【獣医師監修】犬にミネラルは必要?子犬や老犬、おやつや手作り食など、必要量と注意点を解説!

犬にはどのくらいの量のミネラルが必要なのでしょうか?子犬、成犬、老犬といったライフステージで必要量が異なるか、おやつや手作り食、サプリメントでミネラルを与える際の注意点など、詳しく知って愛犬の食事管理と健康維持に役立てましょう。

更新日:

先生にお聞きしました
左向 敏紀 先生
【所属】
日本獣医生命科学大学 名誉教授
一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長

【資格】
獣医師

【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学

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犬にミネラルは必要?

犬にミネラルは必要?

Amaviael / PIXTA(ピクスタ)

犬にミネラルは必要です!

動物の身体は主にタンパク質、脂質、炭水化物の栄養素で作られ、酸素、水素、炭素、窒素で構成されています。

身体の95%はこの4元素で作られていて、残りの4~5%がその他のミネラルで作られています。

主要なミネラル成分としては、カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、塩素(クロール)、イオウがあります。

カルシウム、リン、マグネシウムは、骨と歯をはじめ、犬の身体を支える骨格を構成しています。

カルシウムとリンの吸収は、ビタミンDの働きで促進します。

ナトリウム、カリウム、リン、塩素(クロール)は、血液の電解質を維持する重要な役目を担っています。

イオウは、タンパク質を構成するいくつかのアミノ酸に含まれていて、不足すると必須アミノ酸が欠乏するなどの現象を示します。

硫黄(イオウ)は細胞や神経や筋肉の機能・酸基のバランス(カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、塩素)を取るために欠かせません。

犬に必要な主要なミネラル以外

Solovyova / iStock

犬に必要な主要なミネラル以外には、微量ミネラルといわれる少量の成分として、鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、コバルト、クロム、ホウ素などがあります。

鉄や銅は、赤血球を作るのに重要な役目をはたしており、これらのミネラル不足は貧血を引き起こします。

コバルトは、ビタミンB12の構成成分で、コバルト不足は貧血の原因となります。

犬に与えるミネラル、1日に必要な量は?

犬に与えるミネラル、1日に必要な量は?

keechuan / PIXTA(ピクスタ)

ミネラル不足やミネラル過多が起こらないように、動物種ごとに最低必要量と上限が推奨されています。

最小値は、成長期(子犬期)と繁殖期と妊娠・授乳期では、成犬の維持期より高めであったりと、ライフステージなどにより差があります。

ミネラル種によっても異なり、カルシウムでは2.4倍、リンでは2.5倍、ナトリウムでは4倍などとなっています。

なお、カリウム、マグネシウム、ヨウ素は、成長期と成犬の維持期で差はありません。

成長期での増量が必要なものと不要なものがあるため、日々の食事におけるミネラル成分をバランス良く調整するのは簡単ではないでしょう。

総合栄養食であるドッグフードでは適切にミネラル成分が調整されていますが、手作り食でバランスを取りながら調整するのは困難かもしれません。

不足のものをマルチビタミンやミネラルサプリメントで補おうとすると、ミネラル過多などに陥る可能性があります。

犬に与えるミネラルの最大量や過剰量は、カルシウムとリン、ヨウ素、セレンに対して上限が設定されています。

ミネラル不足の症状は?

ミネラル不足

keechuan / PIXTA(ピクスタ)

【不足するミネラルの種類】【症状】
カルシウム成長抑制、食欲低下、骨の石灰化抑制(骨軟症)、
くる病、痙攣(けいれん)
リン食欲減退、成長抑制、骨折、くる病
カリウム食欲抑制、成長抑制、運動器障害、心臓・腎臓の障害
ナトリウム水分調節不能、食欲不振
塩素(クロール)水分調節不能、食欲不振
マグネシウム筋肉の痙攣(けいれん)、過敏症、食欲不振、
骨の石灰化減少
貧血、被毛削ごう、成長障害
貧血、被毛脱色、成長障害、繁殖障害
マンガン成長障害、足が曲がる、繁殖障害
亜鉛脱毛、被毛の脱色、食欲不振
ヨウ素甲状腺腫大(こうじょうせんしゅだい)、被毛削ごう、
脱毛、元気減退、粘液水腫
コバルト貧血、食欲不振、成長不良
セレン食欲不振、腎臓の石灰化、筋ジストロフィー(筋肉障害)、
繁殖障害

ミネラル過多(ミネラル過剰)の症状は?

子犬や老犬に必要なミネラルの適量は?

アオサン / PIXTA(ピクスタ)

【過剰なミネラルの種類】【症状】
カルシウム成長期では四肢の短縮や湾曲、跛行(はこう)、
カルシウム関連の尿結石、腎疾患、多尿
リン骨の破壊、尿結石、軟部組織の石灰化、食欲低下
ナトリウム・塩素便秘、てんかん用発作、痙攣(けいれん)
マグネシウム尿結石(ストルバイト結石)、筋肉弛緩(きんにくしかん)
食欲不振、肝機能低下
肝炎、肝機能低下
ヨウ素甲状腺腫大、食欲減退、被毛削ごう
セレン嘔吐、痙攣(けいれん)、流涎(よだれ)、食欲減退

ペットフードの栄養基準やラベル表示に関する基準を制定しているアメリカの団体である「米国飼料検査官協会」(AAFCO:American Association of Feed Control Officials)では、2016年に最低必要量と最大量を次のように定めています。

【犬の成長期ごとの1日に必要なミネラル量(フード1000kcalあたり)】

 【項目】・成長期 
・繁殖期妊娠 
・授乳期
・成犬 
・維持期
最小値最小値最大値
カルシウム3.01.256.25
リン2.51.04.0
カルシウム:リン1:11:12:1
カリウム1.51.5
ナトリウム0.80.2
塩素1.10.3
マグネシウム0.150.15
2210
3.11.83
マンガン1.81.25
亜鉛2520
ヨウ素0.250.252.75
セレン0.090.080.5

※単位はすべて「g/1000kcalME」

子犬や老犬に必要なミネラルの適量は?

子犬や老犬に必要なミネラルの適量は?

kensyo / PIXTA(ピクスタ)

子犬のミネラル【適量】

子犬の成長期には、ミネラルの種類によって、成犬の維持期の必要量との差が生じます

そのため、もし子犬にミネラル不足が明らかになったとしても、成長期のミネラルバランスを整えるためのミネラル補給は難しいのが現実でしょう。

健全な身体を作るのに重要な子犬期は、栄養バランスを整えるために、ライフステージにマッチした子犬(パピー)用の総合栄養食を与えるのが望ましいと言えます。

老犬のミネラル【適量】

老犬のミネラル【適量】

kensyo / PIXTA(ピクスタ)

シニア犬や老犬になると、腎臓機能や消化吸収の機能が低下してきます。

腎臓機能が低下するとリンの排泄がうまく行われず、高リン血症の悪影響が出ます。

腎機能の低下が疑われる老犬には、リンがあまり含まれていない食事が良いでしょう。

とくに、タンパク質の多い食材は必ずリンを含んでいるため、タンパク質を制限するのが重要です。

また、腎臓機能がかなり悪くなるとカリウムの排泄(はいせつ)も減少します。

そのような場合はカリウムの少ない食材を選びましょう。

注意点として、たとえば、高齢犬にビタミンDやカルシウムを補うためにサプリメントを与える場合、ほかのビタミンやミネラルが過多にならないようにしなければなりません。

もちろん、サプリメントの与えすぎによるビタミンDやカルシウムの過剰にも注意してください。

なお、手作り食ドライフードのトッピングなどで好んで使用される茹でキャベツは、リンの少ない食材で(リンの含有量20mg/100g)、茹でもやし(同43mg/100g)と比較しても少なく、腎機能が低下した愛犬に安心して与えられます。

キャベツは茹でることによりカリウムの含有量を92 mg/100gまで減らせるため、腎臓負担を減らすことができます。

【参照元】文部科学省「食品成分データベース

犬にミネラルウォーターを飲ませても大丈夫?

犬にミネラルウォーターを飲ませても大丈夫?

おでか犬 / PIXTA(ピクスタ)

犬に市販のミネラルウォーターを飲ませても大丈夫です!

もちろん、日本の水道水であれば飲水も可能なので、水道水も愛犬に与えて大丈夫です。

犬にミネラルを与える際のおすすめの食材やおやつは?

犬にミネラルを与える際のおすすめの食材やおやつは?

keechuan / PIXTA(ピクスタ)

ミネラルは、一般的には肉、魚介類に多く含まれています

また、ミネラルを多く含む野菜(主にカルシウム、鉄)としては、パセリほうれん草ブロッコリーかぼちゃなどがあります。

サプリメントとしては、マルチミネラルサプリメントやマルチビタミン、ミネラルサプリメント、DHA、EPA,アミノ酸などを複合的に含んだ犬用のものも販売されています。

ミネラルを補える犬用のおやつも販売されています。

人間用のサプリメントを与える場合は、体重に考慮して与えることが必要です。

ミネラルを多く含む食べ物

【ミネラルの種類】【食材】
カルシウムカルシウム動物性食品に多く、干し桜エビ2000(mg/100g)、
しらす干し520、めざし320、牛乳110など
野菜では、パセリ290(mg/100g)、モロヘイヤ260、紫蘇(しそ)230、小松菜170、菜の花120など
リンリンはタンパク質に多い(和牛肩肉(160mg/100g))。
レバーに多い(牛レバー330mg/100g,鶏レバー300)
マグネシウムマグネシウムが多い食材は、海産物。
あおさ(乾)3200(mg/100g)、青のり(乾)1300、
わかめ(素干し)1100、ひじき(乾)620、昆布(乾)540、
干しエビ520
ナッツ類にも含まれる。アーモンド300(mg/100g)、
カシューナッツ250
カリウムパセリ1000 (mg/100g)、ほうれん草690、みつば640、
里芋640、枝豆590、モロヘイヤ530、小松菜500
パセリ7.5(mg/100g)、小松菜2.8、枝豆2.7、
ほうれん草2.0、サニーレタス1.8、紫蘇(しそ)1.7、
春菊1.7、ブロッコリー1.0
魚介類、肉類に多い。
イカ、タコ、エビなどにも含まれていますが、生食ではビタミンB1欠乏症を起こす可能性があるので、必ず火を通して食べるようにしましょう。また、銅は、ベドリントン・テリアなどいくつかの犬種では肝臓での排泄がスムーズに行われずに肝臓障害を起こすことがあるため、過剰の摂取は良くありません。
亜鉛魚介類、肉類、藻類、野菜類、豆類に多い
ヨウ素海藻、魚介に多い
コバルトレバー、肉、魚介、乳製品に含まれる。野菜ではキャベツ
セレン魚介類に多い。豚レバー、鶏卵(けいらん)、
肉にも含まれる

犬にミネラルを与える場合の注意点!(手作り・サプリ)

犬にミネラルを与える場合の注意点!(手作り・サプリ)

Satura / PIXTA(ピクスタ)

愛犬にミネラルを手作り食やサプリメントで与える場合、ミネラルを過剰摂取させないように注意が必要です。

まずは、愛犬にどのようなミネラルが不足しているかを知ることが大切です。

そのうえで、必要に応じて獣医師に相談しながら、手作りごはんで使用する食材やサプリメントを選ぶようにしましょう。

また、ナッツ類は、脂肪やカロリーが高いことに気をつけながら与えてください。

まとめ

まとめ

michaklootwijk / PIXTA(ピクスタ)

犬にミネラルは必要です!

ミネラル不足やミネラル過多が起こらないように、犬にも最低必要量と上限が推奨されています。

手作り食やおやつでは、その基準値を参考にしてください。

ライフステージにマッチした総合栄養食を食べていれば、子犬期や成犬期などに必要な量のミネラルは摂取できるので、獣医師からの指示がない限りは追加でサプリメントなどを与える必要はないでしょう。

愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。

正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。

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