【獣医師監修】犬がパイナップルを食べても大丈夫?缶詰やジュースは?嘔吐やアレルギーなど注意点も!
南国の甘いフルーツである、パイナップル。オレンジやメロン、キウイなどとともに、好む犬が多い果物の一つでしょう。犬はパイナップルを食べても大丈夫でしょうか? 缶詰や皮は? パイナップルの食材としての特長や注意点、適量などを詳しく解説します。
更新日:
◆日本獣医生命科学大学 名誉教授
◆一般社団法人 日本ペット栄養学会 会長
◆日本内分泌研究会会長
◆一般社団法人 日本動物看護系大学協会会長
【資格】
◇獣医師
【経歴】
日本獣医畜産大学(現:日本獣医生命科学大学)卒業後大学に残り、馬、牛,小動物の消化器・内分泌・代謝性疾患の研究を行う。
1990年小動物栄養学に関する研修のためにアメリカオハイオ州立大学に留学。
2006年より日本獣医生命科学大学 ・獣医保健看護学科で動物看護師の教育に当たる。
教育:獣医内科学、獣医内分泌学、動物栄養学、動物臨床看護学など
研究:動物の代謝・内分泌学、栄養学
目次
犬がパイナップルを食べても大丈夫!
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犬はパイナップルを食べても大丈夫です!
ブラジル原産のパイナップル科の多年草である、パイナップル。
25〜30℃ぐらいの温暖な気候での栽培が適しており、現在日本で販売されているパイナップルの果実は、主にフィリピンから輸入されています。
「パイナップル」とは、もともとは松(パイン)の果実(アップル)、つまり松かさ(松ぼっくり)を指したそうですが、松かさと似た外見を持つため、この果物の名前に転用されるようになったとのことです。
甘いものが好きな犬は多く、バナナやメロン、りんご、オレンジ、みかんなどに並んで、パイナップルも犬が好むフルーツの1つ。
パイナップルの甘さは種類や完熟度などによっても違いますが、1つの果実でも下部のほうが糖度が高いので、甘くなります。
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【シュウ酸カルシウム結石】の犬には与えないほうがいい?
パイナップルはシュウ酸カルシウムを含んでいるため、シュウ酸カルシウム結石の犬には与えないほうがいいという説もあります。
しかし、パイナップルは「クエン酸」も含んでおり、クエン酸はシュウ酸とカルシウムの結合を抑制するため、シュウ酸カルシウム結石の予防効果があるとも言われています。
また、パイナップルは水分も多いため、尿中で結石ができにくいという事情もあります。
シュウ酸カルシウム結石の犬にパイナップルを与えないほうがいいとも言い切れず、あまり気にしなくて大丈夫です。
ちなみに、犬が食べてはダメな果物としてよく知られているのは、ぶどうです。
犬がぶどうを食べると腎不全を起こすことがあるとの報告があり、特に干しぶどうが危険と言われています。
その他に、プルーンや、ペルジンによる下痢や嘔吐が報告されているアボカド、ソラニンやフィシンが含まれるイチジクの皮、皮のついた柑橘類、ドライフルーツ、フルーツの加工品などにも注意が必要です。
犬はパイナップルの【皮】【芯】【葉】を食べても大丈夫?
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犬はパイナップルの【皮】を食べてはいけません!
犬はパイナップルの皮を食べてはいけません!
パイナップルの皮は硬くて繊維が多いので、犬が消化できないだけでなく、喉(のど)や胃、消化管に詰まらせて吐く、下痢する、消化管を傷つけて血便が出るといった危険があります。
パイナップルの甘い香りのする皮は、テーブルの上やゴミ箱に入れておくと、犬が盗み食いしてしまう可能性もあります。
パイナップルの皮を捨てるときは細かくして、犬が開けられないふた付きのゴミ箱に確実に捨てましょう。
犬がパイナップルの皮を吐いた場合は、誤食した可能性が高いので、すぐに動物病院へ連れていって診療を受けてください。
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犬はパイナップルの【芯】を食べてはいけません!
犬はパイナップルの芯を食べてはいけません!
パイナップルの皮と同様、芯も犬は消化できません。
犬が誤って食べてしまわないよう、十分注意しましょう。
犬はパイナップルの【葉】を食べてはいけません!
犬はパイナップルの葉を食べてはいけません!
パイナップルの実の根本から生えている葉を「冠芽(かんが)」と言います。
パイナップルを丸ごと買うと、この冠芽も付いていることがあります。
冠芽も皮や芯と同様、犬は消化できないので、誤って食べてしまわないよう十分気をつけましょう。
犬にパイナップルの【缶詰】【ジュース】【アイス】を食べさせても大丈夫?
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犬にパイナップルの【缶詰】を食べさせない方が良い
犬にパイナップルの缶詰を食べさせないほうがいいでしょう。
缶詰やドライフルーツのパイナップルは砂糖が足されているので、カロリーオーバーになる可能性があります。
また、ビタミンなどの成分はほとんど損なわれていることが多く、与えるメリットもあまりありません。
犬にパイナップルの【ジュース】を与えても大丈夫!
犬はパイナップルのジュースを飲んでも、基本的には大丈夫です。
他の食材を加えていない自家製ジュースや、市販のものでもストレートジュース、濃縮還元ジュースであれば、問題ありません。
しかし、糖分や添加剤、犬にとってよくない食材などを加えているものもあるので、ラベルをよく見て判断しましょう。
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犬にパイナップルの【アイス】は食べさせない方が良い
犬にパイナップルのアイスを食べさせないほうがいいでしょう。
市販のパイナップルアイスには、パイナップル以外のものが多く加えられていることがあります。
糖分や添加剤、犬にとってよくない食材などを加えているものもあるので、ラベルをよく見ましょう。
パイナップルのみで作られている”自家製のアイス”であれば、犬に与えても問題ありません。
犬にパイナップルを食べさせると【食糞】対策・防止になる?
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食糞する犬に、「食糞防止のためにパイナップルを食べさせるとよい」という記事が、インターネット上に見られます。
理由としては、「消化の状態が変わる」「糞便の匂いが変わる」といったことがあげられています。
しかし、確かな科学的理由は明らかになっていません。
【子犬】や【老犬】にパイナップルを与えても大丈夫?
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【子犬】にパイナップルを与えない方がいい
子犬にはパイナップルを与えないほうがいいでしょう。
生後1歳未満の子犬の場合、まだ十分に消化・吸収能力が整っていないことが多いです。
パイナップルには食物繊維が多く含まれており、子犬は下痢やガスの産生、腹痛などを起こす可能性があります。
パイナップルを与えるのは、愛犬が1歳になってからにしましょう。
【老犬】にパイナップルを与えない方がいい
老犬にはパイナップルを与えないほうがいいでしょう。
腎臓の弱ってくる老犬、特に腎臓病を患っている老犬には、パイナップルなどのカリウムを多く含む果物を与えるのは控えたほうがいいです。
腎臓病になるとカリウムの排泄がうまくいかなくなるため、「パイナップルは与えるのをやめるか」「与えるとしても少量」にしましょう。
パイナップルの【特長】、犬への【効果】は?
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パイナップルの特長・効果①【ビタミン豊富】
生のパイナップルには、ビタミンB1、B2、C、βカロテン、葉酸など多様なビタミンが含まれています。
特にビタミンB1は100gあたり90mgと、柑橘類(例えばみかんは10mg/100g)と同等の分量です。
ビタミンB1には、ブドウ糖をはじめとする糖分を体内でうまく使うように調節してくれる役割があります。
【参照元】日本食品標準成分表2020年版(八訂)
パイナップルの特長・効果②【カリウム補給】
パイナップルには、他の果物と同様、カリウムが豊富に含まれています。
カリウムは体内の余分なナトリウムを排出し、血圧を正常に保つ効果が期待できます。
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パイナップルの特長・効果③【便秘解消】
他の果物や野菜と同様、パイナップルは食物繊維が豊富で、100gあたり1.2g含みます。
便秘の犬は便通がよくなる効果が期待できます。
ただし、与えすぎると下痢をしやすくなるので、与える量には気をつけましょう。
【参照元】日本食品標準成分表2020年版(八訂)
犬にパイナップルを与える際の【注意点!】
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パイナップルの注意点①【ブロメライン】
人間も犬も、パイナップルを食べると、喉(のど)がイガイガしたりかゆみが出たり、舌や唇がピリピリしたりすることがあります。
これらの反応は、パイナップルに含まれる「ブロメライン」というタンパク分解酵素(プロテアーゼ)によって、口の粘膜が刺激されることによって起こると言われています。
ブロメラインの仲間には、メロンに含まれるククミシン、パパイヤに含まれるパパイン、キウイフルーツに含まれるアクチニダイン、いちじくに含まれるフィシンなどがあり、似たような反応を起こすことがあります。
全然平気な犬もいますが、このブロメラインのせいでパイナップルが苦手という犬もいるでしょう。
ブロメラインは加熱すると”失活する”ので、火を通して与えると嫌がらなくなるかもしれません。
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パイナップルの注意点②【アレルギー】
まれに、パイナップルを食べた後にアレルギー症状を起こす犬もいます。
愛犬がパイナップルを食べた後に、発疹が出たり、体中をかゆがったり、目が充血したりしている場合は、アレルギーを起こしている可能性があるので、与えるのをやめてください。
また、犬にパイナップルを初めて与えるときは、少量からスタートしましょう。
パイナップルの注意点③【喉(のど)・消化管の閉塞】
犬は食べ物を丸呑みにすることが多く、パイナップルも喉(のど)や消化管に詰まらせる危険性があります。
犬にパイナップルを与えるときは、愛犬の体や口の大きさに合わせて、小さく切って与えましょう。
それでも心配な場合は、つぶして与えてもいいでしょう。
犬にパイナップルを与える際の【適量】は?(小型犬・中型犬・大型犬)
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パイナップルを愛犬に与える場合、どのぐらいが適量なのでしょうか?
ペットフード公正取引協議会の指針によると、犬のおやつや間食は、原則として「1日当たりの給餌量(カロリー)に対して、多くても20%までに抑える」ことが望ましいとされています。
その実際の分量は、避妊・去勢をした健康な成犬の場合、以下です。
犬にパイナップルを与える際の【適量(目安)】
【犬のサイズ(体重)】 | 【エネルギー要求量/日】 | 【最大エネルギー量/日】 | 【最大重量/日】 (54kcal/100gとして) |
---|---|---|---|
超小型犬(3kgのチワワなど) | 255kcal | 51kcal | 94g(可食部のみで約1/4個) |
小型犬(5kgのトイ・プードルなど) | 374kcal | 75kcal | 139g(可食部のみで約1/3個) |
中型犬(10kgの柴犬など) | 630kcal | 126kcal | 233g(可食部のみで約1/2個) |
大型犬(30kgのラブラドール・レトリーバーなど) | 1059kcal | 212kcal | 392g(可食部のみで1個弱) |
パイナップルは、甘さのわりには比較的低カロリーな果物なので、カロリーで計算するとけっこう多く与えられます。
ただし、水分や食物繊維が多く含まれるパイナップルの場合、与えすぎると下痢になる可能性もあるので、様子を見ながら少しずつ与えましょう。
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実際には、1日当たりの給餌量(カロリー)の10%程度、上の表の半分ぐらいまでにしておいたほうがいいでしょう。
また、パイナップルをおやつとしていつものフードにプラスするだけでは、肥満の原因になります。
犬にパイナップルを与えるときは、必ずパイナップル分のカロリーを主食から差し引くようにしましょう。
特にカロリーが高めだったり、与えすぎたりしがちな、パイナップルの「缶詰」や「シロップ漬け」「ドライフルーツ」「ジュース」には注意が必要です。
【参照元】日本食品標準成分表2020年版(八訂)
犬に与えるパイナップル【まとめ】
amz camera / PIXTA(ピクスタ)
犬はパイナップルを食べても大丈夫です!
生のパイナップルは、他の果物同様、ビタミンやカリウム、食物繊維などを多く含みます。
ただし、皮や芯、葉などは硬くて繊維が多く、消化できないので、与えてはいけません。
ゴミ箱などからも盗み食いされないよう注意しましょう。
果実を与える際も、喉(のど)や食道に詰まらせないよう、小さめに切るかつぶして与えましょう。
愛犬の健康を守れるのは飼い主だけです。
正しい知識を持って、毎日の愛犬の食生活に取り入れてみてくださいね。
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