【プロドッグトレーナー監修】スコティッシュ・テリアは初心者が飼って大丈夫?飼い方、寿命、病気は?
スタイリッシュで紳士的なイメージのあるスコティッシュ・テリアですが、ニックネームは「ダイ・ハード(Die Hard)」。「なかなか死なない」という意味から転じて、「粘り強い」を表します。勝気で猟欲が強く、我が道を行くタイプであり、テリアの中でも個性が光る犬種です。そんなスコティッシュ・テリアの魅力を探ってみましょう。
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麻布大学介在動物学研究室(旧動物人間関係学研究室)で、人と犬の関係学を研究。
この分野では日本で初めての博士号を取得。
目次
スコティッシュ・テリア【初心者が飼っても大丈夫?飼いやすい?】【断耳・断尾は必要?】
Gera8th / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリア【初心者が飼っても大丈夫?飼いやすい?】
スコティッシュ・テリア(Scottish Terrier)は、初心者が飼育するには難しい犬種でしょう。
小型犬であるという点においては扱いやすいですが、スコティッシュ・テリアらしい被毛を維持するには定期的に被毛を整える作業が必要になること、そして、気質的にはクールで気難しい面があることなどから、犬の飼育経験があり、テリア好きの人に向く犬種と言えます。
特に気質に関しては、「今でも猟欲を強く残しており、小動物には要注意。他の犬との相性もいまひとつで、頑固で独立心がある分、しつけには根気が必要になることがある」などと言われるのがスコティッシュ・テリアです。
ともに暮らすのであれば、そうした気質や特性を理解する必要があるでしょう。
確かにスコティッシュ・テリアはスタイリッシュで魅力的な犬です。
しかし、それだけにとらわれず、自分の性格や年齢、体力、生活スタイル、環境、飼育スペース、経済力、家族の協力など諸々の要素を熟考した上で犬をお選びください。
なぜなら、犬は命ある生き物であり、人生の良きパートナーとなり得るのですから。
スコティッシュ・テリア【断耳・断尾は必要?】
スコティッシュ・テリアでは、断耳・断尾は行われません。
スコティッシュ・テリア【シュナウザー】との違いは?
Sergii / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリアとシュナウザーとが似ているように思う人もいるかもしれません。
特に、髭(ひげ)のある顔のつくりが似ていると思わせるのでしょう。
立ち耳で、毛色も同じような色であるとなおさらです。
ご存知のようにシュナウザーには大型のジャイアント・シュナウザーと、中型のスタンダード・シュナウザー、そして小型のミニチュア・シュナウザーがいます。
これらの中で歴史がもっとも古く、基礎となっているのはスタンダード・シュナウザーで、単にシュナウザーと呼ばれることもあることから、少々ややこしくなりますので、この記事では3サイズをまとめてシュナウザーと記すことにします。
スコティッシュ・テリア、3サイズのシュナウザー、それぞれに共通しているのはむっちりとした筋肉質体型であることと、被毛が抜けにくく、主にドッグショーに出す犬ではプラッキング(不要な毛を抜いて被毛を整えるトリミング技法)が必要になること。
一方、スコティッシュ・テリアとシュナウザーとで大きく違う点は「脚の長さ」です。
シュナウザーは”中庸の足の長さ”ですが、スコティッシュ・テリアは”短脚”です。
次に、スコティッシュ・テリアは自然な耳と尻尾をもつのに対し、シュナウザーでは断耳・断尾されることがあるのも相違点です。
そして仕事面では、スコティッシュ・テリアは農場での害獣退治やアナグマ、キツネ、カワウソなどの猟に使われていましたが、ミニチュア以外のシュナウザーは害獣退治の他、牛追い犬、荷車引き、番犬などの仕事もこなす「マルチドッグ」でした。
シュナウザーの他、髭(ひげ)のあるシルエットをもつ犬という意味では、シーリハム・テリアやウェルシュ・テリア、アイリッシュ・ソフトコーテッド・ウィ―トン・テリア、レークランド・テリアなどもいます。
なお、根本的に似ているという意味では、スコティッシュ・テリアとケアーン・テリアとは近縁と考えられています。
【スコティッシュ・テリアとシュナウザーとの相違点】
【スコティッシュ・テリア】 | 【シュナウザー】 | |
---|---|---|
原産国 | イギリス | ドイツ |
サイズ | 25cm~28cm | ミニチュア 30cm~35cm スタンダード 45cm~50cm ジャイアント 60cm~70cm |
毛色 | ブラック ウィ―トン ブリンドル | ミニチュア ブラック ソルト&ペッパー ブラック&シルバー ホワイト スタンダード ブラック ソルト&ペッパー ジャイアント ブラック ソルト&ペッパー ブラック&シルバー |
耳 | 自然な立ち耳 | V字型で前方に折れた耳 断耳してある場合は立ち耳 |
尾 | 自然な尾 | サーベルまたは鎌のような自然な尾 断尾してある場合は短尾 |
スコティッシュ・テリア【原産国・歴史・寿命は?】
Ondrej Prosicky / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリア【原産国】
原産国:イギリス
イギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)はイングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランドの4つの国(カントリー)から構成されていますが、グレートブリテン島の最北部に位置するのがスコットランドです。
歴史上、スコットランドは北西部のハイランド(Highlands)と、南東部のロウランド(Lowlands)の2つに分けられており、ハイランドは山や荒地の多い土地柄で、ロウランドは低地。同じスコットランドながら人の気質や文化、言語など、それぞれに多少違いがあるようです。
このうちハイランド地方が「スコティッシュ・テリアの故郷」と言われています。
スコティッシュ・テリアに関する文献には、「アバディーン周辺で主に飼育繁殖されていたことから、アバディーン・テリア(Aberdeen Terrier)と呼ばれたいたこともある」との記述が散見されますが、アバディーンとは地方自治体の一つであるアバディーンシャー(Aberdeenshire)を意味していると思われます。
ちなみに、ハイランドとロウランドとの境界線は曖昧だそうですが、地図を見る限りではアバディーンシャーはロウランドに含まれ、ハイランドに隣接しています。
また、アバディーン・テリアはかの地に住んでいたヴァン・ベスト博士が地元の様々なテリアを掛け合わせて作出した犬で、その姿がスコティッシュ・テリアと似ていたとの話があります。
だとするならば、スコティッシュ・テリアの先祖犬たちはアバディーン・テリアと混同されて同じ名前で呼ばれていたのではないかとも考えられるわけですが、いずれにしてもこの辺のいきさつには少々混乱が生じることは否めません。
スコティッシュ・テリア【歴史(種類)】
eAlisa / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリアは「スコッチ・テリア/Scotch Terrier」とも呼ばれ、かつては「ワイヤーヘアード・テリア/Wire-haired Terrier」「ハードコーテッド・スコティッシュ・テリア/Hard-coated Scottish Terrier」「ダイ・ハード/Die Hard」「アバディーン・テリア/Aberdeen Terrier」「スコッツ・テリア/Scots Terrier」「ハイランド・テリア/Highland Terrier」などと呼ばれていたこともあると言われています。
現在の犬種名に落ち着くまでの道のりには、テリア種の混乱期を通過しなければなりませんでした。
まずは彼らの源流はどこにあるのか、歴史を遡(さかのぼ)ってみても他の多くの犬種同様に判然とはしません。
ただ、スコットランド北西部のハイランド地方にある農場の壁に、頭部が長くて短脚の犬の姿が遺されているという話があり(推定西暦200年頃)、スコティッシュ・テリアとの関連に胸を弾ませたいところですが、残念ながらそれも不明です。
少なくともハイランド出身のテリア(ハイランド・テリア)の中でスコティッシュ・テリアが最古であると愛好家たちは主張しており、古いタイプの犬ではあるのでしょう。
そういうわけで、スコティッシュ・テリアの話は1200年代から始まります。
この当時、農業革命の真っただ中でもあり、ネズミ退治やキツネ、カワウソなどの狩りに犬が益々必要とされるようになりました。
それから数世紀の間、時を追うごとに各地で特長のあるテリアたちが活躍するようになります。
共通していたのは「タフ」で、「勇敢」であり、「寒い気候にも耐えうる硬い被毛をもっていた」こと。
しかし、毛色やビジュアルはいろいろでした。
1800年代に至るまでは地元での呼び名はあっても、単に「テリア」として一括りに扱われていた時代です。
そうした中にあって、スコットランドで「スコティッシュ(スコッチ)・テリア」と言った時、そこにはスコティッシュ・テリア系の他、スカイ・テリア系、ダンディ・ディンモント・テリア系、ハイランド・テリア系もしくはケアーン・テリア系が含まれていたといいます。
(その他、スコットランド周辺のワーキングテリアには、「オッター・テリア/Otter Terrier」「ラフヘアード・テリア/Rough-haired Terrier」などの呼び名もありました)
要は、「スコティッシュ・テリア」という呼び名は犬のタイプを指す意味と、「スコットランドのテリア」という意味の両方で使われていたのかもしれません。
Gera8th / PIXTA(ピクスタ)
ところが、1800年代に入ると混沌としたテリア事情は変化の時を迎えます。
それぞれを犬種として確立させ、スタンダード(犬種標準)を設けようという動きが出てきたのです。
いえ、ほんとうのところは、「スコティッシュ・テリア」と呼ぶにふさわしいのはいったいどの犬なのか?というのが大きな課題でした。
そして、どの犬を、どう呼ぶべきなのか。
事が決着するまでには長い時間がかかり、現在のスコティッシュ・テリアがこの名を正式に得たのは1879年のことでした。
資料の中には、「愛好家は他のテリアに対しては排他的であった」という記述も見られ、テリア同様、スコットランドの人々にも頑固で一途な気質があるとするなら、長い時間を要したことも想像に難しくありません。
イギリスで初の犬種クラブが設立されたのは、それから3年後の1882年。
しかし、本場のスコットランドではなく、イングランドであったといいます。
1883年にはアメリカに渡り、1930~1940年代にかけてスコティッシュ・テリアはたいへん人気となりました。
それには、アメリカのフランクリン・ルーズベルト大統領(第32代、在任1933~1945年)が「ファラ/Fala」という名のスコティッシュ・テリアを飼っており、公務にも度々同行させた他、演説でもファラの名を出すことがあり、国民の目に触れる機会が多かったことが少なからず影響したのではないでしょうか。
その他、映画スターのハンフリー・ボガード(1899~1957年)や、大西洋無着陸横断飛行の初成功者として知られる飛行家のチャールズ・リンドバーグ(1902~1974年)などもスコティッシュ・テリアの愛好家であったと伝えられています。
この時期には商品キャラクターとして起用されたり、美術品やグッズなどにも使われたりすることが多く、スコティッシュ・テリアの名は広く知られるようになります。
たとえば、1884年に設立された地元スコットランドの酒造会社では、ブラック&ホワイトとして人気のあったウィスキーのトレードマークとしてウェスト・ハイランド・ホワイト・テリアとスコティッシュ・テリアの姿を描いたラベルに変更し、今でもファンの多いウィスキーになっていることはあまりにも有名な話です。
愛称はスコッティ(Scottie)。
時が移ろい、現在は洗練された姿になりましたが、スコティッシュ・テリアはなお古のテリアらしさを忘れていません。
Ihalavach / PIXTA(ピクスタ)
【スコティッシュ・テリアのこぼれ話】
1. ダイ・ハードというニックネームは、スコットランド西部の町ダンバートンに居住したジョージ・ダグラス(George Douglas)伯爵が、自身の所有する犬たちを「ダンバートンのダイ・ハード/Dumbarton’s Die Hard」または「ダンバー・ダイ・ハード/Dumbar Die Hard」と呼んだことに因むと考えらえています。
2. フランクリン・ルーズベルト大統領の愛犬ファラは、1952年に天寿を全うした後、ワシントンにあるフランクリン・デラノ・ルーズベルト記念公園( Franklin Delano Roosevelt Memorial )に大統領と並び、銅像となってその姿を遺しています。
3. かのヒットラーも恋人エヴァ・ブラウン(自死の直前に妻とした)にスコティッシュ・テリアを贈ったと言われ、ヒットラーとエヴァが写る写真には黒いスコティッシュ・テリアの姿があります。
4. かつてイギリスで行われていた100匹のネズミを何分で殺せるかという賭博ゲームでは、それを7分で成し遂げたビリーという名のスコティッシュ・テリアがいたという話が伝えられています。
【参照元】
・THE KENNEL CLUB「Scottish Terrier」
・FEDERATION CYNOLOGIQUE INTERNATIONALE (AISBL)「SCOTTISH TERRIER」
・interzoo/監修 社団法人ジャパン ケネル クラブ「最新犬種図鑑」(2008年)
・AMERICAN KENNEL CLUB「Scottish Terrier」
・AMERICAN KENNEL CLUB「Scottish Terrier History: From Rugged Hunter to 1930s Fad」
・SCOTTISH TERRIER CLUB OF AMERICA「ABOUT THE BREED」
・デズモンド・モリス「デズモンド・モリスの犬種事典」(株式会社 誠文堂新光社、2007)
・Bruce Fogle, D, V, M.「The ENCYCLOPEDIA of the DOG」(DK PUBLISHING, INC.)
スコティッシュ・テリア【平均寿命】
平均寿命:12 歳~14歳
※個体の健康度や国・地域、気候、環境などによって寿命には差が生じます。
スコティッシュ・テリア【大きさ・毛色・子犬(赤ちゃん)の販売価格は?】
master1305 / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリア【オス】の大きさ(体重・体高・体格)
体高:25cm~28cm
体重:8.5kg~10.5kg
スコティッシュ・テリアは短脚でコンパクトな体つきながら、筋肉質でやや重厚感のある小型犬です。
スコティッシュ・テリア【メス】の大きさ(体重・体高・体格)
体高:25cm~28cm
体重:8.5kg~10.5kg
スタンダード上の体高はオス犬とメス犬が共通になっていますが、一般的にはメス犬のほうがやや小柄であり、メス犬らしい性徴感があります。
スコティッシュ・テリア【毛色の種類】
MirasPictures / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリアの毛色は「ブラック」「ウィ―トン(小麦色)」「ブリンドル」の3色が基本となり、色調は問われません。
そのため、ブリンドルでは基調となる色によって、「ブラック・ブリンドル」「レッド・ブリンドル」「シルバー・ブリンドル」「ダーク・ブリンドル」などの呼び方もあります。
一見してブラックに見える犬でも、よく見ると濃いブリンドルであることもあります。
被毛はダブルコートで、オーバーコートは粗く、ワイリー。
アンダーコートは密ですが、被毛が分厚いというほどでもありません。
現在のような独特のカットスタイルが施されるようになったのはドッグショーに出陳されるようになって以降のことで、古い写真や絵を見る限り、往時のスコティッシュ・テリアは体の線がわかる程度の被毛で、もっと野趣に富んでいたようです。
スコティッシュ・テリア【子犬(赤ちゃん)の販売価格】
26万円~
※価格はあくまでも目安であり、販売者や犬の状況によって変動します。
日本におけるスコティッシュ・テリアの登録数は182頭(2020年)。
知られている犬種のわりには登録数が少ないですが、国内にはブリーダーが複数いるので、手に入れることは可能です。
【参照元】一般社団法人ジャパン・ケネル・クラブ「2020年(1月~12月)犬種別犬籍登録頭数」
スコティッシュ・テリア【特徴・性格・食事は?】
eAlisa / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリア【容姿・スタイル】
スコティッシュ・テリアは脚が短く、胴がつまっており、コンパクトな体形をしていますが、それに対して頭部はやや長く、大きめです。
小型ながらに全体的にがっしりとしており、エネルギーに満ち溢れていることを感じさせます。
頭蓋の高い位置にピンと立った耳は、そのシルエットに凛々しさを加え、アーモンド型の目は髭(ひげ)に覆われた風貌(ふうぼう)と相まって高い知性があることをアピールしているかのようです。
胸はやや丸みがあり、腰は幅が広め。
小さなサーベルのような尾は活動時に直角に近く背上に高く掲げられることがあり、カットスタイルと併せて独特のシルエットを描きます。
スコティッシュ・テリア【性格(気質)・魅力】
スコティッシュ・テリアの気質を表すには、「忠実」「頑固」「粘り強い」「クール」「勇敢」「大胆」「気難しい」「独立心が高い」「狩猟本能が強い」などいろいろな言葉を使わなければなりません。
信頼する飼い主およびその家族には深い愛情を示しますが、他の人にはそっけなく、距離を置くようなところがあります。
言ってみれば、「ワンマンドッグ」。
しかし、懐(なつ)いている飼い主家族にはべったりかと言うとそうでもなく、一緒にはいたがるものの、終始甘えるようなタイプではないようです。
つかずはなれずの程よい距離間が彼らにはちょうど良いのかもしれません。
特に、過去に行われた研究では子供に対する攻撃性が高い結果が出ているため、お子さんと同居する際は、お子さんが無理に触ろうとするなどの関わり方に注意を払わなければなりません。
時には頑固で一途な面を見せ、それに手を焼くこともあるでしょう。
しかし、それこそスコティッシュ・テリアならでは。
alkir / PIXTA(ピクスタ)
また、恐れを知らず、相手を敵と見なせば小さな体で果敢に立ち向かうだけの気概と勇敢さもあり、小型の体に大型犬が潜んでいると言われるほどで、そんな姿に「彼らがテリアの中のテリアである」ことを痛感するはずです。
他の犬への攻撃性も高いことから、多頭飼いをするさいには十分な注意が必要です。
スコットランドには、「Wha daur meddle wi me(我に触れて無事に帰れる者はいない)」という言葉があるそうですが、誇り高く、古き良きものを守ろうとするのがスコットランド。
そして、ロウランドに比べてハイランドの人はやや武骨だそうですが、そうした風土がスコティッシュ・テリアを育んだのでしょうか。
どこか気難しいけれど憎めない奴。
勝気でエネルギッシュというテリア気質以上のものをもちあわせているのがスコティッシュ・テリアです。
スコティッシュ・テリア【食事(食べ物)・お手入れ】
スコティッシュ・テリアのごはん
子犬を迎えたならば、急に食事内容を替えるとお腹を壊すことがあるので、1~2週間はそれまで食べていたごはんと同じものを与えるようにしましょう。
その後、ごはんを切り替える場合は、1週間程度かけて少しずつ替えるようにします。
ごはんは年齢ステージに合ったものを与えましょう。
年代によって必要エネルギーも違ってくるので、それぞれ調整してください。
アメリカン・ケネル・クラブによれば、スコティッシュ・テリアのようなテリア種は20%台半ばのタンパク質であるとうまく育てられることを見出した熟練ブリーダーもいるとのことですが、個体差や環境などによっても違うでしょうし、これは勧めるというわけではなく、あくまでも参考程度の話として記しておきます。
eAlisa / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリアは太りやすい傾向にもあり、肥満にならないよう体重管理も大切になります。
おやつを与えるのならば1日の量を決め、可愛さあまって与え過ぎないようご注意ください。
その他、スコティッシュ・テリアはアレルギーを起こしやすい傾向にもあるので、特にごはんを替えた後は、皮膚に赤みがないか、体を痒がっていないかなど、念の為に観察するといいでしょう。
スコティッシュ・テリアのお手入れ
スコティッシュ・テリアは換毛期に毛が抜けることはあまりありません。
そのため、毛の退化・退色を防ぎ、新しい毛の発育を促して、テリアらしい硬くて美しい被毛を維持する目的でプラッキングが行われてきました。
「プラッキング」とは、専用のトリミングナイフを用いて体全体の毛のうち不要なものを抜き取るトリミング技法を言います。
(これに対し、皮膚が見えるほど毛を抜き取るトリミング技法をストリッピングと言います)
ドッグショーに出陳したい、よりテリアらしい姿を維持したいというのであれば、月に1回程度のプラッキングが必要になりますが、この場合は子犬のうちから慣らしたほうがいいでしょう。
Katamount / PIXTA(ピクスタ)
そこまでは望まないというのであれば、バリカンで被毛をカットする(クリッピング)こともできますが、この場合は「2~3ヶ月」に1回程度が目安になります。
なお、クリッピングを続けた場合は被毛が軟らかくなる傾向にあります。
ブラッシングは毎日、少なくとも1日おきにはしたいものです。
シャンプーは月に1回程度を目安にし、ドライングの時には毛の根元や指の間までしっかり乾かすようにしましょう。
髭(ひげ)を伸ばしている犬では、食後の汚れをそのままにすると毛がやけてしまうことがあるので、食後には口の周りを拭いてあげましょう。
忘れたくないのが歯のお手入れです。
多くの犬が歯周病をもっており、歯周病を放置すると細菌によって口腔内に穴が開いたり(内歯瘻:ないしろう)、眼の下や頬などの皮膚に穴が開いたり(外歯瘻:がいしろう)することがある他、心臓病や肝臓病など他の病気にも悪影響を与えてしまいます。
犬では歯垢が歯石へ変化するのは3~5日であることから、できれば毎日、少なくとも1日おきには歯磨きを行ない、歯周病予防を心がけたいものです。
スコティッシュ・テリア【気をつける病気は?】
Sergii / PIXTA(ピクスタ)
気をつける病気①【フォン・ヴィレブランド病(フォン・ヴィルブランド病/フォン・ウィルブランド病)】
「フォン・ヴィレブランド因子」と呼ばれる血漿タンパクは血中に存在し、出血時に血管の傷口周辺に集まって血液を凝固させる働きを担っています。
しかし、これがうまく産生されずに、出血が多くなる、出血がなかなか止まらない、あざができやすいなどの症状が見られる病気を「フォン・ヴィレブランド病」と言います。
フォン・ヴィレブランド因子の量や症状によってタイプ1、タイプ2、タイプ3の3つに分けられ、タイプ3がもっとも重度であるとされます。
また、発症リスクの高い犬種もおり、スコティッシュ・テリアやシェットランド・シープドッグ、ドーベルマン、ピンシャーなどの他、国内ではウェルシュ・コーギー・ペンブロークの発症率が高いと言われています。
参考資料:
・Cornell University College of Veterinary Medicine, Animal Health Diagnostic Center「Canine von Willebrand Disease」
・KAHOTECHNO「VWD(フォン・ウィルブランド病)」
気をつける病気②【尿石症】
MirasPictures / PIXTA(ピクスタ)
尿がつくられ、排出されるまでのルートには、腎臓・尿管・膀胱・尿道がありますが、これらの器官に結石ができた状態を「尿石症」と言います。
「尿石症」の原因は飲水量の不足や、カルシウム・マグネシウム・リンなどのミネラルを多く含んだ食事、遺伝的要素など。
無症状のこともありますが、排尿時の痛みや血尿、頻尿などの症状が見られます。
薬や療法食で結石を溶かすことができない場合は、外科的に摘出が必要になることがあります。
細菌感染を起こすと膀胱炎や腎盂腎炎になることがあり、また尿管や尿道が閉塞した場合は急性腎不全につながることがある点には注意が必要です。
気をつける病気③【腫瘍】
スコティッシュ・テリアは腫瘍ができやすい傾向にあると言われます。
特に、膀胱(ぼうこう)の腫瘍である移行上皮癌(いこうじょうひがん)はスコティッシュ・テリアではリスクがあるとされるので、尿が出づらい、血尿が見られるなどの様子が見られる時には、一度動物病院で診てもらったほうがいいでしょう。
その他、肥満細胞腫やリンパ腫など、いろいろな腫瘍に対して気をつける必要があります。
口の中や被毛が密な部分などは腫瘍があっても発見が遅れることがあるので、日頃のお手入れの際には口の中はもちろん、全身をチェックすることをおすすめします。
スコティッシュ・テリア【病気になった場合、ペット保険は適用される?】
CORA / PIXTA(ピクスタ)
愛犬が病気や怪我をした時に、その治療費を補償してくれるのがペット保険ですが、どんな病気や怪我でも補償されるというわけではありません。
基本的に、
予防にあたるもの
例)狂犬病や各種感染症の予防ワクチン、フィラリア予防、マイクロチップ装着費用、健康診断費用
病気にはあたらないと判断されるもの
交配や出産関連
トリミング関連
先天性疾患またはすでに見つかっている先天性疾患、すべてまたは一部の遺伝性疾患、すでに罹(かか)っている病気
例)膝蓋骨脱臼(パテラ)、股関節形成不全、進行性網膜萎縮症
代替医療
例)アロマセラピー、ホメオパシー、理学療法
などは”補償対象外”となるのが一般的です。
また、本来は病気のくくりであっても、鼠径(そけい)ヘルニア、臍(さい)ヘルニア、眼瞼内反・外反、停留睾丸なども”補償対象外”になることが多いです。
ただし、同じ病気であっても、A社では補償対象外であるのに対し、B社では補償対象となることもあり、ペット保険会社によって違いがあります。
加えて、加入できる年齢の制限や補償条件など各社各様なので、ペット保険の加入を考える時には、愛犬の健康リスクや年齢などを踏まえ、各ペット保険会社をよく比較検討して選ぶことをおすすめします。
スコティッシュ・テリア【飼い方(しつけ)・散歩の仕方・注意点!】
Ondrej Prosicky / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリア【飼い方(しつけ)】
「しつけは愛犬が家にやって来たその日から始まる」と思ってください。
トイレトレーニングはすぐに始める必要があります。
子犬がトイレに行きたくなるのは、主に寝て起きた後や、ごはんを食べた後、水を飲んだ後、遊んだ後など。
また、子犬の膀胱が尿で満たされるのは、生後3週齢で45分、生後12週齢で90分、生後18週齢で2時間程度と言われます。
生き物ですからそうそうこの時間やタイミングどおりというわけではありませんが、これらを目安にトイレをしそうだなと思ったらトイレ場に誘導し、ちゃんとできたらたくさん褒めてあげる、失敗したなら何も言わずにさっさと片付ける、というふうにしつけるといいでしょう。
その他、エネルギッシュで猟欲の強いスコティッシュ・テリアでは、事故防止のためにも「マテ」「ヤメ」「おいで」など基本的なことはしっかりと教えたいものです。
ただし、頑固であるがゆえに時には手を焼くことがあるかもしれません。
しつけは結果を急がず、彼らの持ち味と同じように粘り強く取り組むことも必要でしょう。
【参照元】イアン・ダンバー「ダンバー博士の子犬を飼う前に」(レッドハート株式会社)
スコティッシュ・テリア【散歩の仕方】
Deer_Hunter / PIXTA(ピクスタ)
小型ながら活動的でタフであり、精神的刺激も必要とするスコティッシュ・テリアには十分な散歩や運動が必要です。
散歩の目安は1回30分~1時間程度を1日2回ですが、特に狩猟欲求が強いスコティッシュテリアはただリードに繋がれて歩くだけの散歩では満足しないため、散歩の中でおもちゃを使って遊んであげる時間を作ってあげましょう。
可能ならばドッグランのような場所で自由運動をさせてあげられると理想的です。
一点、気をつけたいのは、スコティッシュ・テリアは他の犬に対してそれほど友好的ではないと言われるので、他の犬がいる時には相手との相性はもちろん、犬の行動を観察することは怠りませんように。
散歩に出られない時には、いつも何か楽しいことを探しているようなところがあるスコティッシュ・テリアですから、嗅覚を使ったゲームなどして刺激を与えてあげるといいでしょう。
スコティッシュ・テリア【注意点!】
スコティッシュ・テリアでは、俗に「スコッチ(スコティッシュ)痙攣:Scottish Cramp」と呼ばれる痙攣発作を引き起こす病気が存在します。
原因としては、神経伝達物質の一つであるセロトニンの代謝障害が考えられていますが、はっきりしない部分も多いようです。
生後1歳未満で発症することが多く、興奮やストレス、運動などをきっかけに、
あえぎや呼吸の乱れ
歩き方がぎこちない
背中をのけ反らせる
顔の筋肉の痙攣
動かなくなる
突然倒れる
などの症状が見られるようになります。
これら症状が似ているため、診断時にはてんかんと間違われることがあるといいます。
発作は30分におよぶ場合もあるものの、発作がおさまった後には通常に回復するそうです。
この病気は遺伝が関係すると考えられており、スコティッシュ・テリア・クラブ・オブ・アメリカによれば、まだ遺伝子検査ができる状況ではないながら、ブリーダーの努力によって発症例は激減しているとか。
ただ、稀な病気であっても、こういう病気もあるのだということは知っておいたほうがいいでしょう。
【参照元】
・Urkasemsin G, Olby NJ. 「Clinical characteristics of Scottie Cramp in 31 cases」.J Small Anim Pract. 2015 Apr;56(4):276-80. doi: 10.1111/jsap.12317. Epub 2015 Jan 20. PMID: 25599802.
・PERMD「Muscle Cramps in Scottish Terriers」
・SCOTTISH TERRIER CLUB OF AMERICA「SCOTTISH TERRIER GENETIC ISSUES」
スコティッシュ・テリア【まとめ】
eAlisa / PIXTA(ピクスタ)
スコティッシュ・テリアは勝気で頑固と言われますが、その一方で一度信頼した飼い主には終生深い愛情を尽くす犬です。
紳士的な風貌の裏側には不器用なまでの一途さを隠しもっており、それこそがスコットランド生まれのスコティッシュ・テリアらしいところ。
一度彼らの魅力に触れると、その虜になってしまう人は今も後を絶ちません。
※注意:犬は生き物であり、性格やサイズ、運動量、寿命など個体差があります。
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