【獣医師監修】犬にカルシウムは必要?1日に必要な量は?子犬や老犬に与える際のポイント、注意点!
犬にカルシウムは必要なのでしょうか?また、1日の必要量はどのくらいなのでしょうか?子犬や成犬、高齢犬に、カルシウムを手作り食やサプリメントで与える際の注意点や適量などについて解説します。愛犬の毎日の食生活の管理と健康維持に役立てましょう!
- 更新日:
◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬にカルシウムは必要?
topic_ua / PIXTA(ピクスタ)
犬にカルシウムは必要です!
カルシウムは骨と歯の構成成分の99%を占め、身体を支える骨格を強化する働きがあります。
カルシウムはリン酸カルシウムの形態を取っていて、リンとともに体内に貯蔵されています。
そのカルシウムとリンが体内で不足すると、骨から補充されます。
カルシウムは犬の身体のバランスを整える
iStock.com/primeimages
身体のバランスを整えるためにも、カルシウムは欠かせません。
たとえば、「神経刺激の伝達・興奮」「筋肉の収縮」「ホルモンの分泌」「血液凝固」などに役立っています。
カルシウムは骨に多くが貯蔵されていて、血液中には微量にしか含まれていません。
血液中のカルシウム正常値(正常参考値)は、約9~12mg/dlです。
血液中のカルシウムが低いときは、副甲状腺(上皮小体)からパラソルモンというホルモンが出てカルシウム濃度を上げようとします。
また、ビタミンDが活性化されて、消化管からのカルシウムの吸収を促進します。
血液中のカルシウムが高いと、腎臓から積極的に排泄するか、甲状腺からカルシトニンというホルモンが出て、カルシウムを骨にくっつけて血中濃度を下げます。
健全な骨の発育と維持のために極めて重要な栄養素であるカルシウムとリンは、犬にもバランスよく摂取させる必要があります。
犬に与えるカルシウム【過不足に注意!】
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カルシウムは身体に必要なミネラル成分ですが、過剰でも不足でも問題が起こります。
まず、カルシウムが過剰でも低下しても、シュウ酸カルシウム結石のリスクとなります。
カルシウム過剰症は特に成長期に起こりやすいので気をつけてください。
カルシウム不足は、授乳中の母犬で起こりやすいことが知られています。
母乳中に多くのカルシウムが消失して、低カルシウムを引き起こすからです。
特に小型犬や多産だった場合に起こりやすい傾向にあります。
ライフステージにマッチした適量のカルシウムを愛犬に与えることが大切です。
犬に必要なカルシウム、1日に必要な量は?
nozomin / PIXTA(ピクスタ)
愛犬が犬用の総合栄養食を適正量食べていれば、カルシウムの必要量を毎日しっかり摂取できているので問題ありません。
ライフステージにマッチした総合栄養食を食べていて、カルシウムをあえてサプリメントで与えるのはかえって危険
です。
カルシウムを摂取し過ぎると、骨や運動器に異常を引き起こすからです。
また、肉ばかり食べさせるとリンの過剰が起こり、カルシウムの吸収不足が生じたり、骨が溶けたりするので注意が必要です。
参考までに、AAFCO(全米飼料検査官協会)による1日のカルシウム必要量の計算式(2016年)を以下に記します。
カルシウム与える量は、リンとの比率が重要であることがAAFCOによっても示されています。
●カルシウム(Ca)
・成長期、繁殖期、妊娠・授乳期=3000mg/1000kcal ME
・成犬・維持期=1250mg/1000kcal ME
最大量6250 mg/1000kcal ME
●リン(P)
・成長期、繁殖期、妊娠・授乳期=2500mg/1000kcal ME
・成犬・維持期=1000mg/1000kcal ME
最大量4000mg/1000kcal ME
●カルシウム:リンの摂取目安比率
・成長期、繁殖期、妊娠・授乳期:1:1 成犬・維持期 1:1〜2:1
AAFCOの表示は、/1000kcalの必要カルシウム量となっているので、カルシウムの必要量を知るには、まず1日あたりのエネルギー量(DER)を求めます。
DERは安静時エネルギー要求量(RER)に活動係数をかけたものです。
たとえば、体重10kgの犬の場合を計算すると以下のとおりです。
RER=70×体重0.75ですが、計算機やスマートフォンの計算機では、RERは、(体重×体重×体重)=√√×70と押すことで計算できます。体重を3回かけた後に必ず=を押します。
体重10kgの犬では、RERは、10×10×10=√√×70=394kcalとなります。
DERはこれに活動係数を乗ずるので、成長期では(生後4ヵ月~成犬)2.0を乗じ、避妊・去勢成犬では1.6を乗じ、老齢犬では1.4を乗じます。
【1日のカルシウム必要量(最低必要量)】
◆成長期(生後4ヵ月~成犬):RER×2.0=788kcal
◆避妊・去勢成犬:RER×1.6=630kcal
◆老齢犬:RER×1.4=552kcal
✓成長期:3000mg/1000kcalなので、2364mg/788kcal、
✓避妊・去勢成犬:1250mg/1000kalなので、788mg/630kcal
✓老齢犬:690mg/552kcal
成長期には成犬の3倍のカルシウムが必要ということになります。
子犬や老犬に必要なカルシウムの適量は?
おでか犬 / PIXTA(ピクスタ)
子犬にカルシウムを過剰に与えてしまうと、成長に伴って骨が曲がったり短くなったりといった異常が生じることがあります。
これは、特に大型犬に起こりやすいことが知られています。
子犬用(パピー用)のドッグフードは、すでに犬の成長に必要なカルシウム量をやや多めに含んだ状態で作られています。
また、子犬も成犬も、カルシウムを過剰に摂取したからといって骨や関節が丈夫になるなどの効果は認められていません。
逆に、カルシウムとシュウ酸などのミネラル類が結びついて結晶や結石の原因となる恐れもあります。
そのため、カルシウムをさらに補給する必要はありません。
犬用のカルシウム粉末なども市販されていますが、使う場合には獣医師に相談してからにしましょう。
高齢になってくると、エネルギーとカルシウムの必要量は20%ほど減少します。
けれども、高齢になって腎臓病(慢性腎臓病)になった場合、腎臓から尿にカルシウムを排泄してしまします。
そのため、血中カルシウムが低い状態(低カルシウム血症)を引き起こし、骨からカルシウムを補充して血液中のカルシウムを保とうとします。
iStock.com/Liliboas
このため、骨が弱くなったり、骨折しやすくなったりするでしょう。
人間でいう骨軟症や骨粗しょう症の状態です。
この場合に限り、カルシウムを補わなければなりません。
腎臓病ではリンの排泄ができなくなり、血液中のリンが高い状態(高リン血症)になるため、リンを食事で与えることは好ましくありません。
リンを多く含む食材である肉類は、特に要注意。
骨もリン酸カルシウムでできているので、骨が含まれる(肉・骨を材料にした)フードやサプリメントやおやつは避けましょう。
腎臓病のシニア犬や老犬には、腎臓病用のフードが最良です。
カルシウムを補給する場合にも炭酸カルシウムなどが理想的で、卵の殻なども選択肢のひとつです。
犬にカルシウムを与える際のおすすめの食材やおやつは?
Banepx / PIXTA(ピクスタ)
カルシウムを含む【おすすめの食材やおやつ】
①牛乳、ヨーグルト、カッテージチーズなどの乳製品
②哺乳類、鳥類、煮干しなど魚類の骨(ペットフードに加えられている骨粉も含む)
③豆腐や海藻
④ほうれん草、ブロッコリーやキャベツなどの野菜
海藻や植物に含まれるカルシウムは吸収率が高くなく、牛乳、ヨーグルト、チーズなどの乳製品に含まれるカルシウムのほうが吸収率が良いことが知られています。
消化・吸収率をもう少し詳細に解説すると、豆腐、ほうれん草、ひじき、わかめなどの吸収率は17%。ししゃも、しらす、卵は吸収率が30%です。
カルシウムを摂らせるためにおすすめの食材は、乳製品で、乳タンパク質がカルシウムの吸収を助け、吸収率は50%と高めです。
ただし、乳糖不耐症の犬もいるため、下痢をしないか確認しながら少しずつ与えてください。
犬用のミルクである乳糖を除いたミルクや、無糖ヨーグルト、カッテージチーズなどを与えるのも良いでしょう。
犬にカルシウムを与える場合の注意点!(手作り・サプリ)
keechuan / PIXTA(ピクスタ)
愛犬にカルシウムを与える際、もっとも重要なのは、カルシウムとリンのバランスが整った食事を与えることです。
体内のカルシウム量の調節は、リンと密接に関係しています。
食事中のリンを制限するとカルシウムの吸収が増加します。
また、リンが過剰だと身体のカルシウムのバランスが壊れます。
リンが多量に含まれる肉や魚の身だけを摂取すると、リンが過剰となって、骨からカルシウムが溶け出して痛みも生じる恐れがあります。
カルシウムとリンの適切な比率を守り、愛犬に食べさせなければなりません。
カルシウムの摂らせ方としては、与えるフードのカルシウムとリンの比率を1:1~2:1にするのが重要です。
ちなみに、肉や臓物のカルシウム:リン比=1:16~32とされていて、これは非常に偏っています。
iStock.com/Artit_Wongpradu
手作りごはんで肉を用いる場合は、この点に気をつけましょう。
卵の殻は炭酸カルシウムの割合が多く、リンを少なくすることを考えた食材として使われています。
また、前項でも解説したとおり、カルシウムの吸収率は食材によって異なるので、カルシウムの必要量だけでなく吸収率も考慮しながら、手作り食やトッピングを行うのが重要です。
サプリメントに関しては、愛犬がライフステージにマッチした総合栄養食をきちんと食べられていれば与える必要はありません。
特に、成長期のカルシウムの過剰摂取には要注意!
カルシウムのサプリメントは、授乳期の母犬など、獣医師から指示された場合のみ用いるようにしましょう。
犬に与えるカルシウムのまとめ
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カルシウムは、犬に必要な栄養素のひとつです。
カルシウムを与える際には、リンとのバランスが整ったものを食べさせることが重要です。
犬用のライフステージに合った総合栄養食を適量摂取できていれば、あえてカルシウムを追加する必要はありません。
特に成長期はカルシウムの摂りすぎによる健康被害の方が大きいため、サプリメントなども含め、カルシウムを与えすぎないように注意しましょう。
愛犬の健康を守ることができるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の生活に役立ててくださいね。
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