【獣医師監修】犬に「抹茶」を飲ませてはダメ！理由と誤飲した時の対処法・応急処置、治療費は？

犬に抹茶を飲ませてはダメ！デザートも危険！その【理由】は？

iStock.com/ＨＩＲＯ

抹茶や抹茶を使ったデザートには「カフェイン」が含まれています。

カフェインは、犬の健康を損なう恐れのある”危険な成分”です。

犬に抹茶を飲ませてはダメな理由【カフェイン】

stmkit- stock.adobe.com

犬がカフェインを摂ると、様々な症状を引き起こす危険性があります。

内閣府 食品安全委員会の資料によると、2008年、欧州食品安全機関（EFSA）は動物用の飼料に望ましくない物質としてテオブロミンについての科学的意見書を発表しています。

「テオブロミン」はチョコレートにも含まれるカフェインの代謝物であり、犬はげっ歯類より感受性が高いと報告されています。

【参照元】内閣府 食品安全委員会「欧州食品安全機関、動物用飼料中の望ましくない物質としてのテオブロミンに関する科学的意見書を公表」

カフェインを含む抹茶を飲んだり、抹茶を使ったお菓子を食べたりしないよう飼い主は注意をする必要があります。

心臓病やてんかんなどの持病を持つ犬、子犬や高齢犬（シニア犬）では特に注意が必要です。

なぜ、緑茶のカフェインがこのような【症状】を起こすの？

iStock.com_Image Source

カフェインには、中枢神経を刺激し興奮させる働きがあります。

人間が抹茶や緑茶、コーヒーを飲むとシャキっとして眠気が覚めるのもカフェインの効果です。

カフェインは、アデノシンという神経伝達物質に構造が似ています。

構造が似ているのにもかかわらず、アデノシンはカフェインとは逆に神経を鎮静させたり睡眠を誘導したりする働きを持つ物質です。

アデノシンはアデノシン受容体と結合することで、神経を興奮させる「ノルアドレナリン」「ドーパミン」などの物質の放出を抑えます。

ところが、カフェインを摂取すると、アデノシン受容体は構造が似ているカフェインを先に受容してしまいます。

そのためアデノシンの働きは阻害され、”神経が興奮するという状態”になるのです。

【参照元】東北福祉大学・大学院紀要 「日常生活におけるカフェイン摂取-作用機序と安全性評価-」

iStock.com/petrenkod

人間もカフェインを摂りすぎると健康上の問題につながることがあります。

そのため厚生労働省では、食品に含まれるカフェインの過剰摂取について注意を呼びかけています。

カフェインを過剰に摂取した場合には、中枢神経系の刺激によるめまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気等の健康被害をもたらすことがあります。

【参照元】厚生労働省「食品に含まれるカフェインの過剰摂取についてQ&A　～カフェインの過剰摂取に注意しましょう～」

農林水産省においても、エナジードリンクを過剰に飲んだ男性がカフェイン中毒で亡くなったことを受け、カフェインの過剰摂取に注意するよう呼びかけています。

【参照元】農林水産省「カフェインの過剰摂取について」

iStock.com_Zinkevych

カフェインの摂取量について注意を促しているのは日本にとどまりません。

世界保健機関（WHO）では、2001年、妊婦に対してコーヒーを1日3～4杯にすることを推奨しています。

カナダ保健省では妊婦だけでなく、子どもや一般の健康な成人に対してもカフェインの推奨摂取量を定めています。

カフェインは人間が適切に摂る分には大きな問題はほとんどないものの、過剰摂取が懸念される成分です。

人間よりも体が小さく、カフェインの感受性が高い犬が緑茶を飲んでしまうことは”健康へのリスクが高い”ことがわかります。

抹茶ってどんなお茶？【カフェイン】どのくらい入っている？

iStock.com_SITTHIPONG

抹茶は碾（てん）茶という茶を原料に作られます。

碾茶は太陽光を一定期間遮って栽培されたのち「蒸す」→「冷やす」→「乾燥」という工程を経ます。

乾燥した碾茶は石臼で粉砕されて抹茶になります。

茶葉をお湯で抽出するのではなく、お湯に溶いて飲む抹茶にはビタミン類、うま味や甘味の他、渋みのカテキン、苦味のカフェインが多く溶け込んでいます。

【参照元】におい・かおり環境学会誌「抹茶の特徴」

iStock.com/jirkaejc

抹茶に含まれるカフェインは、日本食品標準成分表2015年版（七訂）によると100g中3.2g（3,200㎎）です。

ちなみに玉露の茶葉では100g中3.5g（3,500㎎）と抹茶より多いのですが、玉露はお湯で浸出するのに対し、抹茶は粉になった茶葉をそのままいただきます。

そのため、摂取するカフェインは、”抹茶の方が多め”です。

【参照元】日本食品標準成分表2015年版（七訂）

犬が抹茶の【ケーキ】【パン】【プリン】など、デザートは食べても大丈夫？

navee- stock.adobe.com

抹茶はお茶として飲むだけでなく、パンやケーキ、プリン、アイスなどのデザート、飲み物では抹茶オレなどに使われています。

これらの抹茶を使ったデザートもカフェインが含まれるので、舐めたり食べたりすることは危険です。

犬は雑食性で、甘いものが好きな動物なので抹茶のデザートにも注意しましょう！

【参照元】「あなたのイヌがわかる本」ブルース・フォーグル著　ダイヤモンド社

抹茶のデザートのほとんどは、砂糖の他に生クリームやバター、牛乳が使われています。

カフェインの害だけでなく、カロリー過多になったり乳製品にアレルギーを起こしたりする可能性もあります。

iStock.com/Hana-Photo

犬にとって、特に注意したいのがチョコレート入り抹茶のお菓子です。

チョコレートのテオブロミンが犬に強い中毒を起こす可能性が高く危険です。

テオブロミンはカフェインの代謝物でもあり、カフェインを摂取した時のような症状が現れます。

犬がチョコレートを食べると嘔吐や下痢、興奮、痙攣（けいれん）、重症の時は昏睡や死に至ることもあります。

【参照元】公益社団法人 埼玉県獣医師会「チョコレートを犬にあげないで！」

【参照元】「抹茶の和み（なごみ）おやつ」林 幸子（はやし ゆきこ）監修日東書院

多くのデザートが10～15gの抹茶を使用しています。

100g当たり3200㎎のカフェインが含まれているので、デザートには320㎎程度のカフェインが含まれていると考えられます。

Taisuke _ PIXTA(ピクスタ)

抹茶入りおやつは愛犬には与えず、飼い主だけで楽しむようにしましょう！

どうしてもケーキやスイーツを食べさせたい場合は、犬用に作られた安全なものを与えるようにしてください。

犬の抹茶の誤飲【対処法】【応急処置】は？

iStock.com/Marion Kuban

愛犬が抹茶を誤飲してしまった場合、飼い主さんはあわてずに、まずは”落ち着くことが大切”です。

ほんの少し抹茶を舐めただけ、抹茶入りのお菓子を一口食べただけで特に症状が出ていない場合も、念のため受診をおすすめします。

特に、心臓病やてんかんなど持病のある犬や、子犬、シニア犬は注意が必要です。

犬の抹茶の誤飲、対処法・応急処置①【動物病院に連絡する】

iStock.com/imtmphoto

愛犬が抹茶を誤飲、誤食してしまった際には、まず、かかりつけの動物病院に連絡します。

「深夜」や「休診日」は、救急対応している動物病院に連絡をしましょう。

犬の抹茶の誤飲、対処法・応急処置②【時間を伝える】

iStock.com/seb_ra

動物病院の獣医師に、犬が抹茶を何時ごろ飲んだかなど、なるべく詳しく伝えましょう。

犬の抹茶の誤飲、対処法・応急処置③【量を伝える】

iStock.com/Eugene03

愛犬が抹茶をどのくらい飲んだか、”量”を伝えることも重要です。

正確に量がわからなくても「茶碗の半分程度」などとすると、伝わりやすくなります。

また、お菓子を食べた場合は、「抹茶プリンを1個食べた」など具体的に伝えましょう。

空き容器も捨てずに持って行きます。

犬の抹茶の誤飲、対処法・応急処置④【愛犬の様子を伝える】

iStock.com/jakkapan sapmuangphan

愛犬の様子、状態を伝えます。

立てない、ふらふらしているなどの状態や、吐いている時は回数も伝えるといいでしょう。

余裕があれば、犬の様子を携帯電話などの動画機能を使って撮影しておくと診察の際に説明しやすくなります。

犬の抹茶の誤飲、対処法・応急処置⑤【応急処置は獣医師の指示に従う】

iStock.com/mediaphotos

愛犬が抹茶を誤飲してしまった場合、「応急処置は獣医師の指示に従って行動する」ことが大切です。

抹茶を飲んだことに気づいた時点で吐かせる方法がありますが、飼い主が吐かせるのはなかなか困難です。

愛犬が抹茶を誤飲してしまった際、無理に吐かせないようにしましょう。

犬の抹茶の誤飲、対処法・応急処置⑥【日頃から心がけたいこと】

iStock.com/FatCamera

普段からかかりつけの動物病院で、緊急時にはどうしたらよいか相談しておきましょう。

また、「深夜」や「休診日」に対応してくれる、「救急の動物病院の連絡先を控えておく」と安心です。

【参照元】公益社団法人 東京都獣医師会 杉並支部杉並区獣医師会

犬の抹茶の誤飲【中毒症状】は？

minianne- stock.adobe.com

愛犬が抹茶を飲んだ場合、カフェインによる心臓や脳の血管への刺激、腎臓の血管拡張や胃液の分泌の刺激などが考えられます。

犬にもよりますが、約20㎎/kg摂取で嘔吐や下痢などの症状が出始め、40～50㎎/kgで循環器に影響が出るという報告があります。

【参照元】Interdisciplinary Toxicology 「Some food toxic for pets」

具体的には次のような症状があげられます。

犬の抹茶の誤飲①【初期に出やすい症状】

興奮

心拍数の増加（頻脈）

震え

下痢

嘔吐

喉の渇き

多尿

尿失禁

犬の抹茶の誤飲②【循環器などへの影響】

iStock.com/Constantinis

頻脈

不整

体温不調

犬の抹茶の誤飲③【中枢神経系への影響】

痙攣（けいれん）

てんかん

海外では死亡例も報告されています。

【参照元】環境省「飼い主のためのペットフード・ガイドライン～犬・猫の健康を守るために～」

一般社団法人 日本小動物獣医師会「わんこにあげてはいけない食物」

Journal of Medical Toxicology「Death by caffeine: presumptive malicious poisoning of a dog by incorporation in ground meat.」

また、フェインに含まれる「テオブロミン」という成分には中枢神経興奮作用があり、「痙攣（けいれん）」「てんかん発作」を誘発するとも言われています。

元々、てんかん発作を起こしやすい犬は特に注意が必要です。

【参照元】岐阜大学動物病院

iStock.com/yipengge

抹茶ではありませんが、カフェインが含まれるウーロン茶葉の誤飲症例もあります。

犬がウーロン茶葉を誤食したあと6時間程度してから痙攣（けいれん）と嘔吐が生じ、その後、震えや興奮、ふらつき、左右の瞳孔散大（瞳孔が拡大すること）、頻脈が見られたという症例がありました。

【参照元】「CAP」2013年5月号「誤飲への対応 その処置法と予防」

犬の抹茶の誤飲【致死量】は？（小型犬・中型犬・大型犬）

iStock.com/photo_chaz

犬がカフェインを口にした時の致死量は、140㎎/kg（範囲120～200㎎/kg）という報告があります。

例えば体重7kg の犬がカフェインを3g摂取し、2時間後に症状が出てその後死亡したという事例がありました。

【参照元】Journal of Medical Toxicology「Death by caffeine: presumptive malicious poisoning of a dog by incorporation in ground meat.」

抹茶100gあたりのカフェイン量を約3,200mgとすると、抹茶を点てて飲む場合には1杯当たり48㎎のカフェインが含まれることになります。

下記はお湯で点てた抹茶を飲んだ場合と、10gの抹茶を使ったデザートを食べた場合の致死量を犬のサイズ別に計算した表です。

抹茶もデザートも量をみるとあまり現実的ではありませんが、これはあくまで致死量です。

愛犬が抹茶をほんの少し舐めただけでも体調を崩す可能性があるということを知っておきましょう。

【参照元】宇治 丸久小山園「お茶を楽しむ」

犬の抹茶の誤飲【治療法】【治療費】は？

iStock.com_chalabala

愛犬が抹茶を誤飲した場合の治療は、「点滴をしたり」「吐かせたり」することが中心と考えられます。

ただ、症状によっては、痙攣（けいれん）をおさえたり、麻酔下での胃洗浄を行ったりするなどもあるかもしれません。

愛犬の状態によっても治療や処置は異なります。

わからないことは、獣医師に尋ねるようにしましょう。

【参照元】公益社団法人静岡県獣医師会「異物誤飲について」

犬が抹茶を飲んでしまった場合に予想される治療費について、点滴治療、深夜料金、入院（大型犬）の調査をしました。

iStock.com/DenGuy

【参照元】公益社団法人日本獣医師会「小動物診療料金」

また、犬の誤飲の治療費は、手術がない場合で平均16,348円という報告がありました。

【参照元】CAP 2013年5月号「誤飲への対応 その処置法と予防」

他の治療を行う場合もありますし、動物病院や診察時間、そして犬の症状、大きさによっても治療費は変わります。

動物病院でよく確認してください。

犬の抹茶の誤飲【まとめ】

http://nichiju.lin.gr.jp/small/ryokin_h27/

犬が抹茶を口にすると、カフェインによって様々な中毒症状を起こすことが考えられます。

摂取した量によっては、最悪の場合、”命に関わる”ことがあります。

抹茶そのものは苦いものの、抹茶入りデザートは甘くて犬が興味を持ちやすい食品です。

中には犬には危険なチョコレートが使われていることもあります。

iStock.com/chendongshan

どんなに注意していても「ちょっと目を離したすきに抹茶を飲んでしまった」「こぼした抹茶を舐めてしまった」「抹茶入りおやつを食べてしまった」ということも考えられます。

いざという時落ち着いて対応できるように、犬の緊急時にはどうすればよいか、かかりつけの獣医師に相談しておくことも大切です。

愛犬の健康を守れるのは、飼い主だけです。

愛犬が健康に楽しく毎日を過ごせるように、飼い主が愛犬の健康管理をしていきましょう。