぎたら、歯の本数や生える向きなど確認してみましょう。

パピヨンの歯のトラブル②【歯周病】

ヒロシにぃ / PIXTA(ピクスタ)

パピヨンのような小型犬は顎に対する歯のサイズは意外に大きく、その分、歯と歯の間が狭くなっているのに加え、乳歯遺残（にゅうしいざん）も起こりやすく、その場合には歯が重なって生えることから歯垢・歯石が付着しやすくなり、歯周病になりやすい傾向にあります。

イギリスでの調査では、歯周病リスクが高いと言われる小型犬の中で、トイ・プードル、ミニチュア・プードルと並び、パピヨンは高リスクとなっています（＊1）。

【参照元】C. Wallis, L. J. Holcombe「A review of the frequency and impact of periodontal disease in dogs」（JASP, Volume61, Issue9, September 2020, p529-540）

パピヨンの歯のトラブル③【根尖周囲病巣（こんせんしゅういびょうそう）】

歯周病や、破折（はせつ）や咬耗（こうもう）による歯髄の露出、吸収病巣、う蝕（虫歯）、変形歯などによって歯の根尖周囲に炎症が起きた状態を指します。

パピヨンでは特に歯周病由来のものに注意が必要です。

パピヨンの歯のトラブル④【内歯瘻（ないしろう）/外歯瘻（がいしろう）/口腔鼻腔瘻（こうくうびくうろう）】

アオサン / PIXTA(ピクスタ)

犬の根尖周囲病巣（こんせんしゅういびょうそう）が進行した場合、増殖した細菌によって膿が溜まり、その排出路である瘻管（ろうかん）が作られて、出口である穴が口腔内（内歯瘻）や、目の下・頬などの皮膚（外歯瘻）、鼻腔と口腔とを隔てる骨（口腔鼻腔瘻）などに開いてしまうことがあります。

パピヨンの歯のトラブル⑤【歯周病に起因する顎骨骨折】

犬の歯周病が重度に進行した場合（特に下顎の第1後臼歯）、歯根周囲の骨が溶けて薄くなることから、少しの衝撃で顎の骨が折れてしまうことがあり、特に小型犬の老犬に多いと言われています。

【歯周病に起因する顎骨骨折の症例】写真提供：フジタ動物病院
大型犬では下顎の骨の底と比べ、歯の根尖（歯の根の先端部）が高い位置にあるのに対し、小型犬の場合はその両者がほぼ同じくらいの位置にあることが顎骨骨折のリスクを高くする一因と考えられる。

パピヨンの歯のトラブル⑥【欠歯】

通常の歯の本数より少なく、あるべきはずの歯がないものを欠歯と言い、特に、小型犬で、下顎の第2前臼歯に多く見られます。

それに対し、歯自体はあるものの、顎の中に埋もれたまま生えてこない場合は埋伏歯（まいふくし）と言われます。

パピヨンの歯のトラブル⑦【変形歯】

犬の変形歯は歯の形態異常であり、パピヨンのような小型犬では永久歯が形成される過程で根分岐部に形態障害が生じることがあります。

【犬の歯の構造】
「根分岐部」とは、歯の根である歯根が分岐する部分を指す（赤丸部分）。

パピヨンの歯並び・噛み合わせが悪い場合は矯正が必要？

iStock.com/SchulteProductions

パピヨンの噛み合わせはシザーズバイト（鋏状咬合）がスタンダード（犬種標準）ですが、乳歯遺残（にゅうしいざん）や不正咬合（ふせいこうごう）など何らかの原因により噛み合わせや歯並びやが悪い場合、咀嚼（そしゃく）の問題が出たり、不正な歯が口の中を傷つけてしまったりすることがあります。

そのような時、または将来的にそれが予想される時には、歯の矯正が一つの選択肢になります。

ただし、歯に専用器具を取り付けて位置を調整する矯正は数ヶ月を要し、できれば生後10か月齢くらいまでの間に行なうのが望ましく、治療を始めるタイミングが重要になります。

また、矯正の期間中は微調整が必要になることがあり、歯科技術も必要。

したがって、パピヨンの歯の矯正を行なうのであれば、歯科に詳しい動物病院で相談するのがいいでしょう。

パピヨンの歯のトラブルに保険は使用できる？

ペット保険では予防にあたるものや、疾病（しっぺい）にはあたらないとされるもの、一部の遺伝性疾患などは補償の対象外となり、歯石除去や乳歯遺残（にゅうしいざん）、不正咬合（ふせいこうごう）などはそれに含まれるため補償対象外となります。

また、歯科治療全般が補償対象外となるペット保険や、歯周病は対象となるもの、条件付きで一部が補償対象となるものなど、ペット保険によって違いがあり、残念ながら歯科治療に関しては補償が充実しているとは言い難いのが現状です。

パピヨンでは歯のトラブルの他、膝蓋骨脱臼（しつがいこつだっきゅう）や門脈体循環シャント、白内障、壊死性脳炎（えしせいのうえん）などが懸念されますが、ペット保険の加入を考える時には、愛犬の健康リスクと、それぞれのペット保険の補償内容や条件などをよく比較検討して判断することをおすすめします。

【参照元】松木直章「犬の壊死性髄膜脳炎（パグ脳炎）の病態解析」（東京大学 獣医臨床病理学研究室）

パピヨンの歯のまとめ

ひろふみ / PIXTA(ピクスタ)

スウェーデンで行なわれた犬の歯に関するアンケート調査では、84％の飼い主さんが体の健康と歯の健康は同じくらい重要であると認識していながら、パグ（34％）、チワワ（21％）、ヨークシャー・テリア（17％）、ポメラニアン（16％）に次いで、パピヨン（16％）の飼い主さんは愛犬の歯をチェックすることがとても難しいと答えていました。

これは口が小さいゆえ、または歯磨きのトレーニング不足によるところが大きいのでしょう。

しかし、そのままにすれば歯のトラブルを見逃してしまうことになるかも…。

たとえば、歯周病が重度な歯を抜歯することで、ほとんどの犬は以前より元気になります。

それだけ当の犬にとっては痛みと不快感により我慢を強いられていたということでしょう。

そういったことを避けるためにも、今日からでもオーラルケアトレーニングを始めてみませんか？

【参照元】Enlund Karolina Brunius et al.「Dog Owners' Perspectives on Canine Dental Health—A Questionnaire Study in Sweden」（Frontiers in Veterinary Science, Vol.7 2020, p298）

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