【プロドッグトレーナー監修】土佐犬(闘犬)を飼うのは危険?断耳は?性格や寿命、飼い方、病気は?
土佐犬(とさいぬ)、純日本犬である四国犬はかつてこう呼ばれていました。しかし、闘犬を目的に作出された犬たちにこの名を譲ることとなり、現在一般的に土佐犬と呼ばれる犬はマスティフタイプの大柄な犬種を指します。ペットとして飼育されている犬もいるものの、血筋的に闘犬気質をもっている分、飼育には細心の注意が必要とされます。
- 投稿日: 更新日:
麻布大学介在動物学研究室(旧動物人間関係学研究室)で、人と犬の関係学を研究。
この分野では日本で初めての博士号を取得。
目次
土佐犬【初心者が飼っても大丈夫?飼うのは危険?】【断耳・断尾は必要?】
acceptphoto/ Shutterstock.com
土佐犬【初心者が飼っても大丈夫?飼うのは危険?】
土佐犬はもともとより強い犬を求め、闘犬種として作出、繁殖されてきただけに、体の大きさ、パワー、咬合(こうごう)力、気質、どれをとっても初心者には不向きな犬種であると言わざるを得ません。
悲しいかな、土佐犬による咬傷(こうしょう)事故は起きています。
この犬種を飼うのであれば、しっかりとした社会化やしつけ、トレーニングはもちろん、犬をコントロールできるだけの自信と、飼い主としての責務を自覚する必要があるでしょう。
参考までに記すならば、たとえば茨城県や札幌市などでは県や市の条例の中で「人に危害を加えるおそれのある犬」として「特定犬」を指定していますが、この条例では特定犬にあたる犬は脱走や事故が起こらないような囲われた場所で飼育するよう定められており、土佐犬はそれに含まれています。
また、海外でもイギリスやオーストラリアなど、土佐犬の飼育・売買・譲渡・繁殖・輸入を禁止または制限したり、危険犬種として指定したりしている国や地域が存在します。
(注:こうした法律に対し、犬種ではなく、個体に視点を置くべきであるとの意見もあります)
例:【札幌市が定める「特定犬」】
✓秋田犬
✓土佐犬
✓アメリカン・スタッフォードシャー・テリア
(アメリカン・ピット・ブル・テリアを含む)
✓グレート・デーン
✓ジャーマン・シェパード・ドッグ
✓スタッフォードシャー・ブル・テリア
✓スパニッシュ・マスティフ
✓セント・バーナード
✓ドーベルマン
✓ドゴ・アルヘンティーノ
✓ナポリタン・マスティフ
✓ブラジリアン・ガード・ドッグ
✓ブル・テリア
✓ブルマスティフ
✓ボクサー
✓マスティフまたはロットワイラーに属する犬
詳しくはそれぞれ居住地域の自治体で確認を。
【参照元】
・茨城県「特定犬について」
・茨城県「茨城県動物の愛護及び管理に関する条例」
・札幌市「札幌市動物の愛護及び管理に関する条例」
・GOV. UK「Controlling your dog in public」
・GOVERNMENT OF WESTERN AUSTRALIA「FAQs / Are any dog breeds restricted in WA?」
土佐犬【断耳・断尾は必要?】
土佐犬では、断耳、断尾ともに行われていません。
土佐犬【原産国・歴史・寿命は?】
SubertT/ Shutterstock.com
土佐犬【原産国】
原産国:日本
犬種名からわかるように、四国の高知県土佐に起源があります。
土佐犬【歴史(種類)】
土佐犬の発祥は江戸時代末期の安政時代に遡(さかのぼ)ります。
秋田犬の先祖たちがかつては秋田の地で闘犬にも使われていた過去をもつように、国内には闘犬を好む地域があり、その筆頭が高知でした。
現在では四国犬と呼ばれる高知の地犬たちを使い、闘犬に熱狂する人たちがいた時代のこと。
大高阪益なる人物が長崎から連れてきた猛々(たけだけ)しい犬と地犬とを交配し、安政2年(1855年)に生まれた3頭のオス犬が土佐犬の始まりであると資料には残されています。
土佐藩主が変わるごとに飼育が禁止されたり、逆に闘犬が推奨されたりを繰り返すも人々の闘犬熱は冷めず。
その後、明治時代に入って初期にはブルドッグ、そしてマスティフ、セント・バーナード、グレート・デーンなど他犬種を配して体躯(たいく)の充実を図ったといいます。
土佐犬普及会が設立されたのは昭和8年(1933年)。
戦時中、食糧難や犬猫の供出など厳しい状況下の中、衰退していく土佐犬のうち12~13頭を東北(主に青森県)に疎開させ、主にそれら生き残った犬たちが土台となって現代の土佐犬につながります。
高知県では観光資源としての側面もあったものの、「とさいぬパーク(旧土佐闘犬センター)」は2017年に閉鎖。
現在でも闘技大会が開催されるところもあれば、東京都や神奈川県、石川県、福井県など条例により闘犬を禁止している自治体もあります。
土佐犬は、海外では「ジャパニーズ・マスティフ」、「ジャパニーズ・ファイティング・ドッグ」などと呼ばれたりもします。
※注:昭和12年(1937年)に天然記念物指定を受けた四国犬は、現在でも土佐犬という名のままに文化遺産として登録されています。
【参照元】
・「日本犬大観 復刻版」(愛犬の友編集部編、誠文堂新光社/復刻版:昭和62年、原版:昭和18年)
・とさいぬパーク
・環境省自然環境局総務課動物愛護管理室「動物愛護管理行政事務提要(令和2年度版)/闘犬等取締条例の概要」(令和2年4月1日現在)
・文化庁文化遺産データベース「土佐犬」
・高知県「高知県の文化財/土佐犬」
ぼっこ / PIXTA(ピクスタ)
土佐犬【寿命】
平均寿命:10~12歳
※個体の健康度や国・地域、気候、環境などによって寿命には差が生じます。
【参照元】American Kennel Club「Tosa」
土佐犬【大きさ・毛色・子犬(赤ちゃん)の販売価格は?】
Karel Resl/ Shutterstock.com
土佐犬【大きさ(体重・体高・体格)】
体高
■オス:60cm~
■メス:55cm~
体重
■30kg~100kg
【参照元】
・一般社団法人 ジャパン・ケネル・クラブ「土佐」
・NPO法人 全土佐犬友好連合会「土佐闘犬とは」
土佐犬【毛色の種類】
土佐犬の毛色は「レッド」「フォーン」「アプリコット」「ブラック」「ブリンドル(虎毛)」など。
胸や足に白い斑模様が出ることもあります。
土佐犬【子犬(赤ちゃん)の販売価格】
18万円~
※価格はあくまでも目安であり、販売者の状況や犬質によって変動します。
土佐犬【特徴・性格(気質)・魅力は?】
TMArt/ Shutterstock.com
土佐犬【容姿・スタイル】
四国犬の血が濃かった当初の姿とは変わり、犬種として固定された土佐犬は耳も尾も垂れています。
被毛は短く筋肉質な体をそのままに表現し、顔や喉(のど)、首周りなどに皮膚のたるみが見られることがあります。
口吻(こうふん)は四角く、日本犬的に言うなら箱口。
頭部はがっちりと大きく、マスティフの血を伺わせます。
土佐犬【性格(気質)】
大型犬ゆえゆったり構えて忍耐強くありますが、基本的に闘犬気質をもっているため、闘争心を秘めていることは否めません。
警戒心が強く、番犬には向きます。
しつけ方、そして個体の性格により、中には問題なく家庭犬として暮らしているおとなしい犬もいるものの、すべての犬がそうであるわけではありません。
特に小さなお子さんがいる家庭では、親の目の届かないところで子供だけで触れ合わせるのは非常に危険です。
土佐犬【魅力】
近寄りがたい風貌(ふうぼう)と相まって、気迫が一番の魅力なのではないでしょうか。
闘犬の世界では「セリ声」を出さない犬(咬まれても声を出さない)が強いとされるそうですが、本来であれば何事があっても動じないほどの寛大さが求められる犬なのでしょう。
土佐犬【気をつける病気は?】
am6/ Shutterstock.com
気をつける病気①【胃拡張・胃捻転症候群】
食後すぐに遊ぶ・多量の水を飲む、加齢による胃周辺の靭帯(じんたい)の緩みなどがきっかけとなって、胃にガスや液体が溜まり、胃が膨れてしまう状態を胃拡張と言います。
これが進行すると胃が捻じれる胃捻転となり、他の臓器への血流が途絶えるなどして緊急を要する状態となってしまいます。
胸の深いタイプの大型犬に多いと言われており、少なくとも食後1時間は遊びや運動、多飲などさせないよう注意が必要でしょう。
気をつける病気②【股関節形成不全(こかんせつけいせいふぜん)】
大型犬に多いこの病気は股関節に緩みが生じ、お尻を左右に振るように歩く、後肢(こうし)を同時に蹴るウサギのような走り方をする、散歩や段差を嫌がる、後肢の幅が狭いなどの様子が見られるようになります。
7割は遺伝的要素、3割は環境的要素が関係するとされ、生後1年未満の若齢で症状が出ることが多いと言われます。
肥満や滑りやすい床などは症状を悪化させるため、体重コントロールや環境改善は重要となります。
気をつける病気③【離断性骨軟骨症(りだんせいこつなんこつしょう)】
大型犬に多いこの関節疾患は、成長期において関節の軟骨が形成異常を起こし、軟骨に負荷がかかる度に損傷が生じ、軟骨が浮く、割れる、剥(は)がれるなどして痛みを伴います。
土佐犬【病気になった場合、ペット保険は適用される?】
愛犬が病気や怪我をした時に、その治療費を補償してくれるのがペット保険ですが、どんな病気や怪我でも補償されるというわけではありません。
基本的に、
ペット保険の適用外①【予防にあたるもの】
例)狂犬病や各種感染症の予防ワクチン、フィラリア予防、マイクロチップ装着費用、健康診断費用
ペット保険の適用外②【病気にはあたらないと判断されるもの】
例)歯石除去、乳歯遺残、去勢・避妊手術、交配・出産関連、トリミング関連
ペット保険の適用外③【先天性の異常、遺伝性疾患、すでに罹(かか)っている病気】
例)膝蓋骨脱臼、股関節形成不全、進行性網膜萎縮症
ペット保険の適用外④【代替医療】
例)アロマセラピー、ホメオパシー、理学療法
などはペット保険の補償対象外となるのが一般的です。
また、本来は病気のくくりであっても、「鼠径(そけい)ヘルニア」「臍(さい)ヘルニア」「眼瞼(がんけん)内反・外反」「停留睾丸(ていりゅうこうがん)」なども補償対象外になることが多いです。
ただし、同じ病気であっても、A社では補償対象外であるのに対し、B社では”補償対象”となることもあり、ペット保険会社によって違いがあります。
加えて、加入できる年齢の制限や補償条件など各社各様なので、ペット保険の加入を考える時には、愛犬の健康リスクや年齢などを踏まえ、各ペット保険会社をよく比較検討して選ぶことをおすすめします。
さらには、犬のサイズが大きくなるほど、また年齢が高くなるほど、掛け金が高くなるのが一般的であり、継続加入しているうちに予想外の高額な掛け金になってしまうこともあるという点。
もう一つには、無条件で継続加入できるとは限らず、犬の健康状態によっては条件が付けられたり、継続できなかったりする場合もあるという点にも注意してペット保険をお選びください。
土佐犬【飼い方(しつけ)・散歩の仕方・注意点!】
Karel Resl/ Shutterstock.com
土佐犬【飼い方(しつけ)】
犬としての性格形成や行動など、子犬の成長に大きく関係するのが生後3週齢~生後12週齢にあたる「社会化期」です。
社会化が不十分であるとストレス耐性も低くなりがちで、不安や恐怖も感じやすい傾向にあると言われます。
こうした子犬の時期に人や物などに慣らしながら、どれだけたくさんの“良い”経験をさせてあげられるか、それがしつけのしやすさも左右し、ひいては咬傷(こうしょう)事故の予防にもつながることでしょう。
特に、土佐犬のように警戒心や縄張り意識が強い犬種は、子犬の頃から十分な社会化教育を行わなければ、恐怖や不安によって様々な問題が生じてしまいます。
また、しつけやトレーニングなど犬に学習させることで問題の回避をするだけでなく、飼い主の適切な対応や、犬が安心して暮らせるための環境設定も必要となります。
参考までに。ペンシルバニア大学の研究によると、「望ましくない行動に対して犬を殴ったり蹴ったりする」「犬にがみがみ言う」「犬が咥(くわ)えている物を力ずくで取ろうとする」「無理に犬のお腹を出させる(アルファ・ロール)」「犬をじっと見つめる、または見下ろす」「犬を無理に横にさせる(ドミナンス・ダウン)」「犬の口吻を手で握って揺らす」など、飼い主のこうした行為は犬の攻撃性を引き出す傾向にあるといいます。
特に、身近な人間に対して攻撃性を示す犬では、飼い主による「アルファ・ロール」と「ノー!と叫ぶ行為」に反応しやすいとしているので、上下関係を維持するために用いられた、力で制圧するようなしつけは避け、飼い主さん自身も褒めることを基盤としたしつけ方を熟考する必要があるでしょう。
【参照元】Meghan E. Herron, Frances S. Shofer, Ilana R. Reisner「Survey of the use and outcome of confrontational and non-confrontational training methods in client-owned dogs showing undesired behaviors」(Applied Animal Behaviour Science, Volume 117, Issues 1–2, 2009, P47-54)
TMArt / PIXTA(ピクスタ)
土佐犬【散歩の仕方】
少なくとも1日2回、各1時間程度の運動は必要ですが、それでも足らない犬はいるでしょう。
運動が足らず、ストレスが溜まると吠えや破壊的行動に出るなど、行動の問題につながることがあるので、十分な運動は心がけたいものです。
ただし、成長期に運動をさせ過ぎると逆に関節を傷めることがあるのでご注意を。
なお、散歩の時には他の人や犬などに対して十分な配慮を忘れませんように。
状況によって相手との間に自分が立つ、道を譲る、他者がいない場所や時間帯に散歩をするなどの配慮も必要です。
万一に備え、首輪と胴輪(どうわ)、リードなどダブルで使用するといいでしょう。
土佐犬【注意点】
犬は犬舎に入れてあるから大丈夫と思い込むのは禁物です。
咬傷(こうしょう)事故は散歩中、放し飼いの他、犬舎などに係留中にも同じように起こっており、犬舎で飼育する場合は、無暗に人が近づかないよう対策を練る必要があります。
また、特に子供や高齢者などには十分過ぎるほどの配慮が必要です。
子供は身長が低い分、咬傷(こうしょう)事件が起きた場合、頭部や首など致命傷になり得る傷を負うケースが多いので、うちの犬は大丈夫と過信しないほうがいいでしょう。
決して子供と犬だけにしないこと。
【参照元】環境省自然環境局総務課動物愛護管理室「動物愛護管理行政事務提要(令和2年度版)/動物による事故(1)犬による咬傷事故状況(全国計:昭和49年度~令和元年度)
土佐犬【まとめ】
TMArt / PIXTA(ピクスタ)
犬と犬との戦いである闘犬は伝統行事であるという捉え方もあり、動物愛護系とは視点を異にするため賛否両論ありますが、それはともかく、土佐犬は作出の目的、体の大きさ、パワー、気性などよくよく考えた上でないと飼えない犬種であることは確かです。
土佐犬に限らず、どんな犬であっても一時の気まぐれで犬を飼うことはできません。
※注意:犬は生き物であり、性格やサイズ、運動量、寿命など個体差があります。
編集部のおすすめ記事
- 【獣医師監修】犬がおからを食べても大丈夫?ダイエットになる?カロリーや尿石症に注意!
- 豆腐を作るときに出る、大豆のしぼりかす、おから。定番の煮物の他、おからハンバーグやおからクッキーなど、ダイエットに使われることもありま...
- 【獣医師監修】犬の顎骨骨折(がくこつこっせつ)(上・下顎)自然治癒する?原因や症状、治療費、予防法!
- 犬の顎骨骨折(がくこつこっせつ)、意外にも歯周病に起因して顎(上顎・下顎)を骨折することもあるのです。たかが歯などと思ってはいけません...
- 【獣医師監修】犬におやつは必要?子犬や老犬にはいらない?おやつの活用方法や注意点を解説!
- 犬にはおやつは必要か?不要か?を迷う飼い主さんもいるでしょう。トレーニングでおやつは上手に活用できるケースもあります。子犬、成犬、老犬...
みんなのコメント
あなたも一言どうぞ
コメントする